ゆかりんとCMDRのEliteでDangerousな宇宙旅 作:ペンギン星雲
「──そして、ここを押せばチャフが起動……、敵機の照準を撹乱させることができる」
あの海賊から襲われた日から二日経ちました。昨日は買い物やいろんなごはんを食べて回りました。お野菜や果物をいっぱい……んへへ。
そして今、マスターから船の装備の操作方法を教えてもらっています。宇宙船に複数のシートがあるのは、船の一部機能を他の人が制御できるようにだそうです。*1
「撃たれたら使えばいいんですね!」
「そうだな。でも無敵じゃない。ロックオンせずに射撃されれば意味がなくなる。なかなかいないがな」
とりあえず使えば損はないってことですかね。
「むぅ。万能な防御装備ってないんですか?」
「シールドか?」
「万能なんですか!?」
「万能じゃないです」
「じゃないんですか……」
そういえば、昨日見た船は無傷でしたね。いっぱい海賊船に撃たれていたのに無傷なのはシールドのおかげだったんですね。
「シールドは攻撃を完全に防げるが、受け止められる限界があって、それを超えると消滅してしまうんだ。だから消滅しないように立ち回るのが重要だな」
「昨日はシールド消滅しなかったんですね。結構撃たれてましたよね?」
「昨日のはブーストして極力死角に入るように動いたし、チャフも使ったからな。それに、撃ち合ってた時間はそこまで長くない」
途中でセキュリティが援護してくれましたからね。たしかに途中から海賊船はセキュリティの船を攻撃していましたし。
「シールドを急速に回復させる方法もあるにはあるんだが、運巡丸にその装置は搭載してないんだ」
「搭載したほうがいいんじゃないですか?」
「搭載するとカーゴがな……」
運べる量が減ってしまうということですか。うーん。船の装備構成を考えるのって難しいんですね。
「別に防御装備はシールドだけじゃない。一番の脅威であるミサイルはポイントディフェンスってやつで迎撃するんだ」
「それって昨日使ってたんですか?」
「昨日の海賊はレーザーしか撃ってこなかったな」
「レーザーしか装備してなかったんですかね?」
「昨日は装備まで見てなかったからわからんなぁ。レーザーだけってことはないと思うんだが」
マスターでもよくわからないみたいです。今度武装についてもいろいろ教えてもらいましょう。
今はもうすぐ依頼の星系に出発するので、装備のお勉強はまた今度です。
「そろそろいい時間ですね。出発しませんか?」
「そうだな。行くか。装備も実際に操作したほうが覚えやすいだろう」
私はアンドロイドなので忘れたりはしないのですが……。まぁ、わざわざ指摘はしません。こういった扱いをしてくれるのはうれしいですし。
「はい! 頑張りますっ」
「おう。だが、気楽にな」
「はいっ!」
返事をしてシートに座ります。マスターも私の左前にあるシートに座っていろいろ操作します。いつか船の操縦方法も教えてくれるんでしょうか? そうだと嬉しいですね。
なぜマスターが装備の操作について教えてくれているかというと、昨日ごはんを食べている間に私から提案したからです。マスターは前から別の船で賞金稼ぎもしていたそうで、これからもするつもり見たいです。それなら私がお手伝いをしたいと申し出ました。……覚えることは多いみたいですが。
「離陸するぞー」
「はい!」
船が格納庫から出されて外が見えます。壁も天井も床になっていて、いろんな船が離着陸しているこの景色は二回目でも圧巻です。
「いろんなところで野菜育ててますね」
「農業ステーションだからな。それにしても、低重力でも育つのはすげぇよな」
「そうですね。お野菜さんはたくましいです」
育ったお野菜はこのステーションで消費されたり、他の星系に輸出されるんですよね。昨日食べたのはおいしかったですね……。えへへ。
「それじゃあジャンプするぞー」
「はい! チャージング!」
船のアナウンスは、
『4……3……2……1……Engage!』
「エンゲージ!」
そんなベリティさんと私の掛け声とともに船がハイパースペースに突入します。きれーですね……。
今日の目的地はおとといと同じ『Ceti Sector RJ-Q b5-0』という星系です。そこで、サルベージという作業をするみたいです。輸送とは違う仕事ですね。さらに、なんと! 私が少し作業を手伝うことになっています!
