『ユニークモンスター』
『夜襲のリュカオーンに遭遇しました』
シャングリラ・フロンティアを始めて日の浅いうちに聞いたゲーム内アナウンス。あの時の記憶は今でも覚えている。
当時苦戦していたレッドキャップゴブリンを砕き散らし現れたリュカオーン。その強さに興奮し
結果、絶対強者を前にスタミナ切れを起こすという前代未聞の醜態を晒しリュカオーンの気まぐれでリュカオーンの
(あの時、俺の攻撃は全く効いていなかった。スタミナ切れを起こすのに気付かないほどに熱中した。いや、
リュカオーンとの戦いを振り返りあの時の高揚はあの時の自分の状況、状態による所が大きかったのだろうとずっと思っていた。
(なんて事だ!!)
今、
(全身の毛が逆立つ様な『威圧感』…レベルがカンストした今でもはっきりとソレを感じる!否応なく気分が上がっていく!また!また!!お前と戦えるのかッ!!)
低レベルだろうが高レベルだろうが関係ない。強制的にボルテージが上がるのが解る。
「クハっ!」
俺は自分が地面に叩きつけたプレイヤーの事も忘れてリュカオーンを見て口角を歪めた。武器を構え腰を落とす。
既に、
しかし
「貴方達はそこで見ていなさい!」
「ダメだよユウヒくん!」
「動くな!ユウヒ!」
「今はダメです!ユウヒさん!」
「行けません!」
「ダメだユウヒ」
そんな俺を抑える様に6人の声が響いた。
「!」
その声に我に帰った俺は周りを見て驚いた。俺に向けてミュウラ以外の全員が武器を構えていた。
「私達『SF-Zoo』は今日の為に準備をしてきたの!私達の邪魔をしないで頂戴!貴方達はそこでじっとしていなさい。私達の本気がどれ程のものか見せてあげる!」
サンラク達より高い位置にいるAnimaliaが俺達、いや俺に向かってそう叫ぶ。そして、それを支援するようにサンラク、カッツォ、ペンシルゴンが話し始めた。
「そうだぜ、ユウヒ。あのリュカオーンを狙ってきたのはAnimalia達だ。ゲーム内とはいえ獲物の横取りは御法度。今は大人しく見ていようぜ」
「サンラクの言う通りだよユウヒ。今此処でお前が飛び出せば『SF-Zoo』がリュカオーン相手に立ててきた戦術が総崩れする。お前が散々嫌ってきたゲーム内での迷惑をお前がかけることになる」
「ユウヒくんがリュカオーンと戦いたいのは理解してるよ。でも、自分がやられて嫌な事を他人にやったら…この前君がAnimaliaちゃん達に言った事がそっくりそのまま自分に帰ってくる事になるよ」
三者それぞれが俺に言葉を投げかける。それを聞いた俺は長い息を吐くと両手で頬を叩いた。
「っし!………落ち着いた。ありがとな3人とも」
翠杖をインベントリに収めて腕を組む。こうでもしてないとまた疼きそうだからだ。そして、Animaliaを見上げて口を開いた。
「すまなかった。邪魔をするところだった、リュカオーン相手に何処までやるのか見せてくれ」
「そうだな。最強種の行動パターンを読み解いた熱量、挑む為に整えた準備。存分に見せてもらおうじゃねぇか」
俺のセリフを引き継ぐようにサンラクがそう言い俺と同じように腕を組んだ。俺達2人の様子を見て邪魔されることはないと判断したのか、Animaliaは未だに沈黙を保っているリュカオーンへと向き直った。
「良いわ。じっくりと見てなさい…私達『SF-Zoo』のやり方を」
セリフと共に緊張感が一段高くなる。しかし
「そうだAnimaliaちゃん」
そんか緊張感をぶった斬る様にペンシルゴンがAnimaliaを呼んだ。
「何?」
出鼻をくじかれたAnimaliaが明らさまに不機嫌な様子で応える。ペンシルゴンはそんなAnimaliaにニッコリ笑うと
「『あの時』の話は無かったことにするって事で良いのかな?」
ただ一言そう告げた。
「………………………………えぇ、良いわ。私達は此処で自分たちの念願を叶えるのだもの」
