戦闘狂が行く理想郷   作:烏鷺

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少し駆け足気味…許してください。


約束を果たそう

「ミュウラ、ちょっと付き合って欲しい所があるんだが、ファステイアにゲート開けるか?」

 

深夜にペンシルゴンとユニークシナリオ「志し持つは蒐集者」攻略の為の最後のアイテム「神泉の水」を手に入れた俺は睡眠と日課を済ませシャンフロにログインしていた。

 

「ふぁ……夜遅くまで動いていたのに凄く元気ですね、ユウヒさん…私はお眠です」

 

「あれから8時間以上たってるがまだ眠いのか…付き合ってくれて感謝してるよ。でも、俺は明日1日予定があって来れないから今日中に済ませて起きたい事柄なんだ。頼む!」

 

寝ぼけ眼を擦るミュウラに両手を合わせてそう頼み込む。ミュウラは欠伸を噛み殺しながらも頷いてくれた。

 

「それで?ファステイアに何しに行くのですか?」

 

「ある親子に会いにいく。ずっと待たせてた約束を果たすんだ」

 

「約束ですか…それは大切な事ですね」

 

少し時間が経ち、意識がはっきりしたミュウラは俺の肩に乗りそう言う。俺は、既に準備を整えているので後はゲートを潜るだけだ。しかし、ミュウラは俺の額に手を置くと詠唱を始めた。

 

「『彼の者の記憶を辿れ、導かれし場所に至りし事無くとも、我の道を作り出し、彼の場所へ至らせよ』」

 

ミュウラの詠唱と共に俺の額は淡く光りミュウラの額も光る。光りは数秒で消え去ったが俺は唐突過ぎて何が何だか分からなかった。

 

「ユウヒさんの記憶からファステイアを読み取ったのです。私は其処に行ったことがありませんので」

 

すると、俺の表情を見て察したのかミュウラが肩口からそう言ってきた。サードレマを出発地点にしていたので気にしていなかったがミュウラのゲートは自身が訪れた場所にしか作れないらしい。

 

「この魔法は他者の記憶の中に一瞬だけ入り一度だけその場所を訪れた事に出来るのです。これで私はファステイアにゲートが作れますね」

 

記憶、ログを参照すると言う事なのだろう。かなり凄い事をやっているがミュウラは特に普段と変わらない様子だ。俺は驚きを胸中にしまい込んでミュウラにゲートを作るようにお願いした。

 

「はい、今作りますね」

 

ミュウラはそのセリフと共にゲートを作り出した。俺は少し心配しながらもドアを開け部屋から出る。

 

「此処は…路地裏か?」

 

少し薄暗い場所に出た俺は辺りを見てそう呟く。サードレマの裏路地と同じような見た目に戸惑うが明かるい場所へ進み此処が何処なのかはっきりと理解出来た。

 

「すげぇ、ホントにファステイアだ。マジで来たことない場所にゲートを作りやがった…」

 

せカンディル、サードレマと比べて簡素な作りの街並みと門、間違いなく此処は最初の街「ファステイア」だ。

 

「だから、そう言う魔法だって言ったじゃないですか」

 

ミュウラの魔法の凄さに驚く中、ミュウラは当然と言った表情をしている。俺はまだ驚きが抜けないがミュウラは「早く行かないとです」と言って急かしてくる。

 

俺はミュウラに頷き人目のつかない場所で変身させると一緒にあの親子の住む家へと歩き出した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

大通りを通って裏路地に入る。そこまで時間は経っていないはずだが既に懐かしさを覚える道順を辿り俺達はあのNPCの親子に家に辿り着いた。

 

「此処ですか?」

 

「あぁ、此処にその親子が住んでる」

 

小さい家の前に立ちそう言いながら扉をノックするとあの時の子供が出てきた。

 

「お兄ちゃん!!」

 

「元気そうだな、約束を果たしに来たぜ」

 

