よう実世界に転生した畜生系主人公が神室真澄に心を打ち抜かれる話 作:サンディエゴ
三分で出来る(出来ない)~、高度育成高等学校の校舎占拠クッキング~!
『さて、彼はどう動くか……。この試験を使って上手く退学にできれば御の字ですが、さすがにそれは難しいでしょう。ですが、クラスの貯金を吐き出させることができれば今後は動きやすくなる。それに……追い込んだことで、例の件でやったように外部と接触を図るかも知れません。その手品の種を掴めれば、場合によってはそれを退学の理由に――』
まず、月城の注目は「クラス内投票」の試験を知り、綾小路がどう動くかに集中しているのでそれを利用します。
『むっ、部屋に帰ったと思ったらすぐに外に……? これまでの記録とは違うルーティン。待ち合わせをしているようにも見えない。それに自然体の動きだがカメラの位置を気にしているような……』
綾小路には彼の注意を引くように行動をしてもらいます。
あからさまに不審な動きではなく、見る者が見れば何か隠し事があるような、そんな感じの動きをカメラにギリギリ映る感じで。
なかなか困難なミッションだけど、そこは綾小路なのでいい感じに上手くやります。
『何か手を打つつもりか? それとも外部との接触? 監視体制をより強化して――っ?! 何事だ?!』
いい感じで月城を焦らし、日が暮れたタイミングで学園の外周部に仕掛けられたセンサーとかを片っ端から反応させます。
例の一件があってから外部との接触が出来ないように色んなセンサーとかが増えているので、わざと引っかかってあげましょう。
当然、すぐに警備員とかがやってきますがそこは俺のように回避しつつ、何なら「にゃお」と挨拶しながら横切って次のセンサーやら何やらを反応させ、注意をひきつけます。
『センサーに反応?! それも複数を……まさか、陽動!? 彼に注意を引きつけている間に何か手を? いや、それともセンサーの反応こそが陽動? そちらに意識を割かれた間になにかをするつもりでは……そんな手に乗る私ではありません。この程度の策で私が隙を作るとでも……。どちらも対処すればいいだけのこと』
『警備員をあるだけ集めて反応のあった場所の捜索を指示します。本命が一つであとはブラフの可能性もある。些細なことでも報告するように。彼の監視は私が直々に……どんな手を使ってくる気ですか、綾小路清隆』
そんな感じで二つの陽動に引っかかり、綾小路と学園の外周部に意識がいった瞬間を狙って校舎に侵入します。
校舎への侵入ルートはあらかじめ、用意しておきましょう。
『くっくっくっ……下校時の校舎の戸締まりは生徒会の管轄だったな? それなのにこんなに不用心でいいのか? 南雲会長さんよぉ』
『はっはっはっ。なーに、生徒会といえども人間だ。ショックな試験内容を知ってちょっとぐらい失敗することはあるだろうさ』
『まあ、ミスは誰にでもあるわな。……おら、野郎ども作戦通りに動け』
『女子もいるんだけど』
偶々施錠がされていなかった部分から校舎内に侵入。
一階から順に占拠を開始しつつ、平行して理事長室へ向かいましょう。
敷地内の至る所にカメラがありますが、当然密度としては校舎内とその周辺が一番多くなります。
全体の記録データの処理は別のところで行われていますが、主に校舎内とその周辺のエリアはこの理事長室で管理がされています。
ここを制圧してしまえば、校舎内とその周辺エリアのカメラはこちらの思うまま。
『校舎内に反応が……。それに周辺にも人の反応があると』
『なに? 映像を回してください。確認します』
『いえ、それが……それが出来なくて。どうも、向こうから接続を切られているような』
『バカな!? あり得ない。管理権限は理事長室からしかできないはず。仮にそこに入られていたとしても、パスワードが必要。パスワード自体は数日ごとに変更しているから私以外ログインすることなど』
月城はパスワードを数日ごとに変更するので、あらかじめ校舎から去るまでの彼にストーキングをして部屋の中に入って後ろから覗き込んでパスワードは常に知っておく習慣を付けておきましょう、いざという時に便利なので。
『ふふふっ、さすがはホームズですね。さて、これでこの周辺のカメラはこちらのコントロール下。陽動も上手くいっているようですし、あとは物資の運び入れをしちゃってください』
『おう。三年が手伝ってくれて助かったぜ』
『へへっ、色々と注意を引くために卒業後のことで相談って名目で注意を引くための連絡を入れてくれてたらしい』
『くくっ、この忙しいときに教え子からの相談の連絡……面倒なこと、この上なかっただろうな! なかなかにえげつない手を使ってきやがる』
『三年は今回の作戦に参加できなかったからなぁ。その点に関して色々あるんだろ』
『一、二年はともかくこの時期の三年生を巻き込むのはさすがにリスキーですからね。後方支援ということで納得していただきました』
『顔に「あと一年遅く生まれていたら参加できてたのにな」って出てたよな! 堀北先輩!』
『先輩には悪いが俺達だけで楽しむってことで……よし、予定通りに校舎内に物資の運び入れは成功した。食堂もあるし、立て籠もるのは問題ないだろう』
『理事長室を占拠したので電気や水道を止めることは物理的な手段に出ない限り難しい。十分すぎますね』
人員と物資の運び入れが成功すれば、あとは攪乱に勤しんでいた綾小路と合流し、校舎の中に入れば――終了!