Animaliaは長い逡巡の後に再びリュカオーンへと視線を移してそう応えた。ペンシルゴンはそんなAnimaliaに何故か笑顔で頷くと「そっかぁ」と呟いた。
(((絶対何か悪巧みしてるな…)))
その呟きに俺、サンラク、カッツォは心の中でそう呟く。だが
「『SF-Zoo』!!作戦開始!!想定は
ペンシルゴンに寄っていた気はAnimaliaの号令によって彼女たちへと引き戻された。
「「「「「「「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」」」」」」
Animaliaの号令にクランメンバーが応えて動き出す。そして、プレイヤーの動き出しを待っていたかのようにリュカオーンも動き出した。
「盾構え!」
「「「「「応!!」」」」」
Animalia達を護る様にタワーシールドを持ったプレイヤーが5人前に出た。プレイヤー達はスキルを発動したのかバフのエフェクトが掛かる。
「なんだありゃ、重量級のシールド2個持ちってマトモに動けねぇだろ」
「スキルによるアシストで無理矢理動かすようですね」
「アレが有名な『SF-Zoo』の本気モードか…」
「盾が5人、魔法職が10人…極端だね」
「アレでは魔法攻撃しか出来ないですね…。夜の帝王相手にそれでは意味がありません」
始まったリュカオーンとAnimalia達の戦闘を見ながら俺達は邪魔にならない位置へと移動する。カッツォとミュウラの言葉通りあまり有利に立ち回れるとは言えない部隊編成に俺は
「最初から『戦う』気はねぇんだよ」
そう言った。
「何?どういう事?」
「ですか?」
俺のセリフにカッツォとミュウラが首を傾げる。そんな1人と1羽に俺は説明を始めた。
「クラン『SF-Zoo』は俺達や『
「「なるほど」」
クランの性質を考えて出した考えをカッツォとミュウラに伝えると2人はそう言って頷いた。すると隣に居たペンシルゴンが「流石だね」と呟き言葉を続けた。
「クラン『SF-Zoo』は動物やモンスターを愛でる為だけにプレイヤーが集まったクラン。だから、ユウヒくんがさっき言ったようにプレイヤーの構成はデバッファーとそれを護るシールダーで固められているんだよ。中でも今やろうとしてる『ドラゴン想定』の作戦は有名でね、プレイヤーを1人も死なせる事なくドラゴンを『捕獲』した実勢もある作戦なんだよ」
「へぇ…」
「スゲェな」
「凄いね」
ペンシルゴンの説明に俺とサンラク、カッツォは各々反応を示した。そして
「来たぞ!」
そんなAnimalia達に向かってリュカオーンが接近し前足を横に払った。その足は盾を構えたプレイヤーの1人に当たりゴルフボールの様にプレイヤーを弾き飛ばす。
「マジか…」
瓦礫にプレイヤーが猛スピードで激突し瓦礫に大きな皹が入る。リュカオーンをまじかで見るのが初のカッツォは飛ばされたプレイヤーを目で追ってそう呟く。
「フォーメーションを崩すな!」
「即死でなければ問題なし!!」
しかし、シールダー達は吹き飛ばされた仲間を一瞥する事もなく空いた場所のカバーを始めた。
「護り特化なのは装備やらバフやらを見て確定時てたが動きが秀逸だな」
「あぁ、リュカオーンの動きを上手く誘導して行動範囲を狭めてる」
その動きにサンラクと俺はそう呟く。さっきプレイヤーの1人が言っていた様に「即死」でなければ本当に問題がないのだろう。
各々がリュカオーンの動きを狭め無駄に行動範囲を広げないようにしている。そして、そのお陰で魔法職の準備がやりやすくなっている。
「準備完了です!」
「よし、第1陣、放てぇ!!」
そして、それを証明するように陣形に1ミリの崩れもなくリュカオーンに向けて魔法が放たれる。
「「「「「【アトラスバインド】!!」」」」」
杖から放たれた三角形の魔法がリュカオーンへと向かっていく。リュカオーンは当たり前のように躱すがシールダー達の働きで動きが制限された結果2発の魔法を前足に喰らってしまった。
「よしっ、2発明中!!」
メンバーの1人が喜んで声をあげる。しかし
