千紫万紅の樹海窟のエリアボス『クラウン・スパイダー』がいる場所を目指して俺とミュウラは進んでいた。しかし、植物が生い茂るエリアなだけあってモンスターが跳梁跋扈の森とは比較にならないくらい多い。
既にミミクリー・マンティスを2体、エンパイアビー・ワーカーを10体、クワッドビートルを2体倒している(ストレージパピヨンは倒しすぎたので割愛)。
ミミクリー・マンティスとエンパイアビー・ワーカーは大した事はなかったがクワッドビートルは強かった。いや、強いというより硬かった。
ミミクリー・マンティスのように鎌を関節部からへし折って倒すやエンパイアビー・ワーカーのように杖での薙ぎ払いで倒せるような敵じゃなかった。
纏雷を8回重ねがけして敏捷と筋力を上昇させ、更にストレージパピヨンが集めていた蜜でヘイトを一瞬俺から外す事で隙を作り出し外骨格が着いていない腹の下に侵入、そこに連撃を叩き込む事で倒した。
「まさか、通算28体倒してレベルが1しか上がらないとはな…致命魂の首輪さまさまだな」
ヴァッシュ師匠の言っていた「苦難」の意味をしみじみと理解した俺はそう呟き、ある場所に到着した事で歩くのを止めた。
「ミュウラ、ここら辺であってるよな?」
「はい、辺り一帯の蜘蛛の糸……違いありませんわ」
俺の目の前にはデカイ穴がありその周りには蜘蛛の糸が垂れ下がっている。ミュウラの応え的に考えても間違いないだろう。
「ミュウラ、悪いが此処に居てくれ。お前には悪いが「エリアボスは俺一人で殺る、ですね?」
エリアボスのいるフィールドに入り挑む前にミュウラに断りを入れてようとしたが先にそう言われ俺は頬を掻く。
「悪いな」
「いいえ、それでこそユウヒさんですわ」
バツが悪くなりそう言う俺にミュウラはそう言うと肩から飛び降り「御健闘を」と言ってくれた。
「応っ」
ミュウラの激励に応え武器を構える。
「……さぁて、行くぞ。エリアボス!!」
一つ息を吐き意識を切りかえて俺は飛び上がった。
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クラウン・スパイダー
派手な柄した蜘蛛のモンスター。千紫万紅の樹海窟のエリアボス。樹木の中をくり抜いたような縦空間のエリアに巣を作り、上から丸太や岩石を落として来る。発射される糸玉はトリモチの様に着いたら取ることが難しい為、注意が必要である。樹洞内面の壁面に螺旋階段がある為、それを使い上に行くのが良いだろう。
考察クラン『ライブラリ』のリーダーキョージュ執筆の考察記事から抜粋。
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クラウン・スパイダーの攻略を開始した俺は樹洞内面の窪みを利用して上へと駆け上がった。遠距離攻撃手段を一つしか持たずその手段も継戦に向かない以上、俺は接近して直接叩かなければエリアボスを倒せない。
「上に行くほど糸が密集してきたな…」
相手は蜘蛛のモンスター。当然と言えば当然だが少し鬱陶しい。
「鬱陶しい上に一度絡んだら終わりなんだろうが…悪いね、俺は昆虫マニアの息子なんだ。お前ら蜘蛛の知識もそこそこ教えられてんだよ」
姿が見えてきたクラウン・スパイダーにそう言うと俺は奴が作り出した巣の"縦の糸"を掴み綱渡りよろしくその糸の上に立った。
「どういう事ですか!?」
下からミュウラの声が聞こえてくる。恐らくくっつくと思っていたのだろう。
「蜘蛛の糸ってのは中央に向かう縦の糸には粘着力がないんだよ」
下にいるミュウラにそう言いつつ俺は次の縦の糸に向かってジャンプする。しかし、自身に近づく敵を座して待つエリアボスはいない。
クラウン・スパイダーは俺に向けて丸太を落としてきた。
「そう言う感じね」
「ユウヒさん!!」
落ちてきた丸太、下からミュウラの声が聞こえるが俺は杖を素早く引くと丸太へと突き出した。
杖の先は完全に伸びきる前に丸太に接触する。しかし、それを狙って突いたのだから問題ない。丸太と杖を突く力を利用して身体を斜め下へと押し出す。