一、二年連合軍。
総数300人近い学生による校舎の占拠は朝を迎える前に終わった。
学園側が事態の全容を把握する頃には――既に決着はついた。
ね? 簡単でしょう?
「我々は学園に抗議するー! そのためにこの校舎を占拠したー!」
「「「そうだ、そうだー!」」」
「今回の追加特別試験! クラス内投票とかいう、意味のわからない試験の実行に断固として異議を唱えるー!」
「「「そうだ、そうだー!」」」
「せめて、教育的意義を300字以内で説明しなさい! 退学前提の試験ってなに!?」
「「「そうだ、そうだー!」」」
「今までの特別試験はまだギリで許せるとしても、これもう試験としての体裁すらないじゃないかー! これのどこが教育だ! 言ってみろー!」
「「「そうだ、そうだー!」」」
「というか今更言うのもなんだけど、そもそもAクラスだけが特権あるとか、普通に詐欺だろー!」
「そうだー!」「ふざけんなー!」「ばーか!」
拡声器を片手にそんな声を飛ばしているのどかな光景を尻目に、俺と山村はのんびりと校舎の中を歩く。
いやー、それにしても大人がいない校舎の中って不思議な気持ちだなー。
「そうですね、師匠」
こんなことをすることになるなんて思ってもみなかったけど、やってみたら案外ワクワクするな!
「いい経験になっている気がします。ふふっ、師匠のお陰で進化した隠密活動技術も合わさり、私はこの一年で成長しました」
成長はしているが一般JKとして必要な経験とスキルかと言われると首をかしげざるを得ない。
けれど、内気で自己肯定感の低い彼女の自信になっているのだろう――たぶん。
絶を覚えているお陰でこうして校舎を囲まれているのに、ちょっと外に出て戻ってくるという作業も出来るわけだし。
いや、別に俺だけ行っても良かったんだけどね。
一人じゃ寂しいのよな。
「とりあえず、報告ですね」
「にゃーむ」
「それにしても本当に警察とか呼んでいる様子はなかったですね」
「にゃふ」
「はい、それどころかいつもより出入りを厳しくしていました。配送に来ていた業者も無理に追い返すぐらい、出入りを制限しているぐらいでしたし」
生徒たちが校舎を占拠し、それが向こうに伝わって早数時間も経っている。
普通ならまあ、警察に連絡してもおかしくはない状況だがどうにも連絡はしていない――それどころか、明らかにこの出来事が外部に漏れないように強硬なまでの手段に出ている。
全ては邪ロリの推測通りに。
ガチャリ、と山村がドアを開け理事長室に入ると、そこには我が物顔でソファーを陣取っている三人の姿が……。
「ふふふっ、その様子ですとやはり警察などへの連絡はしていないのですね。まあ、想定通りです」
あくどい顔をしながら理事長室の棚にあったワイングラスを手に、ふんぞり返る坂柳有栖。
「くっくっく、当然だな。こんな不祥事、表立っているはずもねぇ。普通の学校ですら内々に処理しがちなのがやつらの性質。それもこの高育なんてブランド価値の高いエリート校なら尚更だ」
これまた悪い顔をしながらこちらもワイングラスを回す龍園翔。
「警察に連絡してしまえばどこから情報が漏れるかわからない。それにこの抗議活動の切っ掛けが切っ掛け、言えるはずもないよなぁ……「生徒を問答無用で退学にしようとしたら抗議活動で校舎を占拠された」なんて」
二人に負けないほどの悪者スマイルでワイングラス片手にポーズを決める南雲雅。
「うわぁ……」
「にゃー」
「お帰りホームズ、それに山村。あれ、あった?」
「あっ、卵焼きサンドですね。はい、どうぞ」
「サンキュー、新作で気になってたのよね。でも、買うの忘れちゃって。これ、お駄賃込みでね」
「いえ、そんな師匠と調査に出たついでですから」
「いいのよ。それにしてもあいつらあの調子なのよね」
胡乱げにご主人は三人の様子を眺める。
この理事長室は今や校舎を占拠した一・二年連合軍の作戦司令部として使用されている。
なので、この占拠を指揮した中心人物である三人が居ること自体は別に変ではない。
変ではないのだが――
「よくもまあ、葡萄ジュースであそこまで浸れるわね」
「にゃおん」
「いや、三人にワイングラスを推したの師匠ですよね」
ちゃうねん。理事長室になんか高級そうなワイングラスがあるの見つけてさ、それで悪い笑みを浮かべて今後のことを話し合ってる三人を見るじゃん? そしたら、なんかこう……思いついちゃって。
ちょうど、長丁場になるかもって色々持ち込んできた中に葡萄ジュースもあったから、そのペットボトルをちょいちょいしてやってみるように坂柳のやつに頼んだら、あいつが二人にも勧めて……。
