戦闘狂が行く理想郷   作:烏鷺

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Merry Christmas!!


死の予言、暗闇を超えて・其ノ弍

「あ!ユウヒ!いい所に来た、助けてくれ!!」

 

「あっ、お構いなく。俺、今帰る所なんで」

 

せっかくの美しい湖に若干の感動を感じていたのにそれを全てペンシルゴンの怒号とカッツォの叫び声がかき消してくれた。

 

俺に気づいたカッツォが助けを求めいるが知ったことでは無い。俺は手を振ってそう言うがそう上手くは行かなかった。

 

「いい所に来たね、ユウヒ君!!君、今レベルいくつ?」

 

レベル上限の敏捷で近づいてきたペンシルゴンにそう聞かれてしまったのだ。

 

(圧が凄いな…)

 

この世で最も怖い美人の圧力をひしひしと感じながら俺は口を噤んだ。

 

(現状俺よりレベルが上のカッツォがキレられてるのに言えるかよ)

 

絶対に言わない。心の中でそう決めて無言を貫くがペンシルゴンの圧は止まらない。ペンシルゴンの後ろにいるカッツォも徐々に青い顔になるが耐える。

 

しかし

 

「答えて」

「41」

 

心底低く冷たい声と光のない目でそう言われ俺は答えてしまった。

 

(今のはヤバい…本気でキレた朱璃さんと同じ目と声だった)

 

何年か前に師匠との組手に熱が入りすぎて双方ヒートアップした時があった。勢い余って道場の壁をぶち抜き師匠と揃って朱璃さんに怒られた事があった。今のペンシルゴンはその時の朱璃さんと同じだった。

 

内心冷や汗ダラダラでミュウラも俺の背に隠れて震えている。しかし、ペンシルゴンは表情を一転させて笑うと

 

「そっか、そっかー。……………早く釣る」

 

棒読みからの絶対零度のトーンでそう言い湖を指さした。

 

「了解」

 

俺はインベントリから釣竿を取り出し早急に釣竿を開始した。

 

「よく耐えた。流石だよ俺なら直ぐに吐いてた」

 

「俺の中で怖い人の1位と2位は決まってたけど、今日3位が決まったよ」

 

「アレより上が後2人もいるの?ユウヒよく生きてるね。3人揃ったりとかしたら「怖いこと言うな。この世で最も恐ろしい女の上位3人だぞ?俺でも大人しくするね」

 

獲物がかかるのを待ちながらカッツォと並んで話す。俺達の後ろではペンシルゴンが目を光らせているので下手な事は出来ない。

 

「背中にいると怖いです」

 

ミュウラもペンシルゴンの視線に耐え兼ねたのかそう言って胸の方に器用に移動してきた。

 

エムルちゃん以外の喋るヴォーパルバニー。何時ものカッツォなら飛びついているだろうが大人しい。

 

理由はわかるので何も言わずにミュウラの頭を撫でて釣りを続ける。すると、俺の釣竿が反応し先端がピクピクと動いた。

 

「来た!」

 

竿を引き針に食らいついた獲物との格闘が始まる。10秒程格闘した俺は遂に獲物を釣り上げソイツを陸に引きずり出した。

 

「ユウヒ、ソイツだよ!ライブスタイド・レイクサーペントだ!!」

 

一発目で当りを引き当てたようだ。俺はカッツォに頷くと釣竿から湖沼の翠杖へ装備を変更した。

 

「ミュウラ離れてろ」

 

「はい!」

 

ミュウラを後ろに下がらせ翠杖を構える。カッツォも拳に何か赤いオーラを纏わせて構えをとった。

 

そして

 

「『纏い、轟け』『纏い、轟け』」

 

スキル圧縮詠唱と短縮詠唱を使い6回分の纏雷を纏った俺は先陣を切ってライブスタイド・レイクサーペントに突っ込んだ。

 

ライブスタイド・レイクサーペントは近づく俺に気づき噛み付いて来るが翠杖の方が早くその顔を殴りつけた。

 

顔が上に向きそれに伴って身体も若干上に上がった。俺は身体にも翠杖で打撃を入れダメージを入れていく。

 