「グ………!」
リュカオーンは自身の前足を縛る魔法に噛み付くと一瞬で引きちぎった。
「うそ!一瞬で!?」
魔法が簡単に千切られた事に驚きを見せるプレイヤー
「怯むな!第2陣畳み掛けなさい!!」
しかし、Animaliaはそんなプレイヤーを一喝するとそう指示を出した。
「「「「「【アトラスバインド】!!」」」」」
それに応える様に2回目の魔法が放たれた着弾した魔法を噛みちぎっていたリュカオーンに命中する。
「「「補強魔術入ります!!」」」
その瞬間、1回目に魔法を放ったプレイヤー達が動き出しリュカオーンを縛る魔法を強化し始めた。
「へぇ、凄いね。動きに無駄が全くない。理想的なタイミングでの補助だ」
その動きは
「アレが『SF-Zoo』の基本的な動きです。ドラゴン想定はシャンフロでも屈指のタンクがヘイトを引き付け魔法職がデバフを付与します。そして…」
感嘆する俺達にサイガ-0が補完する様にそう言い何かを見て途中で言葉を切る
すると
「ユニークウェポン『冥府の鍵杖』を装備時のみ発動可能な固有呪術!」
Animaliaが装備の杖を変更して詠唱を始めた。
「『昏らき御手で掴め』!!」
「【
詠唱終了と同時に漆黒の巨腕が地面から伸びる。腕はリュカオーンの頭と身体を掴むと地面に引きずり倒した。
捕縛、補強、捕獲。
1つ目のピースがハマってからの怒涛の畳み掛け。この段階まで持っていくためのプレイヤー達の補助も見事と言う他無かった。
「スゲェな」
俺はAnimalia達のレベルの高さに1人そう呟く。そして
「『夜襲のリュカオーン』…………完全捕縛成功!!」
Animalia達は地面に伏せさせられたリュカオーンを前に喜びを爆発させてはしゃぎ始めた。
「すっごい!スクショ撮っとこ!!」
「私も!!」
「こんな光景見たことない!!」
「最高!!」
「リュカオーンちゃーんこっち向いて!!」
パシャパシャと音がなり始めプレイヤーが餌を前にした犬と様に動き回る。
「こらっ、そんな暇はないでしょ!1分しか拘束は持たないのよ!速くリュカオーンに攻撃を加えてラビッツへのフリーパスを手に入れられるか試すのよ!………でも、データは後で送りなさい!」
そんなプレイヤー達にAnimaliaは欲望を少し垂れ流しにしながらもそう声をかけて短剣を握った。
「どうすんのお前ら?このままだと彼奴ら条件達成したりするんじゃない?まぁ、俺たちも詳しい内容は知らないからなんとも言えないけど」
その様子にカッツォは俺とサンラクを交互に見ながらそう言ってくる。
「「いや、それはねぇ」」
しかし、俺達はそう断言した。
ユニークシナリオ「兎の国からの招待」。これのハッキリとしたフラグは解っていないが
(レベルや武器、人数が関係している可能性が大いにある。それに
未だに『ヴォーパル魂』については理解出来ていなかいがコレは違うと何となく解る。
それに
「「…………」」
カッツォに断言した俺とサンラクはお互いに視線を合わせると頷いた。
(お互い考える事は同じか…)
「何か気がついたの?ユウヒくん」
心の中でそう言った俺にペンシルゴンが声をかけてきた。俺はペンシルゴンに視線を向け、次にリュカオーンを見ると「よく見ろ」と呟いた。
「この状況にも関わらず
そして、リュカオーンを見たペンシルゴン、カッツォ、サイガ-0にそう言う。その一言で俺が何を言いたいのか理解したのか3人は目を見開いた。
「流石は夜の帝王ですね…覇気が薄れません」
「あぁ、つまりこの状況はリュカオーンにとって屁でもねぇって事だ」
浮かれている『SF-Zoo』のメンバーと沈黙を決め込むリュカオーンを見て俺とミュウラはそう言い合う。
「彼奴にはこの状況をひっくり返す
そして、サンラクがそう言い。ペンシルゴン達は息を飲んだ。
そして
エリアから光が無くなった。
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