戦闘狂が行く理想郷   作:烏鷺

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栄と死・其ノ弍

ヴァッシュ師匠からの情報を元にラビッツからサードレマを出た俺とミュウラは「栄古斉衰の死火口湖」にやって来ていた。

 

「此処が栄古斉衰の死火口湖、その湖か…」

 

頂上にある湖までやって来た俺は目の前に広がる湖を前にそう呟いた。

 

「大きい湖ですね……」

 

俺の肩に乗るミュウラも口を半開きにしてそう呟いている。

 

「しかし、リュカオーンの呪いのせいか全くモンスターが寄り付かなかったな。まぁ、弱い相手と戦っても仕方ねぇから有難いけどな」

 

湖を前に道中、俺から逃げていったモンスター達を思い出す。

 

「夜の帝王の獲物に手を出す勇気のあるモンスターは中々いませんからね。それにユウヒさんからは常にヴォーパル魂が立ち昇っていますから皆それに圧倒されるのです」

 

「なんだそれ、沸騰したヤカンかよ」

 

ミュウラのセリフにツッコミながら俺は俺は湖を覗き込む。透明度はそこそこで南の島の海のように底まで見えると言う訳ではなかった。

 

「良し、潜るぞ。ペンシルゴン達との話し合いやヴァッシュ師匠を尋ねたのもあってもうすぐ夕方、アイテムの入手に手間取るとそのまま夜になる。視界がなくなる前に見つけちまおう」

 

「はい、それでは魔法を使いますね」

 

俺のセリフにそう言ったミュウラは肩から降りる。俺は今の装備をサードレマで買った潜水用の装備に変更しながらながら頷いた。

 

「『兎の神秘よ、彼の者に水の中での自由を与えよ』」

 

ミュウラは俺の装備の変更が終了するのと同時に詠唱をして魔法を発動した。俺の顔の周りには透明の球体が現れ水中での呼吸が出来るようになる。

 

何故、ミュウラに魔法をかけてもらうかと言うとサードレマに売られていた潜水用の装備のうち水中で呼吸をする為の装備がリュカオーンの呪いで装備出来なかったからである。

 

しかし、レベル99の魔力極振り兎であるミュウラの魔法は10分間ではあるがリュカオーンの呪いを貫通して魔法を使う事が出来た(ここに来る前に検証した)。

 

「ユウヒさん、時間は10分ですからね。お気をつけて」

 

懐から時計を出してそう言うミュウラにジェスチャーで応え(呼吸が出来るが会話が出来なくなる)俺は湖に飛び込んだ。

 

(水が暖かい……山の頂上に溜まっているせいか?)

 

湖の中に入りまず感じたのは暖かさだった。山は天気が変わりやすいと言っても今日は快晴だ。その影響なのだろう。

 

(視界が思った以上に悪いな。最高を10としたら3くらいか?)

 

ミュウラが張ってくれた魔法のおかげで視界は開けているが水自体の濁りが凄く良く見えない。潜水装備にはリアルのダイビングのウエイトと同じく重りが着いており水中ではこれを外さない限り浮上は出来ない。

 

身体がどんどん沈んで行くのを感じながら底に着くまで身体を真っ直ぐに保つ。

 

(かなり深いな…体感で1分は降りているはずなんだがまだ底に着かない)

 

思っていたよりも深い湖に酸素の不安を感じながら降りていく。その時だった。

 

(なんだ、あの影?魚影か?)

 

視界に大きな影が写った。

 

しかし、その影は直ぐに消えてしまった。

 

(突然消えたな…。明らかに無機物の動きじゃない。アレは魚の動きだ。父親が釣りバカで助かった。魚の動きは良くわかる)

 

此方に来なかったという事は今の俺よりレベルの低いモンスターなのだろう。気にする必要ない。

 

現れた魚影に着いて考えながら底に着くのを待つ。しばらくすると足が何かに触れやっと底に着くことが出来た。

 

(体感で3分って所だな…すぐに見つけて戻らないと)

 

シャングリラ・フロンティアの物理エンジンは浮力も再現している。練り上げられた世界観は専用の装備を付けるか俺のように魔法を使わないとその法則から逃れられない。

 

腰に着いているウエイトを外せば2分とかからずに浮上する事が出来るだろう。しかし、此処はシャングリラ・フロンティアだ。減圧症等の症状が再現されていないとは考えられない。