丸太は回避出来たが身体は壁面へと向かっている。しかし、俺はバク転の要領で身体を翻すと壁に足を向け接地の瞬間にスキルを発動した。
「スキル『一艘飛び』!」
跳躍力が強化され再び上に上がっていく。
壁から壁へ、どんどん上に上がって行き巣のエリアまで到着した。クラウン・スパイダーはまた丸太や今度は岩石等を落としてきたが俺はそれを足場に更に上に上がる。
「『グラスホッパー』」
更にスキルで落下物を足場にAGIを強化し加速する。
そして
「道具に頼る時間は終わりだ。死ね」
目の前まで辿り着いたクラウン・スパイダーにそう言い。糸を足場に接近、右足の1本、その関節部を狙って杖を振るった。
「ギギッ!!」
クラウン・スパイダーが苦痛で声を出すがそれを無視して左足の関節部に攻撃をする。
「『一点打ち』!」
連続で足を攻撃されたクラウン・スパイダーはバランスを崩し落ちていく。
「高い場所から散々プレイヤーを殺してきたんだ……次はお前の番だぜ」
落ちるクラウン・スパイダーにそう告げて下まで落ちるのを見る。しかし、クラウン・スパイダーは尻の先を少し動かすと壁に糸を飛ばした。
「阿呆か」
しかし、俺は糸が壁に接着する瞬間を狙ってそこに跳ぶと糸が張ったタイミングで致命の包丁を取り出し糸を切り裂いた。
「糸なんかの柔らかい物体は張ったタイミングで繊維を切られると途端に脆くなる。いい加減に諦めて落ちろ」
クラウン・スパイダーは俺のセリフと共に地面まで落ちて行き落下によるダメージを受けた。
俺も落ちながらクラウン・スパイダーの頭目掛けて杖を構える。
「どんなに強く、大きくとも頭を潰せばゲームセットだよな」
口元が歪み未だ落下によるダメージで苦しむクラウン・スパイダーの頭に俺は「スパイラルエッジ」と「スクーピアス」を重ねた突きを叩き込んだ。
脳天を狙った一撃。クリティカルが発生しスキルによる高ダメージ、クラウン・スパイダーはポリゴン塊になって消滅し俺の耳に撃破のSEが届いた。
「撃破だ」
「流石です、ユウヒさん!」
俺に向かって跳んできたミュウラとハイタッチをして喜ぶ。しかし、俺は上を向くと
「行くぞ、ミュウラ」
そう言ってクラウン・スパイダーが根城にしていた樹洞を登っり始めた。
「えっ?どう言う事ですか??」
ミュウラは困惑してそう言ってくるが俺は一旦、無視して樹の窪みを足場に壁面を駆け上がって行く。
そして、クラウン・スパイダーの巣まで到着すると戦闘中の様に縦の糸を掴みそこに立った。
「そろそろ説明が欲しいのですが……」
そんな俺にミュウラがそう言ってくる。俺も一旦、行動に落ち着きが出たので狙いを話すことにした。
「今回、クラウン・スパイダーを倒した目的はコレをしたかったからなんだ」
「コレと言うと木登りですか?」
「違ぇよ、すっげー単純な考えなんだがエリアボスは正真正銘このエリアのボスだろ?一番強いってこった。んで、蜘蛛なら空中に巣があるだろ?なら巣を作る為に高い場所を探すよな。なら、そこを登れば『一番デカイ樹』が見つけやすいんじゃないかって思ったんだよ」
ミュウラに説明しながら俺は縦の糸を使い上に登っていく肩の上でミュウラは「な、なるほど…」と言っているがその声色的に納得していない事は丸わかりだ。
(まぁ、俺も短絡的過ぎだとは思うげどな)
心の中でそう呟きながら見えてきた光に向かって登るスピードを上げていく。
そして、俺達は樹洞を登りきり頂上に出た。
「すげぇ…」
「綺麗ですね…」
目の前に広がる景色に目を奪われた。見渡す限りに美しい樹海窟が広がっている。
そして、その中に見つけた。
「ミュウラ、あれだ」
「もしかして……」
一際デカく、そして頂上が光る樹を見つけた。そして、生い茂る木々の中に一部分だけ光る場所も
「大当たり」
「はい!」
目的の場所を見つけた。俺とミュウラはハイタッチをして喜んだ。
「あそこに行くぞミュウラ。あそこにお目当てのアイテムがある」
「はい、何処までもお供しますわ」
そして、その場所を見据えてそう言った。