「動くな!!」
飛び上がったリュカオーンから視線を外し今にも動き出しそうなサンラクとカッツォに叫ぶ。突然の大声に2人は止まり怪訝そうに俺を見てきた。
しかし、辺り一帯が暗くなった瞬間に俺のセリフの意味を理解したように俺から視線を外して辺りを警戒し始めた。
サンラクの連撃を受けながら
(あの時、雲が月を覆い始めてるのを見てなかったらヤバかった)
心の中でそう呟きながら当たりを警戒する。今、月は雲で覆われエリア全体が『暗闇判定』となっている。既に跳んだリュカオーンの姿はなく何時でも俺達を強襲できる状態にある。
(誰を狙う……)
暗闇に覆われたフィールドで俺達は1歩も動かずに集中力を極限まで高める。分身を含めて同時に2人は仕留められる。
インベントリアに逃げることは出来ない。それは俺とサンラクとカッツォしか出来ないからだ。そして、それをすればペンシルゴンがフィニッシャーとして定めたサイガ-0が狙い撃ちにされてしまう。
高まる緊張感の中で僅かな地面を削るような音が耳に届いた。
(来る!)
狙いは俺と誰か、片方が誰かは分からないが俺は勘で体勢を低くする事で初撃を躱した。少し遠くで切迫したサンラクの声が聞こえる。
恐らく、狙われた片割れはサンラクだろう。次の攻撃が来るが音を頼りに走り音が聴こえた地点から距離を取った。再び音が聞こえる警戒を続け当たりを見る。
(今のは━━━━━━━)
視線を動かした瞬間に捉えた。纏雷の雷光で照らされた爪のようなモノ。後ろへステップして躱し立ち止まる。
(間違いなく見えた!一瞬だったが確実に!)
考えてみればそうだ。暗闇と同化するなら照らせば見える。だが、それは俺だけしかも死角から責められれば俺も即死だ。今まで躱せてたのは
(だから、体勢を低くして頭と首を守ったしステップで躱せた。運が良かっただけ!)
対策しなければすぐに全員殺られる。
未だにサンラクの声が聞こえるのでまだ死んではいない。だが、俺もサンラクもこの運が何時まで続くかはわからない。
暗闇になってからもうすぐで11秒、この短時間でこの精神的なプレッシャー。かなり不味い。
(これしかない!頼む届いてくれ!)
俺は心の声と共に竜骨を地面に刺し言葉を発する。
「【
金晶竜骨の能力で造られた金水晶。月明かりがないので光り方はイマイチだが目印にはなる。
「【
可能な限り最速で水晶を叩き成長させる。次の瞬間、音が響き俺は思わず後ろに跳んだ。それと同時に成長した水晶が砕ける音が聞こえる。
遠くに散らばり地面で跳ねる音も
「ミュウラぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
それを聞いた瞬間に叫んだ。この状況下での大声。狙ってくれと言っているようなものだか覚悟の上だ。
リュカオーンが出てくる音と4回の拍手の音は同時にに響いた。それと同時に俺はリュカオーンの攻撃を回避しており俺とサイガ-0は少しだけ月明かりに照らされた場所に居た。
「これは……?」
月を覆う雲の隙間から月明かりが漏れている。その月光に照らされながら状況が理解できないと言った声色でサイガ-0が俺に問いかけてきた。
「俺の相棒の魔法だ。とりあえず俺達は助かった。まぁ、運が良かっただけだよ」
俺はサイガ-0の問にそう答えつつ急いで竜骨を振るう。
「【
「【
作ると同時に成長させ破壊する。
「ミュウラ、今度は2人を頼む!!」
破壊した瞬間にそう叫びその直後に2回の拍手が鳴った。すると、サンラクとカッツォが2つに割った水晶と入れ替わる。
「今のってミュウラちゃんの魔法か!助かった!!」
「今何処にいるのか分からないけど後で頭撫でさせて!!」
現状把握を一瞬で済ませた2人は助かった事に喜びながらもそう言う。しかし、そんなことを言っている場合ではない。
「早くどうにかしねぇと今度はミュウラがやべぇぞ」
そうだ。俺達が助かった事に拍手が関係しているのは高い知能を持つリュカオーンなら解っているだろう。
