ここから本格的に物語が始まります。
除隊し、帰り道を歩く主人公。なんの因果か不幸にも異世界へ入り込んでしまう…それではご覧ください。
舞鶴市某トンネル内
「♪〜♪〜」
お気に入りの曲を口ずさんでレンガ造りのトンネルを歩く。かつては蒸気機関車の走ったトンネルも今じゃ遊歩道になっている。にしてもこんな狭そうなとこをよくもまぁ走れたもんだねぇ。運転手さん大変だっただろうな〜
あれ、そういえば俺何か忘れてるような…
「あっ、そうだ(唐突)駅前のホテル予約しなきゃ…」
あっちゃ〜見納めの景色に夢中になって忘れてたゾ…ま、この時間ならまだ予約取れるだろうしヘーキヘーキ。んじゃ早速グー○ル先生開いてホテル探しますかね!
グー○ル先生のアプリを開いたら画面に表示されたのは特徴的なクソデカマークではなく
「現在オフラインです」
絶望を感じさせる表示が目に飛び込む。
あ、あれ?なんで繋がらへんの?俺支払い忘れてるなんてことないはずだけどなぁ。機内モード?データ通信OFF状態?スマホ調べてもそんなことないしもしかしてバグ?ほんなら一回電源落として再起動やね。
ポチッとな…
再起動したのはいいけど右上の通信状況を示す4本線のところには…
「圏外」
あれぇ?丘People⁈なんでこーなるの⁈ (貝塚土竜感)
長いこと舞鶴に住んでるけど、このトンネル内で圏外になるはずなんてないんよ。いや〜困りましたねぇ…ホテル行く前にa○ショップ行きかぁ〜と思ってたらいきなり画面がブラックアウト。はぁ?
これには流石の祐亮さんもびっくりやで…とりま復旧させるためになんとかせな!
A few moments later…
ダ メ で し た
モバイルバッテリー繋いでも電源ボタン長押ししても完全沈黙画面は真っ暗。これは確実に死にましたね…間違いない。
あほくさ。はーつっかぇ…マジで最悪すぎる。
a○ショップで最悪新しいスマホに買い換えっぺ。
そんなこんなで歩きながらあれこれしていた俺だったけど、トンネル入り始めたときから感じていた違和感がどうしても気になって仕方ない。
「つーかトンネル長くね?お前に人の気配すらねーんだけどさぁ…」
そう。あまりにもトンネルが長すぎる。全長110mのトンネルだから歩いてもせいぜい5分掛からないくらいで出れるはずなのに、10分近く歩いてる気がする。
そしてもう一つ、1人もすれ違わない。この時間帯なら同業者がチャリ漕いでいたり、散歩のおっちゃんおばちゃん、キッズ達とすれ違うはずなのにそれも無い。コツンコツンと反響するコンバットブーツの足音のみが聞こえるだけ。
振り返って見ても入り口は真っ暗、進む先の出口も真っ暗。
こりゃ流石のワシも不安になってきたぞ…
そんでも止まっていても仕方ねーし、出口まで少しペースアップするかね。時間は18時まわった頃で店までは10分もありゃ着く。おっしゃ、行くべ!
走り出そうと一歩踏み出したその時…
パチッパチッ…ブツン……
「えっ、なに?うそ…」
ホラー映画の演出よろしく、トンネル内の照明が数回の点滅の後に完全に消えて一瞬のうちに暗闇の世界…
はぇ〜これが艦艇の連中が言う視界制限状態ってやつ?
わぁ^〜すっごい。これが心霊現象ちゃんですか(思考放棄)
いや〜スマホも壊れて今度は心霊現象に見舞われるとは全く今日はついてますねぇ!最高だよ!F○CK‼︎
…って、そんなことやってる場合じゃねえ!
ライト、ライトは確か…バックパックの側面に確かポーチと一緒につけていたはずの…
「やったぜ!持っててよかったSurefire!」
愛用のSurefire G2X Proのスイッチを入れ、600ルーメンの眩い明かりが真っ暗なトンネル内を照らす。幽霊とか化け物系のよく分からん奴らはいない…良かったよかった。取り敢えずここからおさらばしないと!
「見えてきた。出口だ!」
ボストンバッグとバックパックを携えて走り出し、腕の動きと共に揺れる光がトンネル出口の輪郭を捉え、この異様な出来事から解放される安心感もあった。
でもなんかトンネルの雰囲気ガラッと変わったような気がするし、なんか聞こえる。
聞こえてきたこの音…雨だ。雨が降ってる⁈
いつのまに雨が降ってたんだ?今日の天気は夜も晴れのはず…やっぱりおかしいって!
ライトの照らす先は確かに雨が降っている。こりゃずぶ濡れ待ったなしだわ…でももうこれで終わりだ。出口までもう目と鼻の先!怪奇現象も終わり終わり!
