よう実世界に転生した畜生系主人公が神室真澄に心を打ち抜かれる話   作:サンディエゴ

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畜生系主人公が神室真澄と幹部会に出る話

 

 

 

「それでこれが例のものね」

 

「ああ、助かる。それにしても作るのは大変だっただろう?」

 

「ホームズが助けてくれたから別に問題は無かったわ」

 

 

 そんな会話が繰り広げられているのは放課後の教室。

 話しているのはご主人と葛城だ。

 

「へー……これが学内の監視カメラの配置図か。よくもまあ、ここまで」

 

「非常に助かる。それにしてもこれを見るとやはり……」

 

「ええ、そうですね。こうやって図にしてみるとわかりやすいですけど、意図的に死角の部分が作られていますね」

 

 そこには他にも、Aクラスの幹部ポジションにある生徒たちが顔を揃えていた。

 橋本や坂柳、そして黙して語らぬ鬼頭の姿もある。

 

 今行われているのは、いわばクラス内の報告会のようなものだった。

 クラス全員をいちいち集めるのは非効率なので、まずは必要最低限のメンバーに情報を共有するという目的で開かれている。

 

 幹部会と呼んだ方がいいか?

 まあ、ともかくそういったものだ。

 

 今やっている議題はご主人が持ってきたものについての話だ。

 

 ご主人が持ち込んだのは地図だ。

 図書室でコピーした学内の見取り図に手を加え、実際に確認した監視カメラの数や向きを書き込んだものである。

 

 学内の監視カメラに関して歩き回っている俺がとても詳しいので、ご主人と散歩の時に教えて作成したのだ。

 

 これに何の意味があるのか、というと結構重要なものがわかる。

 それは坂柳の指摘したとおりのことだ。

 

 意図的な監視カメラの死角、あるいはそもそも設置されていない場所の視覚化。

 

 生徒に莫大なポイントを配り、果ては無人島での試験まで開催する学校に、「予算が足りなくてカメラを設置できませんでした」なんて理屈は通用しない。

 それなのに、こうして少し調べるだけで明らかになる監視の隙が存在する――これはすなわち、意図された配置という証左だ。

 

 では、なぜそんな配置になっているのか。

 

 この学園では、学内での言動が個人の査定に直結する制度になっている。

 なら、本来ならば全エリアをくまなく監視するのが理にかなっているはず。

 

 

 だというのにわざと隙を作っているということは――

 

 

「生徒がうまく利用する余地を残している……つまり、そういうことですね」

 

「カメラのない場所を意図的に作ることで、後ろ暗いことができる余地を与えている、ってことか?」

 

「ええ。例えば、カメラのない場所での交渉や取引、あるいは脅迫すらも可能になる。もちろん、あくまで()()()()()()()という前提ですが」

 

「つまりは、悪事でも見つからなければOK、ってことか。それもまた()()のうちってわけね」

 

「……信じられんな。本当にここは教育機関か?」

 

 

 それは本当にそう。

 

 

 坂柳と橋本の言葉に思わず呟いた葛城。

 俺は彼に心底同意した。

 

 だが、残念ながらこの学校はそういうところなので認識を改めて欲しい。

 

 良識を思っている葛城にとっては受け入れにくいことかもしれないが、「バレなければ犯罪じゃないんですよ」ぐらいのノリがスタンダードなのがこの場所なのだ。

 

 ある意味真理だが教育機関としてはどうなの? と問いたいものだ。

 

 

「汚い手が使えるのも実力のうち、そういうことなのでしょう。例えば最近、BクラスとCクラスとの間で何か諍いが起こっているのはご存じでしょうか?」

 

「噂には聞いているが……」

 

「あれは恐らくCクラスからの攻撃ですね。単に自分よりも上のBクラスだからちょっかいをかけているというわけではなく――」

 

「……もしや、学校側がどのくらいで介入してくるかを測っている?」

 

