ゆかりんとCMDRのEliteでDangerousな宇宙旅 作:ペンギン星雲
挿絵多数なので、いちいち開くのが面倒と感じる方は『小説閲覧設定』から挿絵の表示設定が変えられますのでご活用ください。
「ふわぁ……」
おはようございましゅ……。結月ゆかりです……。宇宙船のベッドは寝心地はいいですが、少し狭いです。マスターが言うには、寝室を単体で用意できるだけ大きいそうですよ。*1
別のベッドで寝ていたマスターはもう起きているようです。時計を確認すれば10月5日の7時頃。身だしなみを整えて朝ごはんを食べに行きましょう。
「おはようございます。マスター」
「おはよう。コーヒー飲むか?」
「あ、お願いします」
マスターは携帯端末を操作しながら変な形のカップでコーヒーを飲んでいました。カップは無重力状態でも飲めるカップらしいです。*2今はステーション──スターポートの中らしいので疑似重力がありますが。
「俺はサンドイッチにしようかと思うんだが、ゆかりんはどうする?」
「じゃあ私もサンドイッチにします」
「あいよー」
私は席について、マスターがごはんの準備をしているのを眺めます。初めてのフードプリンターのごはんです。一般の人々はフードプリンターでのごはんが主流なのですが、コマンダーさんも同じみたいですね。
「はい、サンドイッチとコーヒー。砂糖はいるか?」
「いえ、とりあえずそのまま飲んでみます」
ふふん。お姉さんな私にかかればコーヒーなんてへっちゃらですよ。
変な形をしたカップを手に取ります。無重力じゃないので、カップの形以外は普通ですね。少し茶色っぽい黒色の液体から湯気が立ちます。ふーふー。
「んく」
「苦くないか?」
「おいしいです!」
苦いですが、いい匂いがしておいしいです。やっぱり私はお姉さんだったみたいです。ふふん。残念そうにしてもだめですよマスター。
「ゆかりんはコーヒー飲める方だったか……」
「お姉さんですからね!」
「そうか……。サンドイッチも食べちまおう」
「そうですね! いただきます」
サンドイッチはたまごサンドみたいです。ふわふわのパンになめらかなたまごがおいしいです!
「もむもむ」
「うまそうに食うな」
「もむ……。おいひいでふから」
実際の食材を使ったものよりもフードプリンターのものは味や食感などが数段落ちるらしいのですが分かりませんね。*3ピザで比べたらわかるのでしょうか?
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさま」
サンドイッチを食べ終わってから、コーヒーを飲んで一息つきます。
「そんじゃあ、今日の予定を話すか」
「はい! 初めてのお仕事ですね!」
「はは、そうだな」
いろんな意味で初めてです。お仕事も、宇宙も。ほんの少しだけ不安がありますが、楽しみです。
「もう依頼は取ってあるんだが、あまり時間がかからなさそうなんだ」
「あ、もう依頼受けてあるんですね。早く終わったら何かするんですか?」
「そうだな。この依頼が終わったらここに帰るんだが、その際にここが届け先の依頼を受けようと思ってな」
「二回荷物を運ぶってことですね!」
「そういうことだ」
荷物を届けて、帰ってくる時にも荷物を運ぶってことですね!
