「クソが………」
リュカオーンに喰われセカンディルの宿屋で目を覚ましたユウヒは天井を見つめてそう呟いた。ベッドに寝転がり窓の外を見れば空には月がまだ輝いており夜が明けていない事を教えていた。
「はぁ………」
普段なら絶対にしないミスを犯した。リュカオーンに気を使わせた部分すらあった。その事実だけで気分は最悪だった。
「でも、そうは言ってられないよな」
そう言って「次は必ず倒す」と呟く。最後に言ったあの言葉は誓いだ。必ず守る。そう意気込んでベッドから立ち上がったユウヒは窓に映る自分の姿を見た。
「は?」
そして、間の抜けた声を漏らした。それもそのはず、ユウヒの身体と顔にはついこの前見たばかりの半裸鳥頭と同じ『引っ掻き傷に似たタトゥー』が刻まれていたのだ。
「まさか」
嘘だろと思いつつ自分の状態を確認する為にステイタスを開く。すると
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PN『ユウヒ』
レベル30
職業『傭兵(杖)』
体力 30 魔力 70
スタミナ 60
筋力 35 敏捷 65
器用 40 技量 15
耐久力 8 幸運 30
STポイント80
スキル
一点打ちLv5
振るい薙ぎ
スクーピアス→スパイラルエッジ
ディフェンシブフットLv4
アクセルLv6
三連撃Lv7
タップステップ
見切りLv4
インパクトステップLv8
乾坤一擲
フラッシュカウンター NEW
一艘飛び NEW
三段蹴り NEW
掴み討ち NEW
ファイティングスピリット NEW
グラスポッパー NEW
拳打 NEW
嬉々応戦 NEW
武舞 NEW
魔耀來々 NEW
装備
頭:リュカオーンの呪い
胴:リュカオーンの呪い
腕:無し
腰:白地の帯
脚:白地の靴
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思っていた通り顔と胴体にサンラクと同じリュカオーンの呪いが付与されている。呪いの効果はサンラクに聞いていた通りなのだろう。
これでユウヒも装備不可の上裸プレイヤーの仲間入りが確定してしまった。
「マジか……」
自分よりレベルの高い相手からしか狙われないと言うのは願ってもない事だが上裸はキツイ。ベッドに座りため息を吐いてしまう。
「いや、待て。腕には装備出来るんだ…まだ、上裸にはならないぞ!!」
しかし、ステイタスの装備枠の腕には呪いが刻まれていない事を確認しそう叫ぶ。どうにか最悪は回避出来たようだ。
そしてステイタスを確認したユウヒはある項目を見て首を傾げた。
「STポイントの合計が合わなくないか?」
そう、レベルアップに伴うSTポイントの増量。その量が合わないのだ。シャンフロは1レベル上がる毎に5ポイントのSTポイントが追加される。ユウヒがリュカオーンと戦闘をする前のレベルは18で現在は30。単純に計算しても60ポイントの追加しか起こらないはずなのだが正体不明の20ポイントが追加されている。
「リュカオーン…いや、『ユニークモンスター』とエンカウントしたからか?それとも一撃くらって死ななかったからか?」
考えてもわからないが有難いことだった。
ステイタスを上げることは自力をあげることを意味する。ポイントは多ければ多いほど良い。
「リュカオーンとの再戦の為にも強くならないとな」
ステイタスを見ながらそう呟いたユウヒは早速、ポイントを割り振っていく。
呪いの仕様を見るに解くにはそれなりに苦労するだろう。ずっとこのままと言うのは嫌だが今の状態がずっと続くと考えて今後を見た方が良い。
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体力 30 魔力 95(+25)
スタミナ 95(+25)
筋力 35 敏捷 85(+20)
器用 50(+10) 技量 15
耐久力 8 幸運 30
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「これで良し。装備枠に制限がある以上それ以外でカバーするしかない。纏雷を使うことを前提にMPとSTM、AGIをメインに上げる。武器は杖とナイフ又は剣に固定しよう。そうすれば技量を高くする必要は最低限抑えられる」
技量も勿論上げていくが今のSTポイントの量ならこれで良いと納得して確定した。本音を言えば幸運を上げたかったがそれは後でいい。
「さてと、今日はもう終わりにしよう。正直今の気分で良い戦いが出来るとは思えないしな。サンラクへの連絡も明日で良いや」
