「それじゃあ、改めて確認するね。此処にいるみんなはユニークモンスター『墓守のウェザエモン』の討伐に参加する為に集まってくれたメンバー。そして、その情報を守ってくれるメンバーって事で大丈夫?」
サードレマの路地裏、その更に分かりにくい場所にある蛇の林檎に集まった私達は『墓守のウェザエモン』の攻略についての作戦会議を始めていた。
私の確認のセリフにサンラク君、カッツォ君、ユウヒ君は無言で頷いてくれた。この話しは
「ありがとう、じゃあ話を進めるね。まず最初にウェザエモンの能力と攻撃について話そう。サンラク君とカッツォ君は2回目だけどユウヒ君は初めてだからちゃんと聞いててね」
「あぁ」
私のセリフにユウヒ君は短く応えて頷く。私は「ユナイト・ラウンズ」でもした様にウェザエモンの情報をまとめた本を表示した。書いてある内容はサンラク君達に見せて、話した内容と同じそれを使い私は経験も含めて話していく。
「ウェザエモンの攻撃は基本即死。レベル差150って事実を考慮していない運営の理不尽さをひしひしと感じる攻撃性能だよ」
「何度聴いても直で勝てる気のしない相手だな」
「むしろ特殊勝利系にしてるって部分で釣り合いを取ろうとしてるんじゃない?じゃないと挑めないでしょ」
サンラク君とカッツォ君は「ユナイト・ラウンズ」の時と同じくウェザエモン戦の難易度にそう言う。しかし、ユウヒ君は黙ったままなんの反応も見せなかった。
(まさか、怖気づいた?)
サンラク君とカッツォ君があそこまで言い、レベルが上の阿修羅会のプレイヤーを子供扱い出来るプレイヤースキルの持ち主だそう思いたくはないがそう思ってしまった。
しかし、私はそれが杞憂だと彼の表情を見て知ることになった。
「!!」
彼は笑っていたのだ。ウェザエモンの説明を聞いてその口を歪めていた。その表情は怖気づいた表情ではなくワクワクしている表情だ。サンラク君とカッツォ君が「直接では勝てない」と言うモンスターを前にユウヒ君は笑っている。
その事実と彼の笑顔に私は息を呑んだ。
(サンラク君達の言葉、アレは決して間違いなんかじゃなかった…)
そして、その事実に安心感を覚えて笑った。
この3人なら必ず成し遂げられる。そう感じることが出来たからだ。
「ペンシルゴン?」
「どうかしたの?」
自分が思っている以上に私は黙っていたらしい。サンラク君とカッツォ君が怪訝な顔でそう言ってきた。
「ゴメン、ゴメン。話を続けるね」
口にはしていないがユウヒ君も同じ顔をしていたので私はそう言って話を進める。
「ウェザエモンの攻撃は一撃確殺。だから、私がやられた時の為の策を用意する。君達にやってもらいたいのはまずレベリング。ウェザエモンは戦闘開始時に此方のレベルを50まで下げてくるけど50まで上げてくる事は無い。だから、レベル50にも到達して無い今の君たちじゃ話にならない。レベリングにおすすめのモンスターが出てくる場所を記した地図を渡すからそこで50までレベルを上げて」
「「了解」」
「わかった」
ユウヒ君達は私に頷く。私はそんな3人に早速地図と釣竿を渡した。
「地図と釣竿?」
「釣竿は何に使うの?」
「レベリングの間の食料の確保もやれって事か?」
地図と言うより釣竿に首を傾げる3人だが私は「行けばわかるよ」と言って話を続ける。
「そして『墓守のウェザエモン』の討伐に当たって3人にはレベリングの他にクエストの受注もしてもらはないといけない。これに関しては私が後で案内をするんだけど、別の問題がある」
「別の問題?」
私のセリフに首を傾げるユウヒ君に頷き私はこのゲームにおけるPKの扱いについて説明を始めた。
「このゲーム『シャングリラ・フロンティア』では"PKって言う行為は認められてるけど存在は認められてない"んだよね。だから、PKは出来るけどそれをしたプレイヤーはかなり特殊な状態になって他のプレイヤーから狙われやくすなっちゃうの」