「それで、私のすることは何ですか?」
「俺の癒し」
「あ、はい」
そういえばそういう話でした。でも、見ているだけなのは忍びないですね……。
「何かほかにやることは……」
「特にないな。輸送依頼はただ荷物積んで移動するだけだから操縦しかすることがない」
「あぁ、そうなんですね……」
たとえ私がオペレーターだとしてもすることはなかったってことですね……。
「そう気を落とすな。会話するだけでも十分だ」
「そうですか?」
「そうですよ」
うーん。そうですか……。
……悩んでいても仕方がない話ですね! 私にできる事は癒しを提供することだけ! 割り切りましょう。
「そんで、ゆかりんにはこれを授けよう」
「これは?」
「ゆかりん用のパイロットスーツだ」
そう言って渡してくれたのは紫色のアクセントが入ったスーツとヘルメット。それと、うさ耳のパーカーとマスターが履いているのと似ている丈夫そうなズボンとブーツでした。私カラーの紫のアクセントが入っていてかわいいです。パーカー以外はちょっといかついですが。
「おぉー。かわいいですね!」
「そうだろう」
うんうんとマスターが頷きます。
「宇宙に出るときはこれを着ておくんだぞ」
「仕事着ってことですね!」
「そういうことだ」
ひとまずヘルメットを被ってみます。バイザーはマスターと同じように真っ黒ですね。
「んしょ。おおー。意外と視界は良いんですね」
「着け心地はどうだ?」
「ばっちりです!」
「ならよし。着替えてきなー」
「はーい!」
寝室に戻って、着替えるとしましょう。
パイロットスーツは全身を覆うぴっちりしたものでした。体のラインが出る感じの……。そのためのパーカーやズボンなんですね。この感じだと本当は靴もいらないのかもしれません。
しっかり服を着て、ヘルメットを被って、フードを被って、いざ!
「マスター! 着替えました!」
「おおー、いいな。似合ってる。かわいい」
「にへへぇ」
かわいいって言ってもらえました。ちょっぴりいかついですが、ちゃんとかわいいみたいでよかったです。えへへ。
「着替えたし、準備はいいか?」
「いいです!」
「よし、じゃあコックピットに行くか」
「はい!」
とうとう宇宙船のコックピットに行くみたいです。昨日船を案内してもらったときに、コックピットは楽しみにとっておいたんです。今日のために……!
「わくわくしますね!」
「ははは! 楽しみにしてくれてうれしいよ」
むっ、マスターはわくわくしないみたいです。私はこんなにわくわくしているのに。でもマスターはこれが当たり前なんでしょう。それならわくわくしないのも普通なのかもしれません。
そうやってしばらく歩くと、コックピットについたみたいです。扉が開いた先には──前面がガラス張りになったとても見晴らしの良さそうなコックピットが見えました。想像していたよりも広々としていて、シートが正面と右側の二つあります。なんだか宇宙船って感じです。どきどきわくわくです!
「ゆかりんはこっちに座ってな」
「……はっ!、はいっ」
わくわくしていたのが顔に出ていたのか生暖かい目で見てきます。しょうがないじゃないですかっ。宇宙船なんて初めて乗るんですからっ。ましてやコックピットなんてっ。
どきどきしながらシートに腰掛けます。シートの左右には操縦桿とスロットルがあります。ここでも操縦できるのでしょう。前にはテーブル?があります。コックピットにテーブルなんて必要なんでしょうか……? なんだか傾いてますし。
「パワープラント点火ー、システム起動ー*4」
マスターはそう言いながら何か操作すると、お腹の底に響くような振動を感じました。パワープラントというと……動力源が起動したのでしょうか?
「わっ、わっ」
少しすると傾いたテーブルだと思っていたものの上にオレンジ色のホログラムが表れました。なんだかすごいですっ。真ん中には、宇宙船のホログラムが表示されています。昨日外から見た運巡丸の形です。他にもいろいろ表示されていますが、よくわかりません。
「……ふはっ」
「!?」
噴き出す声を聞いて勢いよくマスターの方を見ます。なんだか肩を震わせて笑っています。しょうがないじゃないですかっ! 何回も言いますが初めての宇宙船なんですよっ!