「そういえば、なんでサルベージすることになったんですか?」
「詳しい経緯は知らないが、
「えっ。乗組員は大丈夫だったんですか?」
「分からん。……いや、たぶんダメだろうな。とりあえず俺たちがするのはサンプルの回収だけだ」
「うーん」
結構闇が深い案件なんでしょうか……。実は犯罪だったり……。
「犯罪ではないから安心しな。そこは注意して依頼を受けてるからな」
「そうなんですか……。それなら、安心……ですかね?」
「それに、乗組員の脱出ポッドもあるかもしれない」
「なら助けないといけないですね!」
「そうだな」
うむうむとマスターは大きくうなずきます。船には脱出装置があるんですね。乗組員の皆さんが無事なのを祈りましょう。
マスターと話し終わって少ししてジャンプアウトが完了しました。目の前に太陽が現れます。もうびっくりはしませんよ!
「っ! ふぅ。やっぱり大迫力ですね」
「……そうだな」
なんですかマスター。その何か言いたげな雰囲気は。顔は黒いバイザーで見えませんが、雰囲気で分かります。驚いていませんよ!
そう思っているとコックピットに
「クライアントからだな。……ふむ。サルベージ場所が送られてきたみたいだ」
「送ってくれるんですねー。どこですか?」
「第一惑星の衛星近くだな。ここから409
マスターは左側のホログラムパネルを操作して目的地をターゲットします。どうやら船の後ろ側みたいですね。コックピットのガラスにはターゲットが映りません。
「さぁ、早速行きましょう!」
「
「しゅっぱーつ!」
マスターが船を操縦して、目的地に前進しながら回頭します。太陽が後ろ側になったためコックピットは一気に暗くなります。
「クライアントがスキャンしてくれるのは楽だよなぁ」
「スキャンしてくれないときもあるんですか?」
「あるある。そん時は自分でスキャンするか、太陽の横にある
「あー、たしかにそれは手間ですね」
「そうなのだよ」
目的地を知らせてくれないことは珍しくないみたいなので、近いうちにスキャンやナビビーコンを使うことになりそうですね。
「私はそれも楽しみですけどね!」
「ははは! 楽しんでくれるなら手間でもないな!」
んふふ。マスターの面倒もすべて私にとっては新鮮なんですよっ。
やりとりしているうちに、目的地にぐんぐん近づきます。
「あ、星……じゃなかった。惑星が見えてきましたよ」
「手前のが第一惑星で、奥に見えるのがその衛星……じゃないかな」
「見た目がほとんど同じですねー」
「どっちも氷の惑星なんだな」
真っ白の球体が近づいて……その横を通り過ぎます。マスターの言う通り第一惑星だったみたいです。その奥に小さく見える惑星が第一惑星の衛星みたいですね。衛星と言っても、見た目にほとんど見分けがつかないのですけれど。大きさも、でっかいことしか分かりません。
じっと衛星が近づく様子を観察していると、船が減速を始めます。
「もうすぐですね!」
「そうだな。そういえばステーション以外へのジャンプアウトは初めてか」
「そういえばそうです! どんな感じなんですか?」
「言っていいのか?」
「あっ、やっぱりだめです!」
初めてなのです。楽しみに取っておきましょう!
「ふふ……。ターゲットは逃げないんだ。少し落ち着こうぜ」
「わくわくするんですぅー! 落ち着けな──」
突然、船の外の景色が歪み、船が激しく揺れ始めました。これは……。
「インターディクト! 海賊ですか!?」
「いや、これは」
マスターはスロットルを操作し始めました。
「マスター! 逃げるんですよね!?」
「今回は逃げる必要はない。セキュリティだ」
「返り討ちですか!? やだー!」
「返り討ちでもないから安心してくれ……」
ごねる私の意志と反して船はインターディクトに従ってジャンプアウトしてしまいました。
「うー!」
「大丈夫だから……。セキュリティだから……」
ジャンプアウトするとマスターは船を完全に停止させてしまいました。直後に
船は回頭してインターディクトをしてきた船を正面にとらえます。
「
「帝国……海軍……?」
「そうだぞ。海賊じゃない」
「海賊じゃない……?