明後日は道場に行く日なので明日の内にサンラクから色々聞きたいが今日は気分ではない。ユウヒはステイタスウィンドウを閉じてログアウトした。
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「うしっ、始めるか」
日課を済ませ昼前にシャンフロにログインし宿屋を出たユウヒは身体を伸ばしてそう呟いた。既に楽郎にはシャンフロ内での連絡ツールとして存在しているメールバードを飛ばしてある。ログイン前に確認した感じまだシャンフロにいるはずだから何れ返信が来るだろう。
「返信が来るまでに装備を整えないとな。流石に上裸はヤバすぎる」
呪いに刻まれたからなのか食われたからなのか解らないが当然の様に装備とアクセサリーは破壊されユウヒは白地の道着の絝と白地の帯と靴しか装備出来ていない。もし、顔を見られれば髪の色位しか改変していない容姿なので一発でバレる危険がある。シャングリラ・フロンティアの総プレイヤーは3000万人以上。流石にそれは嫌だがリュカオーンの呪いがある以上装備は出来ない。
(………仕方ない、もう覚悟決めるしかないか……知り合いにあったら「人違い」で押し通そう…。腕の防具探しに行くか)
「はぁ……」
どデカいため息を吐いて防具屋へと歩き出した。
「どうも〜」
防具屋の扉を明け軽く挨拶をする。すると店の奥から防具屋の店員が姿を現した。
「いらっしゃいませ。胴を守るための防具をお探しですか?」
「あぁ、いや腕の防具が欲しい。なんか良いのあるか?」
ユウヒの姿を一瞥しただけでそう言った店員に少し驚きながらもそう尋ねると店員は購入可能な防具の一覧を出してくれた。
「おぉ、色々あるなぁ。どれもこれもいいデザインしてるし性能も良い。どれにするかな」
一覧を眺めながら良さげなものを選んでいく。すると
「なぁ、アレって……」
「いや、違ぇよ。掲示板のスクショ見ろ。別人だ」
「だが、あのタトゥーペイントはそうだろう!?」
後ろからヒソヒソと声が聞こえた。顔を上げて周りをチラッと見れば何人かのプレイヤーが自分を見て話している。
(なんだ…?)
ユウヒはそれを不審に思い早めに選んで店を出た方が良さそうだと判断しユウヒは一覧を部位毎へと切り替え選んでいく
(良いのがあるかな〜)
そして一覧を最後までスクロールした所で良いのを見つけ出した。
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『武人の弓籠手』
腕を守る武人の防具。耐久値+18
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買えば全財産が消えるがデザインと性能が良い。コレをつければ耐久値が26まで跳ね上がりデザインは、右手全体に装備出来る白地に蒼のラインが入った弓籠手と左二の腕に装備する籠手だ。今の装備ともよく合っている。
「これ下さい」
そう言って店員に金を払い購入した弓籠手を早速装備する。上裸の状態よりも多少マシになったのでユウヒはこれで良しと頷き外へ出た。
すると
「おっ、返信来たな」
ユウヒの肩に巻かれた紙を咥えた鳩が降りてきた。ユウヒは鳩から手紙を受け取りその内容を確認する。しかし、内容はあってないようなもので短く
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待ち合わせとかしなくても会えるかも。会えなかったら此方から連絡するわ。
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そう書かれていた。
「意味がわからん」
内容がわからなすぎてそう呟いたユウヒは「取り敢えず了解」と返信して鳩を飛ばしセカンディルから出る事にした。
「防具買って金無くなったからな。モンスター倒しまくって金作らねぇと」
ウィンドウのマーニの部分に表示されている0を一瞥したユウヒはそう言って走り出した。
しかし、ユウヒは気づいていなかった。
セカンディルにいるプレイヤーの殆どに姿と名前を凝視されていた事を
ユウヒにつけられたリュカオーンの呪い
・リュカオーンの呪いが付与された部位は装備品を装備する事が出来ない。
・リュカオーンの呪いを持つキャラクターよりも低いレベルのモンスターは逃走する。
・リュカオーンの呪いを持つキャラクターはNPCとの会話で補正がかかる。
・リュカオーンの呪いを持つキャラクターは自身の魔法干渉は受け付けるが他からの魔法干渉に強い抵抗を得る。
・呪いは聖女の祈りか呪いを刻んだ存在を倒す事で解除可能