「いやっ、くっ、悪いっ、反応がかわいくてな……ふっ」
「かわいい……。はっ、ごまかされませんよっ。しょうがないじゃないですかっ」
「くくっ、ふぅ。悪い悪い。楽しんでもらえて何よりだ」
「もうっ」
本当にもうっ。
気を取り直してマスターの準備ができるまで周囲の観察を続けます。コックピットの中ばかり目が行ってましたが、外も見てみます。船の前方はとても広い空間があります。ここにもう一隻置けそうですが、なんで空いてるんでしょうか? 奥の壁には『
観察しているとマスターがこちらを見ているのに気が付きました。
「準備はできたんですか?」
「ああ、もうとっくにできてるぜ」
「あれ、そうなんですか」
「ゆかりんがホログラムに驚いてる辺りからな」
「それ最初からじゃないですか!」
ずっと私待ちだったってことですか! なんだか恥ずかしくなってきました。
「言ってくれてもいいじゃないですか!」
「楽しそうだったからな。邪魔するのも悪いと思って」
マスターの表情は見えませんが絶対生暖かい目で見てますよ! うぅ、恥ずかしい……。
「時間に余裕あるんだ、好きなだけ見てからでも大丈夫だ」
「もう大丈夫です! 早く出発しましょう!」
「そうか? あと12時間くらいは余裕があるぞ?」
「大丈夫です!!」
12時間なんて、そんな余裕があるんですか。
マスターはちょっとシュンとした雰囲気で正面に表示されているパネルを操作し始めました。私の方には表示されていないので、何をしているのかはよくわかりません。
「それじゃ、離陸するぞー。準備はいいか?」
「はいっ」
「よし」
マスターがそう言ってパネルを少し操作すると、前方の広い空間の天井がガコンと下がって、天井が開きました。そのまま骨組みだけ降りてきたと思ったら、船の下もガコンと持ち上がって前にスライドしていきます。前の空間はこのためにあったんですね。
「おぉ……! す、すごい……!」
そのままゆっくりと船が持ち上がって行って、格納庫の外が見えてきました。とても広い円形の空間です。ぐるっと全体が地面になっていて、
「マスター! すごいです!」
「そうだな、いつ見てもすごい」
マスターは
それよりももう外に出ているのに操縦桿を握っていないのはまずいのではないのでしょうか?
「あの、あの! 操縦は!」
「ふっふっふっ……。この船は自動離着陸なのだよ」
「え?」
かと思っていたら、直進ルートから少しずれて止まってしまいました。
「あの、マスター?」
「前に出航している船があるからな。順番待ちだ」
出入口を見ると、ちょうど青くて平べったい船が出ていくところでした。自動で順番待ちもしてくれるなんて、とても賢いコンピュータさんなんですね。
「すごいですねっ!」
「すげぇよなぁ。でもたまに詰まってることもあるからそん時は手動だな」
「えぇー」
やっぱり万能ではないみたいです。私でも操縦できるかなって思ったんですが。少し残念です。
待っていると前の船が出航したみたいで、船が動き始めました。出口が近づいてきます。やっぱり幅が足りないような気がします。船の天井やお腹をぶつけそうです。
そんな私の心配は杞憂に終わりました。見た目よりも幅がしっかりとあるようで、どこもぶつけることなくすんなりと外に出ることができそうです。
外に出ると、視界いっぱいの星と三日月のようになっている青い星が見えます。
「わぁ……!」
「ちょうどいい位置だな」
「マスター! 星が! いっぱいです!」
「そうだなぁ」
マスターは何かを操作しながら一言だけ返事しました。マスターはこの景色が日常風景なんですよね。ちょっと寂しく思いながら外を観察します。
三日月のようになっている青い星は、暗くなっている場所もところどころに光が見えます。人が住んでるのでしょうか? もしかして地球なのでしょうか?
視線を動かして太陽の方を見ます。まぶしくはありますが、直接見れないほどではありません。ただのガラスではないみたいです。太陽はなんと二つ! 二つ見えます! あの青い星は地球ではなかったみたいです。*5
「よし、撮れたな」
「なにがです?」
「船外カメラ*6で写真を撮ってたんだ。いい感じに撮れたぞ」
反応が一言だけだったのは、船外カメラというものを操作していたからのようです。
私の前のパネルに表示*7してくれた写真には、青い星と太陽、それに運巡丸が映っています。ふわぁ。きれいですねぇー。
「太陽が二つあるなんてすごいですね!」
「二つ……? ここからは三つ見えるぞ」
ほら、と言いながらマスターは青い星の横に見える太陽を指さしました。いやいや、あれはどう見ても……二つあります! すごいですとても近くに二つの太陽があります! くっついたりしないのでしょうか?
