戦闘狂が行く理想郷   作:烏鷺

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珍鳥発見

イレベンタル

 

去栄の残骸遺道を抜けた先にある街。残骸遺道のエリアボスであるオーバードレス・ゴーレムをゲーム内最速でクリアした俺はリュカオーンの呪い(マーキング)の効果でモンスターに襲われる事なくイレベンタルに辿り着いた。

 

「くそ…せっかく新しい街に来たって言うのによ…」

 

イレベンタルに建てられた家の屋根上、俺は目下走っていくプレイヤーを見送りながらそう呟く。

 

シャンフロでは新しい街に入る際、必ず門を通る必要がある。勿論、其処は俺以外にもプレイヤーが通る。必ず人目に晒されなければならない。

 

最早、予定調和と言うべきか、俺は門を通った所で黒狼(ヴォルフ・シュバルツ)のメンバーに見つかりいつも通りの鬼ごっこが始まった。

 

(にしても相変わらずの状態だな…。ここまで状態を放置となると()()()()()()()()()。サイガ-100の性格とこの状況は合わない気がする)

 

『鬼ごっこ』とは言っているが速攻で連中を振り切った俺は現状と黒狼(ヴォルフ・シュバルツ)のリーダーであるサイガ-100の性格が合っていない事に違和感を覚える。

 

いくらゲーム内トップクラスの派閥で人数が多いとは言えリーダーの言う事を全く聞いている様子がない。その事に首を傾げて屋根から降りると裏路地を通ってメインストリートから外れた道へと出た。

 

すると

 

「お、いたいた」

 

「やっぱりだったね」

 

俺の目の前にペンシルゴンとオイカッツォが立っていた。

 

「はぁ?」

 

いきなりすぎる展開に思わず声が漏れる。2人はそんな俺に笑顔(人の悪い笑み)を向けると近づいてきた。

 

「君からメール貰ったからさ、このイレベンタルでカッツォくんと一緒に待ってたんだよ」

 

「門の近くのカフェで待ってたら黒狼のエンブレムつけた連中が走って行くのが見えたからさ追っかけてきたんだよね」

 

そして、困惑している俺にその原因を解く様にペンシルゴンとカッツォが話し出す。

 

「そしたら君が居なくなったって騒ぎ出したからそのポイント付近で待ってたんだよ。君なら上に逃げるってカッツォくんが言うからさ」

 

話しながら2人は俺の両脇を陣取り俺の腕を取る。敵意は感じないので特段気にする事は無いが笑顔が不気味すぎて変な雰囲気になってきた。

 

「「さぁ!あの鳥頭をシバキに行こっか!」」

 

そして、更に良い笑顔を俺に向けてそう言うと俺を連れて無果落耀の古城骸へと歩き出した。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「ってかさ、お前らサンラクをシバくって言ってるけど居場所わかってんのか?」

 

イレベンタルを出て無果落耀の古城骸を歩く俺は隣を歩くペンシルゴンとカッツォにそう尋ねた。

 

「え?知らないよ?」

 

「ユウヒが知ってるんじゃないの?」

 

しかし、返ってきたのはこのセリフ。イレベンタルで俺を捕まえ真っ先に無果落耀の古城骸へと向かったのでサンラクの居場所を知っていると思っていた俺はため息を吐いた。

 

「んじゃなんで速攻でイレベンタルを出たんだ?情報収集しても良かったんじゃねぇの?」

 

「それでも良かったけどユウヒくんが一緒にいたら無理だったんじゃない?」

 

「俺たちもセットで追いかけ回されて時間食ってた可能性の方が高いよね」

 

ため息の後に出た文句にペンシルゴンとカッツォはそう応える。その言い分に俺は閉口すると2人に聞こえないように「反論できねぇ」と呟く。

 

「でも、ユウヒくんの言う通りサンラクくんの居場所が分からないのは問題だよねぇ」

 

すると、ペンシルゴンが足を止めてそう言った。そして、そのセリフを引き継ぐようにカッツォが

俺に向けて話しかける。

 

「ユウヒ居場所分かんないの?双子の絆的な何かでさ」

 

「分かるわけねぇだろ。ゲーム内だぞ此処」

 

訳の分からない事を言い出したカッツォにそう言いつつも俺は顎に手を添えて考える。

 

