戦闘狂が行く理想郷   作:烏鷺

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ヤツが現れる!!


再訪、兎の国

セカンディルから出発したユウヒはサードレマへと続く荒野でモンスターと戦っていた。金策の為にドロップアイテムを求めての戦闘であり既に30近いモンスターを倒している。レベルも32へと上がっておりスキルも幾つかレベルアップしていた。

 

「はっ!」

 

何体目かもわからないオークを腹への中段突きで撃破したユウヒは落ちたドロップアイテムを回収する。

 

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オークの頭骨(ずこつ)

呪術の触媒となる。形が歪なほど呪術の性能が上がる

 

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「毎度思うが形が歪な頭蓋骨ってなんだよ」

 

14個目のオークの頭骨にそう呟きインベントリに突っ込み辺りを探索する。今回のドロップアイテムを求めた戦闘はかなりいい結果をもたらしている。その1つが致命の闘杖の獲得である。

 

「まさか、ドロップするとはな。幸運はまだ、上げてないけどそれでも効果が出てるって事かな?」

 

致命の包丁は3本集まっており、それよりも希少と武器屋が言っていた致命の闘杖を1つとはいえゲット出来たのはラッキーだった。リュカオーン戦では、武器耐久値の重要さが浮き彫りになった戦いでもあった為追加で武器を欲していたところだったのでちょうど良かった。

 

「今使ってる闘杖が万が一壊れたらコイツを使おう」

 

そして、いい結果の2つ目はスキルのレベルアップである。リュカオーンの呪いの効果で強いモンスターしか寄ってこなくなったのですぐに死ぬ事がなくスキルを使った戦闘を多く行う事が出来た。その分、レベルアップするスキルは更に成長を遂げて強くなった。

 

3つ目は各モンスターの体格と間合いを把握出来た事だ。杖の強みは間合いの自在さ、相手よりも早く間合いを変化させ攻めに転ずる。しかし、人間相手にしか杖を振ってこなかった俺はモンスターが相手になった時、間合いが上手く取れない事があった。今回の金策でそれを潰せたのは大きい。

 

「ドロップアイテムも集まって重くなってきたしそろそろ戻るか」

 

モンスターが出てくるなら戦おうと思っていたがインベントリの内容と自身にかかる負荷を鑑みてユウヒはセカンディルへと引き返した。シャンフロのインベントリは内容量に制限があり物を詰めすぎると格納した物の重さで身体の動きが鈍ってしまう。動きの鈍化はユウヒや装備の状況的に見てサンラクには致命的や欠陥になってしまう為気をつけなければならないのだ(詰めすぎダメ、ゼッタイ!!)。

 

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セカンディルへの道を走り抜け道具屋でドロップアイテムを全て換金した俺は換金した金でポーション等を揃えて店を出た。

 

「そう言えばサンラクから会えなかったら連絡する的な事言われてたけど全然連絡来ねぇな…」

 

退店しふとドロップアイテムの回収に行く前にサンラクから来ていたメールを思い出した俺は確認の為に既読済みのメールを開いて見る。

 

「内容は間違ってない…連絡が来ないって事は………どういう事だ?まだ、会える手段があるって事か?」

 

送られてきた内容が何度読んでもわけわからなすぎて思わず首を傾げる。その時だった。

 

「すみません、ユウヒさんでよろしいですか?」

 

不意にそう声をかけられた。

 

「誰だ、アンタ?」

 

メールから顔を上げて声がした方を見るとレアなモンスターのドロップアイテムで作られたと一目で解る派手な装備を身に付けた男性プレイヤーが立っていた。その後ろにも似た様な装備を身に付けたプレイヤーがぞろぞろと揃っている。

 

「失礼、僕は"トップ''クラン『黒狼』の副リーダーリベリオスと言います。貴方がユウヒさんでよろしいですか?」

 

無駄に「トップ」を強調した高圧的なセリフにユウヒは目を細めた。

 

「あぁ、そうだけどなんか用か?そんな大勢でぞろぞろと"穏やかじゃないよな"?」

 