「特殊な状態?」
「そっ、私達PKはそれをすると今の私みたいにプレイヤーネームの横に髑髏マークが付く。そして、その罪の重さによって懸賞金やPKが持っていたアイテムや装備の所有権が倒したプレイヤーに移るようになってるんだ。倉庫に預けていた物とかも含めて全てね」
「脚の生えた宝箱みたいだな」
「そう、ユウヒ君の言う通り歩く宝箱みたいな物なんだよね。私達PKって……『阿修羅会』の上位のPKにもなれば相当のレアアイテムなんかも持っているからよく狙われるんだ。だから、私達は誰にも狙われないでレベリングをする必要があった」
「あぁ、そういう事か…」
「俺も理解出来たわ」
ここまでの話でウェザエモンの現状を知っているサンラク君とカッツォ君は私の言いたい事が理解出来たらしい。ユウヒ君だけは首を傾げているがウェザエモンの攻撃性能なんかについてしか話していないので仕方の無いことだろう。
「ウェザエモンはユウヒ君やサンラク君が戦ったリュカオーンとは違って時間指定タイプの、それも現れる場所の決まったユニークモンスターなんだ」
しかし、私がここまで言う納得した様な表情になった。
「わかったみたいだね。ユニークモンスターは遭遇するだけで経験値が入りレベルが上がる。倒す為じゃなくレベルを上げる為だけに『阿修羅会』のメンバーはウェザエモンのクエストを受注している」
「つまり、このまま行くと俺達が作戦を実行する日に既にクエストを受注している『阿修羅会』のメンバーとカチ合うって事か?」
サンラク君のセリフの私は頷き肯定した。それが別の問題だ。だからこれを解決する必要がある。
「ウェザエモンの討伐前に阿修羅会を殲滅するのか?」
「俺達4人で?ユウヒがいるから出来なくもなさそうだけど流石にキツくない?」
「レベル上限のプレイヤーが何人いるかだな」
しかし、私の心情とは裏腹に3人はそう言い始めた。
「実際、何人位までなら上限がいても殲滅出来る?」
「2人…いや、3人くらいまでなら行けると思う」
「さっすが、それじゃあいつ決行しようか?」
「ちょ、ま「なるべく早い方がいいよな」
「君達、ま「やった後に粘着されるのはゴメンだから全員集まってる時が良い」
「どうするかな〜」
私を無視してどんどん話しが進んでいく。ユウヒ君の実力がまだハッキリしないから分からないけどサンラク君とカッツォ君にとってユウヒ君の存在がかなり悪い方向で作用しているのはわかる。
「ちょっと「デマ情報流して指定した場所に集めるのは?」
「しくると一般のプレイヤーまで来ちゃうだろ」
「なんかいい方法ないかな?」
「ちょっと待ちなさい!!」
このままでは良くない、あっという間に狂気の沙汰の実行が決まってしまう。私は店中に響くほどの大声で3人を黙らせた。
「なんだよ、急に大声出して」
「びっくりするじゃんか」
「店員まで耳塞いでるぞ」
私の大声に3人はそう言ってくるがビックリしているのは私の方だ。
「何勝手に狂気の沙汰の実行を決めちゃってるの?馬鹿なの?低レベルのプレイヤー3人で出来るわけないじゃん!馬鹿なの??」
「いやいや、『阿修羅会』の頭ってあのオルなんとかって奴だろ?アレくらいの奴なら確実に殺れるぞ。俺の事襲ってきた奴らも大したこと無かったし。カッツォレベルがゴロゴロいるとかなら話しは変わるが……そうじゃないんだろ?」
声を荒げる私にユウヒ君は冷静そのものの表情でそう言ってくる。確かにサードレマの前での立ち会いを見た感じ出来なくもなさそうだけどやらせる訳には行かない。
「君達にはレベリングをやってもらわないとダメなのそんな事してる時間的余裕はないの。『阿修羅会』を潰す作戦は考えてあるから君達はレベリングを優先して」
