よう実世界に転生した畜生系主人公が神室真澄に心を打ち抜かれる話   作:サンディエゴ

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畜生系主人公が神室真澄と理事長室から生徒たちの鬱憤晴らしを眺める話

 

 

 

「いやー、それにしてもいい光景ですねー」

 

 

 

 ワイングラスをクルクルしながら坂柳は理事長室から外の光景を見下ろしていた。

 

 

 

 そこでは拡声器を片手に言い合う生徒たちと教師たちが居た。

 

 

 

『いい加減に出てこい! こんなことはやめて――』

 

『そもそも色々と不親切というか悪意だらけなんですよ! クラス分けで上下があって、切磋琢磨することで生徒の成長を促進する――その理屈は理解できなくもないですけど、やり方が汚すぎる!』

 

 

 

『『『『そうだー、そうだー』』』』

 

 

 

『バカンスとか言って貴重な夏休みの時間を無人島で過ごさせるし! せめて、事前に試験あるよって言えばいいじゃないですか! それならまだそういうもんかで済ませますよ! なんで騙すんですか!?』

 

 

 

『そうだー、そうだー』『儲けられたし、船の上ではバカンスだったから一応流したけどサバイバル一週間はないだろー!』『枕変わると寝られないのに一週間サバイバルとか最悪すぎ!』

 

『いや、それはだな……』

 

 

 

『もっと真っ当に体育祭なり、テスト勉強で競い合うならわかるのにいつもいつも……真・体育祭がなければ体育祭だって大半のクラスがCPが下がるだけの盛り上がらないイベントでしかないし』

 

 

 

 因みに今、拡声器を持って叫んでいるのは平田である。

 

 

 あいつ、やっぱり鬱憤たまってたんだな……。

 

 

 今回の一件、彼の地雷を踏んでいるらしくハチマキを巻いて平田は本気モードだ。

 

 

 目が据わっており、ちょっと地というか暴のモードが出ている。

 

 

 彼の逆鱗の縁なぞるような行為だから仕方ないかも知れない。

 最初こそ、ヤバい学園に来てしまったと思っていたら、何だかんだみんな仲良くやって手を取り合ってイベントとかにも励んで、平田とすれば気持ちの良い高校生活を送っていた矢先に――これだ。

 

 

 

 よりにもよって、学園側が「クラスから一人退学者だせ。あっ、お前らで退学させるやつを決めるんだぞ?」とかいう虐め肯定のような試験を出されてカムチャッカ・ファイヤーになったわけだ。

 

 

 

 絶対にこんな試験を許すわけにはいかない。

 今後も許すわけにはいかない。

 

 

 

『大体、なんですかあの服装! 生徒にはいろいろ言っておいて、あの年であそこまで胸元見せるとか……痴女でしょ! 風紀を乱しているじゃないですか! 教職員としておかしいでしょ! なんで誰も突っ込まないんですか! そんなんだからこんな試験がまかり通るんだ!』

 

『そうだー! 年を考えろー!』『年増ー!』『若さには勝てないんだぞー!』

 

 

 

 前々から思っていた自身のクラス担任への不満も爆発した。

 それに追従する平田のクラスの女子たち。

 

 

 まあ……そうだね。正直、年齢的にキツいよねその格好……。男子生徒からすると目の保養にはなるかもだけど、女子生徒からすると媚びてるように映るだろうし。

 

 

 因みに『年増ー!』は櫛田の声だ。

 みんなが思い思いに叫んでいるので、バレないだろうという判断なのだろうが地を出し過ぎである。

 

 

『…………』

 

 

 向こうでしょんぼりとした表情で、胸元のボタンを留める茶柱の姿が見えた。

 彼女の生徒からの評価は驚くほど――低い。

 

 

 元からクールというか挑発的というか、クラスのやる気を起こさせるためかそういった言動や態度が多かった彼女だ、そもそもの印象が悪い。

 

 しかも、そのクラスのやる気を起こさせるための言動や態度も、あくまで生徒のためではなく、自分のためにクラスの尻を叩いているだけで、思いやった行動ではない――というのは案外、生徒に伝わるものなのだ。

 

 

 あっ、こいつ……私たちのことどうでもいいと思っているな? 的な感じ。

 

 

 そんな感じなのに、姿だけは男を誘うように胸元を開けているスタイル。

 

 

 ぶっちゃけ女子からの評判は悪い。

 じゃあ、男子からの評判がいいかというと――そうでもない。

 

 

 いや、言動や態度が悪くても見てくれがよくて、胸元を開けている女教師というだけでそれなりの需要があるのだが、今あのクラスは突如として現れたアイドル雫に夢中である。

 

