「サンラクくん!」
「うおっ!?なんだペンシルゴンか」
レイ氏が
だが、そこに突然ペンシルゴンが現れ声をかけられた事で俺は声を上げてしまった。
「"なんだ"はないでしょ、重要な情報を伝えに来てあげたのに!」
俺の言葉が気に入らなかったのかペンシルゴンは少しキレた口調でそう言うが今は小言に付き合っている余裕が無い。
「そう言うのは後だ!要件は!?」
「ユウヒ君が分身体を倒した事で考察してくれたよ。リュカオーンは
リュカオーンから視線を離さずに尋ねた俺にペンシルゴンは早口でしかし、ちゃんと聞き取れる大きい声でそう言ってきた。
「なるほどな…もしかしたらと思っちゃいたが……ユウが言うなら信じられるぜ!」
ペンシルゴンのセリフに俺はそう応えると肩に乗るエムルに視線を移した。
「エムル、今の聞いてたな!確か『マナシェイカー』って魔法があったろ!」
「はいっ」
「それをリュカオーンにぶち当てるぞ!」
「はいな!!」
俺はエムルにそう言うと
「ちょっと待ってサンラクくん!!」
しかし、ペンシルゴンの声で俺は出鼻をくじかれてしまった。
「なんだよ!?」
ついつい言葉が雑になってしまうがペンシルゴンは気にした様子はない。
「君、ユウヒくんと同じで特殊な武器を持ってるよね?てことは特別な攻撃も持ってるって思っても良い?」
しかし、ペンシルゴンは目付きを鋭くするとド直球にそう尋ねてきた。
(あぁそうか、分身体を倒す為にユウヒが使った攻撃……ありゃ
ペンシルゴンは真近でユウが分身体を撃破する瞬間を見ていたんだ。バレていても仕方がない。
「あぁ持ってる。コレがそうだ」
俺は覚悟を決めて手に持つ煌蠍の籠手をペンシルゴンに見せつつそう応えた。
「わかった。後でイロイロ吐いて貰うとして…私に考えがある。乗って」
ペンシルゴンは煌蠍の籠手を見た後に俺に視線を合わせると有無を言わさない程の力強い声でそう言ってきた。
「わかった乗ってやる!」
そして、俺は躊躇う事なくそう応えた。そこそこ長い付き合いなのだ。こういう時のペンシルゴンの策がお巫山戯なしの本気の策で尚且つ、成功率が高い策だと言うのは解る。
「ありがとう。私は君たち程強くないから悪いけど戦闘には着いていけない。だから、大声で指示を出す。リュカオーンには筒抜けだけど確実にハマる。きっちり動いて」
「言われるまでもねぇ」
着いてこられなくとも役目を見出し理解して務める。ペンシルゴンの冷静さや狡猾さに俺は心の中で「怖っ」と呟きつつそう言った。そして、カッツォと攻防を繰り広げているリュカオーンの元まで走り出した。
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(よしっ、策は考えた。レイちゃんは詠唱に入ってる。ユウヒくんはっ)
走っていくサンラクくんを見送って私は全体の情報を再確認すべく当たりを見回していた。そして見た。
(凄い、2回目だからなのかもしれないけど分身体のリュカオーンを圧倒してる!)
一回目の時よりもさらに激しく上手くリュカオーンの分身体と戦っているユウヒくんを
(本っ当に……君は私の想像の斜め上を行く!!)
その姿にゾクゾクする自分を感じながら私は視線をサンラクくん達へと向けた。恐らくユウヒくんはあの女の子プレイヤーや兎ちゃん達と協力して分身体を倒してくる。
それが何時になるかは分からないけどレイちゃんの詠唱が終了する方が早くなる可能性が高い。つまり、ユウヒくんの手を借りずに本体にレイちゃんの攻撃を届かせる必要がある。
(まぁ、最初っからそんな事考えてないけどね…ユウヒくんが想像を越えて来たんだ。私も越えたくなっちゃったよ!!)
ゲームをしていてこんな事を考えるなんて凄く久しぶりだ。ウェザエモンに挑んだ時はセっちゃんの想いを果たす事に必死でこんな気持ちにはならなかった。
(よしっ、行こう!!)