俺の姿を見るや抱きついて来た子供にそう言いながら頭を撫でる。ミュウラが何故か厳しい目つきになったが子供はそれに気づかずに俺の手を引いて中へと案内した。

 

「お母さん、お兄ちゃんが来た!!」

 

大声を家中に響かせた子供は俺の手を話すと奥の部屋へと走っていった。少しすると母親のNPCと一緒に戻ってきてまた俺に抱きついてきた。

 

「ユウヒさん、良く戻られました。ずっと貴方を信じて待っていました」

 

優しい笑顔で俺にそう言う母親NPCは以前より痩せているようだった。以前から生活が苦しそうだったし笑顔が痛ましいが今日でそれも終わりだ。

 

「あの時の約束を果たしに来た。求めてたアイテムだ受け取ってくれ」

 

母親に全てのアイテムを譲渡する。その全てを母親と子供は確認すると二人で頷いて家の奥に入っていった。

 

「中を見ないで下さいね」

 

リビングに残される俺達にそう言う母親の目は真剣そのもので、俺とミュウラは頷く事しか出来なかった。

 

「あのアイテムはあの人達に渡す物だったのですね」

 

「あぁ、ヴァッシュ師匠やミュウラに会うよりも前に約束を交わした二人なんだ」

 

親子が奥の部屋に入ってから残された俺達は椅子に座って話していた。

 

「お父様から首輪を渡された時、ユウヒさんはすぐに試練を受けると思っていました。ですがユウヒさんはそうしなかった。それをずっと不思議に思っていましたが…その理由がわかりました。……絶対に守りたい約束だったのですね。あのお母様を見ればその気持ちが分かります」

 

「何度かあの二人の事は口に出したがそこまで詳しくは話さなかったからな…すまん」

 

「ユウヒさんは悪くありません!むしろ素晴らしい事です。全ての約束を守る心意気は誰でも持てるモノではありませんから」

 

俺のセリフに力強く反論するミュウラに俺は笑うと頭を撫でる。ミュウラは目を細めて笑い椅子を俺に近づけた。

 

「今日、このままヴァッシュ師匠の試練も受けたいと思ってる。……師匠に俺の力を認めてもらってウェザエモンに挑む!ペンシルゴンとの約束を果たす!……これが最初だ」

 

「はい!ユウヒさんなら出来ます!私は何処へでも着いて行きますわ!」

 

拳を握りそう言う俺にミュウラも拳を握ってそう言ってくれた。美少女の見た目での力強いセリフと言うのギャップに笑みが零れたが口にまで出すのは野暮だろう。

 

しばらくミュウラと話して時間を潰し二人を待つ。すると

 

「お兄ちゃん出来たよ!!」

 

「お待たせしましたユウヒさん!!」

 

そう言って奥の部屋から二人が出てきた。

 

「最高傑作です。間違いなく私の人生の中で最高の出来です!」

 

「これなら僕達は錬成師の称号を手に出来る!ありがとうお兄ちゃん!」

 

そう言って喜ぶ二人に俺とミュウラは椅子から立ち上がって近づく。母親の手には金をベースにした装飾鍵が握られており俺の集めたアイテム達がその装飾に使われているのが一目でわかった。

 

「綺麗な鍵ですね」

 

その鍵の光りを浴びながらミュウラはそう呟き目を細めた。

 

「はい、大変美しい鍵です。あの石が求めていた次のカタチはこの姿でした。そこにユウヒさんが集めてくださった素材達の輝きが宿りこの美しさを引き出しているのです」

 

ミュウラの言葉に母親も頷きそう言う。その顔は本当に嬉しそうであの痛ましい笑顔が嘘のようだ。

 

「ありがとう、俺の願いを聞いてくれて。2人のおかげで俺は先に進める」

 

俺も母親の手の中にある鍵を見ながらそう言い親子に頭を下げた。そして

 