「俺も混ぜて、よ!!」

 

そして、カッツォも攻撃に加わりライブスタイド・レイクサーペントの身体を殴りつけた。

 

「そのオーラはバフか?」

 

「そ、STRとVITに補正が入る『拳気【赤衝】』って魔法。そっちは?」

 

「STRとAGIに補正が入る。纏雷って魔法」

 

「え、纏雷?」

 

サーペントの攻撃を躱し殴りを繰り返しながら話しているとカッツォが変な顔になった。

 

「どうした?」

 

「いや、その魔法って確か…」

 

それを訝しく思いそう尋ねるがカッツォははっきりと答えない。

 

「まぁ、いいや。後で教えろよ」

 

俺は兎に角、モンスターを倒すためにソレを後回しにして詠唱を重ねる。

 

「『纏い、轟け』『纏い、轟け』『纏い、轟け』『纏い、轟け』『纏い、轟け』『纏い、轟け』『纏い、轟け』『纏い、轟け』」

 

圧縮詠唱と短縮詠唱のリキャストタイム終了まで後15秒。そこで一気に最大バフまで持っていくために14回まで重ねる。

 

「はぁ!?」

 

「うそ…」

 

何故かカッツォとペンシルゴンの声が聞こえたが俺は無視してサーペントに接近した。

 

スキル三連撃と三段蹴りでダメージを入れる。次に頭を翠杖で殴りつけクリティカルを発生させた。重ねた纏雷はサーペントのデバフ耐性を貫きサーペントは身体を麻痺させている。

 

「カッツォ!」

 

「了解!!」

 

それを見逃す俺たちではない。カッツォと共に畳み掛けダメージを蓄積させていく。サーペントの動きがなくなり後、一息という所まで来た。

 

そして、この瞬間に2つのスキルのリキャストタイムが終了した。

 

「仕留めるぞ」

 

「OK」

 

「『纏い、轟け』『纏い、轟け』」

「最大火力『拳気【黒】」

 

最大速度で回り込みスキル終戦武舞と浸透打ちでクリティカルを出しカッツォへ吹っ飛ばす。カッツォは自分に飛んでくるサーペントに渾身の右ストレートを打ち込みライブスタイド・レイクサーペントはポリゴン塊になって消滅した。

 

俺達の耳にはレベルアップのSEが届きスキルと習得と進化も知らされた。俺は42にレベルが上がりカッツォも48へと上がっていた。

 

「ん?ユウヒ俺よりレベルが低いのにあんまりレベル上がってないね」

 

すると、カッツォが俺のレベルを見てそんな事を言ってきた。まずいとは思ったが既に後の祭り、開示しすぎないように情報を開示するしかない

 

「ユニーク関連のせいだな。レベルが上がりにくくなってるんだよ」

 

「え、それってプレイヤーに何の得もなくない?」

 

「ないな、今のところはだが…。まだ、クリアしてないからそのタイミングなのかも」

 

カッツォの他にもペンシルゴンが聞き耳を立てているそれっぽい感じで誤魔化す。

 

「そうなんだ…サンラクはクリアしたのかな?」

 

「知らん。一緒にプレイしてる訳じゃないし、個人で進めてるからな。今度、捕まえて聞けばわかるだろ?」

 

俺のセリフにカッツォは一応納得したように「そっか」と言ったが本心は分からない。だが、気にしすぎると良くない。俺は直ぐに針を湖に落としモンスターフィッシングを再開した。

 

その後、3時間釣りを続けたがライブスタイド・レイクサーペントを釣り上げたのは2回のみで俺のインベントリは美味そうなサーモンでいっぱいになった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

深夜2時すぎ、涙光の地底湖で約3時間モンスターフィッシングを続けた後、俺は夜飯の為に一度ログアウトした(俺のレベルは全然だがカッツォが50になったので解放された)。

 

そして、街でライブスタイド・サーモンを全て売り払い道具を整えてこの時間に栄古斉衰の死火口湖にやって来ていた。

 

(実質、探し始めて4日目か。今日は朝から道場行くのに…。頑張って早く見つけねぇと)

 

涙光の地底湖でレベルは1上がりついでにウェザエモン戦に向けてSTポイントを割り振った。何が起きても大丈夫だ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

