戦闘狂が行く理想郷   作:烏鷺

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蒐集者と至る・其ノ弐

この日、高校の夏休み前の終業式を終えた陽務楽郎は何時もより少し重い足取りで帰路を歩んでいた。

 

「はぁ…なーんで俺はあんな事を言ってしまったんだ…」

 

深いため息と共に思い出されるのは昨夜の出来事。売り言葉に買い言葉で双子の弟である遊仁に今まで勝った試しのない勝負をふっかけてしまった。

 

「戦闘関連の賭けで勝ったこと一回もないのになんで俺は…」

 

シャンフロでユニークモンスター『夜襲のリュカオーン』と遭遇し呪い(マーキング)を刻まれた。4つの装備枠の内2つを封じられ神ゲーでクソゲーの展開を強制されてしまった。

 

それなりにショックを受けていた事も理由の一つなのだろうが理由はそれだけでは無い。

 

「遊仁に煽られると昔からムキになっちまうんだよな〜」

 

兄弟だからなのか楽郎も遊仁もお互いがお互いに煽られるとムキになりやすい部分がある。2人ともそれは理解しているが双子故に引くに引けないゲーマーとしての一線が同じ️であるため直ぐに乗ってしまう。

 

「はぁ…さっさとセカンディル周辺で金作らねぇとな……」

 

後悔しても遅すぎる。この手の賭けで遊仁が宣言通りに行かなかった事は無い。遊仁が勝つ事を前提に行動した方が良いだろう。

 

「まぁ、アイツの話し的にまだ貪食の大蛇は倒してないみたいだし、今日もいつも通りに筋トレとかしてからゲームするだろうし時間はあるよな」

 

金を貯めてセカンディルにて遊仁を待つ。時間的な余裕はあると判断して楽郎は到着した家の扉を開けた。

 

「ただいまー」

 

玄関の扉を開けてそう言うといつも通り先に帰ってきていた遊仁が自室の隣にあるトレーニングルームから「おかえりー」と声をかけてくる。

 

(ちなみに遊仁は放課後に部活の助っ人の予約がなければ夏だろうが冬だろうが雨だろうがランニングも兼ねて学校から家まで走って帰る。更に言うと毎朝、10km走ってる)

 

「相変わらずお早いお帰りで」

 

いつも通りの弟にそう呟いた楽郎はさっさと手を洗い私服に着替えるとVRヘッドギアを装着し『シャングリラ・フロンティア』の世界へダイブした。

 

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時間は少し過ぎセカンディル周辺で金を貯めたサンラクはセカンディルの入口で遊仁を待っていた。

 

「昨日何処で待つとか言わずにわかれたからな…此処で待つしかない」

 

そう言いつつ待っているサンラクだが道行く人一人一人にチラ見され「変態」「ネタ装備」等と言われて笑われる。

 

(早く来い遊仁!この状況はキツすぎる!!)

 

リュカオーンの呪いのせいで仕方がないがこの雰囲気はサンラクの精神的ライフゲージをガリガリと削っており居た堪れない気持ちになっていた。

 

遊仁の比較的早い到着を望みセカンディルへと続く道に視線を向けると一人のプレイヤーが此方へ走ってきているのが見えた。

 

「やっと来たか!」

 

そしてそのプレイヤーネームを見たサンラクは瞳を輝かせてそう声を上げた。

 

そのプレイヤーの名は「ユウヒ」。弟である陽務遊仁が使うプレイヤーネームであり3000万人がプレイする『シャングリラ・フロンティア』でもセカンディルにくる「ユウヒ」は間違いなく遊仁だと判断できた。

 

「おーい!ユウヒー!!」

 

サンラクは走ってくるユウヒに手を挙げて声をかける。

 

が、しかし

 

「ごめーん。また今度ねー」

 

ユウヒはサンラクにそう言うとセカンディルの中へ走っていってしまった。

 

「ちょい待てやー!!」

 

自分を置いて走り去ろうとするユウヒにサンラクはそう叫ぶとその背を追いかけ始める。

 

「待て、ユウヒ。サンラクだ!わかってんだろ!!」

 

「スミマセーン、ワタシノシリアイニソンナカッコウガシュミノヘンタイハイナイノデ、ヒトチガイデス」

 

「何カタコトの棒読みで応えてんだ!完全にわかってんじゃねぇかさっさと止まれよ!!」

 

ユウヒの応えにサンラクはそう叫ぶがユウヒは何処吹く風とそれを無視して裏路地へと入っていった。

 

サンラクも裏路地へ入るが少しするとユウヒは足を止め

 

「何の用だこの変態」

 

直球でサンラクを罵った。

 

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裏路地に入り足を止めた俺は直球でサンラクを罵った。まぁ、このくらいじゃ傷つかないと知っているからこそだが一応言いたかった。

 

「うるせー、事情は知ってるだろうが」

 

サンラクは俺にジト目でそう言って来るが本人もこの格好には思うところがある様でため息を吐いている。

 

