「お、おぉー!!」
シャングリラ・フロンティアにログインした俺は目の前に広がる大自然に声を漏らした。しかし、周りを確認して俺は首を傾げる。
「……森の中か?」
そう、シャンフロにログインした俺は森の中にたっていたのだ。大抵こういう時はチュートリアルの進行の為に街からのスタートが基本なのだが俺はそうでは無いらしい。
「つっても神ゲーだからな何かしらの理由があるんだろうな。あまり調べずにログインした俺も悪いか…」
そう言って納得すると、地図を開き現在地を確認する。
「現在地は跳梁跋扈の森。東に最初の街『ファステイア』があるのか…最初の街の近辺って事はココはビギナー用のエリアって事かな?」
地図を見た感じ街と森が一括りになって記載されておりこの森がビギナー用のエリアである事がすぐに予想出来た。
「もしかして出身を『彷徨う者』にしたからか?街からスタートできずに『彷徨う』って事なのか?」
いきなりビギナー用エリアに飛ばされた事について考えて何となく有り得そうな説に辿り着く。改めて、ネットで調べとけば良かったと思いながらも俺は気を取り直してステータスを開いた。
「己を知らなければ何事もなせないからな。現状把握は何よりも大事だ」
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PN『ユウヒ』
レベル1
職業『傭兵(杖)』
体力 30 魔力 10
スタミナ 20
筋力 10 敏捷 10
器用 15 技量 15
耐久力 8 幸運 30
3000マーニ
スキル
一点打ちLv1
振るい薙ぎ
装備
武器:傭兵の闘杖(両手対応)
頭:白金狐のマスク(アクセサリー)
胴:白地の道着
腰:白地の帯
脚:白地の靴
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「うーん…初期のステータスだからしょうがないが敏捷はもう少し欲しかったなぁ。器用と技量が筋力、敏捷よりも高いのは武器を扱う職業だからだな。いちばん高い幸運は出身の影響だろう」
耐久力が1桁なのは出身の『彷徨う者』が防御が上がりにくいというデメリットがあるせいだ。最初に選ぶ装備の他にメリットとデメリットがはっきりしている出身。職業の多さと相まって組み合わせ次第で面白いことが沢山できるだろう。
「流石は神ゲーだな」
職業と欄と出身の欄に並んでいたモノ立ちを思い浮かべながらそんなことを考える。既に、決めてしまっているので変えられないが考えるだけでもワクワクする。
「よし、ステータスの確認も終わったし少し動いてみるか」
ステータスの確認を終えてウィンドを閉じると武器を取り出し構えをとる。そのまま、上段打ち、回し打ち、突き、払い、受けを行っていく。
「フッ」
「フッ」
「シッ」
「フッ」
「ハッ」
全ての基礎的な動作をしっかり行うと俺は手を止め
「すげぇスムーズに動く!!」
自分の手を見つめてそう叫んだ。
一件大袈裟に見えるかもしれないが仕方の無いことなのである。今まで遊仁がプレーしているたゲームは全てクソゲーでありアバターの動きがぎこちないのが基本だった。それだけでなく武器を振っても変なテクスチャが出て攻撃にならないや動いた瞬間に身体が割れるなんていう訳の分からないのもあった。そんなゲームしかやっていなかった人間なのだ。このリアクションは当たり前であった。
「スゲェ!思い通りに身体が動くぞ!こんなゲーム初めてだ!!」
ハイテンションのまま型を繰り出していく。すると
ガサガサ
視界の端で木々が揺れて音が鳴った。
━━━━━━何かいる━━━━━━━
それを報せる音を聴きながらユウヒは動きを止めて腰を落とし杖を構える。
「やっとかよ、ログインした瞬間に殺しにくるゲームだってあるんだ。むしろ遅いくらいだぜ」
過去にプレーした殺人者が蔓延るクソゲーを思い出しながら不敵に笑い敵が出てくるのを待つ。段々と音が大きくなり何かが近づいて来る。
そして
「ギャギャギャギャ!」
ゴブリンが木々の影から飛び出してきた。
「定番だな」
自身に飛びかかってくるゴブリンにそう呟きユウヒは半歩前に出る。そして、飛びかかる勢いを使い手にもつ斧で攻撃しようと斧を振り上げたゴブリンの心臓部に突きを放った。
「シッ!」
「グギャッ!?」
杖がゴブリンの心臓部を穿ちダメージが入る。ゴブリンは突然の攻撃とダメージに声を上げるがユウヒは、関係なしと素早く杖を引いて戻す。引く勢いを利用し杖を後ろに滑らせると左手で掴んで止めてそのまま、半円を描く様に杖をゴブリンの首に打ち込んだ。
「ギャッ!」
首に美しく打ち込まれた杖はクリティカルを叩き出しゴブリンは口から赤いポリゴンを吐き出して消滅した。消滅と共に撃破のSEが鳴り響きユウヒのレベルが一つ上がった。
「ま、一回目の戦闘だし当たり前だな」
レベルアップの表示を見ながらそう呟くと倒したゴブリンが落として行ったドロップアイテムを拾い上げる。
「『ゴブリンの手斧』か…一応対応してるけど、耐久値が半分切ってるんだよなぁ」
シャンフロでは、武器の耐久値システムが採用されている。使用と共に耐久値が減少し減り過ぎると警告が鳴り、ゼロになれば武器は壊れて使えなくなる。
そして、ドロップアイテムとして拾った手斧は既に使い物にならないレベルで耐久値が減少しておりすぐにインベントリに突っ込んだ。
(ちなみに、杖は剣や槍、斧、矢等とは違い殺傷能力が比較的低いからなのか耐久値が若干高く設定されている)
「にしても、本当にスムーズな初戦闘だったな。感覚的にリアルの方がもっとスムーズだしもっと早く動けるけどシャンフロなら行けるはず!」
今までのクソゲー共と違いまだまだ行けると感覚で解る。その事にワクワクしながら歩くと再び木々が音を立てた。
「流石は森の中、モンスターの領域だ。早速次が来たな!」
(モンスターの種類だけじゃない。スキルに魔法に武器、アクセサリー……覚えることが大量だ。だが、この昂りはいつも変わらない!)
新しいことを始める『高揚感』。
未知に対する『緊張感』
先を思う『楽しさ』
全てが好きな感覚。これが好きで運動もゲームもやめられない。
「さぁ、この感覚を忘れずに行こうか!!」
その叫びと共にユウヒはモンスターを迎え撃った。