私は自分に活を入れて走り出した。戦いに加わるためじゃない。全体を俯瞰して見つつサンラクくん達の邪魔をしない為の動きだ。
「カッツォくん!リュカオーンの攻撃を引き付けて!サンラクくんは一瞬引いてエムルちゃんの魔法の準備!!」
そして、サンラクくん達に聞こえる声量で指示を飛ばした。
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ペンシルゴンとの会話を終えてリュカオーンの元へとたどり着いた俺はその大きな足に煌蠍の籠手でラッシュを叩き込んだ。
「オラオラオラオラオラオラオラオラッ!!」
蠍共のドロップアイテムで造られた煌蠍の籠手がリュカオーンの身体にぶつかり手に感触が伝わってくる。
(確かに感触はあるがさっきの話的にダメージはあんまり通ってねぇんだよなっ!)
しかし、頭では先程の会話が再生されており感触に反してダメージが入っていない事をついつい考えてしまった。
「遅かったね!!」
「悪い!だが、策が色々出来たぞ!!」
ペンシルゴンと話していた所を見ていたのだろう皮肉混じりのカッツォのセリフにそう応えつつ俺は攻撃を続ける。
「策ッ?」
カッツォはリュカオーンに攻撃を加えながらもそう言い俺は「あぁ!」と返した。しかし、次の瞬間にリュカオーンは上に飛ぶと落下しながら両前脚を振るってきた。
「ぶねぇ!!」
「うぉっと!!」
俺とカッツォはそれぞれ前後に大きく動き攻撃を躱しカッツォはそのまま飛び上がり顔に俺は腹に攻撃を加える。だが、リュカオーンは斜めに飛ぶと腹の下から俺を出して着地した瞬間に再び前脚による攻撃をして来た。
横薙ぎに振るわれた前脚を俺達は上にジャンプして躱し着地と同時に左右に走り出す。リュカオーンは俺達それぞれ首を振って追ったが直ぐに視線を詠唱をしているレイ氏に向けると1歩前に出た。
しかし
「「そこっ」」
その瞬間に俺とカッツォは転身、リュカオーンに向けて走り出した。この状況でもレイ氏を警戒しているリュカオーンはチャンスを作ればそこを狙おうと動くと俺達は思っていた。
レイ氏には悪いが状況を上手く使わせてもらった。1歩前に出てくれたお陰で身体が狙いやすくなっている。俺とカッツォは拳を引いて攻撃を加えようとした。
「クソッ!」
「マジかっ!」
しかし、俺達が腕を伸ばしきる瞬間にリュカオーンは後ろへと跳んだ。
そして、素早く着地し反動を使って俺達に噛み付き攻撃を仕掛けて来た。恐らく俺とカッツォの脳裏には同じ言葉が浮かんだだろう。
『やられた』
そう思った。状況を上手く使ったつもりが上手く使われていたんだ。俺は直ぐに手首と一体化した格納鍵インベントリアに魔力を注ごうとする。
しかし、それよりも早くリュカオーンの口が迫って来ているのが見えた。
(間に合え!!!!)
インベントリアへの避難を中断し此処から攻撃を逸らすべく足掻きとして煌蠍の籠手を持った左手を振るおうとする。しかし、もう遅い。
間に合わない。そう思った。
「『マナ・シェイカー』!!」
しかし、そう思っていた俺とカッツォの思考を切って捨てる様にエムルの声が聞こえた。エムルだけはリュカオーンに向けて魔導書を向けていたのだ。
放たれた魔法がリュカオーンの口に当たる。『マナ・シェイカー』は物理攻撃能力が皆無の魔法だ。だが、非物質系のモンスターには高い効果を発揮する。ペンシルゴンから考察を聞かされていたエムルは土壇場でその考察を実証して見せたのだ。
リュカオーンは魔法により口が削られ牙を含む口の一部を失った。攻撃が止まった事で俺とカッツォは助かり地面に無事着地した。
「「ありがとうエムル(ちゃん)!!!!」」
そして、リュカオーンに今度こそ攻撃を当てる為に飛び出しつつエムルに感謝を叫ぶ。「良かったですわ!!」と半泣きで言うエムルの声を聞きながら俺達はリュカオーンに接近し左右から顔に打撃を加える。
「「オラァァァァァァァァァァァァァっ!」」
左右からのラッシュにリュカオーンは逃れるために顔を勢いよく上げた。
「カッツォくん!リュカオーンの攻撃を引き付けて!サンラクくんは一瞬引いてエムルちゃんの魔法の準備!!」
そして、その瞬間にペンシルゴンの声が響き俺とカッツォは頷いて指示に従った。俺はカッツォの邪魔にならない位置まで下がりカッツォはエムルに攻撃が行かないように自らの攻撃の密度を上げる。