「ええ、恐らくはそうでしょう。橋本くんの話によるとどうにも個々人での諍いというよりも組織的に動いているみたいですし」

 

「間違いないと思うぜ。誰かがCクラスの生徒に命じてやらせているって感じだ」

 

 

 おー、やっぱCクラスからBクラスへの攻撃は原作の流れの通りか。翔くん、頑張ってるなー。

 

 

「ううむ、なるほど……」

 

「具体的な手段としては、カメラのない場所で因縁を吹っかけて、トラブルを起こす感じね。普通、こんな短期間にトラブルが続けば、学校側が動いてもおかしくない。でも、どうにも動きが鈍いのよ」

 

「対応が遅いのではなく……最初から、対応するつもりがない?」

 

「口論程度なら、基本的に介入しないみたいですね。それでもこれだけ頻発すれば対応すべきだと思いますけど」

 

「いよいよ怪しくなってきたな……こういったハラスメント的なダーティな手段を学校側は黙認しているということか」

 

「ある程度の限度はあるんでしょうけど、その範囲内で、しかも証拠さえなければスルーされる――その前提を持っておくことが重要だと思うわ。この監視カメラの配置がそれを裏付けてる」

 

 ご主人がそう葛城に告げ、彼は真剣に考え込んだ。

 

 

 よしよし葛城もさすがにここまでわかりやすい証拠があれば考え方も変えそうだな! 頑張った甲斐があったぜ!

 

 この地図を作成した理由の一つは葛城の認識に変化を与えることだ。

 葛城は常識的なため学校側を信用している節がある。

 

 甘いというわけではなく、むしろ人としては常識的で真っ当だ。

 

 真っ当な努力こそ認められるべきであり、人を貶めるような手段には嫌悪を覚える。

 そういった手段は認められるべきではなく学校側も公正に裁くはずだ――っと。

 

 だが、その認識の差こそが、これから先、彼にとって障害になる。

 だからこそ、こうして現実を突きつける必要があったのだ。

 

「学校側はそういった手段を推奨している、と?」

 

「そういった手段を上手く活用できるのも一つの実力という考え方なんでしょう。正直、どうかと思うけど……。そして、そういった手段に上手く対処するのもまた実力」

 

「対処するのもまた一つの実力か」

 

「ええ、そういった手に足を掬われないようにするのもね。こうやって監視カメラの配置がわかっていれば相手が何か仕掛けてきても対処できるでしょ?」

 

「……たしかにな。ようするにカメラのない場所にうっかりと近づいたり、呼び出されてもいかなければいいだけだ。日頃の行動もカメラのあるエリアを意識して動くようにすればトラブルにそれだけで巻き込まれる可能性はぐんと減るか」

 

 ご主人の言葉に葛城は頷いた。

 彼の思考に学校に対する不信と自己防衛の意識が生まれてくれれば幸いだ。

 

 

 だって、この学校……基本的に頼りにならないからな! 味方どころか敵な場合もあるし。自分たちの身は自分たちで守る意識大事!

 

 

「これ、十分な功績になるはずよね?」

 

「ああ、助かった。クラスのみんなにはこの地図をもとに俺から注意を促しておこう。今はBクラスを標的にしているがAクラスに標的が移るかもしれないからな」

 

「じゃあ、これで勉強会への出席はパスでいいわよね? 勉強なら部屋で自習しているし」

 

「……まあ、自習で維持できるなら勉強会に出る必要はたしかに無いが生徒同士の交流を深めるという意味もある。できれば出て欲しいのだが」

 

 

 

 

「いやよ。放課後のホームズとの時間が減るじゃない」

 

「ハイ」

 

 

 

 ご主人の言葉に葛城はなんとも言えない表情で返答した。

 

 

 そう、手間をかけてご主人がこんなものを用意した最大の理由は放課後の勉強会をパスするためだった。

 クラス間の抗争が始まり、中間テストも近いということでAクラスで始まったのが放課後の勉強会だった。

 