(サンラクからメールを貰ったのは2日前、ビィラックから新しい武器を貰ったのが今日か昨日…。でも、ビィラックの切れ具合的に今日の可能性の方が高いか?オーバードレス・ゴーレムのタイムアタックは恐らく彼奴もやってる。そして、その後のエリア攻略は1人では難易度が高い事を考えると…)

 

「そう言えば2人はサンラクから誘いのメールとか来なかったのか?」

 

行動パターンを考えつつ思考に没していた俺だったがペンシルゴンとカッツォに視線を向けるとそう尋ねる。

 

「「来てないよ(ね)」」

 

2人は首を横に振ってそう答えた。2人の答えを元に俺は再び考え始める。

 

(エムルちゃんと二人だけで攻略に挑んだ?有り得なくは無いがここら辺のエネミーはLv100を超えてる。俺達も既に何体かモンスターを倒した…紙装甲ロマン攻撃大好きな彼奴が2人だけで挑むには難易度が少し高い。1日空いた事とかも含めて考えると……………)

 

「多分、この辺にいるんじゃねぇかな?」

 

俺は顔を上げると2人を見てそう応えた。ペンシルゴンとカッツォはそんな俺を目を見開いて見つめると笑いだした。

 

「なんだよ」

 

「だって『分かるわけねぇだろ』って言ってたのにそうな事言うんだもん」

 

「だよね、やっぱり双子だよ凄い読みしてる」

 

笑いながら俺のセリフに応えてそう言う2人は本当に楽しそうに笑い、俺はバツが悪くなって頭を掻いた。

 

「お2人すっごく笑ってますね…」

 

笑うペンシルゴンとカッツォにミュウラは肩の上からどう言ったらいいか分からないと言った様子でそう呟く。

 

「あぁ〜もういいから!さっさと進むぞ、あの鳥頭シバくんだろ!?」

 

俺はミュウラの頭を撫でつつ笑っている2人にそう言うと先へ歩き出した。2人はそんな俺の後を追って歩き出しす。

 

「不貞腐れないでよ〜お姉さん謝るから」

 

「そうだよユウヒ。笑って悪かったって」

 

ペンシルゴンとカッツォはバツの悪い表情の俺の肩を叩いてそう言うが顔が未だに笑っている。流石に俺もこのままにはしておけない。

 

なので

 

「お前ら後でマジビンタな」

 

立ち止まって振り返りニッコリ笑って(目が笑ってない笑顔)そう言った。

 

「「すいませんでした」」

 

俺のセリフに2人は手首がネジ切れんばかりの手のひら返しを決めると黙って歩き出した。

 

「そんなに怖いかよ…」

 

そんな2人に俺はそう呟きつつ後を追う予想外の効果に「俺の事なんだと思ってんだコイツら」と思ってしまう。

 

「だって君、サイガ-100(モモちゃん)思いっきり殴ったじゃん」

 

すると、俺の呟きが聞こえていたのかペンシルゴンが振り向いてそう言ってきた。

 

「あれは仕方ねぇんだよ。アレが一番早く事態を収められる方法なんだからやるしかなかったろ」

 

「でも、アレはない。一番早いけど一番最悪な方法だったよ」

 

「インパクトは最高だったけどねぇ」

 

ペンシルゴンとカッツォは呆れた表情でそう言い2人のセリフに俺は「不可抗力だと」応えた。

 

「「違うから」」

 

しかし、声を揃えた2人のセリフによって俺の言い訳はぶった斬りにされまたバツの悪い顔をする羽目になった。

 

すると

 

ドォーンッ

 

遠くで爆音が響いた。

 

「今、なんか爆発した?」

 

「したな」

 

「したよね」

 

俺たちは顔を合わせてそう言い音がした方を向く。すると誰かがいるであろうポイントから煙が上がり始めた。

 

「誰かいるね」

 

近くに積み上がった瓦礫に登ったカッツォはそう呟き俺とペンシルゴンを見る。

 

「サンラク?」

 

そして俺はペンシルゴンを見て首を傾げてそう言うと彼女は「行こう」と言って走り出した。俺とカッツォはその後を追って音の発生源へと走っていく。

 

そしてしばらく走り

 

「「いた」」

 

