ユウヒとカッツォとペンシルゴンが走り出した。俺は遅れて武器を取る。ペンシルゴンがリュカオーンに挑みに行ったんだ。恐らく他のクランの事は彼奴が何とかするんだろう。
(もう俺が立ち止まる理由はない…っ!)
「サンラクさん」
湖沼の短剣を握り踏み出そうとした所で俺はレイ氏に呼び止められた。呼び声に応えて振り向けばレイ氏が俺をじっと見ている。
「どうかしましたかレイ氏?」
俺はレイ氏にそう言うが彼は少しすると首を横に振った。
「……いえ!なんでもありません!迷いが晴れたようで良かったです!」
「!」
レイ氏のセリフに俺は驚いてしまった。どうやらレイ氏から見てもわかってしまうほど俺は情けない面を晒していたらしい。
(チっ…ユウにああ言われても仕方ねぇな)
「すみませんレイ氏、俺心配されるくらいしょぼくれた顔をしてたみたいですね…。でも、大丈夫です!あの犬っころと『下らねぇ』なんてことほざいたユウヒに目にもの見せてやりましょう!!」
ユウの言葉通りの面を晒していた時の自分をぶん殴る様にそう言い身体に活力を漲らせる(まぁ、アバターの身体だから錯覚みたいなもんだけど)。
「はいっ!!」
そして、俺の言葉にそう応えてくれたレイ氏と一緒に俺はリュカオーンに向かって走り出した。
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(良かった…何時もの陽務くんに戻ってる。やっぱり兄弟ってすごいなぁ…)
辛そうな表情をしていた陽務くんが心配になって声をかけた私はすっかり立ち直ってしまった陽務くんを見てそう思った。
色々な事を考えて迷っていたであろう陽務くんを1つの言葉と行動で立ち直した。学校でも凄く仲が良いし勉強も協力してやっていると聞いた事がある。
血の繋がった兄弟なんだから当たり前だけど、凄く羨ましいと思ってしまう。けど、今私は彼の隣で一緒にプレイ出来ている。
(それも特別な強敵と!こんなに嬉しい事はありません!!)
「目にもの見せてやりましょう!!」
「はいっ!!」
そして私は完全復活した陽務くんに大きな声で応えて一緒にリュカオーンへと踏み出した。
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雷光が散る。あの時とは比べるべくもないスピードで俺はリュカオーンに迫った。リュカオーンはそんな俺を迎える様に右前足を振り上げて猛スピードで振り下ろしてきた。
「フっ!」
俺は兎月【満月】でその前足をパリィすると安地である腹下へ向けて走った。しかし
「お?」
リュカオーンは俺が走り出した瞬間に飛びず去った。まるで、俺の目的が解っているかの様な動き。
「クハっ!やっぱりユニークモンスターは他とは違うな!」
リュカオーンにそう言った俺は当然体勢の整わない所を攻めるべく転進する。しかし、リュカオーンは影から分身を発生させると俺へと攻撃してきた。
方向転換の瞬間を狙った分身での攻撃、咄嗟に身体を捻り兎月で弾く、だがリュカオーン本体はそれを見越したかのようなタイミングで噛み付き攻撃を仕掛けてきた。
しかし
「前とは違うんだよ!」
俺はスキル「ピンボール」を発動すると閉じられる顎を回避して上へ跳んだ。
「おいおい、
空を足場に移動し最短距離で首へと接近し兎月を叩き込む。狼の形をしたモンスターなだけあり首は弱点なのだろうクリティカルが発生するが、あの時と同じでダメージが入ってる感じがしない。
「やっぱりスキルか魔法を乗せた攻撃じゃねぇとまともにダメージは入らねぇか?」
ピンピンしているリュカオーンにそう呟き二撃目を加える。同じ部位への攻撃で再びクリティカルか発生するがそれを更に続ける事を許すリュカオーンではない。
俺を払い落とす様に分身が左前脚を横薙ぎに振るってくる。俺は何時もの如く兎月でのパリィの体勢に入る。
しかし
「マジか…!?」
分身は兎月と前脚の接触の瞬間に身体を溶かすと目の前から消えた。そして、奴の身体の一部が目眩しとなる。