「よっしゃ!やっと市街地側に出…た……え?」
やっとの思いでトンネルから飛び出した俺は心臓を鷲掴みされたような感覚に陥り、2、3歩ほど歩いて硬直してしまった。
まぁ、無理もない。目に飛び込んできたのは…
「なんだよこの街は…」
至る所に弾痕なのか抉られるような無数の穴が空いた建物、正面のV字路に擱座した黒焦げの乗用車、半壊した廃墟…錆びついた遊具、雨風に揺れる千切れた電線と張り紙の貼られた今にも朽ちそうな木とコンクリート製の電柱。足元に至っては舗装されていないせいか、ザーザーと降る雨が大きな水溜まりを作り出している砂利道。そして至る所に設置されたバリケードと鉄条網、ジークフリート線の竜の歯を思わせる大きなコンクリートブロック…
はっきり言って異常だった。
「俺が居るのって…舞鶴…だよな?」
俺の知る舞鶴じゃないし、こんな街は存在しない。昔の写真や映像を見ても舞鶴の街並みではない。
暇つぶしで見ていたYou○ubeにあった60〜70年代の中国や香港の九龍城や日本の田舎や地方都市のような建造物、かつての戦闘で目にした他国の廃墟やスラムのようなどこか懐かしさを感じさせる雰囲気…
「俺、とうとうラリっちゃった?いや、まさか…」
夢でも見てるのか、頭おかしくなっちまったんだろうか…ほっぺた引っぱたいても抓っても感覚はあるし夢でも幻覚でもない。となると目の前に広がるこのヤベー街は一体なんだ?
俺の知るこの道はトンネルを出たら遊歩道が伸びていて、住宅街やビル、病院が見えて右側の山沿いに墓地があるはず。5年以上も暮らしていたんだから見間違える訳がねえ。
普段から楽観的で適当人間の俺も流石に目の前の状況に、混乱とある一つの仮説が浮かんでいた。いやいや、そんな訳ない。何考えてんだよ俺。ダメだ落ち着かなきゃ…パニくったら状況は好転しないってのに。
そ、そうだ。こんなことしてないで元来た道引き返しゃええだけじゃん。全く、考え出したらキリがないって分かりきってんのに俺っておバカさん。
ほんじゃ、さっさと帰りましょか〜
回れ〜み…ぎ……
「あ…れ?」
誰でもいいから俺を引っ叩いてくれ。雨に打たれてとうとう幻覚見て出してる。なんでかって?
見慣れたレンガ造りのトンネルがいつのまにか石造りのトンネルになっていて、その入り口は「崩落につき通行止め」の看板とフェンスで封鎖されてるなんて幻覚以外の何物でもないだろ‼︎
やばい、考えれば考えるほど頭がパンクして破裂しそうだ。そして、認めたくはないけどあの仮説を認めるしかねぇみたいだ…
トンネルの違和感、スマホの不調、タイミングが良すぎる電灯のブラックアウト。そしてそこを抜けたら知らない街、そして元来たトンネルは別物に…
「やばいやばい、こんなの理解できねぇ。いや、そうであって欲しくないけど…」
こんなことアニメや映画の世界の空想だと思ってた。でもこうして自分がそんな状況に置かれてるのも夢や幻覚だと思いたかったし、現実だなんて認めたくなかった…
でもこれ間違いない…
「俺…もしかして、神隠しとか異世界に入り込んじゃった感じ……?」
そういうことなんやろうなぁ…もう認めるしかない。俺の居る場所は元いた世界じゃないって事だと。
状況を整理して情報収集したいけどこれ、詰んでるくね?通信手段はとっくに死んでるし、武器も無い…バックパックの中にナイフ入れてあるけど心許ないよなぁ。
ナイフ振り回してポリにパクられて何されるか分かったもんじゃねぇし、そもそもここの住人が余所者の俺に友好的なのかも分からん。調べようにもスマホはただのゴミと化しているからどうしようもない。
八方塞がりの状況に流石の俺も普段のようになんくるないさ〜なんて呑気なこと言ってられねぇ。ああ、終わったかも…いや、終わったわこれ完全に。
「は、はは…はははは……」
最早笑うことしか出来ない。そうでもしなきゃ俺マジで発狂しそうだもん。
「俺、これからどうなるんやろうね…」
乾いた笑いと共に吐き出した問いに答える者はおらず、ただ身体を濡らす雨音と、風に吹かれるひしゃげたトタンに雨が当たるカンカンという音だけが、響くのみ…
マジで俺これから先どうしよう…生き残れるかもわからんねぇ…困ったなぁ。
と言うわけで始まりました。
この話に出てきたトンネルちゃんと元ネタあります。
レンガ造りでかつて蒸気機関車がそこを走り、廃線になってから遊歩道として整備され今日まで至る舞鶴市のトンネル…分かる人には分かっちゃいますよねww
私も初めて見た時はこのトンネルも昔は線路だったのかと驚いたのを覚えています。
もし舞鶴に来る機会があったら是非行ってみてください。
さて、紅林君はとうとう異世界に入り込んでしまいました。彼の運命や如何に?
次回もお楽しみに!