「すみません、我々は"トップ"クランなので変なやっかみも多いんです。だから、こうして複数で行動する事にしているのですよ」

 

明らかにソレが理由であるとは言えない人数と言葉の端々の滲む高圧的な態度にユウヒは自然体でありながらも何時でも武器と取れる様にする。

「で?なんの用だよ」

 

ユウヒは再びリベリオスにそう訪ねた。すると

 

「貴方のその『リュカオーンの呪い』について話を聞きたい。黒狼の本拠地に来てくれますね」

 

ユウヒの身体に刻まれた『リュカオーンの呪い』を指差しそう言ってきた。

 

何処から情報が漏れたとか、何でコレが『リュカオーンの呪い』と分かるのかとか色々言いたいことはあるが、リベリオスの「自分の指示に従うのは当たり前」と言う態度にユウヒは

 

「断る」

 

ただ一言、そう告げた。

 

「は?」

 

ユウヒのセリフにリベリオスの声のトーンが低くなる。あからさまに化けの皮が剥がれた。

 

「断ると言ったんだ。此方も色々聞きたいことはあるが別に今、此処で聞かないといけない事では無い。それに、人にものを頼むならその態度をどうにかしろ」

 

本性が出たリベリオスにユウヒはそう言うと背を向けてその場から歩き出した。しかし、リベリオスはそれを許さなかった。

 

「いやいやいや、何を言っているのかわかってるのか?我々はトップクラン『黒狼』だぞ。未だセカンディルにいるようなプレイヤーとは立場が違うんだ。君は愚か者なのか?」

 

「………トップだが何だか知らないが俺がお前達に従わなければならない道理など無い。シャンフロはMMOだ。そこの所をよく考えろ」

 

馬鹿な事を言うリベリオスに内心どデカいため息を吐いてそう言うとリベリオスの背後を固めていたプレイヤー達がぞろぞろと前へ出てきた。

 

「我々はトップクランだ。我々の言うことが聞けないなら力ずくで連れていく。行け!」

 

「お決まりの展開だな」

 

あまりにも王道すぎる展開にユウヒはそう呟いて走り出す。今のレベルは32、敏捷に多めに振ったステイタスをフル稼働させて走る。だが、装備から見ても彼らはユウヒよりも高レベルのプレイヤー、その距離はみるみる近づいて行く。

 

しかし

 

此処は、セカンディルの"街中"だった。

 

「リアルでも障害物を利用した走りで俺より速いヤツって会ったこと無いんだよね」

 

ユウヒはそう呟くと裏路地に入り建物の壁を足場に上へと上がって行った。

 

「舐めるな!」

 

追ってきたプレイヤーの1人がそう言い壁を使って登ってくるがユウヒの方が圧倒的に速い。

 

裏路地に入る際の減速を無くし更に成長したステイタスで3歩で屋根上へと上がったユウヒはそのまま建物を利用した鬼ごっこを続ける。

 

下からぞろぞろと追ってが迫ってきているが上と下。立地的にどちらが有利から言うまでもない。

 

下を走る連中を撒いて残るは上に上がってきた連中のみ。家から家へと飛び移り煙突等も利用して逃げる。

 

更に

 

「『纏い、轟け』」

 

纏雷を纏い速度を上げる。煙突や各々の家の僅かな高低差を利用した立体機動を駆使してリベリオス達との距離を広げる。

 

「『纏い、轟け』」

 

ユウヒは更に纏雷を纏い速度を上げて距離を広げる。リベリオス達はこの時点でユウヒとかなり距離を離されておりユウヒはそんなリベリオス達を鼻で笑うと更に纏雷を発動させて差をつけた。

 

「此処で良いだろ」

 

完璧に連中を撒いたユウヒはすぐさま家から降りて路地裏に入る。地上で追っていた連中も声が聞こえないので自分を見失ったのだろう。そう判断したユウヒはメインストリートへ出ようとした。

 

その時だった

 