一瞬の視界不良、その一瞬で死を予感するには十分だった。
緊急回避で上へと逃げる俺だったが頭上が影で覆われた。リュカオーンは俺の回避パターンを予測していたかのように既に右前脚を振り上げていたのだ。
「!!」
直撃は避けられないであろう攻撃、しかし
「俺も、混ぜてよっ!!」
上から下へと振り下ろされた右前脚はカッツォの横からの拳打で弾き飛ばされた。
「遅せぇよ」
「うるさいよ!」
やっと合流してきたカッツォにそう言って笑う。カッツォはそんな俺に文句を言いながらもリュカオーンへ構えを取った。
「相当賢いモンスターだね。正直、何時でも殺されそうな攻撃ばっかだったよ」
合流するまでに見ていたのだろう俺の攻防にそう言い「まぁ、心配はしてないけど」と言ってきた。
「めんどくせぇ彼女かよ」
「うっさい、マジで黙れ」
リュカオーンを前にしているとは思えない会話。癪だがカッツォの強さを良く知っているからこその安心感がある。
「奴の攻撃パターンは前に話した通りだ。覚えてるよな?」
「勿論」
「此処は瓦礫だらけだぞ」
「それも
互いに皆まで言わずとも
やはりと言うべきか、今のところ1番攻撃を与えている俺にリュカオーン本体と分身が向かってくる。俺は効果時間が残り少ないピンボールを使いジグザグに移動すると柱のような瓦礫の前でリュカオーンを迎え撃った。
(影から影への瞬間移動は影の位置を把握していれば回避は容易い!問題は影からの出現に
消えた次の瞬間に現れるわけではなく出現にまでディレイを挟んで来るリュカオーンの攻撃に細心の注意を払いつつ攻撃を弾いていく。
(此奴っ!俺の行動範囲を限定するように分身を使ってやがる!)
俺を走らせると不利だと考えているのか中々フィールドを広く使った行動と攻撃をさせてくれない。その事を心の中で愚痴っていると
ドンッ!
重い音が響き瓦礫がリュカオーン本体の頭上に倒れて来た。
「ナイスタイミング!」
分身が上から倒れていく瓦礫を噛み砕く為に現れて瓦礫を粉砕する。本体も散らばる破片に片目を瞑り死角が発生した。
俺はその隙に壁の1部であったであろう瓦礫を踏み跳ぶと1番大きい瓦礫を本体に向けて殴り飛ばした。
本体はその瓦礫を頭を振って破壊するがそこで出来た死角を見逃すカッツォでは無い。
「隙だらけ、だよっ!!」
回り込むようにリュカオーンの腹の下へ入ると上に跳び腹に連撃を叩き込んだ。
「お前は俺だ!」
そして、分身を牽制する為に俺が兎月を横に振るい顔面を打ち抜く。
(サイズ感の良い障害物はあった方が良いな!)
カッツォの策が上手くハマりそれに確かな手応えを感じた俺は武器を変更する。
「何それ!?」
「新武器だ!エリアボスに続き今度はユニークモンスターだ。頼むぜ
カッツォのセリフに応えながらも出したばかりの金晶竜骨でリュカオーンの攻撃を弾く。
「良いなぁユニーク!良いなぁ!!」
「めんどくせぇ拗らせ方してんなよ!集中してねぇと一瞬で喰われるぞ!」
リュカオーンの攻撃を躱しながら俺が持つ金晶竜骨を睨み叫ぶカッツォに俺は分身の攻撃を弾いていく。
「耐久性も問題なし!流石だ、ビィラック!!」
リュカオーンの攻撃を迎え撃っても武器耐久値が低下しない金晶竜骨に笑って叫ぶ。俺への攻撃が全て弾かれた分身は再び身体を溶かすと目の前から消えた。
(消えたなら本体を狙うまで!)
俺はすぐに走り出すとカッツォを倒そうと攻撃を仕掛けているリュカオーン本体へと接近した。
「おらッ!!」
カッツォに攻撃を仕掛けるリュカオーンを横から強襲する。竜骨の刃はリュカオーンを捉えることは無く瓦礫に刺さった。リュカオーンはバックステップの要領で攻撃を躱し着地した瞬間に俺とカッツォを噛み砕くために口を開けて迫ってくる。
「【
俺は音声認識で刃が刺さった部分に結晶を作り出す。刃が押し出される一瞬に合わせて後ろへ跳ぶ、ギリギリではあったがリュカオーンの攻撃を躱しカッツォも上に跳ぶことで攻撃を回避した。
(なんだ?絶好のタイミングなのに分身が出てこない?)
