黒狗、大志、熱・其ノ零
「落とせ!ユウヒ!」
「応っ!」
5人での無果落耀の古城骸の攻略。マップで言う「後半エリア」を進むに当たってプレイヤーはそれなりの準備をして挑む。
しかし
「『
「来た来た!」
「流石だねぇ、2人とも」
「行きますっ」
俺達の場合は違った。
「混合拳気『
「
「
俺達の前に現れた大型のワイバーン、上空から攻撃を仕掛けてくる竜を無果落耀の古城骸に無数にある瓦礫とスキルを使ってその上から殴り落とした俺にそれを見越したように攻撃モーションに入っていたサンラクが攻撃を合わせて片翼を斬り落とす。
そして、飛ぶことが出来なくなった竜を拳と槍と大剣が襲う。俺とサンラクがいるにも関わらず襲ってきた事から見てもLv100越えは間違いないワイバーン。その中でも一際大きいと
「撃破!」
「やったな!」
「おっ、レベル上がった」
「私も」
「凄いですね。大型種をあっさりと」
「流石ですねユウヒさん!」
ポリゴン塊に変わっていくワイバーンを後目に俺達は笑いドロップアイテムを回収したり上がったレベルやスキル等を確認したりしていた。
「新規スキルは2つか…レベルが上がりにくくなってるからその分経験値を蓄積する時間があったはずなんだけど、スキルの獲得が思った以上に少ないなぁ」
すると、スキルの確認をしていたスキルが表示した一覧を見ながらそう言って頭を搔いた。
「シャンフロのスキルの成長と獲得は経験値の蓄積がレベルアップと共に反映される形ですが、それはあくまでも
「へぇ…そうなんだ。流石古参勢なんでも知ってるね」
ボヤくカッツォに応える様にそう言ったサイガ-0にカッツォはそう言ってウィンドウを閉じた。
「それにしても…後半エリアに出てくる大型のワイバーン、弱くはないハズなのに全然手応えのない相手だったね」
そして、ドロップアイテムをインベントリアに入れる俺とサンラクを見ながらそう言ってきた。
「まぁ、サイガ-0ちゃんも含めて全員のプレイヤースキルが高いからねぇ。特に君とサンラクくんとユウヒくんはプレイヤースキルがレベルに見合ってないし」
「確かにそうですね。サンラクさんとユウヒさんの連携、オイカッツォさんの的確な攻撃、とても始めたばかりとは思えません」
「ユウヒさん達なら当然です!」
俺達よりもプレイ期間が長いペンシルゴンとサイガ-0のセリフに俺達は「ふーん」と言いミュウラは何故か胸を張ってペンシルゴンとサイガ-0にそう言っていた。
サイガ-0もカッツォもペンシルゴンも俺とサンラクがレベルをカンストさせている事は知らないので兄弟揃ってセリフを聞き流していたが、サイガ-0のセリフによってその状態は破壊された。
「そう言えば、リュカオーンの呪いには付与されたプレイヤーのレベルよりも低いモンスターを寄せ付けない効果があったはずですがお二人のレベルは幾つなんですか?」
「「……………」」
古参勢故の知識なのだろう。リュカオーンの呪いの概要を知られていた事に俺とサンラクは少し驚いたが、それ以上にレベルの事を話さなければ行けない雰囲気を作られてしまった事に黙り込んだ。
「確かに…あのワイバーン凄く強かったよね。後半エリアって事を加味しても相当高レベルな気がするんだけど」
そして、そう言って頷くカッツォを見て目を細める。
((瞬殺したくせに何言ってんだ))
心の中でそう思いながらも俺達に向けられる視線に歯噛みする。正直『別のクランの人間に情報は開示出来ません』と言ってしまえばそれまでだが、今回俺達は助けられている側。無碍には出来ない。
「「Lv99です」」
俺とサンラクは一瞬だけ目を合わせると声を揃えてそう答えた。
「「「は(へ)??」」」
そして、3人の目が点になった。
「いやいやいやいやいや!幾らなんでも速すぎるよね!?」
「なぁにを隠してるのかなぁ2人とも??自主的に吐いた方が見のためだよぉ??」
「す、凄い……」
大声を上げるカッツォに
そして
「ちっくしょぉぉぉぉぉぉ!なんでお前らばっかりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
「相変わらず君達は予想の斜め上を行くねぇ…」
「金晶独蠍はともかく金晶蠍竜は聞いた事がありません…。完全未確認のレアエネミーと言うことでしょうか?」
再び阿鼻叫喚が訪れた(9割はカッツォだが)。モンスターの特徴やエンカウントの様子等を話した俺達は最後に
「「水晶巣崖を散歩すれば会えるぞ」」
と付け加えて話を完全に終わらせた。ペンシルゴンとサイガ-0からソロじゃ無理だと言われたが俺達はそれをやった側なので特に何とも思わない。
「お二人のヴォーパル魂には私も憧れます」
そして、俺達はミュウラからお褒めの言葉を貰ってエリア攻略を再開したのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ミュウラ!」
「はい!」
小型の四足歩行の小竜の群れを相手にしている俺達はミュウラの拍手と共に三体を同士討ちさせた。
群れを成すのは15体遭遇した時に襲ってきた小竜を俺とカッツォが2体倒し残りは13体となっていた。この小竜は翼がない分足が速い、オマケに連携が上手く俺達は最初防戦気味の戦いをしていた。
しかし、ミュウラの不義遊戯を解禁した瞬間にその状況は一転した。サンラクとカッツォを襲う小竜を相手に小竜とサンラクの位置を入れ替え同士討ちさせたり死角からの攻撃を回避させたりと回数制限があるとは言えやはり不義遊戯は最高のサポート魔法だ。
「ハハッすっげぇなこの魔法!!」
「サポート性能がバグってるねぇ!!」
戦いの中でその能力を体感したサンラクとカッツォはテンションを上げて連携が崩れた小竜を倒して行く。そして、俺も小竜を倒しながらミュウラに攻撃が及ばないように立ち回っていた。
「ユウヒくん、あの二人と一緒に前線に行って。ミュウラちゃんは私達が護るよ」
「任せてください!」
しかし、ミュウラを護る様に武器を構えたペンシルゴンとサイガ-0にそう言われて俺は群れに突っ込んだ。
(ミュウラの不義遊戯に一瞬で適応してきたサンラクとカッツォは流石と言う他ないが、すぐに慣れる事は不可能と判断して守り役に回った2人の判断力も流石だな…。滅茶苦茶戦いやすい!)