「一つの星系にこんな沢山の太陽があるんですね」
「実はもう一つあるんだよなこの星系」
なんと四つも!? すごい星系ですね! あつあつになりそうです。
「でももう一つはどこにあるんですか?」
「もう一個の恒星はこっから結構遠いんだよな。えっと今は……2300光秒の距離にあるな。光の速度でだいたい40分の距離だ」
「すっごく遠いってことですか……?」
「そうだ。遠くて点にしか見えない」
なんだか壮大で……なんかすごいです!
「そしたら、三つの太陽はすごく近いってことですか?」
「そうだな。一個の方は100光秒、連星の方は180光秒だな」*8
「それってとっても熱いのでは?」
「そうだな。だが船には冷却装置がある。問題はない」
どうやら船の冷却装置とやらはとても強力のようです。船が燃えちゃうなんてことはないみたいで一安心ですね。
そうこうしているうちに船はいつの間にか止まっていました。ぷかぷかしますね。ここからどうするのでしょうか?
「今いる星系はLTT 9605っていう星系なんだが、ここから17光年離れた
「ジャンプですか?」
「ぴょんって跳ねるわけじゃないぞ?」
「分かってますよっ」
はははとマスターは笑います。もうっ、このマスターは!
「それで、もう景色はいいか」
「はい。……あ! じゃあジャンプ前にさっき出てきたステーションが見たいです!」
「ゆかりんはスターポート見るのも初めてか。そりゃそうだよな。見てから行くか」
マスターは右手で操縦桿を握って、ここからは見えませんが左手でスロットルを前に倒したのでしょう。船が揺れ、シートに押し付けられます。続けて操縦桿を手前に引きました。船を上方向に旋回を始め、ぐるっと回りました。そうするとステーションが見え始めます。
大きなリングの前に樽みたいなものがついて回転してます。さきほどまでは体感できませんでしたが、疑似重力を発生させるために回転してるんですよね。
「あの樽みたいなところから出てきたんですよね? 後ろのリングは何ですか?」
「樽て……。後ろのリングじゃ農業してるんだ。ここは農業ステーションだからな」
「農業……。お野菜食べてみたいです!」
「おう、帰ってきたら食べような」
「はい!」
んふふ。またごはんの約束を取り付けました。今度こそはお財布を破壊しますよ!
「そうと決まれば早く行きましょう!」
「りょーかい。急加減速があるから気を付けてなー」
「はい!」
私が返事をすると船は動き出し、同時に
「フレームシフトドライブって何ですか?」
「超光速航行装置だな。何十光年も一瞬でジャンプできるすげぇやつだ」
チャージを開始してから表示されている、
と、ゲージを見つめていたら旋回が終わったみたいで、ガラスに『Ceti Sector RJ-Q b5-0』という表示が出ています。その下には17.2Lyとも出ています。
「あそこが目的地ですか?」
「そうだな。肉眼だと光が見えないが、あの方向に星があるはずだ」
たしかにターゲットの中心には何の光も見えません。何もないところに飛んでしまわないか少しだけ不安になりますね。ここはマスターを……マスターの船を信じましょう!
質問して答えてもらってる間にチャージが完了しそうになっていました。わくわくします! どきどきします!