レベル42

 

体力 30 魔力 120

スタミナ 110

筋力 50 敏捷 102(+10)

器用 60 技量 45(+30)

耐久力 26(+18) 幸運 50(+20)

 

STポイント2

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ふわァ…凄くおねむです…」

 

「悪いなミュウラ、夜遅くまで付き合わせて」

 

湖の周りを歩きながら肩の上で欠伸をするミュウラに謝る。ここに来てから30分以上歩いてそれらしいモノを探しているが見つからない。

 

夜のモンスターは手強く凶暴、それが普通なのだがリュカオーンの呪いのせいか襲ってくるモンスターは少ない(昼間と比べるとかなり多い)。

アンデット・バードとか言うゾンビ鳥を4体倒したがそこまでの強さではなかった。正直、かなり暇だ。

 

「そろそろ2時半だな…」

 

ウィンドウで時間を確認しながら辺りを見回す。襲ってくるモンスターもいなければリュカオーンの呪いにビビっているモンスターもいない。

 

「山の中腹まで降りてみるか?」

 

頂上での探索は諦めて降りる事を考えた。その時だった。

 

自分に影が差したような気がした。

 

「ギュアァァァァァァァァァアッ!!」

 

そして、それは間違いではなかった。モンスターの声に反射してその場から飛び退る。俺のいた場所は突っ込んできたモンスター衝撃で吹っ飛んでいた。

 

「なんなんですか!?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

レアエネミー

グリムキング・バード

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

土煙が晴れてウィンドウと共にモンスターの全体像が見えた。

 

巨大な黒い野犬の身体に巨大な翼。しかし、顔は片目がなく翼は肉が腐り穴が空いている。後ろ足も一本骨になっている。

 

「その翼でどうやって飛ぶんだよ…」

 

ゾンビ鳥なんて比にならない圧を放つモンスターにそう呟きながら俺は致命の闘杖を構える。それと同時にミュウラら肩から降り俺が戦いやすい様にしてくれた。

 

その瞬間、野犬は俺に噛み付いてきた。

 

「ミュウラ、遠くに行け!!」

 

噛みつき攻撃を躱しながらミュウラを巻き込まない為にそう叫ぶ。

 

(スピードはあの蜂の方が上だな)

 

過去の対戦したモンスターで最速はリュカオーンだがその次がゴールデン・エンパイア・ビーキングだ。そして、この野犬はそれに次ぐ速さだった。

 

「腐ってるのになんでそんなに速いんだよ…」

 

ゲームなのでこんな事言っても意味無いが言わずにはいられない。速さは問題がない。だが、問題は別にあった。

 

動いた瞬間に飛び散った奴の肉と血が地面を溶かしているのだ。

 

「触れたらヤバいな…」

 

明らかに毒なソレを見ながらそう呟く。正直、ビー系のモンスターと戦った時も毒は怖くなかった。しかし、此奴は違う。飛び散り方が派手だし動くだけでコレなら俺が殴ってもこうなる可能性が高い。

 

本来なら遠距離での攻撃が望ましい。だが

 

「スキル1個しか遠距離系は持ってないんだよ!」

 

変えられない現実に俺は叫び、接近した。

 

翼のよる攻撃、足での薙ぎ払い、尻尾での攻撃、足の骨による攻撃。

 

全てを躱しながら接近していく。

 

そして、このまま殴る。そのつもりだった。しかし、此奴が行動する度に散る毒のせいで俺はあっという間に毒状態になってしまった。

 

行動力が落ち体力が削られていく。幸いそこまで強力な毒でない様だがキツイ。ステイタス的に体力がすぐ無くなってしまう。

 

(リュカオーンの呪いを貰ってから体力は上げても意味なかったからな…それがここで裏目に出るとは…つーか、当たり前のように毒状態になったな)

 

お陰で体力の回復をし続け無ければならない。現状では10秒間で体力1の減少だがくらい過ぎるとどうなるか分からない。

 

「あまり近づかずに最小限の攻撃回数で倒せって事ね」

 

今までとは違う戦いに俺はそう呟いて口を歪めた。

 

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