ゆかりんとCMDRのEliteでDangerousな宇宙旅 作:ペンギン星雲
Elite: Dangerous要素は無いに等しいですが、足立レイ視点です。
「では博士、先に行ってますよ」
「うん、まだかかりそうだから、先にご飯食べてていいよ」
「分かりました。唐揚げ奢ってもらいますね」
「いやそれは──」
博士の止めようとする声を聞かずに部屋を出て船を降ります。ジョウダンジャナイデスカーヤダナー。
さて、もう着いたとの連絡がジャックから来ているのでさっさと向かいましょう。本日は探査船の装備購入と、ジャックが買ったアンドロイドの紹介をしたいと言っていましたね。その前にまず唐揚げを奢ってもらいましょうか。
ちなみにジャックがボイスロイドを買ったという話は博士には伝えていません。伝えてしまえば仕事をほったらかしにして会いに行ってしまうのが目に見えてます。私の実働データをまとめるというとても大事な仕事があるというのに。
エレベーターの扉が開くと、見慣れたコンコースの景色。今回はあまり利用しないバーの併設されたラウンジへ向かいます。
ラウンジに来てみれば、奥の方に真っ黒なバイザーの二人組がいました。片方は赤で私より高い身長、もう片方は紫で私より低い身長です。購入したアンドロイドは
ゆかりさんの方が周りをせわしなく周囲を見渡しています。彼らもちょうど今来たところのようですね。
「なんだかいい雰囲気の場所ですね」
「いかついのばっかりだがな」
いかついのばかりとは何ですか。美少女ロボットである私がいるではありませんか。
「むぅー。そういうことじゃないですよー」
「そうですよ。私は美少女なのでいかつくないです」
ばっ、とゆかりさんの方が振り返りました。急に知らない美少女が話しかけてきてびっくりしたんですね。
「おう。早かったなレイ」
「遅れるのは博士だけなので。私が先に来ました」
「そうだったか」
ゆかりさんがびっくりして声を出せていないようです。じっと固まってしまっています。この子、仕草が分かりやすいですね。
「紹介しようゆかりん。こいつが──」
「美少女ロボット、足立レイです」
「あ、どうも。結月ゆかりです。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げて自己紹介を済ませます。ゆかりさんはバイザーが黒いままで素顔が見えません。ジャックに似たんですね。顔を隠す癖があり、指摘されるまで気づきませんから。素顔が気になりますが、唐揚げを奢ってもらうときに見せてもらいましょう。
「それで、ミネタカは?」
ミネタカというのは、私が言う博士のことです。私はプロトタイプなので特定のマスターはいませんが、博士が実質的なマスターですね。マスター権限も持っていますし。
「博士はもう少し遅れるとのことです。先にご飯でも食べに行っててくれとも」
「そうか。じゃあなんか食べに行くか。四人で席を取っておこう」
「ありがとうございます。唐揚げ奢ってください」
「相変わらずだなお前」
相も変わらず美少女でしょう。博士たちの私への愛ですよ。
おや、ゆかりさんが恨めしそうにこちらに視線を送っています。視線が見えているわけではありませんが、むむむぅ! と言った様子で拳を握りしめてこちらに顔を向けています。かわいいですね。
「ところでゆかりさん。いつ頃からジャックと同行を?」
ジャックからは買ったとは聞いていますが、いつから居るかは知りません。この際です。聞いてみましょう。
「……えっ? えーと、今日で六日目です」
「ほうほう。まだ新人ということですか」
「えっと。そうなります……かね?」
ジャックはゆかりさんを迎えてすぐに探査船を購入しようと考えたようですね。
先ほどコンコースや他のコマンダーを興味深そうに見まわしていた様子からノーマルモデルでしょうか。少なくともコマンダーやそのサポートができるように調整はされていなさそうです。
「見たところコマンダーとしての知識も乏しい様子」
「な、なんでそれを」
「あ、当たりました。私の勘も伊達ではありませんね」
「ふぇぇ。ま、ますたー……」
む。怖がらせてしまったようです。これは申し訳ないことをしました。
「レイ。その辺にしてやってくれ。まだ赤ちゃんみたいなもんなんだ」
「赤ちゃんじゃないですよっ」
「あ、そこ食いつくのな」
そこに食いつくんですね。かわいいですが、怖がらせてしまったことは反省です。
