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「最悪」
サードレマに到着した俺は目の前の光景にそう呟いた。
「彼には私が先に声をかけた。引け阿修羅会!」
「うるさいぞ、黒狼!アイツに用があるのは俺達も同じだ。そっちが引け!」
目の前では赤髪を腰まで伸ばした明らかに高レベルの装備を身につけた女性プレイヤーと髪をオールバックにし一房だけ前に垂らした特徴的な前髪の男性プレイヤーがそう言い合いながら互いの武器をぶつけ合っている。
かくいう俺は男性プレイヤーが連れてきた取り巻きのプレイヤー達を捌きながらあの二人の命をかけた言い争いが終わるのを待っている。
何故こうなったのか。それは俺とミュウラがサードレマに着いた時に起こった。
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「よしゃ、サードレマ到着。悪いなミュウラ、MP消費するのに人化させちまって。もう街に入るからあと少し耐えてくれ」
泥掘りを倒しサードレマに到着した俺は隣を歩くミュウラにそう声をかけた。
「問題ありませんわ、ユウヒさん。手前まで肩に乗せてくださったので最大限MPの消費は抑えられてますから」
「まぁ、それもそうか。街に入った瞬間にモンスターが出現とかがある訳でもないしな。気にし過ぎる事でもない、か」
「そうですわ」
ミュウラの応えにそう言いながらサードレマの門を護る衛兵のNPC達に軽く挨拶をして二人で街へ入ろうとした。その時
「すまない、君がユウヒくんで間違いないだろうか?」
唐突に声をかけられた。
「誰だ?」
ミュウラを背後に庇いつつ後ろに飛び致命の闘杖を構えて相手を観察する。
赤い長髪に見ただけで解る高レベルの装備、そしてその手に携えた装飾剣。装備だけで今の俺よりもレベルは上だと判断出来る。
(サードレマは目と鼻の先だってのに……前にも似たような事あったな…)
戦いになっても負けるつもりは毛頭ないが正直もうすぐ夜になるし面倒臭い。
(戦闘になったら隙を作って街に入っちまおう。そんで、裏路地でミュウラに扉を作ってもらえば逃げられる)
相手の一挙手一投足に注意しながらそう考え、重心を下げて何時でも行動出来るようにする。しかし、そんな俺を見て女性プレイヤーは手に持っていた剣をインベントリにしまい愛想良く話しかけてきた。
「すまない、シャンフロのプレイヤーならあの剣を見れば誰だがわかってもらえると思っていたんだが、変な誤解をさせてしまったらしい。私は君と敵対したい訳では無いんだ。だから、君も武器をしまってくれると嬉しい」
「生憎だがまだ始めたばかりなんでな。あんたの事は知らん。で、俺に何の用だ?」
「武器はしまってはくれないか……まぁ、良い。私はクラン『黒狼』のリーダーサイガ-100と言う者だ。私が君を待っていたのは、君の身体に刻まれたその『リュカオーンの呪い』について話をしたいと思ったからなんだ」
「『黒狼』……?」
サイガ-100と名乗ったプレイヤーは笑いを絶やさないが俺はその名前を聞いて警戒レベルを上げた。脳裏によぎるのはセカンディルで声をかけて来たプレイヤー(名前は忘れた)だ。確か、アイツも同じクランだ。
「私は君と話しがしたい。今日じゃなくても良い。君の都合が良い日にしてくれて構わない」
しかし、彼女はそう言うと俺にフレンド申請を送ってきた。
「アンタ、トップクランのリーダーなんだろ?力づくじゃなくて良いのかよ?」
フレンド申請のウィンドウを視界にチラッと入れながらそう訪ねる。明らかにセカンディルで会ったプレイヤーとは態度が違う。警戒を続けたまま彼女を見る。
「力づく?私はそんな事はしないよ。ゲームと言えどそう言う事をする輩は嫌いだし、各々ゲームライフがあるからね。個人の権利は尊重されるべきだ」