『4……3……2……1……Engage!』
カウントダウンとともに視界が──空間が歪んでいきます。そしてエンゲージというアナウンスとともに駆動音が最高潮に達して船に衝撃が走ります。
次の瞬間には船がガタガタ揺れて、ガラスの向こう側では光がすごい勢いで後ろに流れていきます。ずっと向こう側には黄色い光があります。あの光に向かって進んでいるのでしょう。
「おぉー……!」
この壮大な景色にしばらく見とれているとマスターが話しかけてきます。
「これがハイパースペースだ」
「ハイパースペース……。なんだかすごそうですね!」
「ああ。実際すごいな。光の速度でも何年もかかるのを数分で飛んでしまうんだからな」
超光速ってすごいですね……。スケールが大きくて全然想像できません。
外の景色は相変わらず壮大です。空間が歪んで、無数の光が後ろへ流れていきます。
「もうそろそろジャンプアウトだな」
「え? もう着くんですか?」
「そうだぞー。FSDにかかれば一瞬よ」
フレームシフトドライブはFSDと略すみたいですね。FSDってとってもすごいみたいです。そう考えてるうちにマスターが前を向きました。もうすぐみたいです。
少しすると、激しい揺れと衝撃とともに目の前の光が──
「わひゃぁ!」
「うおっ!」
ドンという衝撃音と一緒に目の前に太陽が現れました! このまま突っ込んでしまうのではと思いましたが、減速して止まりました……。ちょっぴり……いえ、とても怖かったです……。
とても近くて、プロミネンスもはっきりと見えます。とても熱そうです。
「大丈夫か?」
「は、はい……。大丈夫です……」
「最初はビビるよな、これ」
「マスターは……?」
「俺も最初は悲鳴を上げたさ」
びっくりするのは私だけじゃないらしいです。こんな船を自在に操縦できるマスターでも初心者の時代もあったんですね。
「太陽に突っ込んじゃったりしないんですか……?」
「ジャンプアウトしたときに突っ込んだりはしないな。近づきすぎて強制的にジャンプアウトしたりはするが」
「近づきすぎてジャンプアウト……?」
FSDさんにはジャンプ以外に機能があるみたいです。
「落ち着いたか?」
「はい。もう大丈夫です!」
「ならよし。しゅっぱーつ」
「しゅぱーつ!」
マスターの掛け声に返事をしてもう元気なことを伝えます。びっくりしただけ……、怖かったけどびっくりしただけですから。
船がマスターの操縦で動き出します。太陽の横を通っていき……あれ?
「マスター、なんだか早くないですか?」
「なにがだ?」
「さっき太陽が三つ……四つある星系では太陽に向かっても全然近づきませんでしたよね?」
明らかに船が進む速度が速いのです。しかも、速度計らしきものも、単位がcになってます。
「今はスーパークルーズって状態だ。星系内の移動に使うのがこれだな」
「計器のcという単位は?」
「光速の意味だな。今は1cで光速だな。今は光速超えてないが、最大2000倍くらい出せるぞ」
「FSDさんっていろんなことができるんですね!」
「"さん"て」
FSDさんって想像していたよりもなんでもできるのかもしれません。
そんな話をしているうちに旋回が終わって、
「今回の荷物はデータだから、着いたらすぐ以来探して帰るからなー」
「はーい。分かりました!」
お荷物は積んでなかったんですね。データなら通信とかで済ませればいいのではと思うのですが……。
「どうしてデータを運ぶんですか?」
「データも光の速度を超えないといけないんだ。それならデータを船にのっけて運んだ方が早い」
「へぇー。コマンダーさんの運送って荷物だけじゃないんですね」
「そうだぞー」
そんな話をしていると、真っ白な星が近づいてきました。あれが目的地ですかね? でもターゲットは少しずれています。衛星軌道上にあるんでしょうか?
