「グルルルルっ」
「クハっ!」
サンラク達がリュカオーン本体と戦っているのを後目に俺は分身体と戦っていた。前脚での攻撃を躱し、弾き、反撃するを繰り返す。スキルを消費しながら多角的に攻め続ける。
「【
「【
「【
更に壁に幾つも金水晶を創り出し場を整える。
「カッツォがいない分自分でチャンスメイクさせてもらうぞ!」
「マジで硬いな!刃物で切ってる感触じゃねぇぞ!!」
相も変わらず竜骨から伝わってくる感触は鋼鉄の感触だ。しかし、攻撃の手は停めない。ただ只管に攻撃を重ねていく。
(分身体リュカオーンの気がサンラク達に向かないようにする!)
考える事はただそれだけ。朱雀が雲を払っている間に分身体を倒し本体を叩く為に
リュカオーンは俺の攻撃を躱す為に高く跳んだ。そして、脚が俺の横を通り抜ける瞬間に4回。多方向から攻撃を仕掛けてくる。
「凄っ!」
ピンボールで初撃を躱し、竜骨で次激を弾く続く三激目を少し上に跳びギリギリで躱し四激目はリュカオーンを追走する為に更に上に跳ぶ事で回避した。
時間が圧縮されたと感じる程、集中力が深くなる。
(ピンボールは咄嗟に使うとあまり高くは
跳べないが今のは良かった)
俺はリュカオーンを追いながらそう考える。
シャンフロのステータスの内容から脚力は「敏捷」にステータスの高さに依存していると考えられるのでステータスの中で敏捷を高めに振っている俺は緊急時にこのスキルを使う際、他のプレイヤーより上手く使えている。
その事を実感しながらリュカオーンを追いかけ竜骨を振るう。双方攻防を続けるが流石は
(クソっ………!)
一人で戦うには強大すぎる相手に俺は口角を歪める。攻防の比率は徐々に「防」の割合が高くなって来ている。ピンボールの効果が切れても瓦礫等を使って攻めることが出来るが、それを理解しているのか自身の攻撃のついでにリュカオーンは周囲の瓦礫を破壊していく。
(破壊を止めるのは不可能。だが、現状を破る一手が欲しい!!)
俺は壊されていく瓦礫を見つつ心の中でそう呟く。瓦礫の破壊を止めるのではなく比率の偏った攻防をどうにかして立て直す。受けに回っているだけでは勝つことは出来ない。
そして
(来た!此処!!)
俺は視界に捉えた水晶を見つけるとリュカオーンの横薙ぎを躱しその流れで柱の裏に回り込むと造られた2つの水晶に
「【
「グアッ!!」
リュカオーンは迫り来る柱を右前脚で一薙ぎして破壊する。しかし、俺は既に移動し水晶を創った壁に竜骨を振るっていた。
「【
壁を貫き急成長した水晶は横からリュカオーンの右後脚を殴りつける。柱を破壊する為に右前脚を上げていたリュカオーンは体勢を崩した。
「良かったぜ…今なら決まる」
俺は壁を蹴って破壊し体勢が崩れたリュカオーンに接近する。インベントリに金晶竜骨をしまい
もうすぐ30分。
俺は下から兎月を振り上げ
「殴雷撃!!」
リュカオーンの横っ腹に雷の威力を秘めた打撃を叩き込んだ。雷光が輝きリュカオーンの叫び声が聞こえる。俺はその声を聞きながら棘尽雷を決めた時以来の確かな手応えを感じ取った。
しかし
「クハっ!!」
俺は
叫び声を上げながら口角を歪めているのが雷光に照らされて確かに見えた。リュカオーンは殴雷撃の衝撃に耐えながらも体勢を立て直し俺に迫ってくる。纏雷が切れMPもそこを着いたがスキル「回魔駆動」を使いAGIを強化し走る。纏雷を使っている時ほどの余裕はないが無くとも回避は出来る。
攻撃を避けながらインベントリから竜骨を取り出す。リュカオーンは俺に今まで以上に攻撃を繰り出してくるが俺も負けじと竜骨で弾き続けた。
弾きと移動を繰り返し自分が創り出した水晶を殴り続ける。言葉と共に衝撃で成長する水晶はリュカオーンと俺の間に割って入り一瞬の隙を作ってくれる。
しかし
リュカオーンは水晶が創り出した隙に移動する俺を先回りする様に影移動を使い回り込んで来る。
「クソがっ」
急に前に現れたり後から出てきたりと奔放に戦うリュカオーンに悪態をつきながら被弾しない様に躱す。
「ユウヒくん!」
すると俺の耳に声が届いた。視線を一瞬だけ声のした方向に向けるとペンシルゴンとミュウラがおり何時の間にか2人の近くまで移動してしまった事を理解した。
(やっちまった!)