「よく言うぜ」
彼女の応えに思わずそう言ってしまった。リーダーがこう言っているのにその下が明らかに違う行動をしている。彼女は嘘をついている可能性が俺の中で高まり俺は身体を力を抜き始めた。
「セカンディルでアンタのクランのメンバー…確か、レベだかリベだかが最初にくる名前のヤツとその取り巻きに追いかけ回されたぞ。『トップクランに逆らうな』ってな、まぁ、撒いてやったが……リーダーとメンバーで随分スタンスが違うんだな。………………………違いすぎて不自然だぜ」
余分な力を抜きそう言って武器を構える。頭の中で彼女を躱し街に入る算段を立てる。
「ま、待ってくれ!それは誤解だ!私はリベリオスにそんな指示は出ていない!アイツの独断専行だ!!」
構えをとった事で俺の意思が伝わったのだろう。彼女は慌ててそう言うが俺の答えは決まっていた。
「リーダーが下を統率出来てないのか……益々信用に欠けるな」
(ミュウラ、俺が隙を作る。お前はその隙にサードレマに入れ。街に入ればこっちのもんだ)
彼女から視線を外さずに後ろにいるミュウラに小声でそう言う。ミュウラは小さく「はい」と答えくれた。
そして、俺はミュウラの答えを聞いてサイガ-100へと1歩踏み出そうと足を前に出した。
その時だった。
「!」
「!」
俺とサイガ-100に大量の矢が飛んできた。
「おいおいおいおいおいっ!なんで『黒狼』がいんだよ。ソイツに用があるのは俺達なんだぜ?」
後ろのミュウラに当たらないように杖で弾いたり手で掴み矢を防ぐとそう言いながら男性プレイヤーが後ろに数人のプレイヤーを引き連れて現れた。
「阿修羅会!」
サイガ-100が男性プレイヤーと取り巻きを見て憎々しげにそう言う。
「PK集団か」
俺も連中を見てそう言った。彼等のプレイヤーネームの横には1人の漏れもなく髑髏マークが入っており全員がPKだと解る。
(15人か……更にめんどくせぇ事になりやがった)
心の中でそう毒づきながら武器を構える。PKが現れた以上、サイガ-100の様に話し合いなんて事は出来ない。PKとはそういう連中だ。
「何の用だ?」
俺が武器を構える中、サイガー100もまた武器を構え1番前に立つ前髪を一房だけ垂らしたオールバックの男性プレイヤーにそう尋ねる。
「はっ、そんなのお前と同じだよサイガー100。ソイツはユニークの情報を持ってる。それを吐かせに来た」
すると、そのプレイヤーは俺に鋒を向けながらそう答えた。
「それを私が許すとでも…?」
サイガー100はその答えに怒りを露わにしてそう言う。しかし、そんな彼女を男性プレイヤーは鼻で笑った。
「おいおい、強がるなよサイガー100。此方は15人だ。いくらお前でも初心者を護りながらこの数を捌くのは無理だろ?死にたくないならそこで大人しくしてろよ」
「あ?」
しかし、そのプレイヤーのセリフに俺は彼女よりも先に反応した。
「護られる?俺が??おいお前、あんま舐めた事言ってんじゃねぇぞ。さっきからどいつもこいつも人の邪魔しやがって……テメェらこそ死にたくないなら大人しくしとけよ」
「ユ、ユウヒさん……」
男性プレイヤーのセリフに思わずカチンと来てしまいそう言う。ミュウラが後ろから心配そうに声をかけてくるが今は無視だ。
「て、テメェ……初心者のクセに俺様にたてつきやがって……お前ら、殺れ!!」
そして、俺のセリフが引き金となり乱闘が始まった。
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これが5分前の出来事だ。
乱闘が始まり俺に向かってきたPKは4人。残りの10人はサイガー100と戦い始めた。サイガー100と話していた男性プレイヤー、オルスロットと言うプレイヤーは後ろに待機し戦いを見ていた。
