セツナと会ってから1日ログイン出来ない日を挟み日課を終えた俺は満を持してシャングリラ・フロンティアにログインしようとしていた。満月から新月まで今月の周期から見て残り約10日程それまでに俺にはやる事が沢山ある。
1つ、ユニークシナリオ「志し持つは蒐集者」の進行とそれに伴うレベリング。
2つ、ヴァッシュ師匠の試練を超える。
3つ、特技剪定所でのスキルの統合。
3つしかないように見えるが1と2の難易度が高い。首につけている「致命魂の首輪」のおかげでレベリングが難しい上に40を超えてからレベルが上がりにくくなった。
これはサンラクとカッツォも言っていてセツナの会ってからもらった連絡先にはほぼ毎日レベルが上がったと言う要らない連絡が来るが上昇率がかなり落ちてきている。
実際、石板を手に入れたあとかなりの数のモンスターを強襲したがレベルは上がらなかった。
「残りの日数でやるしかないよな…」
自分に気合いを入れてヘッドギアを付ける。耳には慣れたログインの音声が届き俺はシャングリラ・フロンティアへログインした。
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「おはようございます。ユウヒさん!」
「おはよう、ミュウラ」
シャンフロにログインして聞く第一声は相変わらずミュウラの声でありベッドから起き上がった俺は挨拶もそこそこにミュウラを肩に乗せて部屋を出た。
「ユウヒさん、今日も栄古斉衰の死火口湖に行くのですか?」
「あぁ、其処で入手出来るアイテムの『死相の珠』って言うのを取りに行く」
兎御殿を歩きながらミュウラにそう応え準備の為にピーツを探す。しばらく探していると何処かに行こうとしているピーツを見つけた。
「ピーツ」
「おぉ、鳥の人の弟さんやないの。どないしたん?」
兎御殿に入ったたった2人の開拓者が兄弟だと言う事はエムルちゃんとミュウラによって広められ俺はピーツにそう呼ばれるようになった。思うところが無いわけじゃないが今はそれでも良い。
「栄古斉衰の死火口湖にまた行くんだがその前のにアイテムを補充したくてな。買わせてもらっていいか?」
「ええで!前見たくポーションとマナポーションでええか?」
「あぁ、頼む」
既に何回もリピートしているせいかピーツの選択に迷いは無い。直ぐにアイテムを準備して俺に渡してくれた。
「ありがとな。これ支払い」
「毎度おおきに!また、声掛けてや」
ピーツに金を払った俺はミュウラにゲートを出してもらいサードレマから栄古斉衰の死火口湖へと向かった。相も変わらずモンスターは逃げるだけだったが弱いモンスターに用はない。
麓から頂上の湖まで走っていく。師匠からもらった昔話の内容的にまた水中にアイテムがあると考えている。湖までを踏破した俺は前と同じくミュウラに魔法をかけてもらい装備を変更して湖に飛び込んだ。
(相変わらずの視界の悪さだな…)
水の中は相変わらずで視界がほとんどなく暖かい。前回と同じようにアイテムで光源を補填しないとダメそうだ。
(おかしいな…前回見た魚影が今日は見えない)
潜水を初めてから1分以上経ったがあの影が見えない。辺りを見てみてもそれらしいモノは見えなかった。
潜水を初めて3分が過ぎる頃には足が底につき探索を開始した。光源を確保し探していく、しかし、それらしいアイテムを見つける事は出来なかった。魔法が解ける前に浮上を初めて水面に出る。ミュウラと話して潜る場所を変えて潜水する。
水中の探索はスタミナの消耗が少し早い。ダイビングはリアルでは時間を置かねば潜る事は出来ない。体内に窒素が溜まるからだ。しかし、シャンフロではそれを再現する代わりに体力の消耗量を多くする事で代用しているらしい。
(本当によく出来たゲームだ)
朝から初めて既に昼過ぎ。空腹パラメータも十分に回復し何本目かも分からない潜水をしていた。
(ピーツから買ったアイテムももうすぐ底をつく…湖全体の探索は終わった。なのに、見つからない。地中にあるのか?いや、さっきさんざん掘り返したが見つからなかった)
今は夏、天候や日出日の入りがリアルとリンクしているシャングリラ・フロンティアでは日の入りの時間はまだ先だ。此処でアイテムがなくなってもサードレマで補充し戻って来る事は十分に可能だ。
水中と地中を探しまくる。アイテムが無くなってもサードレマで補充しまた潜る。潜水時間がかなり短いので本数で補うしかない。
しかし、その日俺は何も見つける事が出来なかった。
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「あぁぁぁぁぁぁぁ〜、キツイ」
「大丈夫ですか、ユウヒさん」
ユニークシナリオ「志し持つは蒐集者」を進めるためにアイテム「死相の珠」を探し始めてから"3日"。初日に見つけられずにその後2日間日付けが変わるまで探し続けたが見つからなかった。
兎御殿の自室でため息を吐く俺にミュウラは心配そうな表情をしているが現状はかなりまずい。
「後、1週間か…」
そう、ウェザエモンとの決戦がすぐそこまで迫ってきているのだ。助っ人や道場に行く日もあるので睡眠時間を取れる様にしていたがペンシルゴンとの約束がある。
(ウェザエモンを倒せなきゃ元も子もない)
「徹夜だな…」
睡眠不足でやる運動程キツイものはないので避けていたがやるしかない。実際、この2日で深夜の時間帯だけは調べていないのだ。調べて起きたい。
「今、夜の20時か…。時間はあるから前にペンシルゴンが言ってたレベリングに最適なエリアに言ってみるか」
「お出かけですか?」
「あぁ、行くぞ。ミュウラ」
「はい!」
やる事と行き先を決めた俺はミュウラを肩に乗せてペンシルゴンからもらった地図に記された「涙光の地底湖」に向かった。
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「おぉ、綺麗だな…」
「水が光ってますね…」
神代の鐡遺跡にある穴に飛び込み下へ滑り落ちた俺は目の前に広がる光景に声を漏らした。
何度も足を運び探索した死火口湖とは180度違う美しい湖がそこにあった。
だが
「まぁだレベル47!?カツオじゃなくてメダカに改名したら!?」
「クッソー!!なんで俺だけ居残りなのさ!サンラク早く戻ってこーい!!」
「帰ろうかな…」
その美しさをかき消す怒号がそこには飛び交っていた。