キョージュとフレ登録をした俺は神代の鐡遺跡にある
「ははっ、強いな此奴!今まであったレアエネミー達と比べると弱いけど、ノーマルのモンスターよりはずっと強い!」
釣り上げられた事に怒っているのか俺に殴られまくって怒っているのか分からないが、長い身体を
既に14回分の纏雷を重ねた俺の攻撃はサーペントのデバフ抵抗を貫通しておりその身体を痺れさせている。
「そろそろ終わりにしようぜ!」
迫り来るサーペントの頭をスキル「一辺薙ぎ」で迎え撃ち吹っ飛んだサーペントに追い討ちをかける。
「『纏い、轟け』『纏い、轟け』」
最大バフの纏雷とインパクト・ステップとジャンピングストライドでサーペントに接近しその頭を一点打ちで穿った。
サーペントは身体をポリゴン塊に変えて消滅し俺の耳にはレベルアップのSEが届いた。
「よし、レベルアップ!11体倒してやっと47か…。覚悟してたとは言え中々だな」
此処に来て数時間、サーモンやら何やらを釣りながらライブスタイド・レイクサーペントを釣り続けている。ヴァッシュ師匠から貰った「致命魂の首輪」でレベルが上がりづらくなっているのと40を超えている影響で中々上がらない。
昼過ぎに此処に来たので時間感覚がなくなりそうだが外は既に夕方だろう。
「ユウヒさん、サーモン焼けました」
「お、ありがとなミュウラ。空腹パラメータも管理しないとだしこりゃ超長期戦になるな」
シャングリラ・フロンティアには空腹パラメータというものがある。ゲーム内で食事をする事で満たされ減少しすぎるとスタミナの回復に影響が出る。
最大バフの纏雷を使いこなすべく多く使っている俺は攻撃回数が一回の戦闘でかなりの数になる。それはつまり動いている時間が長いと言う事でありそれに比例してスタミナの消費も激しかった。
(ヴァッシュ師匠の試練を越えたらSTポイントの振りを考えるつもりだったけどウェザエモンと戦うならスタミナに振るのは確定だな)
ミュウラが焼いてくれたライブスタイド・サーモンを食べながら空腹パラメータを満たしていく。
(ちなみに、ライブスタイド・サーモンは食すと体力も回復するがユウヒはダメージを負っていないのでその事を知らない)
「焼いたお魚って美味しいのですか?」
すると、ミュウラが俺に食べられるサーモンを見ながらそう聞いてきた。
「うん?あぁ、美味いぞ。そう言えばミュウラは人参ばっか食べてるけど魚とかは食べないのか?」
ミュウラの質問に答えながら俺はラビッツや此処でのミュウラの食を思い出す。兎なので気にしてなかったがミュウラは何時も人参を食べている。今も焼き人参を食べている。
ラビッツにはスペシャルラビッツパフェなるスイーツがあると言うが俺はそれを食べているミュウラを見た事がない。
(動物由来のタンパク質とかは取らないのか?…………想像するのやめよ。絵面がキツい)
頭の中で兎が魚や豚等の肉を食べている所を想像したが絵面的にキツかった。
「ユウヒさん何か失礼な事を考えてませんか?」
「いや、考えてない。それでどうなんだ?」
ジト目を向けてくるミュウラを誤魔化しつつそう尋ねる。
「私は人参しか食べませんがヴォーパルバニーもお魚は食べます。お酒を飲むヴォーパルバニーにはマッドフロッグが大人気です」
しかし、ミュウラの答えは想像の斜め上だった。
「マッドフロッグ……マジか……」
鉄鉱石の採取で散々お世話になり殺しまくったあの蛙を酒飲み兎達は好むらしい。それを想像してしまった俺はサーモンを食べる手が止まってしまった。
「ユウヒさん?大丈夫ですか?」
手が止まった俺にミュウラは首を傾げるがトーンの落ちた返事しかできない。
すると
「あれ、ユウヒ君?」
竪穴を滑りペンシルゴンがやって来た。
