戦闘狂が行く理想郷   作:烏鷺

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纏雷の細かな設定が固まりきらない。


兎の国よりこんにちは

シャングリラ・フロンティアには『兎の国ツアー』と言うシナリオが存在する。『致命』の名を冠する武器を装備し、自身のレベルより高いモンスターを倒す事でシャングリラ・フロンティアの街に特殊なヴォーパルバニーが出現しそのヴォーパルバニーを追いかけるとヴォーパルバニーの国『ラビッツ』に行くことが出来る。

 

ラビッツにはヴォーパルバニー達を襲うモンスター『兎食の大蛇』がおりその大蛇を撃破する事で魔法『エンチャント・ヴォーパル』を獲得することが出来る。

 

━━━━━━━━シャンフロ考察サイトより一部抜粋

 

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(どうなってんだ……?)

 

それが今の俺の気持ちだった。

 

突然現れたエーベルトの妹に着いていったら自分より大きなヤクザみたいなヴォーパルバニーと対面する事になった。そう思ってしまってもムリはないだろ。

 

「俺等ァ『ヴァイスアッシュ』ってもんだ。おめぇさんの事はエーベルトから聞いてるぜぇ。ヴォーパル魂の申し子の様なヤツだってなぁ。彼奴がそこまで言うのは珍しいんだが、あの犬っころにションベンかけられるとはなぁ……。俺等の息子ながら中々いい目を持ってやがる」

 

(そうか、ミュウラが『お父様』って呼ぶって事はエーベルトの親父でもあるのか…それにしてもこの大兎…雰囲気だけでわかる。強い!!)

 

目の前で喋る大兎、ヴァイスアッシュから自分の師である獅子宮巫堂と同じ様な雰囲気を感じたユウヒは気を締め直してヴァイスアッシュの前に両膝を着いた。

 

「!」

 

そんな、ユウヒの行動と自身を見る力強い視線にヴァイスアッシュは少しだけ目を見張る。

 

(いい面付きしてやがるじゃねぇか……成る程な……)

 

自身の息子たるエーベルトの話しが間違いではなかったとこうして向き合い理解したヴァイスアッシュはニヤリと笑い話しを続ける。

 

「どうだい?おめぇさんにその気があるなら俺等が直々に鍛えてやってもいいぜ」

 

「鍛える?俺を?」

 

「あぁ、そうだ。オメェらはすぐヴォーパル魂を忘れちまうがここ最近はおめぇさんともう一人良いヴォーパル魂を持つ奴が現れてなぁ。興が乗ってる所なのさ」

 

ヴァイスアッシュのセリフにユウヒは多少の困惑を見せていた。今まで兄である楽郎とシェアしたクソゲーをやって来たがモンスターがプレイヤーを鍛える等と言うシナリオはどのゲームでもした事がない。

 

何故なら、基本的にモンスターとプレイヤーは敵同士でだからだ。鍛える意味がない。

 

だが

 

(常識の上を行く。だからこその神ゲー)

 

そう言う事なのだろう。

 

ある程度の常識を持った上である程度の常識を捨てなければならない。でなければこのシャングリラ・フロンティアの世界を制覇する事は出来ない。ユウヒは思うと同時に両膝に手を付きヴァイスアッシュに頭を下げて

 

「よろしくお願いします。師匠」

 

獅子宮巫堂にしかした事の無い挨拶をした。

 

「師匠……?」

 

しかし、ユウヒの挨拶を聞いたヴァイスアッシュの声はあからさまに低くなりドスの効いた声になった。

 

(やばい、ミスったか!?俺の中じゃ教えを乞うならこの挨拶しかないんだが………)

 

ヴァイスアッシュの声色にユウヒは焦るが

 

「うはははははははははははははははっ!」

 

次の瞬間、ヴァイスアッシュは大笑いしてユウヒの肩を叩いた。

 

「『師匠』か気に入ったぜ!確かに教えを乞う以上、おめぇさんは俺等の弟子だ!わかってるじゃねぇか!!」

 

肩をバシバシ叩かれながら上機嫌にそう言うヴァイスアッシュにユウヒは内心ほっとした。

 

(良かった…流石に今のレベルでキレられて戦闘になったら絶対に勝てないからな)

 

「俺等のこたぁ『ヴァッシュ』と呼びな!認めたやつにゃあそう呼ばせてんだ」

 

「押忍っ、ヴァッシュ師匠」

 

ユウヒの内心の不安を気にした様子なくそう言うヴァッシュにユウヒは緊張した様子でそう応えた。

 

「ミュウラ!」

 

「はい、お父様」

 

「こいつの世話、おめぇに任せるぞ」

 

「はい!私頑張ります!!」

 

未だに緊張が抜けないユウヒを置いてヴァッシュはミュウラにそう告げた。ミュウラは見た事のない満面の笑みでそう応えるとユウヒの肩に飛び乗ってきた。

 

「それではユウヒさん、兎御殿の中をご案内します」

 

「お、おぉ…案外距離感近いのなお前……」

 