そして、暗闇はリュカオーンの狩場。ミュウラの位置など既に把握しているだろう。ミュウラとペンシルゴンが危ない。
「任せろ」
しかし、俺のセリフにサンラクはそう言うとカッツォに「見ても怒るなよ」と言いインベントリアの中に入っていった。
「俺まだ答えてないんだけど…」
インベントリアに入ったサンラクにカッツォはそう呟き「どうする?」と言った表情で俺を見てくる。
「まぁ、怒らないでやってくれ。助かるために」
「わかった。
俺のセリフにカッツォはそう答えた。言いたい事は何となく察することが出来たので「それで良い」と返しておく。
すると
「待たせた……!」
インベントリアに入って5秒程、めちゃくちゃに息を切らしたサンラクが紅い近未来的装備を頭に着けて紅い装飾が施された鳥型の機械と一緒に戻ってきた。
「お前っ「説明は後!いけ朱雀!雲を払え!!」
装備と機械を見てカッツォが何が言おうとしたがサンラクは言葉を被せてそれを止めると機械にそう命じた。
『
機械はサンラクにそう応えると猛スピードで飛び上がり
「ミュウラ!ペンシルゴン!」
居場所が解らなかった2人を視界に捉えて俺はそう叫んだ。ペンシルゴンとミュウラの距離は遠く離れておりペンシルゴンは俺を一瞥するとすぐにミュウラの元へと走っていった。
(任せろって事だな!)
ペンシルゴンの行動で言いたい事を察した俺はすぐに視線を2人から切り当たりを見回す。リュカオーンは雲が晴れた瞬間に分身共々その姿を消しており何処にもいない。
俺達はリュカオーンの出現を警戒する。
すると、俺達から少し離れた場所にある瓦礫の上にリュカオーンが現れた。俺達は武器を構えて走り出す。最速の俺がリュカオーンに最初に攻撃を仕掛ける。
瓦礫を駆け上がり竜骨を振るう。リュカオーンは前脚の振り落としで竜骨を受け、跳んで空中にいた俺は軽々しく飛ばされた。
受身を取り落下ダメージを無くし顔をあげる。俺が飛ばされた事に動揺など見せることもなく3人は攻撃を仕掛けていた。
「『カタストロフィ』!」
「『アガートラム』!」
「
サンラク、サイガ-0、カッツォの攻撃がリュカオーンに当たりリュカオーンは3人から距離を取った。しかし、此処で拍手の音が響きサンラクとリュカオーンの位置が入れ替わった。
サンラクと入れ替わった事でリュカオーンはサイガ-0の近くになる。
「いけレイ氏!!」
ミュウラの魔法の詳細を詳しく知らないサイガ-0が困惑した様子を見せたがサンラクがそう叫ぶと一瞬で鎧を変色させて攻撃を加えた。
「『アポカリプス』!!」
(チャンスに飛びつく嗅覚…流石だな!)
判断の速さに驚嘆しつつリュカオーンとの距離を詰める。雲は晴れているがリュカオーンの脅威は変わらない。
リュカオーンへと走る俺だったが瓦礫の横を通る瞬間にリュカオーンの分身が影から飛び出してきた。直ぐに竜骨を振るうがその瞬間にまた拍手が鳴り俺とリュカオーンの位置が変わった。
「凄ぇな」
相棒の判断にそう呟きスキル「ピンボール」を発動させる。飛び出してきた瞬間のリュカオーンとの位置変え、空中移動の手段を持っていなければ即殺される所だ。
「おらっ!!」
空を踏み即座にリュカオーンに斬り掛かる。リュカオーンは反応出来ずに斬撃を受けクリティカルが発生した。
(後何回入れ替え可能なんだ…)
クリティカル攻撃に怯んだ様子を見せたリュカオーンの分身を見つつそう考える。離れて戦っているのでミュウラの不義遊戯が後、何回使えるのかが解らない。
(恐らく、後1回か2回…)
頭の中で答えをまとめつつリュカオーンの分身と交戦する。攻撃を躱し弾き、反撃する。瓦礫に水晶を作りつつ。分身がなるべくサンラク達に行かないようにヘイトを俺に向け続ける。
「切り札を切るタイミングが来る、か?」
リュカオーンを倒す為の切り札。誰にも見せていないそれを使う覚悟を決めて俺は分身に斬りかかった。
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