 

 いきなり、クラスの中に発生した顔面偏差値最強のグラドル(成長中)と、見てくれ以外は評価できる要素がないなんちゃって女教師……勝敗は見えているのだ。

 

 

 普通に性格のいい佐倉と普通に性格の悪い茶柱。

 彼女が勝っている部分があるとすれば年齢ぐらいか。

 

 

 一応、綾小路の手駒として情報を搾り取られたり、馬車馬のように暗躍をさせられたりと色々やってるんだけどね。

 

 

 それら全て、特に綾小路が話していないのでクラスの人間からすると「マジでクラスのために何もしない教師」評価でしかないのだ。

 

 

 なので、まあ、当然あんな試験が起きて、それに抵抗するためにこうして校舎占拠して、それをやめさせようと学園側の立場で出てきたら――担任の生徒たちが明確な敵だと認識するのは当然なわけで。

 

 

 茶柱の心が折れるまで不平不満が平田たちから叩き込まれ、彼女は落ち込んだ様子で拡声器を星之宮に押しつけて奥に去って見えなくなった。

 

 

 そして――

 

 

『一之瀬さん! あなたはそんな人じゃないはず! 親御さんや妹さんも悲しんでいるはずよ! こんなことはやめて……』

 

『うるさい、この失格教師! 二日酔いで学校に来る先生なんて、私たち生徒は認めません! いい加減にしろー!』

 

『……はい』

 

 

 

 一之瀬の怒りの言葉にしょぼんという顔になった。

 彼女もまたいい加減キレたらしい、いつもは押し隠していた不平不満を爆発させている。

 

 

 平田にしろ、一之瀬にしろ、普段の真面目な態度からするとだいぶ荒々しい様子なのに、周りは引くどころか「よく言った」と手を叩いている辺りよっぽどみんな日頃から不平不満が溜まっていたのだろう。

 

 

「くくくっ、いい光景じゃねーか。先公どもが慌てふためいてやがる」

 

「ああ、実にいい光景だな!」

 

「ですね!」

 

 

 生徒たちが教師相手に日頃の不満を爆発させ、教員たちがおされている姿に悪ガキ三銃士はとてもご満悦な様子だ。

 

 

「あくどい顔だ……」

 

「雅たち完全に悪役顔ね」

 

「にゃー」

 

 

 性格の悪い三人からすれば日頃偉そうな教員たちが、ああやって生徒に言い返されている姿を見るのはとても愉しいことなのだろう。

 

 

 まあ、俺としても痛快ではあるのだが……。

 

 

 日本随一のエリートの学園とは思えない光景がそこには広がっている。

 思い思いの言葉、思いの丈をストレス発散も兼ねて周辺を囲む教員たちに浴びせ続けている。

 

 

『大体、なんであんな不良まで入れてるのよー! おかしいでしょ!』

 

 

 この声は伊吹澪の声だ。

 『そーだ、そーだ』と追従するのは真鍋志保の声。

 

 

 一斉に俺達の視線が龍園に向いた。

 彼女たちが言わんとしている相手、キングオブ不良なクラスリーダーの彼なのは明々白々だからだ。

 

 

 俺達の視線を受け止めながら、龍園は深く同意を示すように頷いた。

 

 

「それはそう」

 

 認めるんかい!

 

「高育に受かって一番驚いたのは俺だからな……」

 

 

 

 しみじみと彼は呟いた。

 

 

 石崎もそうだが、さすがに素行が悪すぎるのを入れるのはどうなんだろうな。いや、こう……なんというかダーティーな手段を取れる生徒も入れたかったってのはわかるんだけど、もっとこう選択肢はなかったのか? 山内とか池もそうだけど。

 

 

 須藤はまだわかるのだが。

 

 

 

『なんで南雲なんて入れた! 言え!』

 

『そーだ! そーだ!』

 

 

 

「あいつらの顔、覚えたからな」

 

「やめてあげなさいよ」

 

 

 

 二年生の方ではこっそりと南雲に対する不平不満をぶちまけていた。

 青筋を立てる彼を朝比奈が宥めている。

 

 

 

 まあ、なんだ……みんな日頃のストレスを発散できて、とりあえず――ヨシ! みんな結構あったんだな……。

 

 

 

『もっと民俗学の資料を充実させろー』

 

『推理小説も! 推理小説も! 原書をですね』

 

 

 

 なんかまったく関係ない要望を叫んでいるやつらもいるけど。

 

 

 いい加減にしておけよ、ホワイトルームの最高傑作。

 

 

 それはそれとして。

 平和で心温まる眼下の様子を確認して、俺達は打ち合わせに戻ることにした。

 

