「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁくそっ、鬱陶しい!!」
栄古斉衰の死火口湖でグリムキング・バードと戦い初めてから30分が過ぎた。俺は4本目のポーションと解毒薬の瓶を投げ捨ててそう叫んだ。
さっきから避けても避けても毒を食らって死ぬ前に回復を繰り返している。予想と違い繰り返し食らったからと言って体力の減少が加速するわけではなかったが回避が実質不可能なため鬱陶しいことに変わりはない。
既に最大バフの纏雷の効果が切れマナ・ポーションも2本使っている。まだ余裕はあるがこのままではジリ貧で敗色濃厚だ。
「『纏い、轟け』『纏い、轟け』」
幾らAGIを上げても仕方ないが最速で攻撃を届かせる為には使うしかない。スキル圧縮詠唱と短縮詠唱を使い6回分の纏雷を重ねる。
グリムキング・バードの足での薙ぎ払いが来るがギリギリで躱しつつ飛び退り間を置かずに接近して致命の闘杖で殴る。受けても避けても毒が飛んでくるがこうするしかない。攻撃の際も毒が当たるが構わず殴り続けた。
尻尾の薙ぎ払いと振り下ろしを躱し
骨による打撃を躱し
翼を躱し
噛みつきを躱し
足での薙ぎ払いを躱し
体力を回復し攻める
何度も何度も繰り返しながら纏雷も重ねていく何時もの様に14回の纏雷を重ねスキルの回復を待つ。
そして、スキルが回復した瞬間に最大まで重ねて攻めまくる。
纏雷は重ねて使用出来るが最初の効果は30分しか持たない。この時重要なのは最大バフになってから30分ではなく。最初の纏雷から30分と言う点だ。そして、圧縮詠唱と短縮詠唱のリキャストタイムは15秒、最大効果をフルに発揮出来る時間は約28分程だ。
「ふははははははっ!はははははははっ!!」
バフが切れる前に体力が切れる。死ぬのを阻止するために体力を回復する。そうすると貴重な時間を数秒ロスする。しかし、知ったことじゃない。
俺は笑い声を上げながら毒を食らうのをお構い無しで殴り続ける。そしてその時が来た。
纏雷がグリムキング・バードのデバフ耐性を貫通し麻痺を付与したのだ。動きが鈍くなったグリムキング・バードにスキルを駆使してダメージを与える。
クリティカルを発生させ致命の闘杖の効果で更に高いダメージを与える。グリムキング・バードはダメージで身体が徐々に崩壊している。そして、俺はやっとソレを見つけた。
ガンっ
致命の闘杖がグリムキング・バードの身体の中で何か硬いモノに触れたのだ。そして、俺はそれがグリムキング・バードのコアであると確信した。
「はっはー!!やっと見つけたぞ!!聖水なんて持ってない俺が確実に一撃でお前を倒す方法!!やっと見つけた!!」
飛び退り体力を回復して解毒をしながらそう叫ぶ。
死肉系のモンスターには聖水。そう相場が決まっているが生憎と俺は聖水なんて持っていない。そして、此奴はリュカオーンの呪いに怯まない高レベルのモンスター、当然体力はレベルに見合ったものだ。
現にスキル、バフを盛った俺が殴り続けても死なない。だが、必ず弱点はある。それを探る為に攻め続けた。
そして、見つけた。勘でしかないがアレを破壊すれば勝てる。そんな気がするのだ。
「勘を信じて、挑戦しますか!」
俺は致命の闘杖を構えてそう叫んだ。コアのある位置は覚えている。纏雷は未だその効果を発揮している。
相手の攻撃を躱しスキル「一点打ち」でコアを破壊するか死角から「乾坤一擲」でコアを破壊する。1番無難なのは死角からの一撃。
だが
「それは雑魚の思考だ」
俺は口を歪めてそう呟いた。
「全ての攻撃を避けて一撃でコアを破壊する」
そして、俺はその言葉と共に走り出した。
「グオォォォアォォォォォォォッ!!」
俺が走り出すと同時にグリムキング・バードは叫び声をあげた。すると、奴の身体がボコボコと歪み始めた。
(何かやる前に仕留める!!)
俺は走るのを止めずに接近する。奴の身体は歪み続けているが俺は関係なしに飛び上がり致命の闘杖を引きコアのあった部分に突きを放った。
しかし、俺の突きは空を切った。
致命の闘杖がグリムキング・バードの身体の胸を穿つ瞬間にグリムキング・バードの身体が5体に別れたのだ。
身体はボロボロで今にも崩れそうだがコアがどの個体に宿っているかが分からない。俺を取り囲む様に飛んでいるグリムキング・バードを見ながら着地の瞬間を待つ。
そして、俺が着地した瞬間、スキル「三艘飛び」を発動した。グリムキング・バード達は俺が着地した瞬間を狙ってきたがスキルを使った跳躍で回避出来た。
「やっぱり着地を狙ってきたな!どんなAI積んでんだよ!?」
(作ったやつはいい性格してるぜ!それに良く解ってる!!)