俺は着地までの間の僅かな時間で月光が作り出した影の位置を可能な限り把握していた。それは分身が出た瞬間に反撃をする為であったが俺とカッツォが体勢を崩しているにも関わらず分身は出てこなかった。
「攻めるよ!ユウヒ!!」
リュカオーンの行動に疑問を持っていた俺だがカッツォの声で現実に戻った。恐らくカッツォも俺と同じ事を考えていたはずだ。しかし、それに構っている余裕を見せる方が不利だと判断したのだろう。
「わかってる!!」
カッツォは顔、俺は身体互いに別々の部位への攻撃を選択し攻撃を加える。瓦礫を発射台代わりにしたカッツォの拳は正確にリュカオーンの鼻先を捉え俺の竜骨の刃は後ろ右脚の関節を切り付けた。
「ダメージ入ってる気がしないんだけど!?あの毛硬すぎじゃない!?」
「ユニークだぞ!それくらい当たり前だろ!」
HPが果てしない感じがするのはそうなんだが体毛が硬すぎる。金晶竜骨で斬っているのに感触が鉄の様だ。
(此方の手が痺れそうなくらい硬いな…)
(その防御性、俺とサンラクに分けて欲しいぜ…)
リュカオーンのせいで防御を捨てざる負えなくなった現状に心の中でそう呟く。そんな中、リュカオーンは一際大きい瓦礫の上に跳ぶと俺とカッツォを踏み潰せる位置で飛び降りて来た。
俺達は当然それを躱すがリュカオーンが着地した瞬間に舞った砂埃で視界が悪くなった。
「「後ろ!!」」
そんな中、俺とカッツォの声が響いた。
視界が悪くなった瞬間に俺は味方の把握を優先しカッツォが居た場所に視線を向けた。そして、カッツォの影に迫るリュカオーンの影を見た。
そして、カッツォも立場が逆転した同じものを見たのだろう。カッツォの力量を知っているからこそ俺は言葉を疑わなかった。すぐさまインベントリアの中へと入りリュカオーンの強襲を回避した。
「「危ねぇ!」」
俺が入ると同時にカッツォも入ってきた。俺達は声を揃えてそう呟き外へ出た。少し薄れた砂埃の中で俺達を襲たリュカオーンを確認する。
インベントリアの中に入っていたのは3秒ほどだったお陰でリュカオーンがいた
「カッツォ」
「解ってる」
リュカオーンが居た位置、それを見た俺とカッツォはそう言い合い頷く。リュカオーンが落ちてきた瞬間、俺とカッツォは散開し距離を取った。そして今、リュカオーンの本体と分身は俺達がいた場所から少し離れた場所で俺達を見ている。
だが、足跡からリュカオーンは影移動で俺達を襲ってきた事がわかった。それ自体はなんの問題も無い。何度も見たリュカオーンの能力で俺もカッツォも警戒していた。
問題なのは
「あの野郎…
そう、俺達が居る所に出来た少し盛り上がった足跡、それはリュカオーンがつけたモノで問題はそれが
俺達はリュカオーンが飛び降りた瞬間に散開した。俺達のどちらかとリュカオーン本体の距離は離れていた事になる。しかし、足跡は俺達が居る場所にしっかりと残っている。
「相当知能の高いモンスターだとは思ってたけど…ここまでとはね!!」
俺達は影移動が出来るのは分身のみだと思っていた。それは『SF-Zoo』との戦いから今までに至るまで影移動をしていたのが分身だけだったからだ。
つまり、今の今まで本体も影移動が出来る事を俺達に隠していた。俺とカッツォにインベントリアがなければ今ので殺られていた。
「最高だな!」
カッツォのセリフに応える様に俺はそう言い俺達を見て口角を上げるリュカオーンを見る。リュカオーンは分身共々俺達を狙う様に上体を下げると
「「グアッ!!」」
口を開けて飛び出してきた。俺とカッツォを迎え撃つために構えを取る。しかし
ガンっ!
俺達とリュカオーンの間を縫うように槍が飛んできた。槍はリュカオーンの影に突き刺さりその瞬間にリュカオーンの本体の動きが止まった。
カッツォが分身の攻撃を躱す横で俺は動きが止まったリュカオーンに棘尽雷を放つ。パリッと音が鳴り本体を稲妻が穿いた。
影に刺さっていた槍が砕けそれと同時にカッツォを攻撃していた分身が消える。身体に雷光が弾ける本体が後ろへ跳んで俺から距離を取った。
リュカオーンの動きが止まった瞬間に反射で棘尽雷を放った俺だがついつい槍が飛んできた方向に視線を向けてしまう。
「お待たせ♡」
誰が槍を、など問い掛けるまでもなく視線の先にはウィンクを飛ばすペンシルゴンがいた。
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