「すみません。つい可愛くて。私の方がかわいいですが」
「なんだこいつ」
こいつとはひどいですね。美少女ロボットですよ。ですが、かわいらしいの称号はゆかりさんに上げてもいい気がします。
「……とりあえず、飯食いに行くぞ」
「あ……」
ジャックがあきれて、先にエレベーターへと向かって行ってしまいました。ついていきながら改めてゆかりさんに謝罪するとしましょう。
「ゆかりさん。すみません。私の好奇心が抑えられませんでした」
「え? あ、いえ。大丈夫ですよ」
一瞬不思議そうにぽかんとしたあと、慌てて手を振りながら大丈夫だといいます。この様子ならあまり気にしてはいなさそうですね。それより、今の私の発言で何か気になったことがあったようです。首を傾げています。かわいいですね。
「好奇心ってなんだ? って仕草ですね」
「えっ!? ……そんなに分かりやすいですか?」
「そんなかわいらしく首を傾げているので」
「あぅ……」
今度は恥ずかしそうにもじもじしています。……ふむ。以前指摘されたことがあるのでしょう。それで気になっていると。この景色が見れなくなってしまうのはよろしくないので、阻止させていただきます。
「かわいらしいのでそのままでいてほしいですがね」
「はぅ……」
さらに恥ずかしそうにしてます。かわいいですね。
「ここか?」
「はい。お店の唐揚げです」
「お店の唐揚げ……?」
「唐揚げの店だろ」
そうとも言います。
いい匂いのする店の前にまで来ました。唐揚げです。こういったお店は少ないのは世界の損失だと思っています。全て唐揚げにしましょう。
「いらっしゃいませー。何名様ですかー?」
「今三人なんだが、あとから一人くる。それでも大丈夫か?」
「大丈夫ですよー。では四人席にご案内しますねー」
店員さんが来て案内してくれます。なんの変哲もないテーブル席です。
「ここのスタッフは丁寧だな」
「私はこっちの方がいいですね」
「店員さんとお話しできるのも楽しいですけどね」
私の出身のステーションが日本的な気質なので、こういった接客の方がいいです。ゆかりさんの言う通り、世間話ができるのもいいですが。
「それで、なに頼む?」
「唐揚げ」
「それは分かってるって」
唐揚げ以外に頼むものなんてないでしょう。あ、白米は許してあげます。あれは唐揚げを引き立たせるためのものですから。
「えっと、白米はありますか?」
「ハクマイ……。これか?」
「はい。それですね」
「では私も」
ジャックが端末を操作し注文を済ませます。ゆかりさんはお味噌汁も頼むみたいです。おいしいですよね。唐揚げのお供にふさわしいです。
「それで、レイさん……?」
「レイでいいですよ。レイちゃんでもいいですよ」
ゆかりさんが話しかけてきます。さん付けでは少し距離を感じます。初対面で距離を詰めすぎでしょうか? いえ、私は美少女です。問題ありません。
「じゃ、じゃあレイちゃんで」
「レイちゃんでーす」
「あ……、かわいい」
ピースしながら返事をすれば、小声で可愛いを頂きました。そうです美少女です。ですが、私もゆかりさん見たいです。
「レイちゃんそろそろゆかりさんの顔見たいです」
「え? ……あ、そうでした」
ヘルメットをしているのを忘れていたようです。ゆかりさんの隣に座っているジャックも今気づいたようで、外しています。
「えっと、改めまして。ゆかりです」
「ゆかりちゃんですね」
「えへへ。ゆかりちゃんです」
かわいい。私とは違うかわいさです。
「それで、ゆかりちゃん。何でしょう」
「あ、えっと。さっきレイちゃんが
「私の
「まず、私は第三十三世代の足立レイ。そのプロトタイプです」
「はい!」
「そして、ただの足立レイじゃありません。探査のサポートを行うため、特別な実験的機能が搭載されています」
「おぉー」
「Exploration Autonomous Analysisというこの機能が、私の
「……ん?」
「探査系のコマンダーである博士と一緒にいるのは、この機能をテストするためですね」
「……えっと、好奇心については分かりました……」
私はただの足立レイじゃありません。私の開発元である
それはそれとして、ゆかりちゃんの返事がかわいいですね。
「……いま、声、二つ聞こえた気がするのですが……?」
「ふむ……」
私のこの声についてですか。さきほどたしかにスピーカーと喉、両方使いましたが。
「これの事ですか?
