ダンジョンショップ~趣味でダンジョンの中で出店を出していたらいつの間にか迷宮七不思議に数えられてました。配信者達を利用してお店の宣伝をしまくろう~   作:四季 訪

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第七話 エロはバズる

 簾藤を縛ったまま物置に押し入れ、騒がしくなくなった店内に女のしくしくと泣く声が代わりに木霊していた。

 

 「うっ、うっ、もうお嫁にいけない……」

 

 媚薬の抜けた、目を覚ました小雛が全世界に晒された自分の痴態に涙を流して泣いているからだ。

 

 湊が今もっともホットな動画、記録的な速度で再生数を伸ばしている小雛のセンシティブな切り抜き動画を見ながら、憐れんでいた。

 

 「いや、ほんとにごめんね?悪気も下心もなかったんだけど、縄が暴走しちゃって」

 

 「ならその動画流すのやめてくださいよ!」

 

 「あ、ごめん」

 

 どうして縄がこんな風な挙動を見せたのか動画から解析しようと流していたが、被害者への配慮が足りなかったようだ。

 

 「もうこんなことしたらダメだよ?」

 

 湊がその場に屈んで縄を叱る。

 

 本当に理解しているのかは分からないが、ふわりと広がった末端をぺこぺこと頷くように上下に振る縄を見て、湊が満足気にその末端を撫でた。

 

 「よーしよし!」

 

 飼い犬を可愛がるような湊に小雛の表情がブスッとする。

 

 「……反省してるんですか?」

 

 「アッ、ハイ」

 

 底冷えするような声に佇まいを正す湊。

 

 もう初見のロールプレイは見る影もなかった。

 

 「それに私のダンジョンゴーproが、こんな姿に……高かったのに」

 

 勢い余って床に叩きつけたカメラが無残な姿をさらしていた。

 

 「いや、ほんとになにもかもごめん」

 

 申し訳ない気持ちに苛まれる湊が彼女の顔を見てまた謝る。

 

 「弁償するから許してくれる?10万円くらいだったよね?」

 

 「うっ、うっ、配信始めた頃からの想いでのカメラなのに、ぃ」

 

 チラッ。

 

 「も、もうちょっと出すよ?20万円くらい?」

 

 「……うぅ、あんなに辱められて、思い出のカメラまで……」

 

 チラッ。

 

 「……うちの商品、一つ上げようか?」

 

 考え込んでから、致し方なしといった具合の湊が代替となる賠償を提案すると小雛は哀愁漂う表情から一転、きらきらと物欲に塗れた$目をした顔に変貌した。

 

 「本当ですか!なんでも良いんですか!?」

 

 「え、うーん。なんでもは流石に無理だけど、今の装備より良いのは保証するかな?」

 

 「やったーー!!」

 

 小雛が諸手を挙げて喜ぶ。

 

 「武器がいい?防具がいい?それとも装飾品?」

 

 「武器も良いけど防具も大切だし、装飾品も気になる……」

 

 「縄は?」

 

 「要らないです」

 

 食い気味の即答だった。

 

 可哀そうに、と落ち込む縄を湊が慰める。

 

 「そうだなぁ。今の君におすすめするとしたらやっぱり防具かなぁ」

 

 命を守る防具は探索者にとって最も大切な装具だ。

 

 これを蔑ろにしてダンジョンに挑戦する奴は馬鹿しかいない。

 

 異空間から湊が何かを取り出す素振りを見せる。

 

 「どんな防具ですか?」

 

 「ビキニアーマーなんだけど────」

 

 「────いらないです!!」

 

 またも食い気味に断られ、ショックを受ける湊。

 

 今度は縄が湊を慰めていた。

 

 「そんなのしかないんですか!?」

 

 キレる小雛にどうしてそんなに怒るのかと怖気づく湊と縄。

 

 「良い防具なんだよ?それに配信映えもするし」

 

 「ぐっ、確かに……」

 

 数字に憑りつかれた彼女の心が揺れるが、エロ売りだけはしないと心に誓っていた。

 

 「あー、でも結局サイズが合わないからだめかぁ」

 

 小雛の大きな胸を見て残念そうに呟く湊に、何が言いたいかを察して小雛の顔が赤くなる。

 

 胸を腕で覆って非難した。

 

 「セクハラですよ!さっきから!!」

 

 「あーごめん。そういうつもりじゃなかったんだけどね」

 

 あれこれ異空間から物を取り出してあれじゃないこれじゃないと投げ捨てる。

 

 床に散らばるアイテムは小雛からすればどれも垂涎ものだ。

 

 正直全部欲しい。

 

 「じゃあ無難に武器かなぁ。忍者だっけ?凄いね、ユニーククラスなんて」

 

 そう言って湊が小刀を取り出した。

 

 「これなんてどう?忍刀──艶色(えんしょく)

 

 「すごい、綺麗……」

 

 湊の取り出した桜色に反射する波紋を浮かべた小刀。

 

 その艶美な姿に小雛は見惚れた。

 

 「こ、これにします!この刀がいいです!」

 

 「よしよし。じゃぁこれを君にあげるよ」

 

 そう言って受け取った小刀に目を輝かせる小雛。

 

 持った瞬間に名刀と分かる。

 

 試しに数回振って、今までにないほどにしっくりくる感覚と、その剣閃の鋭さにとんでもない代物だと改めて感嘆した。

 

 「今の君の技量であれば、その小刀で下層の敵くらいなら一撃で倒せるんじゃないかな?」

 

 「一撃!?」

 

 「うん、威力だけならそのくらいは申し分ないよ。それに俊敏性を高める効果もあるから君との相性も抜群だろうね。流石はくのいち専用装備。特殊効果だってあるんだから」

 

 「うわぁ、こんなにすごい武器、攻撃力だけじゃなくて、足も速くなって、それに特殊効果まであるくのいち装備……うん?くのいち?」

 

 どうして忍者でなく、わざわざくのいちなのだろうか、と小雛に嫌な予感が過る。

 

 短いながらもここに来てからの経験則だ。

 

 「一応、聞きます。特殊効果ってなんですか?」

 

 恐る恐る聞く。

 

 湊が何ともない顔でそれに応える。

 

 その様子に少し安堵が浮かぶが、

 

 「装備()、特殊スキルを獲得できるんだ。その名も【房中術】!」

 

 無邪気に満面の笑みを向けられた。

 

 「そんなのばっか!!?」

 

 要らないです!!、と小刀を湊に突き返すが、どういう訳か手から離れてくれず、慌てて腕を振るう小雛。

 

 その様子に湊が何かを思い出したようにぐーにした手を手のひらにポンッ。

 

 「そう言えばそれ、その子に気に入られると、装備解除不可なんだった!」

 

 「はぁ!!?」

 

 小雛が叫ぶ。

 

 「正確には意志を持って捨てることができないってところかな?普通に手から離すことはできるけど、捨てることはできないの。一定時間放置すると勝手に手の中に戻ってきて暴走する可能性があるから気を付けて?」

 

 「呪いの装備じゃないですか!!!」

 

 小雛は欲張って身の丈に合わない武器を望んだことを後悔した。

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