「おぉー……。大きいですねー」
「そうだなぁ。宇宙の神秘を感じるよ。っともうすぐジャンプアウトだ」
もうすぐみたいです。どんどん星に近づいていきます。このまま落ちてしまうんじゃないかって心配になりますね……。でも、感覚よりもずっとずっと星から距離があるんですよね。宇宙の神秘です。
どんどん近づいて行って……衝撃とともにジャンプしました。前には箱が何個かつながったような建造物が見えます。
「おー? さっき見たスターポートと比べて小さいですね?」
「ここはアウトポストだからな。人口重力もないし、大型艦も着陸させられない小さい施設だ」
「へぇー。こんな施設もあるんですね」
いろんな種類の宇宙の施設があるみたいです。
「ドッキングリクエスト送信……っと、弾かれちまった」
「どうしたんですか?」
「着陸させる場所がないらしい。誰かが離陸するまで待機だな」
「そんなこともあるんですね」
「アウトポストは小さいからなぁ」
アウトポストは少し不便のようです。たしかに着陸できそうな場所は少ないですね。マスターが言うには右側にくっついている大き目の箱に泊めるみたいです。
しばらくするとマスターが言っていた場所から船が出てきました。というかあれは……。
「運巡丸と同じ船ですか?」
「いんや、あれは
「へぇー。この船は強いってことですねっ」
出てきた船、もといタイプシックスは上昇してアウトポストを離れていきました。
「よし、今だっ! ドッキングリクエスト送信!」
「うおー!」
自動操縦でアウトポストに着陸します。ほぼ垂直に近づいてから、機首を上げて着陸してました。なかなか豪快な着陸ですね。
「おぉー。豪快ですね」
「そうだよな。なぜかアウトポストには豪快に着陸するんよな」
「なんでですかね?」
「なんでやろなぁ」
不思議です。
そういえば今回のお給料はどのくらい出たのでしょうか?*9
「今回のお給料はどのくらい出たんですか?」
「ちょっと待ってくれ……。よし、えーっと? 87,891
「ぇ、えー! すごい大金じゃないですか! 8万
すごいです! たった一回荷物を運んだだけでこんな大金が手に入るものなんですね……! コマンダーさんってすごいです!
「うーん。たぶん勘違いしてるな」
「何がですか?」
「
……???
「ゆかりんフリーズしちゃった……」
「……はっ! 8万
「ゆかりん壊れちゃった……。とりあえず、帰りの依頼受けとくか」
こんな……こんな……大金。……うぁぁ……。
──── ✦ ────
……とりあえず、コマンダーさんはとんでもない高給取りということで納得しておきましょう。
今私たちは、
……ちなみにこちらの方が報酬が何倍もありました。私の金銭感覚が破壊されそうです。マスターの財布……強い……。
「まさかそこまでショックを受けるとは思わなくて」
「いえ……。コマンダーさんはこれが普通なんですよね……?」
「まぁ、そうなんだが……」
それなら……。それなら私が慣れるしかありません。さよなら、私の金銭感覚……。
「ま、まぁ。貧乏よりはいいだろう」
「まぁ、そうなんですが……」
「それに、コマンダーは結構あぶない職業なんだぞ?」
「そうなん……でしたね」
今までが穏やかで忘れていましたが、宇宙はいろいろな危険があります。一般でも知られているのは海賊でしょうか。私も知らない危険もあるでしょうし。
「だから依頼料が高いってことですね」
「そういうことだ。それに船を動かすのも金がかかるからな」
「そうなんですか?」
「燃料やら修理やら弾薬やら……」
いろんなところでお金がかかってるんですね。
帰り道は穏やかで、三つの太陽がきれいです。ふふん。帰ったらお野菜を使ったごはんが待ってます。
「ん? こりゃまずいか」
「マスター? どうしたんですか」
「衝撃に備えろ」
「へ?」
どうしたのか再び聞こうとすると船に衝撃が走ります。まるでジャンプする瞬間のような激しい揺れ方です。慌てて席にしがみついて外を見てみると、さっきまできれいだった景色が歪んで見えます。
「こいつは……
「ま、マスター! なんですかこれ!」
「インターディクトだ。海賊に目をつけられた」
「か、海賊!?」
噂をすればってやつですかね。なんてのんきなことを考えていました。
「に、逃げれるんですっよね!」
「いや……。返り討ちにしてやる」
「何言ってるんですかー?!」
マスターはそういうと左腕を動かして何かしました。ま、まさか交戦するっていうんですか!?
揺れが一瞬収まったと思ったら、通常空間にはじき出されました。
「ほ、本当に戦うんですかー!?」
「安心しろ。俺たちは一人じゃない」
「私たちは二人ですからねっ!!?」
こんな誕生二日目で爆散なんて嫌ですよー!
