ダンジョンショップ~趣味でダンジョンの中で出店を出していたらいつの間にか迷宮七不思議に数えられてました。配信者達を利用してお店の宣伝をしまくろう~   作:四季 訪

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本日(4月20日)2投目


第五話 盗人と可愛い娘には緊縛を

 小雛は近くに感じる冷気に戸惑う。

 

 ────簾藤(れんどう)はやっぱクソだわ

 

 ────クズ

 

 ────マスターで勝てんの?

 

 ────相手は上級探索者だぞ

 

 ────でもこの人七不思議の人なんでしょ?ギルドも手に負えないっていう

 

 ────そりゃ、こんな場所にいる奴をどうやって捕まえるって言うんだよ

 

 簾藤の蛮行に怒りを覚える視聴者だが、その強さを知っているため、悲観的だ。

 

 ────ひなっち?

 

 ────どしたん?

 

 ────震えてね?

 

 ────上級探索者の威圧って実際のところやばいぞ

 

 ────でも、なんかタイミング的に……

 

 ────あーあ、終わったわあいつ

 

 小雛の怯えに気付く視聴者。

 

 しかし、それが正体不明の寒気によるものだという事に気付いた様子はなかった。

 

 ゆったりとした歩調で、マスターがカウンターから出てくる。

 

 そのまま小雛の前に立った。

 

 「手持ちが足りないのなら、お取り置きもできますが?」

 

 「いや、結構。弱くなっちまうのはちと勘弁でな。ここ最近の情勢も怪しいしよ」

 

 「ローン払いも検討いたしましょう。12回払いまでならこちらも譲歩いたします」

 

 「くどいな。俺は弱くなるつもりはねぇって言ってんだ」

 

 「そうですか。分かりました」

 

 「はっ、物分かりがいいじゃねぇか」

 

 そう言って簾藤は魔剣を肩に担いで背中を向けて歩き出す。

 

「仕方がないですね」

 

 そう言うと共に、マスターの全身から武威が解き放たれた。

 

 「ひぅ」

 

 その大きな覇気にこの店主もやはり只者ではないと察する小雛。

 

 どうやらただの生産職系統の【職業(クラス)】ではないようだ。

 

 「はん、ただの店主じゃねぇみたいだな。この剣の試し斬りに丁度いい!!」

 

 魔剣を両手に握り、血気盛んに飛び掛かる簾藤。

 

 マスターは異空間から質素な刀を取り出して、簾藤と剣を結ぶ。

 

 金属同士の激しい衝突に、小雛の髪が揺れる。

 

 カタカタ。

 

 立てかけてある装備品類もその衝撃に揺れた。

 

 「その刀もいいな!寄越せ!」

 

 大柄な体躯と大振りの大剣、その両方の質量にものをいわせた力任せな攻撃に、マスターが一歩後ずさる。

 

 「所詮は店の店員だな!」

 

 自分が有利だと感じ、簾藤がより気勢を上げる。

 

 不利に見えるマスターに加勢をしようと二人の動向を伺う小雛。

 

 しかし、今なお感じるマスターの強い寒気に、このまま負けるイメージが出来ない小雛は動くことができずに見守ることしかできなかった。

 

 ────やっぱ簾藤つえぇ

 

 ────上級探索者はチートばっかだしな

 

 ────七不思議でも流石に生産職じゃむりか

 

 ────マスターかわいそ

 

 「はぁ」

 

 マスターが溜息を零した。

 

 カタカタカタ。

 

 「諦めて大人しくこの魔剣を俺に寄越せよ。なにもここにある武器を片っ端から寄越せって言ってる訳じゃねんだからよ」

 

 勝ちを確信したのか、簾藤が剣を引いて戦闘が止まる。

 

 「下手に出てれば調子に乗りやがってよ」

 

 「あ?」

 

 乱暴な口調に変貌したマスターに眉を顰める簾藤。

 

 雰囲気が変わった事に警戒心を抱く。

 