ウェザエモンの討伐を達成する為にコレばっかりは譲れない。私はユウヒ君にそう言って彼を見つめた。彼は私をジッと見た後「了解」と頷いてくれた。
ユウヒ君が引いてくれた事に心の中で溜息が漏れた。サンラク君の弟なだけはある。放っておくとトンデモナイ事をやらかす。そう言うタイプだ。
「今『阿修羅会を潰す』って言ってたけど何する気なのペンシルゴン?」
安堵している私にカッツォ君がそう聞いてきた。サンラク君とユウヒ君もそこを気にしているようだ。
「『阿修羅会』の拠点は隠しエリアにあってその場所は知られていない。まぁ、私達PKって嫌われてるから当然の対策だよね。……だから、その拠点の場所を情報屋を介して流布する。ウェザエモン討伐作戦の当日にね」
「うわ〜」
「やっぱ外道だわコイツ…」
「サンラクやカッツォが好んで関わってる理由がよく分かったよ」
私のセリフに3人はドン引きした様子になるが私としては既に邪魔になっているだけの存在だ。罪悪感なんてものは1ミリもない。
「こっちの策は進めておくから君達はレベリングに集中して。因みに君達って今レベル幾つ?」
話を進めるために私は3人にそう尋ねた。レベルによっては彼等に必要なアイテムを貸さないとならなくなるからだ。
「俺は31だな」
「25だね」
「41だな」
しかし、ユウヒ君がそう言うとサンラク君とカッツォ君の目が点になった。
「「はぁ!?」」
「うるせぇ」
「なんでお前そんなレベル高いんだよ!?」
「なんでなんで!?」
大声に耳を塞ぐユウヒの胸ぐらを掴んで揺らしながら2人はそう問い詰める。2人ほどじゃないけどユウヒ君のレベルには私もビックリした。始めたのはサンラク君と同じタイミングだと聞いていたからかなりのハイペースだ。
「俺が1番最初に受注したユニークシナリオ関連のおかげだな。かなり強いモンスターと戦ってるからレベルの上がりが早いんだよ」
しかし、彼のセリフに私は、いや私達はまた驚かされた。
「はぁ!?ユニークシナリオ??ちょっと待てよユウヒ、君ってサンラクと同じユニークも受注してるんだよね??て事はもう既に2つのユニークを見つけてるって事!?」
「そうなるな」
「なんなんだよソレ!!なんでお前らだけユニーク発生させられるんだよ!!おかしいだろ!!」
「そのユニークどうやって発生させたの?私に教えて!」
カッツォ君が叫び散らかす中私もユウヒ君に迫った。私もウェザエモンのユニークを発生させてるけど凄く気になる。
「断る。自分等で探せ。開拓者だろ」
しかし、ユウヒ君は私にそう言うと席を立ち
「此方のユニークを進めれば強いモンスターと戦える。レベルも自ずと上がるだろうから俺は此方を進めるよ。レベリングに最適なモンスターってのは間に合わなそうだったら狩らせてもらう」
そう言って店から出ていった。後を追っていこうとも考えたけど私も私でやらなきゃならない事がある。ここは気持ちを抑えないと
「やっぱりサンラク君の弟なだけあるね。私の予想をサラッと超えてくる」
「ユニーク、ユニーク…!!」
椅子に座り直して彼が出ていった扉の方を見て私はそう言った。カッツォ君は壊れた玩具みたいに「ユニーク」を連呼しているが私はサンラク君の異変に気がついた。
「さっきから黙ってるけどどうかしたのサンラク君?」
そう、サンラク君が先程から黙っているのだ。ユウヒ君がユニークを2つ発生させている。サンラク君もカッツォ君と同じ様な反応を見せると思ったのに彼は大人しいものだった。
「サンラク?どうかしたの?」
カッツォ君も気がついたのかサンラク君にそう尋ねるがサンラク君は答えない。私たち2人は顔を見合せて首を傾げるがサンラク君はいきなり顔を上げると
「お前ら…もしかするとユウヒのヤロウ、とんでもない事になってるかもしれねぇぞ……」
そう呟いた。