通常空間に出た船は急加速。今までにないほどシートに強く体が押さえつけられます。旋回して──海賊船を視界に収めました。
なんども
「荷物は何も持ってませんよ~……ってなぁ!!」
マスターの掛け声とともに船はレーザーの射撃を開始しました。同時にミサイルも発射してます。向かい合った状態なのですぐさま海賊船も反撃してきます。
「はっはー!
「ひぃ」
海賊船にすごい撃たれて怖いですし、マスターも怖いですぅ……!
ビビビッって運巡丸のレーザーとミサイルが海賊船を何度も穿ちます。海賊船の絶え間なく照射してくるビームも私たちの船を穿ちます。
撃ち合っている中、ぱしゅぅという空気が抜ける音とともに突然海賊船のビームがぶれ始めました。さらに海賊船に別方向からビームが突き刺さります。
「来たかセキュリティ!」
もう声を出す余裕もなくなった私が見た光景は3、4隻の船が一斉に海賊の船を攻撃している光景が見えました。この船たちがマスターの言うセキュリティでしょうか? あ、紫の光の玉がすごい勢いで海賊船に突き刺さりました。
そのとき、船内に
「よーし! ミサイル味わいなぁ!」
マスターが怖いよぅ……。
海賊船はもがいているようですが、四方八方から攻撃されて太刀打ちできていません。これじゃどっちが被害者かわかりませんね。いえ、私たちが墜とされてもいいという話ではないのですが。
「撃破ァ!」
「ぴぇ」
ふえぇ……。
海賊船が小爆発しながら慣性移動して、最後に大爆発しました。周りにいたセキュリティとマスターに呼ばれていた船は散開して離れていきます。
「ふぅ……」
「ますたー……?」
「おん?」
「ぐすっ」
「えっ」
怖かったよぉ……主にマスターが……。普段通りの声で返事してくれたので、安心して涙が出てきました。
「ますたーが、こわかったですぅ」
「えっ」
海賊船は、途中からぼこぼこにされてたのであまり怖くなかったです。
「す、すまん。久しぶりの戦闘だったからつい」
「うぅ……。ゆるさないですぅ……」
「ぐぅ……すなまい……」
マスターは前から戦闘をしていたみたいです。ゆるさないは嘘ですが、根に持つかもしれません。
「……帰ったら、ごはん食べたいです」
「ああ! 食べよう!」
「……うん」
なんだか慌ててるマスターを見てると落ち着いてきました。私の仕事は癒しの提供だけだと思っていましたが、私がしっかりしてないと……早死にしそうです。
「私、頑張りますから。マスター……!」
「お、おう? 元気になったってことか……?」
マスターが微妙に違うことを言います。
「……えへへ、ちょっぴり元気になりました」
「そ、そうか? ならいいんだが……」
今日の星系
LTT 9605: 実在する星系。ゲーム中だと恒星が四つあり、うち三つがとても近い。
Ceti Sector RJ-Q b5-0: Elite:Dangerousオリジナルの星系。なんの変哲もない星系。
今日の船
Keelback: 中型戦闘輸送船。艦載機の搭載が可能な船。
Python: 中型重多目的船。ラージクラスのハードポイントが三門ある。
なんだか最後がシリアスになってしまいましたが、あまり重い話は書かない予定です。ゆかりんとコマンダーが面白おかしく宇宙を満喫する話を書きたかったんですが……。まだ一話です。これからですね。
投稿頻度に関しては不定期になると思います。私のゲームプレイ内容を申し訳程度のストーリーで味付けして本小説を書いているので。ですが、ある程度書きたいことが決まっていまして、そこまで遅くはならないと思います。なので気長に待っていただけるとありがたいです。
変更履歴
2025/05/13: 誤字修正
2025/05/17: 海賊のランクをMasterからNoviceへ変更
2025/06/18: 『コロニー』を『ステーション』へ変更