「事情を知っててもそう言わずにはいられない格好だがな。どうせ初期装備を売った金でいい装備を買おうとしてたのにユニークモンスターのせいでその格好から変更出来なくなったんだろ」

 

「ソノトオリダヨ……」

 

半裸の鳥頭と言う格好と昨日聞いた情報を元にすれば何故こんな変態ファッションなのか大体の想像はつく。

 

「まぁ、このアバターが思い通りに動く世界なら半裸でも問題は無いだろ」

 

「でも、色々装備出来ないのはキツイ…」

 

俺のセリフに対する反応に切れがない。相当落ち込んでいる感じだ。だが、まぁ。それはそれとして

 

「貪食の大蛇、毒喰らわずに倒したぜ。賭けは俺の勝ちだな。サンラク」

 

賭けの報酬はキッチリ払ってもらわないとな。

 

「マジか…わかっちゃいたけどマジで毒糞に被弾せずに倒したんだな」

 

「毒糞…あぁ、あの尻尾から出た泥見たいなやつか。アレが毒だったんだな」

 

呆けた顔でそう言うサンラクにそう言うとサンラクは「どう言う事だ?」と言う表情になったので戦闘の詳細を説明する。

 

頭を殴りまくった事

 

丸呑みにされそうになったけど逆に口の中を切り裂いてやった事

 

毒を発射される"前に"スキルを使い攻撃し毒糞を貫き貪食の大蛇を撃破した事

 

「…………誰が出来んだよ。そんな倒し方」

 

そして、俺の説明を聞いたサンラクの感想がコレだった。

 

「お前にも出来るだろ?」

 

「出来ねぇよ。視界の端で尻尾が自分に向けられてるのが見えたとしても、直感に任せて咄嗟に攻撃なんて間違ってた時が危なすぎて出来ねぇよ」

 

俺のセリフにそう返したサンラクらは続けて「まぁ、その"直感"がお前の強いポイントの一つなんだろうけどな」と言うと溜息を吐いた。

 

「なんでもいいけど賭けは俺の勝ちだからな。なんか買ってもらうぞ」

 

「おぉ、金はある。手早く選んでくれ」

 

ドヤ顔でそう言った俺にサンラクは諦めたように両手を上げそう言う。聞けばこうなると思っていたらしく前もって金を貯めていたそうだ。

 

「良いね。なら、武器屋に行こうぜ」

 

俺はそう言って笑うと早速武器屋へと足を進めた。

 

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「ふっ」

 

サンラクとセカンディルの武器屋を覗いてから時間を過ぎ俺は四駆八駆の沼荒野で素材回収をしていた。

 

何故こんな事をしているのか、それはサンラクとの賭けに勝ち武器屋を覗いた時の事だ。

 

武器の購入にあたって武器屋のオッサンに買える武器を見せて貰ったところ、どの武器も俺が今持っている「致命の闘杖」と「致命の包丁」よりも性能で劣り過ぎていたのだ。

 

武器屋のオッサン曰く。「致命の闘杖」も「致命の包丁」もソコソコ希少な武器らしい。中でも「致命の闘杖」は希少中の希少のようで俺が持っているのを知ると見せてくれと懇願された。

 

結局、良い武器を求めるなら買うより作る方が良いと言う話になり俺はサンラクに四駆八駆の沼荒野に連れてってもらいこうして武器制作の為の素材回収に励んでいる。

 

(ちなみに、サンラクとはフレ登録をして四駆八駆の沼荒野で別れ今は一人だ)

 

「此処で採取できる鉄鉱石で武器が作れるって、話しだけど!」

 

武器の制作の為には此処で採取できる鉄鉱石が必要でいい武器なら5、6個は必要になるらしい。それを求めてさっきからサンラクの金で買ったツルハシを奮っているのだが

 

「全っ然出ねぇじゃねぇか!!」

 

採取を開始して1時間。出てくるのは石ころばかりで鉄鉱石は一つも出てきていなかった。

 

「こんな所でクソみたいな仕事してんじゃねぇよ!乱数の女神!!」

 

両手で中指を立てて笑っているであろう女神の姿が脳内をチラつき苛立ちが募る。夏休みに入った為四駆八駆の沼荒野にはどんどん人が集まっている。

 

「くそー、さっき来たプレイヤーはサクッとゲットして帰って行ったのに…」

 

プレイヤーの嬉しそうな声が聞こえる度にイラつきその怒りを贄にツルハシを振るっているが全然出てこない。

 

「後、2時間やっても出なかったら一旦ログアウトしよう」

 

日課を消化してから始めた事もあり既に日が落ちてきている。シャンフロはリアルと時間の流れが一緒なので後2時間もすれば完全に日は落ち夜になるだろう。

 

諦めやる気はないが一旦、飯食って風呂にも入りたい。乱数の女神にはクソな思い出しかないので長期戦の準備をしなければならないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、ツルハシを振り続けて2時間。鉄鉱石が出ることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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