見えた緑色の小さい船は、こちらに正面を向けたまま動きません。海賊船じゃなくて、帝国海軍の船だったみたいです。……またマスターの戦闘狂の血が騒いだのかと……。
「よかったぁ」
「……おとといはすまない」
「今度はちゃんと逃げてくださいよ!」
「ハイ……」
マスターがイーグルと呼んでいた船は、スキャンが終わったのか旋回して離れていきます。セキュリティの船もインターディクトしてくることあるんですね。
「よし、スキャンも終わったみたいだし行くか」
「はい。気を取り直していきましょう!」
FSDチャージを開始して数秒でカウントダウンが始まりました。スーパークルーズへの移行はすぐに終わるんですね。
「おお。すぐそこだな」
「結構近くでインターディクト受けましたもんね」
距離はたった3
といってもスーパークルーズでは一瞬です。すぐに目的地についてジャンプアウトです。
「……あー!」
「うぉお!? なんだどうした!?」
「初めてが……。私の初めてが海軍に……」
「変な言い方は止めろ……。あれはノーカンでいいだろう」
「むぅ」
たしかに、全く意識していませんでしたね。ですが、なんだか微妙な気分です。
微妙な気分で迎えたジャンプアウトです……。ジャンプアウト後特有の物が急激に近づく景色が……見えません。ステーションみたいな大きなものがないので当たり前ですが。代わりに船の残骸らしきものが見えます。
「おー。なんだか寂しいですね?」
「寂しい……? たしかに? ステーションみたいなでかいものはないな。衛星くらいだ」
衛星は船の後ろ側にあります。なので船を反転させないと見えませんね。
「それで、この残骸からサルベージすればいいんですかね?」
「そうだな。サルベージって言っても回収するだけだが。それじゃ、始めよう」
「はいっ」
私は出発前に言われた通りに操縦桿周りのボタンを操作します。そうすると、
しばらくすると、ばしゅっと音がしてリムペットが飛んでいきます。*4
「後は待つだけなんですよね?」
「そうだな。あとはリムペットが回収してくれる」
「便利ですねー」
「うむ。あるととても便利だ」
ひゅるひゅるリムペットが飛んで、漂っている残骸をキャッチします。そのままこちらに戻ってきて船の下へ移動していき、がしゃんという音とともに回収が完了します。
「なんだか可愛いですね」
「そうか?」
なんだか一つ一つ、頑張って集めてる感じで可愛いです。がんばれー。
「見た感じ、脱出ポッドはないな。回収したものにもない」
「脱出できなかったってことですか……」
「そういうことだろうな」
マスターは淡々としていました。よくあることなのでしょう。私は目を瞑って手を合わせて黙祷します。
しばらく黙祷してからマスターに話しかけます。
「目的のものは回収できましたか?」
「ばっちりだ。ちょっと回収が続いてるけどな」
見てみるとリムペットがコンテナを回収して帰ってくるところでした。船の下に移動して……がこんと音がして、最後のコンテナの回収が完了します。初めてのサルベージは問題なく終わりましたね。
「よし、終わりだ。帰るか」
「はい!」
いつも通りマスターは
「リムペットはいいんですか?」
「リムペットは使い捨てなんだ。そのまま置いていくしかない」*5
「そうなんですね。なんだかかわいそうです……」
「かわいそうか……」
回収するのは大変なのでしょう。回収する手間をかけるくらいなら置いて行ってしまったほうがいいのでしょう。
「ばいばい……リムペットさん……」
『4……3……2……1……Engage!』
手を振りながらリムペットに別れを告げてハイパースペースジャンプします。ばいばい……。
「リムペットはこれからたくさん使うんですよね?」
「まぁ、そうだな。リムペットは回収だけじゃないから」
「そうなんですか?」
「修理とか……、修理とか……?」
いろいろな役割が……あるんですね?
「いや、戦闘しかしてこなかったから……ほかの使い方分からん……」
「マスターでも分からない事あるんですね」
「むしろ分からない事の方が多いな」
「そうなんですねっ。これからは一緒に勉強しましょう!」
「ああ、そうだな!」
うおー! 頑張りますよっ。
そんな話をしながらジャンプアウトして太陽の前に出ます。流石にもうびっくりはしませんよ。
「……なんで見てるんですかっ」
「びっくりしてないかなーって」
「もうびっくりはしませんよ! 何回目だと思ってるんですか!」
「ははは! そうだな、さすがにもう慣れたか!」
本当にもう! マスターはからかうのが好きですねっ! ……別に嫌いではありませんが。
ジャンプアウト後に見えるのは一つの太陽です。本来は二つ見えるはずなのですが……。
マスターが操縦して、スーパークルーズ状態の船が移動を開始して太陽の裏側が見えてきます。二つ目の太陽はもう一つの太陽の陰に隠れてたみたいです。影ができているわけではありませんが。
「なんだかすごいですね。太陽の陰からもう一つの太陽が現れるの」
「すごいよな。こんな近い連星はあまり見られないから新鮮だ」
マスターでもすごく感じるみたいです。なんだかうれしいですね!