「二人とも今すぐ例の商人の所へ行け!そして称号を手に入れろ!!」

 

2人を玄関まで連れて行きそう言った。二人は俺のセリフに面食らった顔をするとお互いに頷き家を出ていった。確信があるのだ、あの鍵なら称号を手に出来ると言う確信が。だからこそ迷いなく出ていけた。そして、それを見送った俺もそのことを確信していた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

親子が家を出てから数分後、二人は無事に家に戻ってきた。商人に認められ錬成師の称号を得る事が出来たようだ。

 

「ありがとうごさいました、ユウヒさん。これで私達は錬成師として生きる事が出来ます。夫の思いもようやく…」

 

「気にしないでくれ。俺は俺の目的があって二人に協力した。お互い様だ」

 

目に涙を浮かべる母親に俺はそう言う。すると、子供が俺に近づき黄金石の墓石から錬成した鍵を手渡してきた。

 

「お兄ちゃん、ありがとう!」

 

「それは俺のセリフだ。ありがとな」

 

言葉を交わし鍵を受け取る。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『ユニークシナリオ【志し持つは蒐集者】をクリアしました』

『称号【次生を手繰る者】を獲得しました』

『称号【蒐集者】を獲得しました』

『称号【心通わせる者】を獲得しました』

『称号【古き意識を汲み取る】を獲得しました』

『称号【秘話を持つ者】を獲得しました』

 

『職業【錬成師】が新たに解放されました』

この情報は全プレイヤーに開示されました。

 

『ユニークNPC錬成師アキハと錬成師コノハとフレンドになりました』

 

ユニークシナリオEX『世界に刻まれるは七つの遺志』を受注しますか?YES/NO

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

すると、大量のウィンドウが現れ大量の称号とフレンド、新たな物語の始まりを教えてくれた。

 

しかし

 

「は?」

 

俺は出てきたウィンドウの中に無視できない事柄を見つけた。

 

「職業『錬成師』が解放、情報が開示?……………………………………………嘘だろ?」

 

とてつもなくヤバい事態になった気がする。いや、間違いなくなっている。

 

内心、冷や汗ダラダラになるが此処はシナリオのクリアと受注をしなければならない。

 

「ユウヒさん、大丈夫ですか?」

 

俺の様子が変になった事を察したミュウラが心配そうな表情をしているが心配は無い。

 

「大丈夫、後でペンシルゴン達にも相談するから」

 

俺はミュウラにそう答えユニークシナリオEXを受注した。

 

すると、受け取った鍵が更に輝きだし再びウィンドウが現れた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『古故解放の金装錠』

 

世界の各地に刻まれた遺志を解放する鍵。焔に導かれ七つの遺志を叶えよ。

 

特殊状態【遺志の焔】を入手しました

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ユニークシナリオEXを受注した事で現れたであろうそのウィンドウの文言を一字一句記憶していく。今までの経験で文の中にヒントがある事をよく理解させられているからだ。

 

「よし、大丈夫だ」

 

一字一句、全てを記憶した俺はウィンドウを消してそう呟く。そして、二人の親子の方を向くと改めて頭を下げて感謝を伝えた。

 

「今回の件、本当に世話になった。二人に微力ながら手をかせた事とても喜ばしく思う。また、縁が有れば手を貸してほしい』

 

「いいえ、お礼を言うのは私達です。貴方に助けてもらい何もかもを救ってもらいました。私達は貴方に何かあれば必ず手を貸します」

 

「うん、俺も約束するよ!お兄ちゃんになにかあったら必ず俺が助ける!!」

 

二人の言葉に俺は「ありがとう」と告げてミュウラと共に家を出た。次はいよいよヴァッシュ師匠の試練だ。

 

「ここを超えて必ずウェザエモンを倒す!ラビッツまで頼むミュウラ!」

 

「はい、お任せ下さい!!」

 

俺はミュウラに開けてもらったゲートを潜りラビッツへと帰還した。

 

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