 赤点取ったら即退学という厳しいルールがあることも判明し、今後のことを考えれば学力は高く維持できた方がなにかといい、なのでやろうと始まったのが放課後の勉強会だ。

 

 そもそもAクラスという時点で平均的に高い生徒が多く、予習復習など普通にやっている生徒が大半だ。

 特に強い反対もなく始まった勉強だったが、それに困った生徒がいる。

 

 

 そう――ご主人である。

 

 

 別にご主人は勉強が嫌いというわけでもないし、この学校でやっていくにあたって学力はあった方がいいというのも理解している。

 

 そのため勉学に勤しむ重要性は理解できているのだが……俺との時間が削れるのを何よりも嫌がった。

 

 俺との時間が削れるも何も学校にまで着いてきているのだが、ご主人にとって重要なのは自室で俺と過ごす一対一の時間なのだ。

 

 

 学校では一緒にいてもどうしても人の目があるからな……。気にせず、学校でもご主人の望むままに愛でてくれてもいいのだが……。いや、でもむっちゃ愛でたいのにクラスのみんなの目もあって、必死にクールさを維持するご主人も可愛いからなぁ。あの萌えがなくなるのは――もったいない!

 

 

 というわけで手っ取り早く、功績を出すことで葛城に勉強会免除の許可を貰うことにしたのだ。

 まあ、それなりに貸しも作っているしこんなの作らずとも葛城に無理を言えばパスできたかもしれないがそこはそれ、葛城が許しても他の生徒に顰蹙を買うかもしれない。

 

 無闇に角を立てる必要も無いのだ。

 

 

「相変わらず、ホームズ第一主義だな真澄ちゃんは――」

 

「しゃああっ!!」

 

「ひっ!? なんで俺にはそんなに攻撃的なんだよ、ホームズは!」

 

「見た目がチャラいからじゃない?」

 

「いや、そんなわけねーだろ!?」

 

 

 いや、そうだけど? 原作が蝙蝠野郎とかどうでもいいんだよ。だって、まだやってないからな。それはそれとして金髪でチャラチャラした野郎が嫌いなだけです。チャラ男死すべし

 

 閑話休題。

 ひとまず、ご主人の話は終わり次の議題へと移った。

 

 

 今回の報告会ではもう一つ議題があった。

 

 

「では、神室さんの件は済みましたし。私の話に移らせて頂きますね?」

 

「ああ、それにしても本当か? 今回の中間テストには確実に突破できる方法があるというのは」

 

「ええ、入手できましたので……そのご報告を」

 

 

 もう一つの議題は中間テストの突破手段である過去問に関することだ。

 坂柳はそれをあっさりと入手してきた。

 

 どういった手段を使ったのかは不明だが恐らくすぐに動き出していたのだろう、入手した過去問を手に得意げな彼女からはカリスマパワーが見て取れた。

 

 最近はその頭脳を生かしてズバズバと言い当てていたからな、そのせいもあってかカリスマパワーが少し戻ってきているようだ。

 

 ブレイクしていた今までだったら過去問を見せつける姿は「ドヤッ」みたいなフォントが後ろに見えたのに、カリスマパワーが戻ってきている今だとできる女オーラを放っている気がする。

 

 

「これが過去問か……本当にこのとおりに中間テストが?」

 

「ええ、間違いないかと。何人か上級生の皆さんに当たってみて揺さぶってみましたが、どうにも学校側から口止めのようなものをされているようで。ああ、その時の会話を知りたいのならここにその時のボイスレコーダーがありますので確認をどうぞ?」

 

「そつがないな。そして、学校側からの口止め……か。全く関係が無いのならわざわざ口止めをする必要は無い。口止めをする必要があるということは関係があるということだ」

 

「その通りです。特に中間テストに関することは口が重くなっていたので間違いは無いかと」

 

 

 邪悪ロリ、やはりコイツやるな。俺もどうやって過去問を手に入れるか手段を見計らっていたのにそれよりも早く手に入れてやがる。しかも、取引時の会話をボイスレコーダーできっちり録音していたりと葛城の言ったとおり……そつがない。できる子じゃねぇか!