 

「結局のところ、向こうに動きはなし……か」

 

「籠城をやめるように呼びかけをしてくる程度で目立った動きは特になし」

 

「山村さんたちの偵察の成果から見ても強硬手段に出てくる要素はなさそうですね」

 

「そうなの?」

 

 

 ご主人の問いに坂柳は自信満々に平らな胸を張って説明を始めた。

 

 

「まず、第一に学園側は今回の事件を隠蔽しようと警察などへの通報を行った様子がない。となると機動隊などが出てくるということはないということです」

 

「その場合、強硬手段で何とかするためには学園内の人員でどうにかするしかないのですが……それは難しい」

 

「確かに高育の敷地内には商業施設がたくさんあって、従業員なども確かにいますが彼らはあくまで高育の人間というわけではありません。あくまで敷地内で働いているだけの人間。月城理事長代行の権限で動かせるのは教員とあとは警備関係者ぐらいでしょう」

 

「基本的な学園の運営、管理には十分かも知れませんが校舎に立て籠もった300人近い生徒をなんとか出来るマンパワーが存在しないのです」

 

 

「なるほど……それもそうか」

 

 

「ついでに言えば今の時点で学生の反乱が起きているんだ。下手に強硬な手段を取って、それで抵抗されて怪我でも負われたら話は更にややこしくなる」

 

「隠蔽する気満々だとしても最悪の場合、事件のことが世間にバレることまで考えると無理は出来ねーだろうからな」

 

「立て籠もった生徒相手に強硬な手段を使って怪我をさせた……元々ヤバい立場が更にヤバくなる」

 

「だから、相手が強攻策に出てくるなら初動。警察に速やかに連絡、連携し、早期収拾をはかる――これしかなかった。ですが、それももはや今更……」

 

 

 

「一度、隠蔽しようとしておきながら通報なんて難しい。警察に通報した時点で今の世の中、マスメディアが嗅ぎつけてくるだろうし」

 

 

 

「そういうことです。強硬手段で事態の収拾をすることは不可能、外部へ助けを求める手は自ら断った。月城理事長代行に残された手段は……我々との交渉しかありません」

 

「ああ、非道な試験の実施に怒りを覚えて立ち上がった俺達との交渉しか手段がないということになるわけだ……くくっ!」

 

 

 

 「ふっふっふ」とか「くっくっくっ」とあくどい顔を浮かべ嗤う坂柳と龍園。

 

 

 うん、どう見ても正義とか大義とか、不公平とか不正を正すみたいな顔じゃないよね? どうせ、お前たちは別に高育をまともにしようとかそういうことを考えているわけじゃないだろう? おら、言え!

 

 

 

「にゃー!」

 

「ふっ……当然じゃないですか! こんな自由気まま、好き勝手に出来る学園は高育を置いて他にありませんよ?」

 

 

 自由気まま、好き勝手にしているのは学園側の想定の範囲外だと思うんだけどね。

 

 

「今更まともな学園になって、特別試験とかプライベートポイントもなくなって金稼ぎが出来ない? そんなの満足できねぇよ」

 

 

 でしょうね! 学園のことクソクソ言いながら、お前たち適応しまくってるもんな!

 

 

「学園の未来とか将来とかどうでもいい。卒業まで好きにやれればそれで……!」

 

「言いやがったよ、クソ雅。一応、生徒会長なのに」

 

 

 うーん、シンプルに――カス!

 

 

 まあ、わかっていたことではあった。

 

 

 坂柳にしても、龍園にしても、南雲にしても、基本自分本位で自分がよければそれでいいの思考の邪悪三銃士。

 

 平田や一之瀬みたいに「この学園ダメだ……何とかしないと!」みたいな善人的な考えはまったくしていないのだ。

 

 こんな騒ぎにまでしておきながら、学園の制度とかを変える気持ちなんてさらさら無い。

 

 なんなら学園がとち狂って過去の所業を反省して、クラスでの競争制度とか全部廃止して、普通の学園のようにしますみたいなことを言い出したら、掌を返して高育の伝統を守れとか言い出して立て籠もるだろう。

 

 

 こいつらはそういう三人である。

 

 

「凄まじいまでのポジショントーク……こいつらにとって大義やらなんやらは紙切れのようなもんなのね。――知ってたけど!」

 

「ふふふっ、そんな真澄さん……照れちゃいます」

 

「褒めてはないんだけどね」

 

 

 どや顔の坂柳に対し、ご主人様は呆れたように突っ込みを入れた。

 

 

 