全体のレベルが高いからこその不満のない戦闘。サンラクやカッツォと同じくテンションがどんどん上がっていく。あっという間に小竜の数は残り2体となった。
不義遊戯の回数制限は10回。その最後をミュウラは俺とカッツォに使い俺達は最後の2体を倒して戦闘は終了した。
「ふぃ〜っ戦闘終了!」
ポリゴン塊に変わって消えていく小竜達を見送った俺達はサンラクのセリフに頷いた。そして、ミュウラを守っていたペンシルゴンとサイガ-0の元に戻るとミュウラを抱き上げる。
「ありがとなミュウラ。やっぱお前最高だ!」
「うん、本当に凄い魔法だった」
「流石、魔力極振りユニーク兎だな」
「ユニーク関連のNPCなだけはあるねぇ」
「私達プレイヤーが知らない魔法を当たり前のように…やはりシャンフロのユニークは凄まじい恩恵を齎しますね」
「うふふっ、お役に立てて嬉しいです!」
俺達は口々にミュウラを褒め倒し頭を撫でる。ミュウラはそんな俺達のセリフに破顔し口をもにゅもにゅさせている。
「にしてもさっきの小竜はやばかったね。モンスターの癖に連携がしっかりしてた。ミュウラちゃんの魔法で混乱状態にさせて無かったらやられてた可能性大だったよ」
そして、カッツォは先程の戦闘を思い出しつつそう言う。確かにその通りだ。リアルの恐竜のラプトルにもにた姿と行動を取ってきたモンスター。後半エリアということを差し引いても強かった。小竜だけじゃないワイバーンのレベルも上がっている。
恐らく俺とサンラクが同じ場所にいる事が原因だろう。リュカオーンの呪い持ちが同じ場所にいることで
(言ったら色々煩くなりそうだから言わないでおくか…カッツォとペンシルゴンの為にもなってるしな)
俺は頭から余計な考えを消してそう思う事にした。そして、既に暗くなってしまった辺りを見回す。
「エリア攻略を5人で始めた時間が少し遅かったりモンスターが強かったりで時間が経ちすぎたな。もう夜だ」
「確かにラプトルもどき共との戦いで正規ルートからも外れてるし月明かりが通っているとはいえ早くルートに戻った方がいいかもな」
全員に向けて言ったセリフにサンラクがそう応える。すると、ペンシルゴンはマップを表示し俺達へと見せてくれた。
「私達が今いる場所は此処、正規ルートから外れた場所、このまま真っ直ぐルートに戻る手もあるけどマップ上で見た時に斜めに進む方がフィフティシアには早く着けるね」
「サンラク曰く時間が無いみたいだしその方が良いかな。言ってる事が本当になら、だけどね」
「疑うのかよ?アレだけ俺の関節極ておいて?人として大丈夫か?」
ペンシルゴンのマップを見てジト目でサンラクにそう言ったカッツォはサンラクの返しによってじゃれあい始めた。まぁ、いつも通りのやり取りなので俺達は無視だがサイガ-0は何かを訴える様に俺達をチラチラ見ている。
「まぁ、あの馬鹿2人は置いておくとしてユウヒくんはカッツォくんの案で良いかな?」
「あぁ、リミットが決まってるんだ。早く着くに越したことはねぇ」
「うん、了解」
俺とペンシルゴンはそう言い合い頷く。
そして
「じゃれあいは終わり。早く行くよ」
絶対零度の視線をサンラクとカッツォに向けてそう言った。
「「はい」」
遊んでいた2人はすぐに動きを止めて立ち上がる。統率された動きに俺は呆れた表情になりつつもサイガ-0に「大丈夫ですよ」と言ってペンシルゴンの案内で歩き出した。
そして、このルート変更が俺の、いや俺とサンラクを『因縁』に引き合せる事になるのをこの時の俺達はまだ知らない。
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