肩の上で笑うミュウラにそう言いつつ部屋を出ようと入ってきた襖へ足を向けると

 

「おっといけねぇ、コイツを忘れてた」

 

別の襖から出ていこうとしていたヴァッシュがそう言って何かを投げてきた。

 

ヴァッシュの投げたソレは空中で形を変えると真っ直ぐユウヒへ向かって飛んでくる。

 

「なんだ?」

 

ユウヒはそれを難なくキャッチすると手に収まるソレを見た。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

致命魂の首輪

取得経験値が半分になる代わりにレベルアップの際に獲得するステータスポイントが2.5倍(小数点切り捨て)になる。致命兎の王が作り出した戒めの首輪。王の許可なく外れる事はない。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「いっ……!?」

 

(なんだコレ!?ぶっ壊れアイテムじゃねぇか!?)

 

ユウヒは手に収まる『致命魂の首輪』を確認して変な声を上げた。それ程までにこのアイテムの性能は壊れていた。

 

シャングリラ・フロンティアはスキルゲーに分類されるゲームだ。勿論、プレイヤー本人のスキルも相応の高さが要求されるがアバターのステイタスが大きな要素になっている事は言うまでもない。そんな中、この『致命魂の首輪』を使えばどうなるか

 

(もし、これを付けてレベルをマックスまで上げたら普通にプレイしてレベルを上げたプレイヤーよりも大きな差をつける事が出来る。それこそ天と地の差を……。あの宝石に続いてなんつーモンを……)

 

間違いなくこの『致命魂の首輪』ぶっ壊れアイテムだ。

 

「ははは……」

 

あまりの性能に引き攣った笑いしか起きないがヴァッシュはそんなユウヒを見てまた大笑いした

 

「うははははははははははっ、まさか掴み取っちまうとはな!ユウヒよ、おめぇさんが強さを望むならソイツを首に付けな。付ければ苦難の道を歩む事になるがァ必ずおめぇさんは強くなれる!」

 

ユウヒの行動に笑いながらも力強くそう言うヴァッシュの目には何か強い意志が籠っていた。その視線を真っ向から受けたユウヒは笑い

 

「苦難上等!喜んで歩ませてもらう!!」

 

そう言って『致命魂の首輪』を首に取り付けた。

 

「ふっ、ヴォーパル魂を忘れるべからずだぜ、ユウヒ!」

 

「押忍!」

 

既に緊張はない。ユウヒは既にヴァッシュをシャンフロでの師として見ていた。

 

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「いや、あの文面じゃわかんねぇよ」

 

ヴァッシュとの対面を済ませた俺はミュウラに案内してもらった兎御殿の一室でサンラクにそう言った。

 

(ちなみにサンラクの相棒のエムルちゃんとは挨拶を済ませて双子だと言うことも明かした。エムルちゃんとミュウラは驚き師匠にその事を伝えに行ってしまった)

 

「いや、わかると思ったんだよ。双子の絆的なナニかで」

 

「お前それ小一に式だけ見せて漸化式解けって言ってるようなもんだぞ」

 

セカンディルで貰ったメールの文面に対しての俺の文句にそう言ったサンラクにそう言うとサンラクは「悪い悪い」と笑った。

 

こう言う時のサンラクは特に悪いと思っていないので何を言っても無駄だ。それがわかるからこれ以上何かを言う気にはなれない

 

「まっ、もうどうでも良いけどな」

 

実際、既に意味がわかったのでもうどうでも良い事だった。

 

「まさか、兄弟揃ってユニークシナリオを発生させるとはな。それも同じやり方で」

 

そう、サンラクが送ってきたメールの内容はそう言う事だったのだ。

 

サンラクは俺が自分と同じ目にあったのを知って俺がこの兎御殿に来ることになると確信していた。だからこそのあの謎の文面だった。

 

「やっぱ双子だからだな」

 

「違ぇよ、お前がゲーマーで俺が戦い好きだからだよ。それが上手いことシャンフロと噛み合っただけだ」

 

鳥頭のキメ顔でそう言ったサンラクにそう言うと俺は備え付けのベッドに仰向けになった。

 

既に俺たちの身に起きている事の整理はつけてある。

 

俺達の身体に刻まれた『リュカオーンの呪い』。その付与条件をお互いの戦闘内容を明かしあう事で解き明かした。

 

1つ、傭兵(前衛職)で5分以上ノーダメージである事

 

2つ、リュカオーンの攻撃を受けてもHPが全損しなかった事

 

3つ、ノーダメージでクリティカルを一定回数当てる事

 

実際は他にも色々ありそうな気がするがこれが俺とサンラクがリュカオーン戦の内容を話し合い確定してもいいだろうと判断したリュカオーンの呪いの付与条件だ。

 

そして、この『兎の国からの招待』は『致命』の名を冠する武器を使ってユニークモンスターと戦う事がシナリオの発生条件だと考察している。

 

「しっかし、お前が自分のスタミナとか考えずに戦うなんてな。ゲーマーとしては有り得ないミスだな。お前らしくもない」

 