 

(何かしらのデバフはかかると思っていた方が良いな)

 

少しづつ浮上する事を考えても探す時間は4分弱と言った所だ。俺はインベントリから水中用の光源を幾つか取り出すと周りに投げた。

 

(このアイテムが光ってくれるのは2分間、手早く見つけろ)

 

RTAの感覚で当たりを見回し昔話に出てきた一枚の板を探す。

 

(昔話では『板に記した』と言っていた。何か文字が刻まれた板があるはずだ)

 

底を手で払いながら探していく。移動しながら光源を落として探す。最初に使った光源は既に消えており底に着いてから2分が経っている事を教えてくれた。

 

(何処だ、何処にある??)

 

魔法の持続時間も考えると焦ってしまう。しかし、俺は一旦、動きを止めるとゆっくりと深呼吸をした。

 

(焦りは禁物。それは己を勝利から最も遠ざける)

 

リアルで師匠から散々言われた事だ。頭の中で反芻して落ち着き当たりを探す。

 

その時だった。

 

泥のしたから翡翠色の文字が刻まれた石板を見つけた。

 

(これか?)

 

そして、その石板に指を這わせ文字を1行づつなぞった。そして

 

『何を求める?』

 

最後の一文字を指でなぞり終えた瞬間、声を聞いた。

 

『何を求める?』

 

聞き間違いではない。確かに声が聞こえる。

 

(未知を求める)

 

聞こえた声に俺はこの石板を求めた意味を応えた。

 

そして

 

『持って行け』

 

その言葉と共に石板は外れ俺の手元に寄ってきた。俺は目の前を漂う石板を掴み取り胸に抱えた。

 

『称号【残滓を手にした者】を獲得しました』

『称号【軌跡を手にした者】を獲得しました』

 

『ユニークシナリオ【志し持つは蒐集者】が進行しました』

 

幾つものウィンドウが表示され目的を達成した事を教えてくれた。石板を抱えて足を動かす。

 

1分間、足を動かし続け水面が見えてきた俺は装備のウエイトを外した。身体が浮かび上がり水面から顔が出た。

 

「ユウヒさん!!」

 

水面から顔を出した俺に待っていたミュウラが喜びながら声をかけてきた。

俺は石板を持ち上げてお目当ての物を手に入れた事を教える。

 

「やったのですね!!」

 

喜ぶミュウラの声を聞きながら陸に上がり装備を変更する。ミュウラもそれに合わせて魔法を解除してくれた。

 

「やったぜ!」

 

「流石です!」

 

ミュウラとハイタッチをして喜び合う。

 

「コレが『栄華の石板(えいがのせきばん)』だ。これで後3つだ!」

 

「残りのアイテムの内、一つも此処にあります。ユウヒさんなら必ずゲット出来ます!」

 

暗くなった死火口湖ではしゃぎながら2人で笑う。このままでも此処にあるもう一つのアイテムを探しに行けそうだが既に日が落ちている。

 

潜水用の装備を購入したお陰で懐が寒くなってしまった。このまま此処に残るよりモンスターを強襲してドロップアイテムを狙った方が良いだろう。

 

「アイテムゲットを優先したいが今日は帰ろう。金がないからなアイテム収集して金を稼ぎたい」

 

「わかりました…。ユウヒさんの活躍を見れないのは残念ですがユウヒさんがそう決めたのなら私もお供します」

 

俺のセリフにミュウラは一瞬表情を変えたがそう言ってくれた。俺はそんなミュウラに「ありがとな」と言って肩に乗せて歩き出した。

 

「また此処に来るのですか?」

 

「あぁ、残りをゲットするまで来るぞ。何度でもな」

 

「流石はユウヒさんです」

 

俺のセリフにミュウラはそう言って笑い俺は道中会議と話し合いと潜水で溜まった鬱憤を晴らすように暴れ回った。

 

レベルが上がることは無かったがアイテムと金は貯まった事は記しておく。

 




ユウヒが見た影は栄古斉衰の死火口湖に住む岩石で形作られたらモンスターです。レベルは低いですが厄介さがダンチなモンスター、何時か相手にする時が来るかも?

栄華の石板は過去の残滓、未来を共に歩めなかった者達の記憶であり記録。問いかけに過去にまつわるニュアンスを含むとゲット出来ません。
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