「わぁ……!」
「え"っ!?」
ゆかりちゃんが目を輝かせています。かわいいですね。それとジャックも驚いています。知らなかったんですか。言ったことありませんでしたね。
「私は喉での発声も可能ですよ」
「すごいです!」
「お前喋れたのかよ……」
すごいでしょう。喉での発声はあまりしないので、知らないのも無理はありません。
「普段から喉で喋らないのか?」
「私の声はこちらなので」
「合成音声だろ? それもすげぇ古いタイプ」
「そうですね。ずっと昔から変わっていませんよ」
私の声は、私の源流を作ってくれた人たちの時代から多少のバージョンアップはあれど、ほとんど変わりません。喉の方は変わってしまいますが。
「喉の方は
「そうですね。ゆかりちゃんと同じですよ」
ゆかりちゃんも私も、
「
「私たち足立レイは喉をあまり使わないですからね。知らないのも仕方がないですよ」
「レイちゃんだけじゃないんですね」
「私たちのアイデンティティですから。……あ」
話しているあいだに唐揚げです。
「お待たせいたしましたー。こちら唐揚げと、ごはんと味噌汁ですー」
「あぁ。ありがとう」
「ありがとうございます」
「唐揚げありがとうございます」
「ではごゆっくりー」
店員さんが唐揚げとその他を置いて戻っていきます。待ってました唐揚げです。
「おいしそうですね! いただきます!」
「ミネタカには悪いが先に食べてよう。いただきます」
「博士は気にしないで大丈夫ですよ。いただきます」
博士はすぐに来ますから。それにしても、ジャックが食前の挨拶をするとは。ジャックもゆかりちゃんに影響されているのでしょうね。
「んふー。おいひいでふ」
「うまいな。フライドチキンと似てるが、なんか違うな」
「肉を醤油に漬け込んで味付けするので、その違いでは?」
「ほう。ショウユの味か」
「な、なんか高度な話をしてますぅ……」
こういう私もデータでしか知らないのですが。博士が言うには、そこまで難しくはないみたいですよゆかりさん。
「博士が来ました」
「ごめん遅れた」
「終わったんですか?」
「そっちは大丈夫──……」
博士はしっかり仕事を終わらせてきたみたいですね。帰ったら確認しましょう。……まぁ、ゆかりちゃんがいることを伝えていないので大丈夫でしょう。
そして、今はゆかりちゃんを見つめて固まっています。
「博士」
「ハッ! ゆ、ゆかりさんがいる……」
「え、えっと。ゆかりです……」
「ミネタカ。どうした」
博士は
「友人との食事に来たら、ゆかりちゃんがいて──」
「ちゃん付けで呼んでる!?」
「博士、静かにしてください」
これも感激するところなんですか。長年一緒に行動して、いろんなキャラクターアンドロイドとも出会ってきたはずなのですが、予想できませんでした。
「えっと。この人がレイちゃんのマスターさんですか?」
「アッチャンヅケデヨビアッテル」
「はい。こんなのですが博士です」
「ミネタカお前こんなキャラだったか?」
「はい」
ジャックが愕然としてます。たしかに、ゆかりちゃんがいないとこのような一面は見れないでしょうね。
「とりあえず、博士のぶんの唐揚げも頼みましょう」
「お、おう。そうだな」
「博士。しっかりしてください。まず座ってください」
「ハイ……ミネタカ、スワリマス……」
博士を私の隣に座らせて、ジャックが追加に唐揚げを注文します。
「博士。落ち着きましたか?」
「あ、あぁ。ごめん。もう大丈夫」
「えっと。博士さん? 大丈夫ですか?」
「ウッ。だ、大丈夫だよ」
「ゆかりちゃん。心配するだけ無駄ですよ」
ゆかりちゃんが心配そうに博士を見ていますが、無意味としか言えないでしょう。
「そ、それで、ジャック。いつの間にゆかりさんをお迎えしてたんだい?」
「そりゃ……」
「はい! 六日前にマスターのところに来ました!」
「──そうなんだね」
「いちいち成仏しかけるのは止めてください博士」
するならして、しないならしないでください。こんなことなら先に言っておいた方がよかったでしょうか。いえ、そうすれば仕事をほったらかして来てしまうでしょうし……。
「僕だけじゃないだろう。レイだって、テトさん前にしたら似たようになるでしょ?」
「……いえ。なりません」
「いや、なってたでしょ。この前──」
「ズモモモモモモモモモモモ」
「れ、レイちゃんが……」
「安心してください、ゆかりさん。いつも通りです」
テトさんはかわいいですよね。店員テトさんを連れて帰ろうなんてしてませんよ。
「ミネタカが働いてるとこってのはみんなこうなのか……?」
「うん」
「はい」
「そうか……」
悪いことでしょうか? いえ、愛すことは悪いことではありません。
「……そういえば、今日はなんで呼んだんだい?」
「レイから聞いてないのか?」
「言ってません。ゆかりさんの事を伝えれば突撃するので」
「あぁ、そういう……。それで、呼んだ理由な。探査船買おうと思って」
「ふむ。それで僕にアドバイスをもらいにだね?」