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「君はさぁ、ホントに何をやってるのかなぁ?まぁだレベル47!?魚なんて食べてる暇とかないから!!」
衝撃の事実を知ってから2時間、俺はペンシルゴンにドヤされながらモンスターフィッシングに興じていた。
「仕方ないだろ、動けばそれだけ空腹になるんだから」
「それは仕方ないにしてもユニーク関連でレベルが上がりにくいって何!?なんでもっと早く言わないの!!」
ペンシルゴンへの文句を更なる文句で返された俺は竿の先を見つめた。ペンシルゴンが此処に来てから俺は自分のレベルとユニーク関連でレベルが上がりにくくなっている事を伝えた(STポイント増加等については話してない)。
すると、ペンシルゴンは何時かカッツォにしていたように怒り出し現在に至るまでこの調子であった。
「これでも上がった方なんだよ。6もレベルアップしたんだからな」
「50になってないなら意味ないから、早く鰻釣りなさいよ…ッ」
「はい」
キレた時の朱璃さんや母さんと同じ圧を感じる。下手な事を言えば殺られる。そう感じた俺は竿の先の動きに集中してその時を待った。
そして
「来た」
僅かな竿の動きと大きい魚影が現れ俺は竿を引き釣り上げ作業を開始した。僅かな時間格闘しライブスタイド・レイクサーペントを釣り上げると竿を湖沼の翠杖に変えて迎え撃つ。
2時間かけて4体目のサーペントを杖で殴りダメージを与えていく。そして、口を開けて飛び込んで来たサーペントを装備を致命の包丁に変えて切り裂き怯んだ隙を拳による打撃で追い込んでいく。
装備を杖に切り替え詠唱を始めた。
「『纏い、轟け』『纏い、轟け』」
レベルアップで一回で7回分の魔法を行使出来るようになったお陰で一気に14回分の纏雷を重ねる事が出来る。
「『纏い、轟け』『纏い、轟け』『纏い、轟け』『纏い、轟け』『纏い、轟け』『纏い、轟け』」
更に6回分の詠唱を終えて最大バフの纏雷を纏う。
速度が上がり反撃の隙を与えずに湖沼の翠杖でサーペントを殴りまくる。あっという間にサーペントはポリゴンに変わり戦いは終わった。
「レベルアップは無し、か」
レベルアップのSEが鳴らずにペンシルゴンの視線が少し怖く感じる。恐る恐るペンシルゴンを見ると彼女はジッと俺を見つめていた。
「………凄いね」
そして、俺にそう言ってきた。
「は?」
予想外のセリフに思わず声が零れる。
「纏雷は序盤で手に入れられる魔法の中でも高性能だから最初、全プレイヤーが購入して覚えた魔法なんだ。でも、10回も重ねるとアバターの速度がプレイヤーの反応速度を超えちゃって動けなくなるからシャンフロで数少ないアンチの原因になってるんだよ。なのに、君は最大回数の纏雷を使いこなしてる。……凄いよ」
そして、そんな俺にペンシルゴンは目を丸くしてそう言ってきた。
「そうなのか…」
それで納得が言った。俺が此処で初めてカッツォとペンシルゴンに14回分の纏雷を見せた時の変な反応はそれが理由だったのだ。あの時はスルーしたが今は違う。
「多分ユウヒ君はシャンフロ内で唯一、纏雷を使いこなしてるプレイヤーだよ。改めて君がこの戦いに参加してくれて良かった」
ペンシルゴンのセリフを聴きながら彼女が凄く自然に笑うのを見た。サンラクやカッツォに見せていた笑顔やセツナと会った時にみせた笑顔とも違う。
"当たり前に零れた笑顔"だった。
「あんた、そういう風に笑うんだな」
そんな笑顔を見たからか俺はついそう言ってしまった。
俺のセリフにペンシルゴンは顔を隠し背を向け俺も背を向けてモンスターフィッシングを再開した。
「お二人もとどうかされたのですか?」
そんな俺たちにミュウラが首を傾げてそう言ってくるが俺達は何も言えなかった。