「エムル、次の『マナ・シェイカー』までの時間は!?」
「すぐは無理ですわ!でも『マジック・チェーン』なら行けますわ!!」
「よし!ペンシルゴンッ!!動きを一瞬止める魔法なら行けるぞ!」
カッツォがリュカオーンを抑える間に情報を伝達する。俺のセリフに頷いたペンシルゴンはインベントリから魔槍を取り出すと走り出した。
「私とエムルちゃんで隙を作る!カッツォ君とサンラクくんでそこを突くんだ!レイちゃんの詠唱ももう少しで完成する!!確実に当てるさせるよ!!」
「おっしゃァ!!」
「やってやりますわ!!」
俺とエムルはペンシルゴンの号令にそう言って答えた。煌蠍の籠手を構えて走り出しリュカオーンに接近する。
「エムル、魔法の射程に入ったら俺から離れろ」
「へ?」
そんな中、俺は肩の上にいるエムルにそう声をかけた。エムルは間の抜けた声を上げているがコレには理由がある。
「
「………わかりましたわ」
俺のセリフにエムルは少し黙った後頷いて答えた。それを見た俺も頷きそしてリュカオーンへと視線を戻す。
「カッツォ君離れて!!」
すると、ペンシルゴンからカッツォへ指示が飛びカッツォはリュカオーンから距離を取った。自分に予想外のダメージを与えたエムルへの動線が確保された事でリュカオーンはエムルに狙いをつけて走り出す。
リュカオーンの前に立ち攻防を繰り広げていたカッツォも退避しリュカオーンの前には障害物が無くなっている。
「今だよエムルちゃん!!!」
ペンシルゴンの指示が響きエムルが魔導書を構える。
「『マジック・チェーン』!!」
エムルの魔法が発動され魔力で構成された鎖がリュカオーンへと伸びる。しかし、リュカオーンは最強種。真正面から来る攻撃を躱せない訳はない。
「回避されるぞ!」
エムルのマジック・チェーンが当たるより先に回避の動きを見せたリュカオーンに俺は声を上げた。
しかし
「『
その瞬間にペンシルゴンはリュカオーンの足元、
スキルが発動する。魔槍の先端、地面に刺さった部分から眩い光が灯る。
足元で発せられた光にリュカオーンの動きは一瞬だけ鈍りその瞬間にマジック・チェーンが着弾した。
「ハハっ
右前脚に鎖が巻き付いたリュカオーンを見て俺はそう声を漏らした。スキルのエフェクトによる目眩し。リュカオーンは
(急に近くで光が灯れば目を細める。リュカオーンも例外じゃねぇってこった!!)
右前脚に巻き付いた鎖を切るためにリュカオーンは大きく前脚を振るった。誘発された振りほどきモーションによって自然と胴が空いた。
「カッツォ!!」
「わかってるよ!!」
そして、それを見逃す
「『碧』『紫』『黒』三色混合『
空いたリュカオーンの胴体にカッツォの両拳による連打が叩き込まれ衝撃が奔った。
拳がリュカオーンの身体に当たる度に拳から濃い碧の閃光が弾けた。そして、それは絶え間ない拳の殴打で光り続け月が出ている夜のフィールドの一部に真っ青な、晴れ渡った青空を作り出した。
「グアァァァァァァァァアァァァァァッ!」
リュカオーンは声を上げて自らダメージの程を語っている。しかし、リュカオーンはダメージに耐えるように開けていた口を勢いよく閉じると直進して来た。
「倒せるって思ってないけどコレはコレで凹むねぇ!!」
渾身の攻撃を受けても尚、動くリュカオーンをギリギリで躱しながら地面に転がったカッツォはそう叫ぶ。リュカオーンが目指すのは勿論エムルだ。しかし、そんなリュカオーンを嘲笑うように拍手の音が響いた。
「
エムルとの位置変え。入れ替わりリュカオーンの前に現れたのはユウヒ。彼奴は一言そう呟くと手に持った
リュカオーンは突如現れたユウヒに戸惑うことなく前脚を振り上げユウヒは三節棍に変形した兎月【新月】を振るう。
上からの振り下ろしに横からの迎撃。
「『
完壁なタイミングで横から振り下ろしを迎撃した事でリュカオーンの脚は僅かにそれて地面を抉った。
「ハハっ」
「サンラクさん!」
それを見ていた俺は思わず笑ってしまったが後ろから聞こえた声に振り返ってしまった。
「エムル!?なんで来た!!」
そう、エムルが俺の方へと走ってきていたのだ。俺は離れていたろ言ったはずなのに此方に来ている。
「ユウヒさんの作戦ですわ!!」
しかし、エムルは俺から離れた場所で止まるとそう言った。そして、エムルが止まった位置を見て俺は彼奴が立てた策を理解した。
(この位置、直線上にエムルとリュカオーン!!)