ペンシルゴンが自らの役割としてミュウラを守ってくれていたのに俺は戦いに夢中になって邪魔をしてしまった。リュカオーンに視線を戻してそう心の中で愚痴る
しかし、そんな俺に拍手の音が聞こえた。気がつくと俺はリュカオーンの横におり絶好の攻撃チャンスだった。
「おぉぉぉッ!!」
リュカオーンの脚に連続で斬撃を叩き込む。リュカオーンは突然横に移動した俺に顔を向けると身体を散らす。
「またか!」
目の前から居なくなったリュカオーンにそう呟きペンシルゴン達の方へと移動する。
「2人ともすまん!夢中になりすぎた!」
2人の前に着くやいなや俺はそう言う。しかし、2人は笑うと「大丈夫」と言って言葉を続けた。
「私達は十分護られたからね。此処からはちゃんと利用して」
「そうです!皆さんに護られて生かされました。此処からは危険を犯してでも一緒に戦います!!」
笑ってそう言いながら目は真剣そのもの、俺はそんな2人に応える用に笑うとミュウラに話しかけた。
「ミュウラ、不義遊戯はあと何回使える?」
「さっきので最後でした。ですが詠唱破棄は既に使えます。また、10回連続で使えます!」
「流石だ。今からあの分身が出てきた瞬間に切り札を叩き込む。だが、隙を作る為に不義遊戯を頼みたい。タイミングは任せる。出来るか?」
「勿論です!」
「ペンシルゴン」
「うん、任せて。既に魔力が籠ったアイテムを方々に散らしてあるよ」
「抜け目ねぇな。頼りになるぜ」
ペンシルゴンの手際とミュウラの実力。2人の現状を確認した俺は竜骨を構えて集中力を上げる。リュカオーンはミュウラの不義遊戯を警戒しているのか俺の殴雷撃と棘尽雷を警戒しているのか中々出てこない。
俺達を放置してサンラクたちの元へ。そう考えたが高い知能を持つリュカオーンが厄介なミュウラを放置とは考えられなかった。
そして
「後ろ!」
地面を擦る様な音と共にリュカオーンがペンシルゴンとミュウラの後ろから出てきた。
パンっパンっ
俺のセリフに反応したミュウラが素早く拍手を鳴らし自分とペンシルゴンの位置を入れ替える。俺は振り向きざまに竜骨を振るい2人が居た位置で重なったリュカオーンの左前脚を弾き返した。
2人のいた場所にはアイテムが転がっている。これはペンシルゴンが方々に散らしていたアイテムだが今は効果等を確認している暇はない。何故ならリュカオーンは俺から視線を外し位置が変えをしたミュウラを睨んでいた。
そして、ミュウラへ向かって走り出した。
ミュウラのステータスは魔力極振り型。リュカオーンの攻撃を避ける事は出来ない。そして、シャンフロにおいてNPCは死亡すると復活出来ない。ミュウラのピンチにペンシルゴンが走り出す。しかし、俺はその場で竜骨を構えると溜めに入った。
「スキル『
スキルによる溜めからの攻撃によるクリティカル発生率の上昇を狙う。
リュカオーンはミュウラへと迫りその前脚を振り上げる。
「ミュウラちゃん!!」
ペンシルゴンの叫びが聞こえるがミュウラは怖がる素振りを見せることなく再び手を鳴らした。
パンっ
拍手の音と共にミュウラはリュカオーンの前から消えリュカオーンの攻撃は空振りとなった。自身の攻撃を空かされた事にリュカオーンは喉を鳴らし再びミュウラに迫る。
「させるわけないでしょっ!『