「貴方が行くのはそっちではありません。此方ですわ」

 

ユウヒの後ろからそう声をかけられた。

 

「!?」

 

追いつかれたのか、そう思い振り向きざまに致命の闘杖を装備し構えを摂る。すると、そこには白い体毛の黒いドレスを着たヴォーパルバニーがいた。

 

「また、喋るヴォーパルバニーかよ!?」

 

エーベルトとは違う別の喋るヴォーパルバニーに声を上げる。ヴォーパルバニーはそんなユウヒに「ふふふっ」と笑うとぴょんとジャンプしてユウヒに近づき

 

「エーベルト兄様が言っていた通りのお人なのですね。私の声に反応してから構えを取るまでの流れ、実に見事でしわ」

 

そう言ってきた。

 

「エーベルト"兄様"?エーベルトの兄妹なのか?」

 

「はい、私はミュウラ。エーベルト兄様の妹です。貴方の事はよく存じています。ヴォーパル魂の申し子。ユウヒさん」

 

「ヴォーパル魂!!」

 

ミュウラと名乗ったヴォーパルバニーが発した聞いた事のある単語に声を上げるユウヒ。ミュウラはそんなユウヒの様子にまた「ふふふっ」と笑うと壁に手を付き"扉を出現させた"。

 

「何それ!?」

 

ユウヒは驚きで思わずそう口に出してしまったがミュウラは気にした様子なく扉を開けると

 

「ユウヒさん。貴方を私達の国"ラビッツ"に招待させて頂きます。是非、私についてきて頂きたいのです」

 

扉の先を案内する様に手を広げてそう言った。そして、扉が開かれた空間には

 

『ユニークシナリオ』

 

『兎の国からの招待』

 

とウィンドウが表示されている。

 

先程の鬼ごっこ等記憶の彼方に吹っ飛ぶような現況に言葉を失うがユウヒは覚悟を決めてミュウラに頷き扉の中に入った。

 

扉はユウヒが入ると勝手に閉まりユウヒは光に包まれた。

 

光が止むと目の前には和風のデカイ建物が建っておりまさに圧巻だった。

 

「再びようこそ、ラビッツへ。そして此処、兎御殿へ。ラビッツは貴方を歓迎します。まずはお父様の元へお連れいたしますわ」

 

「お、おう…」

 

ミュウラが兎御殿と言った建物に目を奪われていたユウヒは少し遅れてミュウラに応えた。ミュウラはまた「ふふふっ」と笑い兎御殿へ続く階段を登る。ユウヒもその後に続き登りながらさっきのミュウラのセリフで気になった事を尋ねた。

 

「さっき再びって言ってたよな。じゃあやっぱりエーベルトの生徒達と戦った時行ったコロッセオはラビッツにあったのか?」

 

「はい、その通りです」

 

ユウヒのセリフをミュウラはそう言って肯定した。

 

「やっぱりか…」

 

ミュウラのセリフからして確信はあったので驚きは少ない。ユウヒは頷きながら階段を登り切りミュウラと一緒に兎御殿の中へと入った。

 

「此方ですわ」

 

ミュウラの案内で兎御殿を歩く。中は京都にある寺社仏閣の様な造りになっていて風情がある。そして、ミュウラに連れられ一際大きな襖の前に着くとミュウラはさっと襖を開けて

 

「お父様、ヴォーパル魂の申し子、ユウヒさんをお連れしました」

 

中にいる"お父様"にそう告げた。

 

「はじめま、してっ!?」

 

開けられた襖の先、ミュウラのお父様に挨拶をするユウヒだったが目を見開き固まってしまった。それもそのはず

 

「おおッ待ってたぜぇ!お前だな、エーベルトのダチになった上にあの犬っころにションベンかけられたってぇヤツは、エーベルトのヤツが言ってた通りの奴だ。……どうだい?お前さんの時間オイラに預けてみる気はねぇかい?」

 

ユウヒの先にいたミュウラのお父様は煙管をふかすヤクザの親分の様な見た目の大兎だったのだから

 




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