 「武器一つ造り上げるのにどれだけ時間が掛かると思ってんだ」

 

 カタカタカタカタ。

 

 「知るかよ。お前だって()()()()()()()()()()()の類だろうが。なら協力すると思って俺に寄越せっつってんだ」

 

 カタカタカタカタカタカタカタカタ。

 

 その言葉に遂にマスターの堪忍袋の緒が切れた。

 

 「盗人風情が……【天網恢恢疎(てんもうかいかいそ)にして漏らさず】」

 

 「トリガーワード!?」

 

 スキルの発動に驚く小雛。

 

 しかも聞いたこともないスキル名。

 

 その効果はすぐに現れる。

 

 カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ────────

 

 「なんだ!?」

 

 びっしりと壁に備え付けられている装備のすべてが震え始めた。

 

 なにも、それらを揺らすものは何一つないというのに。

 

 カタカタカタカタカタカタカタカタカタ……ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ────────

 

 揺れは尚も大きくなり、留め具が緩み、床に抜け落ちる。

 

 さらに留め具が一斉に外れ、けたたましく床を叩いた。

 

 スッと壁から落ちる武具の数々が、床に叩きつけられる直前に、ピタリと制止。

 

 そのまま一人でに浮き上がるとマスターの側に集まった。

 

 「なんだ、そりゃ……」

 

 目を向く簾藤。

 

 小雛もそのあまりの質と数の暴力に身体が震えた。

 

 「でたらめだろ……」

 

 流麗な見た目の宝剣が、火を纏う大剣が、氷気漂う刺突剣(レイピア)が、雷轟く霊槍が、聖気輝く神杖が、弦の無い魔弓が、存在の覚束ない手甲が、穴だらけの盾が、悲鳴を撒き散らす指輪が、空間を歪める額冠が、視線を感じる胸当てが、自壊と再生を繰り返す人形が、剣が、槍が、槌が、杖が、弓が鎧が、盾が、

 

 店内にあった一級品と思われた武具のそれらが、まるで意思があるかのように一人でに浮遊し、(マスター)の元へと集う。

 

 その圧巻の光景に小雛は自分の未熟な考えを否定した。

 

 自分の足らぬ鑑定眼を呪った。

 

 ここにあるものは全て、一級品などでは収まらない。

 

 超を付けようがそれすら陳腐に陥る。

 

 ここにあるもの全ての物が、神域に足を踏み入れた超常の神具であるのだから。

 

 「マジかよ……お前、何者だ!」

 

 「マスターだっつてんだろ」

 

 指揮棒のように振り下ろされる質素な刀。

 

 そしてそれに従う神具が簾藤を襲った。

 

 「な、あ、ぁああああああああああああああ!!」

 

 突き立つ武具と上がる悲鳴。

 

 熱が、冷気が、雷気が、聖気が、瘴気が、呪が、歪みが、不連続存在が、簾藤の身体を蝕み、切り裂くような絶叫を挙げさせ、その声すらも掠め取っていき、終には萎んでいった。

 

 「あ、あ、ぁ……」

 

 服の端を床に縫い留められた簾藤、魂の抜けた顔で呆然自失となっていた。

 

 「まぁ、こんなもんか」

 

 そう言って刀を振るい簾藤を縫い留める武具を自分の下へと戻し、ゆっくりと掛けてあった壁の下に並べていく。

 

 「また釘打ちしないと……」

 

 「す、すごい……」

 

 上級探索者すら圧倒したマスターに小雛が小さく呟いた。

 

 ────やべぇぇぇぇえぇえええええ!!!

 

 ────かっけえぇぇぇえぇええええ!!!

 

 ────チートかよ!!

 

 ────絶対【ユニークスキル】じゃん

 

 ────アンリミテッド※※※※※※※※だぁぁぁああああ!!!