しかし、今は自身も剣を取りサイガー100と戦っている。理由は単純に俺に向かってきたプレイヤー達が弱すぎて話にならなかったからだ。
4人を瞬殺した俺にオルスロットはキレ散らかしてサイガー100と戦っていた人数を半分に分けて俺と戦うように指示を出し俺はその5人の攻撃を躱し続けてサイガー100とオルスロットの戦いを見ていた。
「へぇ、あのサイガー100とか言うプレイヤー中々に良い太刀筋してんな。強いじゃん」
(と言うかあの太刀筋って師匠の友達って言ってた京都の爺さんの太刀筋だよな。爺さんの方が鋭かったけど間違いない)
「よそ見とか舐めてんじゃねぇぞ!!」
サイガー100の剣戟を見ながらPK共を捌きそう呟く俺にPKの一人が太刀を振るってくるが俺は杖で足払いをして体勢を崩し蹴りを入れて他のPKに当たるように飛ばす。
「舐めてんじゃなくてお前らが弱すぎるだけだ」
「巫山戯んな!!」
「死ね!!」
蹴飛ばしたPKにそう言う俺に後ろからまた2人武器を振り下ろしてくるが
「不意打ちなら黙ってやれよ」
俺は体捌きのみで攻撃を躱し首と頭を杖で殴って取り敢えずダメージを入れた。
「初心者がなめやがって!!」
「クソ野郎が!」
「俺達は阿修羅会なんだぞ!!」
俺が余裕で自分達を捌くのが気に入らないのかPK共がそう言うが俺はその言葉を無視してサイガー100とオルスロット達の戦いを見る。
いや、戦いにもなってない。
「くそくそくそっ!!」
オルスロット達はサイガー100に必死の形相で剣を振っているがサイガー100は冷静に攻撃を捌いている。
「実力差があり過ぎてサイガー100が可哀想だな」
こう言えるくらいには実力差がある。本当に可哀想だ。
「舐めやがって………っ!!」
自分達を無視している俺にPKの一人がそう呟いたのが聞こえる。
「そうだった…すまん、余りにも弱くて思考から外してた。つまんない戦いをダラダラと長引かせるのは嫌いなんだ。シャンフロじゃPKKやってもノーリスクみたいだし………そろそろ死んでいいぞ」
俺は武器を構えるPK共にそう言い致命の闘杖を構える。
「「「「「死ね!!!!!!」」」」」
そんな俺にPK共は仲良く同じ掛け声で飛びかかってきた。
だが
「だからお前らはダメなんだ」
俺は一言そう呟きPK共を致命の闘杖で滅多打ちにした。
「クソが、化け物め!」
一人が身体をポリゴン塊に変える直前にそう言ってきたが俺からすれば「お前らが弱いだけ」なので気にする必要はない。
俺はサイガー100とオルスロット達の方へ歩きながらPKを倒した事でインベントリに入った武器やアイテム等を確認しつつ詠唱をする。
「『纏い、轟け』『纏い、轟け』『纏い、轟け』『纏い、轟け』『纏い、轟け』『纏い、轟け』『纏い、轟け』『纏い、轟け』『纏い、轟け』『纏い、轟け』『纏い、轟け』『纏い、轟け』『纏い、轟け』『纏い、轟け』『纏い、轟け』」
最大回数の纏雷が重なり身体に雷光が弾ける。
「ミュウラ来い!」
「はい!」
此処を走り抜ける準備が整い俺の戦いを観戦していたミュウラを呼びその手を取る。
「痺れるだろうけど後で麻痺直し買うから我慢してくれ」
「だ、大丈夫ですわ」
纏雷の効果で痺れているミュウラにそう言い俺は走り出した。サイガー100にヘイトが集まり空いたスペースを真っ直ぐ走る。
「なんだ!?」
「あれは纏雷なのか!?」
俺を見たサイガー100とオルスロットがそう言うのが聞こえる。
「サイガー100!此奴等弱すぎてやる気が失せた!後はアンタに任せる!」
俺はサイガー100にそう言い残しサードレマへと入っていった。
「へぇ、あれがサンラク君の言ってた弟君かぁ。確かに強いじゃん。あの馬鹿2人が言うだけあるねぇ」
しかし、俺は知らなかった。この一件を遠くから観察していたヤツがいた事を。