セカンディルからサードレマの間、そこに広がる荒野でユウヒはモンスターと戦っていた。ここに来た目的はレベリングと強いモンスターと戦いたかったからでありユウヒは今、シャンフロの夜モンスターの強さに高揚していた。
「ははっ」
レッドキャップゴブリンの手斧による攻撃を湖沼の翠杖で受け弾きながらユウヒは笑う。それまでにシャンフロの昼と夜は『違った』。
「最高だ。まさか、ここまで"違う"とはな!!」
レッドキャップゴブリンの手斧の振り下ろしを最小の動きで躱したユウヒは地面にくい込んだ手斧の上に湖沼の翠杖を差し込み動きを阻害しその首に蹴りを入れた。
「グギャッ!」
クリティカルが発生した攻撃にゴブリンは苦痛の声を上げるが倒せない。先程から何度も湖沼の翠杖や拳、蹴りでクリティカルを出しているがこのレッドキャップゴブリンは倒れなかった。
つまり、それだけ強いと言う事。そして
「グギャギャギャギャギャギャギャギャッ!!」
「またか!」
厄介さが昼間とは段違いだった。
レッドキャップゴブリンの叫びと共に呼び声に応えたゴブリン達が大量に現れる。普通のゲームなら弱者が使う「仲間を呼ぶ」を強いモンスターが使う。それがシャングリラ・フロンティアと言うゲームだった。
「このゲームを作ったヤツは最高だ…!」
他のプレイヤーなら厄介さに舌打ちをする場面だろうがユウヒは違った。この状況にこの男は口角を釣り上げるのだ。
(このゴブリンは昼間のゴブリンとは訳が違う!HPが多いだけじゃなく攻撃にフェイントを混ぜてくる。その上、群れると仲間を呼んだ本体を倒さないと戦闘自体が終わらない!!)
ユウヒは杖と体術を絡めながらゴブリンと戦いつつ本体を探す。既に仲間を呼ばれるのは3回目だ。2回とも呼んだ仲間をほぼ全滅させ次を呼ぶ前に仕留めようとしたのだがHPが多い為削りきる事が出来なかった。
「だから何だっつー話だッ」
後ろから飛びかかってきたゴブリンを躱しその隙をついて来るゴブリンを杖で迎撃する。飛びかかって来るゴブリンを別のゴブリンへ殴り飛ばし行動を阻害する。
厄介な敵との戦いにユウヒのギアは上がり平時ですら速い反応速度が更に上がる。
「グギャギャッ」
「甘ぇよ!」
叫び声を上げ手斧を振りかぶるゴブリンに突きを放つ。手斧よりもリーチの長い湖沼の翠杖はユウヒの技術の高さも相まってもの凄い速さでゴブリンの喉を穿つ。
「グッ……!!」
クリティカルが発生し苦しみで声が漏れるゴブリンに「インパクトステップ」で接近したユウヒはそのまま首を掴みその身体を地面に叩きつけた。
「グギャーッ」
別のゴブリン達が仲間をやられた怒りなのか襲いかかって来るがユウヒには関係ない。
「やるよ」
襲いかかってきたゴブリン達に地面に叩きつけたゴブリンを投げつけ視界を塞ぐ。ゴブリン達は投げつけられた仲間の身体をキャッチするがその隙はユウヒの前では致命的過ぎた。
「『纏い、轟け』」
纏雷を発動し雷を纏ったユウヒはAGIとSTRを上昇させゴブリン達に接近すると「三連撃」を発動し杖で殴り飛ばした。
スキルによる威力補正がかかった攻撃は的確に打ち込まれた事もありクリティカルを発生させてゴブリン達をポリゴン塊に変えた。
「まだだっ『纏い、轟け』!」
ゴブリン達を倒したユウヒは更に纏雷を重ねAGIとSTRを更に上昇させる。行動速度が上がり武器も更に軽く扱える様になりユウヒの脅威が更に上がる。
しかし
「『纏い、轟け』」
ユウヒは更に纏雷を重ねた。
バチッと音が鳴りゴブリン達を殴り飛ばしていく。夜の荒野に雷光が走り続ける。
(やっぱりこの魔法俺と相性がいい!!)
ユウヒは殴り飛ばしたゴブリン達を見ながらそう思っていた。シャンフロ内での魔法はMPの総量で出力が変わる。総量が多ければ強く、逆に魔力を消費した状態では弱くなる。しかし、何事にも例外は存在しこの纏雷は正にその例外だった。
纏雷はMPの総量に関係なく威力は変動しない。
(恐らく効果がバフだからなんだろうな。そう言う理屈なら纏炎も同じ仕様なんだろうが…)
効果のほとんどが使用者のバフである為かMPを消費しても効果の変動がない。故にこの状況でもユウヒはレッドキャップゴブリン達に追い込まれる事はなかった。
だが
(数が多いコイツらを倒し切るにはやはり本体を見つけ出し倒すしかない。毎回、後出しされた奴らを倒してからMPを回復してたけどそれだと間に合わない)
そう、この状況を打破し勝利するにはそれしかないのだ。
ならばやる事は一つだ。
「どれが本体だ?」
ゴブリン達を倒し数を減らしつつ本体を見つけ出し倒す。
「『纏い、轟け』」
更に速くなる。
「『纏い、轟け』」
更に
「『纏い、轟け』」
更に速くなりながら攻撃の手は止めない。
しかし、ここでスタミナの限界が来る。魔法の発動よりも前から戦っていた為だ。
だが
「戦いながらのインベントリの操作は必須技能だ」
ゲーマーのスキルでそれを解消する。インベントリからポーションを取り出しスタミナを回復し戦闘を続行する。
戦闘技能とゲーマーとしての技量が釣り合っているからこその芸当だ。
「『纏い、轟け』」
再び蹂躙が始まる。ゴブリン達の数が減っていき一番後ろにいた一体が更に後退する。
「2回とも同じ行動をしてたな。やっぱりお前か!」
ユウヒは口角を釣り上げ詠唱をする。更に早くなり魔法を重ねた事により一撃でデバフが発生する様になった。
「『纏い、轟け』」
杖と拳、蹴りで攻撃しダメージとデバフでゴブリン達の動きを阻害する。
「『纏い、轟け』『纏い、轟け』」
最後のバフ。今のユウヒのMPでは11回の重ねがけが最大。激しい動きが続き回復したばかりのスタミナがみるみる減っていくがゴブリン達はデバフで行動が阻害されている。回復する時間が一瞬、先程よりも長く作られた。
ポーションでスタミナを回復し本体に接近する。レッドキャップゴブリンは逃走を選択したのか背を向けるが
「見逃すとでも?」
もう遅かった。
「『インパクトステップ』」
スキルで更に一瞬加速し接近する
「『三連撃』」
杖と拳で攻撃を加えダメージを入れる。そして、ラッシュに入った。魔法により強化されたAGIが今までにない数の攻撃をゴブリンの身体に入れる。
次の一撃が最後
直感でそう感じ杖を振り下ろした。
その時だった。
爆音と共に地面が爆ぜた。
「は?」
砂煙が自身を包む中でユウヒは間の抜けた声を上げた。何が起きたか分からなかったからだ。だが、目の前でレッドキャップゴブリンが消えたのは見えた。
「何が起きた?」
立ち込めていた砂煙が少しずつ晴れていく。そして、目が合った。
自分に向け口を開く夜で形作られた帝王と
『ユニークモンスター』
『夜襲のリュカオーンと遭遇しました』
当たり前ですがゴブリン達はユウヒよりもレベルが高いので攻撃回数が自然と多くなります。なので、STMの消費がデカイです。