俺達はモンスターと戦っているサンラクとサイガ-0を見つけた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

俺は別ゲーである『ネフィリムホロウ』のプレイヤーであるルスト、モルドからユニークモンスター(七つの最強種)である『深淵のクタァーニッド』の情報を得るために集合地点であるフィフティシアへと向かっていた。

 

弟であるユウヒにこの話しをしてから1日空いてしまったのはそのルストに捕まってしまったからであり予定に間に合わせる為に俺は先を急いでいた。

 

しかし

 

「此処から先はひとりじゃちょっとなぁ…」

 

俺は自分のマップを見つめてそう呟いた。此処は既に後半エリアだ。エムルは兎御殿に新しくやってきたと言うプレイヤーを足止めしてもらうために留守番をしてもらっている。

 

なので現状俺は此処から先を1人ではクリアしなければならない。

 

「ってもなぁ…正直1人でクリアはキツイよなぁ。ユウヒ誘うか?いやいやあいつと合流待って時間に間に合わねぇは洒落にならん。となると知り合い(フレンド)から選ぶ必要があるわけで…」

 

1人でブツブツと呟きながら誘いをかけられそうな面々を思い出す。まず思い浮かぶのはカッツォとペンシルゴンだ。しかし、彼奴らを誘うと後が色々と怖い。

 

「ダメだダメ!!」

 

俺は頭を振って2人を脳内から追い払うと

 

「ダメ元で頼んでみるか…」

 

3番目に頭に浮かんだ人物にメールを送った。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「お待たせしてすみませんでしたァァァっ!!」

 

イレベンタルの街中、俺は待ち合わせていたフレンドにそう言ってきた頭を下げた。

 

「い、いえっ私が1時間早く着いてしまっただけですから…」

 

そして、俺が頭を下げた空いてはアタフタしながらそう言う。その様子に「良かった怒って無さそう」と思い俺は改めて誘いに乗ってくれた事にお礼を言う。

 

「改めて誘いを受けてくれてありがとうございます。"サイガ-0氏"」

 

そう、俺が攻略に誘ったフレンドとはサイガ-0氏だった。クランの構図では情報による駆け引きを行う間柄だが、攻略となれば問題は無いだろう。俺が気おつければ良いだけの話だ。

 

「いえ、サンラクさんの攻略のお手伝いとあらば…」

 

サイガ-0氏は控えめな声で俺にそう応えてくれた。最初の邂逅の時のインパクトのせいで少し警戒しているがこう言う姿を見ると警戒が少し薄れる。

 

そして開口一番なぜ俺が謝ったかと言うとあるプレイヤー達の話を偶然耳にしてしまったからである。

 

「やっぱ威圧感あるよな」

「1時間前に通った時もいたよな」

「誰を待ってるんだろ?」

「やっぱり敵対クランのプレイヤーじゃね?」

 

防具屋で買い物を済ませた俺の耳に入ってきた会話。その会話に俺はアバターの体なのに血の気が引くような感覚になった。

 

「ショッピングしてる場合じゃねぇェェェェェェェェェェッ!!」

 

叫んでその場から走り出した俺は急いでサイガ-0氏の元まで行き今に至るという訳だ。

 

「それで今回はエリア攻略を手伝っていただける、という事ですが…報酬とかは何を…?」

 

俺はサイガ-0氏の顔色を伺いながら(見えないけど)そう尋ねる。個人的な付き合いとはいえ最大火力(アタックホルダー)に付き合ってもらうのだ。タダでとは行かないだろう。

 

しかし

 

「い、いえ!報酬なんて要りませんよ!フレンドじゃないですか!」

 

俺の予想を裏切ってサイガ-0氏はそう言ってきた。

 

「へ?」

 

「サンラクさんの為とあらば無償でご協力致します!!」

 

目が点になる俺を置き去りにして何故かハイテンションでそう言うサイガ-0氏

 

(無償の善意がいちばん怖いんだが!?)

 

俺は心の中でそう叫んで取り敢えずは納得してサイガ-0氏のとエリア攻略に進むことにした。

 

100話記念の番外何が良い?

  • 未来の陽務家の話し(弟)
  • 過去の陽務家の話し(家族旅行)
  • 過去の陽務家の話し(兄弟喧嘩)
  • R-18開拓
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