 

 

「あの時の先生の言葉から察するに――必ず存在する必勝法。上級生に課せられた口止め。恐らくこの口止めは上級生側から取引を持ちかけてはいけない、あくまで気づいた下級生側から持ちかけてくる場合のみ渡していいというものでしょうね。ある意味では学校側からの一種のヒントともいえます。この学校ではこういった手段を取ることも実力として認めるということを」

 

「なるほどな」

 

 

 か、輝いている! 今のお前は輝いているぜ坂柳! 「みんなのやるじゃないか坂柳」という思念オーラがカリスマパワーに変換されて輝いている! 今のカリスマ有栖ちゃんならAクラスを背負える風格が――

 

 

「まあ、ともかくよかったじゃないか。これで中間テストは楽勝ってわけだ」

 

「勉強会も順調だ。実力でも退学者なしで十分に突破できるだろうが、助かるのは間違いないな。時期を見て配るとしよう。助かったぞ、坂柳」

 

 

 

「――いいえ、まだです。ただ過去問を使ってAクラスがみんな百点で中間テストを突破する……それだけでは面白くありません」

 

 おっと? 流れが変わったな……。

 

 

 

「むっ、どういうことだ?」

 

 

 

 

「ふふふっ、わかっていませんね葛城くん。この過去問にはまだ使い道があるということです。いいですか? 私たちが全員過去問を使って百点を取ったとしても別のクラスが同じく過去問に気づき、入手してしまっては意味がありません。そこで過去問の存在を秘密にしてAクラスだけが使用する――などという使い道をせず、逆に過去問という必勝法の存在を一年の間に噂で流すのです。そして、偽物の過去問を用意してそれを流せば仮にこの過去問を入手できたとしても信じることができなかったり、入手した偽物の過去問を信じて中間テストで赤点を取って退学する生徒も出るかも――」

 

 

 

 

 

「ホームズ頼む」

 

「にゃー!!」

 

「うわっ、ぶっ?! な、何をするんですか! この……っ、このっ! わっ、ちょっ! 頭の上にのるなー!!」

 

 

 

 

 俺は葛城の指示に従って邪悪なるロリの成敗に向かった。

 

 

 ダメだ、こいつのカリスマは適度にブレイクしておかないとろくなことをしようとしない! 戦術的にはたしかにありかもしれないがやったのバレたら恨みを買うような作戦を嬉々として話すんじゃねー!! そんな全方位に爆弾を流す手段をして下手したら被害者のB、C、Dクラスが連合を組む可能性だって――って、ああそうか! こいつ、そうなったらそうなったで面白いとか考えてやがるな!? こんにゃろ、こんにゃろ、こんにゃろ!

 

 

「猫パンチをしてこないでください! くっ、頭の上にしがみついて離れない……っ! 神室さんなんとかしてください!」

 

「待って、写真に撮ってるから」

 

「撮らないでください!? 葛城くん!」

 

「まあ、いいじゃないか坂柳。それに羨ましいぞ。俺にはほら――ホームズが掴む場所がないからな

 

 

 

 そういってぴしゃりと葛城はその髪の毛が一本もない自らの頭を叩いた。

 

 

 

「葛城……お前、それ卑怯……くくっ」

 

「くふっ、くっ……やるじゃない葛城」

 

「ふっ」

 

「くっ、ふふっ……葛城くん、なんで満足そうな顔を……髪……ぷはっ!」

 

 

 

 葛城――お前、余裕があるとそんな愉快なことも言えるんだな……。たしかにそこに座るのは難しそうだけどもさ。

 

 

 

 とりあえず、偽物の過去問流し作戦についてはお流れになったのだった。

 

 

 

 

 

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