なんかあんな感じになったのだ。
ワイングラスに葡萄ジュースを注いで気分に浸る……ガキの頃には一回ぐらいやらん? やらんか。
それにしてもあの三人……。
「無茶苦茶様になってるわね」
「完全に悪役の作戦会議シーン」
「にゃお」
妙に似合っていた。
脚とか組んでるし、明らかに三人とも雰囲気に酔っているというか、浸っているというか。
無茶苦茶、この状況を満喫し楽しんでいた。
「学園の……月城理事長代行の失敗は明らかです。彼は退学という学生を脅しつけるための宝刀を抜いてしまった」
「本来はペナルティの時にのみ使われる武器。それが別にペナルティの時以外でも、相手の気分次第でいつでも抜いて使ってくるとなると、その武器で脅される側はワンチャン賭けてでも抵抗するしかねーわな。相手に従っても別に安全じゃないわけなんだし」
「そう、余地を与えてしまったのです。彼としては多少の抵抗があったとしても、見せしめに処罰をすればこちらの抵抗を抑えこめる――という目算があったのでしょう。それこそ、学園の方針に従わなかったとかいう理由を付けて、強引に何人か退学させれば大人しくなる……と」
「実際、毎月退学者が出ていたのにその話は外じゃまず聞かなかった。金でも握らせてるのか、そこら辺詳しくは知らないが口を封じる自信はあったんだろうさ。だから、強引に進めた」
「その結果がこれです。月城理事長代行は理解していませんね。立場がある、権力があるというのは確かに強いですが、それはつまり失うものが多いということでもある」
高育とその背後にある権力パワー、それを使って今までは都合の悪い部分を抑え込むことは出来ていたのだろう。
個人でそういったものに対抗するにはとても難しい。だからこそ、毎年数人、多くて十数人程度の退学者なら対処も出来ていたのかもしれないが。
「キミたち! こんなバカなことはやめなさーい! これ以上、続けるなら退学も視野に処罰を検討することに――」
「やってみろ、ばーか!」「一、二年生全員で300人近く……退学させるなら、やってみろ!」「強制退学の試験をさせられそうになって、それに抗議したら退学させられたって言ってやるー!」「というか、なにもしなくても退学させるつもりだったじゃん!」
まあ、こうなる。
300人近くはどう考えても口封じは不可能、というか口封じできても卒業生がその年代には居なくなるんだから普通にバレてしまう。
高育はその内情こそアレだが、外部ではエリート学園として有名で、少なくない税金が惜しげもなく投入されていた日本政府が設立した国立の高等学校だ。
二学年分の生徒が退学して卒業生なし、とかまずあり得ない。
しかも、理由が理由だ。
「そんなことになったら、どれくらいの首が飛ぶかねぇ」
「話は現在の学園のトップである月城理事長代行で済む話ではありません。下手をすれば……いや、間違いなく政府レベルの問題となるでしょう。それぐらいの不祥事となるでしょう。どうやら、彼の後ろには色々とあるようですが――果たして助けてくれるでしょうか? 職を失って無職になる……で、済めばいいでしょうが」
「手っ取り早く事態を収拾するなら、理事長代行に全部おっかぶせて終わらせた方が楽だわな」
「所詮は学生の身、しかも事情を勘案すれば退学されたところで再起の芽がある我々と立場があるが故にいざという時の責任を取らされる月城理事長代行……果たして、これは釣り合っているかどうか」
そう、現実的に不可能なのだ。
実際に300人近い学生を退学させてしまえば、高育は教育機関としての意義を失う。
卒業生を出せない教育機関なんて、教育機関じゃない。
しかも、国が膨大な金を出している学園なら尚更だ。
月城はどう考えても詰め腹を切らされる。
だからこそ、彼はその手段を実行できない。
「警察への連絡をせず、むしろ出入りの制限などで情報の統制を図っているということは、月城理事長代行は事態の隠蔽を図っているとみていいでしょう。この事態が外に漏れたら、それはそれで責任問題ですからね。当然とも言えます」
「だが、これで最悪の事態は避けられた。覚悟を決められて機動隊やら何やらを呼ばれて、早期決着を狙われたら面倒なことになっていた」
「だが、相手は保身に入った。生徒に校舎を占拠された事実を隠蔽、内密に処理をしようというのが相手の意図ってことだ」
「となると――」
「ええ、こっちが圧倒的に有利になりました」