横からリュカオーンに追い付いたペンシルゴンが顔面に魔槍を突き刺す。リュカオーンは矛先から散った光に目を細めたが直ぐに頭を振ってペンシルゴンを弾き飛ばすとミュウラに向かって走り出した。
「だから…させないってばぁ!!」
リュカオーンに弾かれたペンシルゴンは受け身を取って立ち上がりそう叫ぶすると、新しい魔槍を取り出し
「『乾坤一擲』!!!!」
スキルを発動しリュカオーンに魔槍をぶん投げた。魔槍はリュカオーンへと飛んでいく。既にペンシルゴンが見えていないリュカオーンはそれに気付かずにミュウラへと攻撃しようとしている。
パンっ
ミュウラはそんな中で拍手をするとペンシルゴンが投げた魔槍と自分の位置を入れ替えた。突然目の前に出てきた魔槍を避けられるはずもなくリュカオーンは鼻先に当たった魔槍によって顔を上に弾かれた。
分身とはいえリュカオーンと衝突した魔槍は砕ける。しかし、それを見た俺は「来た」と呟いた。そして、そのセリフ通りに拍手が響く。
ミュウラと物体の位置変えではない。俺と砕けた魔槍の位置変えだ。顔を上に向けたリュカオーンの前に立つ。
御膳立てされた好機。逃さない。
「見せてやるよリュカオーン。これが俺の3つ目の切り札だ!!」
俺はセリフと共に金晶竜骨を振り上げる。
ビィラックが創った
蓄積された魔力は峰に着いた排出口から噴出し斬撃の威力を上昇させ刃は蓄積した衝撃を解放する。
「分身なのは気に食わねぇが、俺の身体を破壊したあの夜の礼にお前も破壊してやるよ!!『
振り下ろした金晶竜骨は同時に峰から魔力を噴出する。力の本流が後ろから前へ飛び出す。腕を持っていかれそうになりながら力を込めて竜骨を握る。一瞬でリュカオーンと接触した刃は蓄積したエネルギーを解放する。
金晶竜骨はリュカオーンの身体を切り裂き抉り地面へ向かう。地面を破壊し俺はその衝撃でHPが削れていく。
そう、この
そして、この機構は効果に見合った長時間のリキャストタイムを必要とする。リキャストタイムは168時間。つまり週に一回しか使えない必殺技なのだ。
「はは…
俺は食いしばりの発動によって「1」で止まったHPの減少に笑い声を上げてリュカオーンを見た。
「堪んねぇな…今ので完全破壊にならねぇのかよ!」
リュカオーンはその身体を半壊させてそう呟く俺を見ている。
「流石です!ユウヒさん!!」
「本当に君は……!!」
俺の後ろからミュウラとペンシルゴンの嬉しそうな声が聞こえる。しかし、俺は感じ取った視線に頭を動かしていた。
視線の先にはサンラク達がおり俺と分身体リュカオーンをジッと見ていた。本体ですら俺を見ている。
「グ…………ゥ…………」
すると、呻き声が聞こえ俺は視線を向ける。身体を半壊させたリュカオーンの分身体は身体を散らして消えていった。
それを見届けた俺は未だに動きがないサンラク達にもう一度視線を向けた。
様子的に過剰なダメージによる分身体の消滅。サンラク達に「やったぜ」といつもの俺なら言っていた。しかし言えなかった。有り得ないモノを見たからだ。
「お前ら油断するな!!」
そして、俺は動揺しながらもサンラク達にそう叫んだ。
俺の叫びにサンラク達は視線を今まで戦っていたリュカオーンへと向けて同時に悪態をつく。それもそうだ。
俺たちの視線の先には
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