「彼奴!!!!」
そして、俺は笑ってそう叫んだ。今の位置、俺を挟んでリュカオーンとエムルが直線で結ばれる位置。つまり、エムルを狙うリュカオーンが俺の元まで来ると言う事。
「グァッ!!」
そして、視線の先にユウヒとエムルを捉えたリュカオーンは声を上げた。俺は煌蠍の籠手を構えて瞬間を待つ。ユウヒは構えをとった俺を見て笑うと更に走るスピードを上げた。そして、俺とぶつかる直前で跳ぶと頭上を越えて行った。
「位置バッチリだぜ!!」
恐らくリュカオーンの分身を倒す為にユウヒも使ったであろう機構。月光の魔力を蓄えダメージに転換するギミック。
「喰らいやがれ!!
直前まで走っていたリュカオーンに決死の一撃が決まる。煌蠍の籠手の先端がリュカオーンに確かなダメージを与える感触が伝わってくる。
(さぁて反動が来る!!)
そんな中、俺は訪れる攻撃の代償に歯を噛み締めていた。そして、次の瞬間には衝撃によって吹き飛びHPが削れ食いしばりが発動した。
(食いしばりで即死は免れた!!でも、勢いが死んでねぇ!!俺はユウみてぇな受け身は出来ねぇんだよ!!)
「クッソ!此処で死ぬとかマジかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぁぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
身体が衝撃で飛ばさせる中で受け身の技を持たない俺は地面激突での死を覚悟した決着が見届けられない悔しさが声になって漏れるがあの駄犬に一撃手痛いのを食らわせたのも事実。
(でも悔しいのは悔しい!!)
心の中でそう呟き俺は目を閉じた。しかし
「らしくねぇぞサンラク!!」
そんな声が聞こえたと同時に俺は
「うえ!?」
横に飛んでいたはずがいつの間にか上に飛んでいる。間の抜けた声が漏れたが下にユウヒと秋津茜、シークルゥ、エムル、ミュウラちゃんがいるのを見て理解した。
(受け止める気か!)
全員で俺の落下位置へと移動しているのを見て心の中で呟いた俺は邪魔になるであろう壊れた煌蠍の籠手をインベントリにぶち込んだ。そして後を任せるように身体から力を抜いた。
どのくらい宙にいたのか分からないが気が付いた時には俺は全員に受け止められており奇跡的に死を免れた。
「サンキューみんな!」
俺を受け止めたせいだろうがHPが減ったユウヒ達にそう言って笑う。
「まだだ」
しかし、ユウヒは俺にそう言うとミュウラちゃんを見た。
「はい、準備は出来てます」
ユウヒの視線にミュウラちゃんがそう応えるとユウヒは兎月【新月】を構えた。その視線の先にはレイ氏が居る。
詠唱がもう直ぐ完成と言った所だ。しかし、リュカオーンとの距離が少し離れているようにも見えた。
(不味いな)
対リュカオーンの切り札、その条件を知っているからこその呟き。そして、そんな俺達を嘲笑うように俺が被っている
「嘘だろ!?」
エラーが告げたのは朱雀のエネルギー切れ。確かに長時間雲を払って貰っていたが此処でエネルギー切れになるとは思っていなかった。
機能を停止した朱雀が空から落ちてくる。装備を着け状況を知っている俺だけが慌てているがユウヒはそんな俺を気にすること無く
「はぁ!?」
方向はレイ氏とリュカオーンのいる場所。意味の分からない行動に声が出る。しかし、棘尽雷はレイ氏の横を一瞬で通り抜けた。
そして、その瞬間に拍手が響き
「完璧」
それを見た瞬間にユウヒの声が耳に届き。
「『
レイ氏の言葉と共に轟音が響き渡った。
100話記念の番外何が良い?
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