 

 ────加減したわね

 

 圧倒的な反撃に、コメント欄はお祭り騒ぎとなっていた。

 

 「……くっそっ」

 

 「回復力すごいね」

 

 正気を取り戻した簾藤が、起き上がり、悔しそうにマスターを睨んで、そして扉の方へと逃げた。

 

 「あ!」

 

 簾藤の手に魔剣がまだ握られていることに気付いた小雛が声を上げた。

 

 盗人根性逞しい簾藤は隙を見てこのまま逃げ去るつもりだった。

 

 しかし、

 

 「なん、だ。なんなんだっ。なんで扉が遠ざかるんだぁぁぁあああ!!」

 

 その肉体能力から生み出される走力を持ってしても扉には辿り着けない。

 

 なぜなら扉は近づけど近づけども、それ以上の速度で簾藤から遠ざかっていくからだ。

 

 こんな状況に追い込まれてもまだ魔剣を盗もうとする簾藤にマスターは額に青筋を立て、歯を剝き出しにして叫ぶ。

 

 「(くび)ぃ、置いてけえぇぇぇぇぇエエエエエエエ!!!」

 

 異空間から取り出した縄を簾藤に投げるとこの縄もまた自律して獲物を追いかける。

 

 「ヒッ!!今度はなんだぁ!!」

 

 逃がすまいと縄が簾藤の首に巻き付き引き倒すと、拘束するように全身に絡まり、そして────

 

 「ふーーーむ。なんでこうなるかなぁ」

 

 天井から釣り下がる簾藤を見て悩むマスター。

 

 そこには縛り上げられた大男がいた。

 

 亀甲縛りで。

 

 「なんだよこりゃぁ!ヒッ変なところ締め付けるな!!」

 

 「誰得かなぁ」

 

 想定通りに動かないからか、それとも絵面が酷いからか、マスターの表情は不満げだ。

 

 すると、縄の端っこがマスターに向き直り、意図をくみ取ったように頷いた。

 

 「ん?どしたの?」

 

 余った部分が切れ、二つになった縄は次の獲物を襲った。

 

 「あ」

 

 「え!?ってなんで私ぃぃぃいいいいい!」

 

 今度は小雛を捕まえる縄。

 

 「きゃぁぁあああああ!!こんな格好いやぁぁああ!!」

 

 見事なまでのM字開脚縛りを披露した。

 

 「どこでそんな知識を得たんよ」

 

 ────キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!

 

 ────キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!

 

 ────キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!

 

 ────エッッッッッ!!

 

 ────胸の強調が素晴らしい!

 

 ────小雛ちゃん……うっ、ふぅ

 

 ────けしからん!私がそれを没収だ!!

 

 ────パンツ!パンツ!おパンツ!パンツ!

 

 ────ほんと理想的なボデー

 

 ────日本人離れした乳と尻

 

 ────簾藤映せ

 

 ────これぞ芸術

 

 ────スクショしました

 

 ────お前ら録画残しとけよ!これ絶対アーカイブ残らないから!

 

 ────可哀そうは抜ける

 

 ────マスターを殺せ!

 

 ────はぁ、また犠牲者が

 

 「そんな事言ってないで見ないで!!!」

 

 大盛り上がりのコメント欄に怒り心頭な彼女の顔は真っ赤っかだった。

 

 「ってちょっと!どこ縛って!って待って!外れた!下着外れたぁ!」

 

 縄が締め付けた影響でブラの外れた小雛の大振りな胸がプルンと揺れる。

 

 ただでさえ縄によって強調するようにして締め付けられているのだからその存在感は凄まじい。

 

 ────おっぱいだぁぁぁああああ!

 

 ────ナイス縄!!

 

 ────十個くれ!!

 

 ────ハァハァ

 

 その煽情的な光景にコメント欄がより盛り上がり小雛のスクリーングラスは真っ白に染まってもうコメントが追える状況ではなくなっていた。

 

 ハプニングで焦る小雛は気付かなかったが、この時の、最大視聴者数はダンジョン配信史上最大の15万人を記録していた。

 

 「ほんとなんでこうなるかなぁ」

 

 縛りあげられた二人を尻目にマスターは片づけに入った。

 

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