運営への皮肉交じりの賞賛を心の中で叫び俺は身体を空中で逆さにしてグリムキング・バードの一体を致命の闘杖で殴った。
頭に致命の闘杖が叩き込まれクリティカルが発生する。殴られたグリムキング・バードは身体を崩壊させてポリゴン塊となりそれを見た俺は理解した。
(なるほどな、見ての通り分離によって耐久は低下している。そして、HPは5等分になっている。分離した時、既に瀕死だったんだな。苦肉の策って所だろ)
「脆いならこのまま殴り殺すだけだ」
分離したことでコアの位置は分からなくなったが翼等は小さくなっている。そのせいで飛行性能が低下し速度はない。
だが、俺の纏雷はまだ効果を発揮している。
俺は最速のままグリムキング・バードに接近し一体づつ殴って行く。そして、最後の一体まで追い詰めた。
しかし
「はぁ!?」
グリムキング・バードは俺を置いて逃走を図った。小さい翼で羽ばたき上に飛んでいく。俺は足場になる物を探したが開けた場所なので何も無い。
なので
「逃がすか」
俺はポーションでスタミナを回復させスキル「乾坤一擲」を発動し致命の闘杖を躊躇せずぶん投げた。
STRを参照し貫通力を与え威力はスタミナを全消費して補う。致命の闘杖はグリムキング・バードに近づきその身体を穿いた。
身体を穿かれたグリムキング・バードはポリゴン塊となって消滅し俺はレベルアップとスキルの習得を果たした。
そして
『開拓者は死の予告を覆した』
『開拓者は死者達の刻を生き抜いた』
『称号【生還者】を獲得しました』
『称号【覆す者】を獲得しました』
『称号【丑三つ時と共に】を獲得しました』
『アイテム【死相の珠】を獲得しました』
『ユニークシナリオ【志し持つは蒐集者】が進行しました』
「よっしゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
アイテムの入手とシナリオの進行を果たした。
両腕を上げてその場で寝転び空を見上げる。空は既に明るくなり始めており朝が近づいている事を教えてくれた。
「あぁ〜、こっから何時間寝れんだろ…。師匠に殴られまくる未来がよく見える。寝不足だと身体のキレが無くなるんだよ〜」
何時もよりのんびりとした口調でしか話せない。疲労と言うより眠気が凄い。もうさっさとサードレマに戻ってログアウトしよう。そう思っていた。しかし
「ユウヒさん、そのままだと危ないです!!」
そんな俺の耳にミュウラの声が届いた。
「ん?」
ミュウラにそう言われて自分の状態を確認する。グリムキング・バードと戦っていた俺は毒状態にありその毒でHPが減り続けている。最後の攻撃の際に回復しのはスタミナのみ、HPは回復していない。つまり
こうしている間にもHPは減り続けていた。
既に残り3。死ぬまで文字通りの秒読みだった。
「ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいっ!!」
慌てて回復しようとするがスタミナ切れで思うように動けない。時間はどんどん過ぎていきHPが減る。
(あ、死ぬ)
そう思った。
「オーバーヒール!!!!」
しかし、そんな俺に救いの手は差し伸べられた。本を手にしたミュウラの魔法によってHPが残り1から全回復させられる。おまけに解毒とスタミナ回復までされて俺はあっという間に元気になった。
「ユウヒさん大丈夫ですか!?」
「あぁ、大丈夫だ!ありがなミュウラ今のはマジで死んだと思った。テンパった時のインベントリの操作があそこまでムズいとは思ってなかった…。感謝してもし足りないな」
「私はユウヒさんの相棒なのでこれくらいとーぜんなのです!!」
俺の胸に飛び込んできたミュウラを受け止めそう話しつつドヤ顔のミュウラの頭を撫でる。満足そうな顔のミュウラを尻目にインベントリを確認し「死相の珠」を確認した。
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死相の珠
嘗て栄華を作り上げた人々の死に様が宿った宝玉。そこに住む数多の生き物の身体に宿り時を超えた。
終わりを記録し新たな始まりの礎の基となる。
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俺が獲得した黄金石の墓石を新しく変える為の者だからだろう。それに即した説明が書かれている。俺はアイテムを確かにゲットした事に頷きウィンドウを閉じた。
「ミュウラ、何時もの事ながら退屈させて悪かったな。眠いはずなのに付き合ってくれた事も感謝してる。サードレマに着いたらラビッツまでのゲートを頼む。そしてたらゆっくり休んでくれ」
既に太陽が登り一部が見えてきた空を目を細めて肩に乗るミュウラにそう言う。
「はい、ユウヒさんもちゃんと休んで下さいね」
「あぁ」
ミュウラの頭を撫でてそう答えつつ俺たちはサードレマまでの帰路に着いた。苦節3日、俺は「死相の珠」をゲットしユニークシナリオ攻略までのアイテムを残り2つとした。
ちなドロップアイテムはゲットしてます。
『グリムキング・バードの溶体』
『グリムキング・バードの腐血』
『グリムキング・バードの狂骨』
の3つです。