「じゃあ、何を目的にこんな騒ぎにまでしたの? 単に試験に対する抗議ならボイコットだけでもよかった気がするんだけど」

 

「校舎を占拠してみたかったんです」

 

「……」

 

「……冗談ですよ、真澄さん? ちゃんと目的はありますからね?」

 

「にゃー」

 

「ほ、本当ですってば! 確かに試験のことをうやむやにするだけならボイコットだけでもよかったかもしれません。ですが、これほど事態を大きくしたのはいくつかの理由があります」

 

 

 コホン、と一度声を整え、坂柳は続けた。

 

 

「まず一つ目、「牽制」です。「生徒側はあくまで唯々諾々と学園に従っている存在ではない。本気を出せばこんなことまで出来るんだぞ」という牽制、その実演です。前例が一度でもあることと一度も無いのとでは効力が違いますからね。これから学園側は常に我々、生徒の反乱がチラつくことになります」

 

「二つ目、「アピール」です。ただのボイコットでは消極的な反抗としか処理されませんが、校舎の占拠ほどに事態を大きくすれば攻撃的な反抗として受け止められます。生半可な対応では火傷をするぞ、と思わせることでこちらの思惑をより大きく見せることができます。実際のところ、話が大きくなりすぎればこちらとしても困るのですが、そこを悟られて足元を見られないためのハッタリ」

 

「三つ目、「月城理事長代行を引きずり出すため」です。切っ掛けの試験、これは月城理事長代行の強い押しの元で実行されたわけなので、どうあっても彼の責任は追及されますがそこはそれ、腐っても理事長代行という地位。ボイコット程度では現場の教員に責任を押しつけ誤魔化される可能性もありますが……校舎の占拠ほどの事件になればそうもいきません。事件が大きくなりすぎて、どうあっても現状トップの地位にある彼に責任が委ねられてしまいます」

 

 

 

 おお、なんかノリでやってると思ったら色々と考えて動いていると思ったが……さすがは邪ロリだぁ! そこまで考えているとは……。

 

 

 

 

「そして――四つ目、「学園側の結束を揺らがせるため」です」

 

 

 

「学園側の結束? どういう意味だ? 前の三つのはまあそんなところだろうとは思っていたが……」

 

「これは三つ目ともかかるのですが、今回の事件は一教員の手に負える規模の事件ではありません。事件の規模が大きすぎて、その責任は高育を監督する理事長代行にどうしても集中することになります」

 

「まあ、そうだろうな。それがトップってもんだ」

 

「そうなるとむしろ教員の立場からすると安全なんですよ。そもそもの原因の追加試験の実施を推したのも月城理事長代行ですし。そうなるとどうなるか……」

 

 

 

 ど、どうなるんだ……?(ごくり

 

 

 

「ええ、その場合……この高育メソッドの中で生きてきた一教員たちはどう身の振り方を考えるか――それは「自分だけはなんとか生き残ってやる!」という思考になります。間違いありません! 誰かを蹴落としてでも勝ち残るこそが正義! な高育教員ですからね!」

 

 

 

 す、すげえ! なんて説得力だ……っ! なんの反論も浮かばねぇ!

 

 

 

「つまり、今回の占拠は高育に色々な意味ででっかい釘をぶっさして、今後の学園生活を快適にするための――お祭りです!!」

 

 

 

 




〈人物紹介〉
●ホームズ
→ちょくちょく偵察を頼まれる忙しい猫。ご主人様のためだし、月城があれだからいいけどさー。言いように邪ロリに頼まれて情報をぶっこ抜いて帰ってきて、ご主人に偉い偉いされる。最初は違和感を持っていた龍園ももうだいぶ馴染んでしまった。違和感をもてなくなっている。

●邪悪三銃士
→「えっ、学園がまともになる? そういうのは……別にいいかな」。とち狂ってまともな学園になりそうになったら、それを妨害するために掌を返して行動する。嫌だ、俺達は金を稼いで好き勝手に自由に学園生活を送りたいんだ。ガバガバでユルユルなまともじゃない高育がいいんだ!

●綾小路清隆
→どうせならのノリで適当に叫んで要求している。ホワイトルームの最高傑作の成れの果て。

●教員ズ
→あわわわわっ!

視点での描写が欲しいキャラ

  • 葛城康平
  • 坂柳有栖
  • 神室真澄
  • 鬼頭隼
  • 山村美紀
  • 一之瀬帆波
  • 椎名ひより
  • 綾小路清隆
  • 堀北鈴音
  • 櫛田桔梗
  • 佐倉愛里
  • 南雲雅
  • 堀北学
  • 茶柱佐枝
  • 真嶋智也
  • 星之宮知恵
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