「こんな感じの連星の間にジャンプアウトしたことがあってな。その時は船体温度がめっちゃ上がって燃えかけたよ」
「えっ。それって大丈夫だったんですか?」
「すぐに離脱して事なきを得たよ」
「よかったです……」
そんな怖いこともあるんですね。マスターが無事でよかったです。無事じゃなかったら今、私はいなかったんですが。
「あっ。まずいかも」
「えっ、この流れおとといもしましたよね?」
「そうだな。デジャヴを感じるな」
「えっえっ。何とか回避できなんですかっ」
「何とかやってみるが……」
瞬間、コックピットの外の景色が歪み始めました。インターディクトされてしまいました……。
「逃げるんですよね!?」
「今回は逃げるっ! くっ!」
「に、逃げられるんですよね……?」
返事はありませんでした。
「引きずり出されるなっ、これはっ」
マスターがそういうと、強制的にジャンプアウトしてしまいました。
ぐるぐる、ぐらぐらと船がいろんな方向に勝手に回転してしまっています。インターディクトに従わなかったらこうなるんですね。なんてのんきなことを考えてました。
「チャフ!」
「あ、は、はい!」
マスターの大きな声で我に返ります。マスターの指示通りにチャフを起動します。直後に後ろからビームが飛んできました。
船はブーストで加速し、急速に反転します。視界に収めた海賊船は、とっても大きな船でした。
「
「デッドリーって!?」
「上から二番目のランク!」
「それって強いって……!?」
強いってことですか、と言おうとしたとき、海賊船から紫色の光が飛んできたと思ったら、激しい揺れが船を襲いました。チャフを使っているのに!?
「レールガンもかよっ!」
「ああ! シールドがっ!」
『
「くそっ!」
「ちゃふつかいます!!」
船はブーストして最大速度のまま海賊船から離れようとしますが、海賊船の方が早いのか全く離せません。なんどもレーザーのオレンジ色とレールガン?の紫色が船を穿ちます。
「ミサイルもかよ!」
「きゃあ!」
ミサイルが飛んできたみたいで、一層激しい揺れが船を襲います。船体ダメージを表すゲージは2割を超えました。
「ポイントディフェンス剥がされたかっ」
「ち、ちゃふ使います!」
もう三回目のチャフ使用です。ですが、チャフではミサイルを撹乱できません。それに、海賊船はチャフの関係ない兵器を搭載しているみたいです。
船体ダメージが5割を超えてしまったころ。
「セキュリティ! やっときたか!」
「や、やった!」
ジャンプアウト時の閃光がいくつか見えました。あとはセキュリティが攻撃開始してくれるまで逃げるだけですっ!
セキュリティはすぐに攻撃開始してくれました。海賊船はそのセキュリティに対して反撃し始めたので、私たちは海賊船の苛烈な攻撃から逃れることができました。
「た、助かった……」
「よかったよぉ……」
海賊船はセキュリティの船に包囲されていて、全方位から攻撃を受けていました。ですが、おとといの海賊と違い、包囲からすぐ抜けて、正面の撃ち合いになってました。デッドリーってとても強いんですね……。
「シールド回復したら加勢するか」
「えっ。逃げるんじゃないんですか!?」
「遠距離からミサイルで撃つだけだ」
「安全……大丈夫なんですよね……?」
「大丈夫だ」
じゃあ……いいんでしょうかね?
『
「よし、じゃあ加勢しよう」
「は、はい」
ぴぴぴと音とともにかなり離れた海賊船をロックオンします。ロックオンが完了するとマスターは即座にミサイルを発射しました。ミサイルはすごい勢いで飛んでいき……空中で爆発しました。
「ポイントディフェンスか」
「あれが、ポイントディフェンス?」
「小型のタレットでミサイルを迎撃するんだ」
何発かミサイルを撃っていましたが、すべて迎撃されてしまいました。ですが、セキュリティの攻撃は確実に船を破壊していっていたようで、海賊船のいたるところが爆発し始めまて、そのまま大爆発しました。
「沈んだな。……はぁああ」
「助かりましたぁ」
おとといとは違う意味で怖かったです。沈められるのではないかって。死んじゃうんじゃないかって思いました。
「輸送船で戦闘はきついなやっぱり」
「輸送船じゃなかったらいいんですか……?」
「まぁ、そうだな。戦闘艦に乗ってる方が長いし」
「いつか戦闘艦に乗り換えるんですか?」
「そうだな。……でもそれは当分先になりそうだ」
なぜか先の話になるみたいです。何か思惑があるみたいですね。
「帰ったら教えてくださいよ」
「えーっと。戦闘艦についてか?」
「いろいろです!」
「いろいろかぁ」
「なので、まずは帰りましょう!」
「そうだな。……帰るか」
「はい!」
今日の船
Anaconda: 大型重多目的船。戦闘も探索もこなせる最高級船の一つ。