「うっせぇ、わかってんだよ」

 

天井を見ながらリュカオーンの呪いやユニークシナリオについて考えていた俺にサンラクはそう言ってきたがリュカオーン戦の最後は自分でも「あれはない」と言い切れる為それ以上言うことが出来ない。

 

「お前これからどうするんだ?」

 

すると、サンラクは俺が寝転がるベッドの端に座りそう言ってきた。

 

「どうって?」

 

「レベル上げたりシナリオ進めたり色々」

 

俺は相変わらず天井を見たままだがサンラクは俺を見てそう言う。

 

「うーん、リュカオーンは倒す絶対にな。でも、その前にクリアしたい別のユニークシナリオもあるから同時進行だな。一先ずはレベル上げしつつ素材を集める」

 

「そうか……………………おい、待て」

 

俺の応えを聞いたサンラクは一瞬頷く様子を見せたがすぐにそう言って俺を見た。

 

「別のユニークシナリオってなんだ!?」

 

「あ」

 

そう言われて俺は口を塞いだ。もう遅いが

 

「お前!特殊クエストの次はユニークシナリオかよ!?ラッキーボーイか!?なんでお前だけなんだよ!!」

 

「うるせぇ!!お前だってユニーク発生させてんだから一緒だろうが!?」

 

「1つと2つじゃ違うんだよ!教えろ!!その別のユニークの発生条件を教えろ!!」

 

「知らねぇ、よ!」

 

俺の肩を掴み揺らしてきたサンラクの顔に一発入れてベッドから降りる。サンラクは顔をさすっているが目はまだ諦めていない。

 

「知らないってなんだ!嘘だろ、お前嘘言ってんだろ!!」

 

「言ってねぇよ!この顔が嘘言ってる顔かよ!?」

 

諦めの悪いサンラクに顔を指さしてそう言う。

 

「………嘘言ってる顔じゃねぇな」

 

サンラクは数秒俺の顔を凝視したがすぐにそう言って矛を収めた。

 

「それで?サンラクはこれからどうすんの?」

 

落ち着いたサンラクに俺がそう尋ねるとサンラクは何か答えにくそうにモジモジし始めた

 

「なんだよ」

 

モジモジして動きがキモイので「早く言えよ」と言う意味でそう言うと

 

「実は、別ゲーの知り合いからユニークモンスター『墓守のウェザエモン』の討伐をやらないかって誘われてんだよ。だから、シナリオの攻略とレベリングをやっていこうと思う」

 

夏休み前の家での会話のようにとんでもない事を言いやがった。

 

「は?」

 

内容が突飛過ぎて訳が分からずそう言うとサンラクは事のあらましを話した。

 

要約するとこうだ。

 

サンラクがユニークを発生させた事が拡散されそれがきっかけで別ゲーの友人とシャンフロで再開(俺がセカンディルでレベなんとかに声をかけられて追われたのも拡散のせい)。そして、その友人がユニークモンスター『墓守のウェザエモン』の討伐への参加をサンラクに要請。そして、此奴はそれを受けた。

 

しかも

 

「カッツォもシャンフロを始めててそのユニークモンスターの討伐に参加する。そして、俺の許可を得ないままその友達に俺を推薦しちゃった、と……?」

 

「はい……」

 

こういう事らしい。変にモジモジしていた理由はこれだった。

 

「ユニークモンスターね……」

 

いつの間にか正座しているサンラクにため息を吐きながらそう言う。

 

「ダメだったでしょうか……?」

 

サンラクはビクビクして俺にそう言ってくるが俺の応えは決まっている。

 

「んなわけねぇだろ。あのリュカオーンと同じユニークモンスターと戦えるなんて最高だ。俺もその戦い喜んで参加させてもらうぜ」

 

強敵と戦えるのに断るなんて有り得ない。答えは最初から決まっていた。

 

「だよな……。お前ならそう言うわ。参加する旨は俺からソイツに伝えておく。もしかしたら、実力を見たいとか言い出すかもしれんからその時は頼む」

 

「了解」

 

サンラクのセリフにそう答えた俺は部屋を出た。理由は簡単、ユニークモンスターとの戦いと言う理由が増えた為今すぐレベリングとあの親子を助ける為にユニークシナリオ『志し持つは蒐集者』を進める為だ。ミュウラはそこら辺にいるだろ

 

「その時が来たら連絡くれ。なるべく早く行く」

 

「了解。……そうだ、このシナリオなんだがまだ俺達しか知らないシナリオだから誰にも話すなよ」

 

出ていく俺に少し慌てた様子でそう言うサンラクに「了解」と手を振り俺は部屋から出て行った。

 

「ユニークモンスター『墓守のウェザエモン』そしてユニークシナリオ『志し持つは蒐集者』に『兎の国からの招待』。全部まとめてクリアしてやるよ!」

 

部屋を出た俺の心は火が灯っていた。全身を「熱」が支配している。リュカオーン戦の苦い記憶を払拭するような「熱」だ。

 

その「熱」に従って俺は動き出した。

 




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