三人はそれは悪役顔で笑った。
月城の「なんとか事態を内密に収拾したい」という弱みを確信したからだ。
「愉しくなってきたなぁ」
「参加できなかった堀北先輩のことを思うと、少し心が傷むぜ」
「ふふふっ……まあ? 私も? この高育のことは嫌いじゃありませんし? 迷惑になるような事態になるのは避けたいところですからね。ええ、ですからちょっとだけお願いを聞いてくれたりなんて――ふふふふふ……!」
三人の悪童が嗤う。
誰だよ、こんなやつらを神聖な学び舎に入学させたの……あっ、高育か! じゃあ、しょうがないね!
〈人物紹介〉
●ホームズ
→校舎を囲うように招集された高育関係者を横目に外に出て戻ってくる猫。注意が校舎に向きまくってるので余裕だよねこのぐらい。ねこだけに。弟子の上達を見て満足。校舎占拠はワクワクしている一般通過黒猫。
●山村美紀
→囲まれた校舎から気付かれずに脱出して、調査のために敷地内を出歩いて、コンビニで頼まれていたお使いをしてまた戻るくらい余裕で出来るようになったアサシンガール。将来このスキルと経験が役に立つかは知らないが自信にはなってる。褒められて満足。
●坂柳有栖
→校舎占拠の首謀者の一人。坂柳有栖、高育の歴史に鮮烈な学生運動の軌跡を――刻む!! まあ、そもそもこの学園の理事長は坂柳の父親だったとか突っ込みどころはあるのだが……いいじゃんそういうの、の精神で気にしない。心が闘争を求める! 黒猫からのゴーも貰ったんだからやれるだけやっておかないと。葡萄ジュースおいしい
●龍園翔
→原作より方向性が暴力方面からシフトしたとはいえ、根本的には不良でアウトローなのでこういったことは大変すき。舐めてくるやつ、偉そうなやつに中指を立てるのはたまらないぜ! 男なら一回ぐらい抱く欲求、校舎占拠欲を満たせて愉しい。葡萄ジュースを意味も無くワイングラスでクルクルする。
●南雲雅
→堀北兄がわりと真面目に参加できなかったことが悔しそうだったので、存分に楽しむことに決めた。同学年虐めをしているより面白いことを知った。ワイングラスの葡萄ジュースを意味も無く嗅ぐ動作をする。うん! これ、葡萄ジュースの匂いだ!
●綾小路清隆
→学園に泊まり込みできるようになったのでちょっとワクワクしている。夜の学校の怪談とか定番だし……。時期が悪いと黒猫に言われてしょんぼり。
●月城常成
→おのれ、綾小路清隆!!
視点での描写が欲しいキャラ
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葛城康平
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坂柳有栖
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神室真澄
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鬼頭隼
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山村美紀
-
一之瀬帆波
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椎名ひより
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綾小路清隆
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堀北鈴音
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櫛田桔梗
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佐倉愛里
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南雲雅
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堀北学
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茶柱佐枝
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真嶋智也
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星之宮知恵