「そういうこと。いいか?」
「構わないよ。今はやることも終わったから余裕がある」
「助かる」
博士はベテランの探査系コマンダーでもありますから、博士からアドバイスをもらうのは賢い選択と言えるでしょう。
「話は変わるんだが、ハクマイってどう食べるのが正解なんだ?」
「知らないのですか」
「えっと、おかずと一緒に食べるんですよ? マスター」
「口内調味ってやつだね」
ジャックは唐揚げの食べ方を知りませんでしたか。白米とともに食べればさらにおいしくなりますよ。唐揚げを食べるのに口内調味は必須技能ですね。
ジャックはゆかりちゃんに教えてもらいながら、フォークを使って白米と唐揚げを食べ始めました。
「たしかに、これは食べやすいな」
「ふふ。そうでしょう」
二人のやりとりを見て博士が穏やかな笑顔を浮かべています。成仏しそうです。たしかに、微笑ましくはありますが。ジャックとゆかりちゃんはお互いにいい関係を築けているようですね。
「失礼しますー。唐揚げとごはんですー」
「ぁ、ありがとうございます」
「ではごゆっくりー」
店員さんが再び来て、博士の唐揚げを持ってきました。一ついただきましょう。
「一ついただきますね」
「えっ、あ、ちょっと」
「おいしいですね」
「あぁ……」
「食べるの早いな」
「結構たくさんありましたよね……いつの間に」
10個の唐揚げを頼みましたが、もう食べてしまいました。おいしい唐揚げなのですから仕方がありません。
「まぁ、いいや。おいしかったかい?」
「はい。また来ましょう」
「そうだね」
「なら今日の晩御飯は決まりましたね」
「それはちょっと……」
ケチですね。ゆかりちゃんに免じて許してあげましょう。
「今日は俺が奢るから好きなだけ食べていいぞ」
「いいのかい?」
「ああ、俺の頼みを聞いてくれるんだ。好きに頼んで構わないぞ」
「それならお言葉に甘えて。レイ、頼んでもいいよ」
「いいのですか」
それならありがたく追加で唐揚げしましょう。
追加で唐揚げしたあと、ふとゆかりちゃんについて気になることができました。
「ジャック。ゆかりちゃんはマーセナリーモデルでしたか?」
「いや、ノーマルだな。ほんとはオペレーターモデルを買ったんだが、向こうの手違いでな」
「そうでしたか。……博士」
「そうだね。ちょっとまずいかも」
「えっ。な、なんかだめなんですか?」
にこにこしていたゆかりちゃんが、一変して不安そうな顔をしました。だめかと言えばだめかもしれません。宇宙は危険が多いですから。
「エンジニアはまず
「まぁ、そう考えている。FSDの強化を先にしたいからな」
「必要な物資は知っているよね?」
「
「ゆかりちゃんの内部構造を強化しておかないと危険です」
具体的に言えば、EMP対策ですね。ストレージ関連は特に対策しなければ、データが破壊される危険があります。ゆかりちゃんと会えなくなってしまうのは悲しいですから、しっかり対策しなくては。
それらを二人に説明します。
「わ、私死んでしまうんですか……?」
「しっかり対策すれば大丈夫です。私たちは探索のプロです」
「そうだね。僕はアンドロイドのプロでもあるから安心していいよ」
ゆかりちゃんがすっかり怯え切ってしまいました。無理もありません。自分が消えてしまうかもしれないと言われればどのアンドロイドでもこうなってしまいます。アクチュエータはダメになるかもしれませんが、データだけは完璧に保護できるので安心してほしいですね。
「まぁ、対策が必要なのはわかった。けどよ、メタアロイってやつを取りに行くだけでEMP攻撃されるのか?」
あぁ、なぜ対策が必要なのかを説明していませんでしたね。この対策が必要になった原因自体が危険なのでこちらも説明しなくてはいけませんね。
「Thargoid
「さ、サーゴイド」
「そう。サーゴイド。その様子だと知っているみたいだね」
「は、はい。最近
「襲われる危険性は低いですが、まず間違いなく遭遇するでしょう」
「メタアロイがあるのはサーゴイドが出没する星系なんだ」
最初から敵対的なサーゴイドはほとんどいません。戦争状態の星系内でなら敵対的でしょうが、普段探索していて遭遇するサーゴイドは、検問みたいなものです。
「なんでメタアロイがある場所にサーゴイドがいるんだ?」
「それは逆だね。サーゴイドがいるところにメタアロイがあるんだ」
「メタアロイはサーゴイドが生産している特殊な合金ですから」
「……お前たちに相談してよかったよ」
何も知らないまま探索に出ていれば大変なことになっていましたね。相談してくれてよかったです。
「マスター! は、早く対策してもらいましょう!」
「あぁ! そうだな! 船買うより先に対策してもらおう!」
「はい!」
お互いしっかり手を握って、見つめ合っています。かわいいですね。
「安心してください」
「完璧に対策してあげるよ。任せて」
次回はゆかりん視点に戻ります。今回出てきたElite:Dangerous関係の注釈などは次回入れたいよ思います。