神代の鐡遺跡の隠しエリアに現れた更なる隠しエリア、その中に入った俺達は目の前の光景に目を奪われた。
鏡張りの部屋の奥の空間は宝石のように輝く部屋だったからだ。部屋全部が輝いているわけではない。部屋の中央にある小さな池が部屋全体を輝かせている。
「綺麗……」
「美しいですね……」
あまりの光景にペンシルゴンとミュウラがそう呟く。俺も言葉は出ないがペンシルゴン、ミュウラと同じ気持ちだ。
「涙光の地底湖を見た時も思ったけど神代の鐡遺跡の水辺って凄い綺麗だよな。栄古斉衰の死火口湖とは大違いだ」
池へと足を進めながら輝く部屋を見てそう言う。
涙光の地底湖の時も感動したが此処はそれ以上だ近づくと名前がウィンドウで表示された。
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煌秘の神水池
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「神代の鐡遺跡に隠された煌々と光る秘密の池って事か」
「ピッタリな名前だね」
「美しいです」
見た目だけでなく名前も綺麗なその池に俺達は息を吐いた。そして、俺は池の畔で片膝を着いて水の中を覗き込む。あまりの眩しさに目が眩む。
「中には何もいない。ただの池だ」
しばらく覗き込み中に何もいないことを確認するとペンシルゴンとミュウラにそう言った。二人は俺のセリフを聞くとそれぞれ池に近づき俺と同じように池を覗き込んだ。
二人とも眩しさに目を細めているが表示は凄く安らかだ。
「私、シャンフロではセッちゃんと会える花園か好きなんだけど此処も好き…凄く綺麗」
すると、顔を上げたペンシルゴンが微笑みながそう言ってきた。サンラクやカッツォと一緒にいる時の笑顔とは違う笑顔だ。
(ラッキーな場面にいると思うべきだな)
その笑顔にそう思いつつも「俺も此処は好きだ」と言い部屋全体を見渡してみる。壁に光の当たる角度で明暗が出来ているのか所々光り方が強い場所がある。まるで、一等星を宿した様な壁面にため息が出た。
「ユウヒさん、此処の水はもしかすると…」
すると、ミュウラが俺の肩に乗ってそう呟いた。
「あぁ、それは俺も思ってた。名前がどんぴしゃだしな」
そして、俺も頷きながらミュウラにそう応えた。最後のアイテム「神泉の水」。泉ではないので少し不安だが「神水」の名を見るに間違いではない気がする。
俺はインベントリから道具屋で買った空き瓶を出すと煌々の神水池の水を採取した。
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『神泉の水』
神代より溜まりし水。時を経るごとに水の量は変化し溜まり場の名も変化する。
溜まりし過去は未来への原動力
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採取した瞬間、ウィンドウが表示された。求めていた最後のアイテムだ。これでユニークシナリオ攻略のアイテムが揃った。これをあの親子の元に持っていけば二人を助けられる。
「よしっ!!」
その事実に俺は拳を握り声を上げた。
「やりましたね、ユウヒさん!!」
ミュウラともハイタッチを交わす。すると、俺たちを見ていたペンシルゴンがゆっくりと近づいてきた。
「どうかしたか?」
怪しい挙動にそう言うがペンシルゴンは俺の持つ瓶をじっと見つめると
「此処の水、私も貰ってって良いかな?」
と尋ねてきた。
「別に良いんじゃないか?俺のじゃないしこうして採取可能になってるなら"そういうモノ"なんだろうし」
ペンシルゴンの問にそう応える。ペンシルゴンは俺の応えに「そうだね」と言うと空き瓶に水を入れて採取した。
「綺麗……」
瓶に詰まった水を眺めてそう呟きインベントリにしまう。今日何度目かの普段と違う彼女を見て俺は視線を外した。すると
「君って毎回あんなのと戦ってたんだね〜、そりゃ短期間でレベル41まで上がるわ。君ってやっぱりサンラク君の弟だね」
何時ものペンシルゴンに戻ったのかニヤリと笑ってそう言ってきた。
「うるせぇ、あの変態と一緒にするな」
俺はペンシルゴンにそう言うが彼女はニヤけるだけで何も言ってこない。
「なんか言えよ」
「別に〜、私の知ってる兄弟の感じと違うから見てて面白いだけだよ〜」
「その喋り方ムカつくわー」
ペンシルゴンはニヤニヤしながらそう言い煌秘の神水池を眺めている。表情からは分かりずらいがさっきのセリフは本心から少しズレている気がした。
「そう言えばささっきの戦闘、君私の話聞いた瞬間に迷いなく相手に飛び込んだよね。戦闘狂なの?」
「えっ?いや〜どうだろうな……リアルで格闘やってるからそう言う意識が強いってだけでそんなんじゃないと思うが……」
突拍子のない話しに戸惑ならがらそう言うがペンシルゴンは「ふーん」と言うだけで興味があるような感じではない。
(聞いてきたくせに訳の分からん態度だな)
思うところがなくも無いが気になる程でもない。ぶっちゃけるとサンラクにも時々こういう時がある。
(気にしたら負けだな)
自分にそう言って改めて揃ったアイテム達を確認しようとウィンドウを開いた。すると
「ユウヒ君ってさ、リアルでも戦ったりするの?」
ペンシルゴンがセリフだけでそう言ってきた。
(質問が多い…)
「いや、戦ったりは特にはないな…。喧嘩ってニュアンスなら小学生の時の1回きりだ。子供の喧嘩だな…」
アメリカでのアレは戦いにカウントして良いのだろうか、と思いながらも小学生の時の事を思い出してそう答えた。
「そっか……そうかと思ったけど……」
「なんか言ったか?」
「なんでもなーい!さ、今日は夜遅いし早く帰ろ!!」
俺の答えにペンシルゴンは頷いていたが後半がよく聞こえなかった。俺は首を傾げるが何故か上機嫌な彼女に引っ張られてこの秘密の場所を後にした。
もう既に日付が回っている。ウェザエモン戦まで残り4日、俺は最終調整に入る事を決めたのだった。