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「そう言えばヴァッシュ師匠から特に何も聞かされてないけど『試練』って何をするんだ?」
「お父様の言う『試練』は用意された10体のモンスターを倒す事ですね。ユウヒさんの為に用意されたモンスターを全て倒す事で『試練』はクリア出来ます」
「なるほどな……」
ミュウラのセリフにそう呟きつつ歩いて行く。すると、見慣れない木で作られた両開きの扉が現れた。
「ここか?」
「はい、この先がヴォーパルコロッセオです。ユウヒさんは以前転送で外から直接コロッセオに入ったので此処からは初めてなのですわね」
ミュウラは俺のセリフにそう答えると扉に手を添えて押し込んだ。木製の扉は鈍い音を響かせて開き、コロッセオの全容を顕にした。
「相変わらずデケェな」
シャングリラ・フロンティアを始めたその日に訪れた場所に再び立ち会いも変わらない光景にそう呟く。
「お、来たなぁユウヒ!待ってたぜぇ!!」
「ヴァッシュ師匠!」
後ろからかけられた声に反応して振り向けば観客席で煙管を吹かすヴァッシュ師匠がおりその隣にはサンラクとエムルちゃんが座っていた。
「よ、ユウヒ。見に来たぜ〜」
「お久しぶりですわ!」
観客席から声をかけてくるサンラクとエムルちゃんに手を挙げて応えつつヴァッシュ師匠と目を合わせる。ラビッツに来た時点でやる気は高まっている。早く始めよう。
「はははっ、良い面付きしてやがるじゃねぇか……!もうこいつは要らねぇな!」
俺の思いが伝わったのかヴァッシュ師匠は笑いながらそう言うと俺の首に付いていた『致命魂の首輪』が外れた。
「それじゃぁ、始めようかい!」
そして、そう言って手を上げる
すると、後ろから重く鈍い音が聞こえた。振り向いて見てみれば向かい合う様に存在していた鉄の扉がミュウラに鎖を引かれて解放されていた。
「ルールは簡単だ!使う武器は『致命武器』のみ!1~10までのモンスターを全て倒せ!!」
扉の奥からモンスターが出てくる。挙動を観察しながらヴァッシュ師匠の言葉に頷き俺はインベントリから致命の闘杖を取り出して装備した。
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ユニークシナリオ『兎の国からの招待』
達成条件「10戦勝ち抜く」
実戦的訓練1体目
「
レベル111
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「は?」
俺は出てきたモンスターを見て間の抜けた声を上げてしまった。出てきたモンスターは水晶で作られた蠍。レベルは111。それが10体。
「はっははは………最高だな!!」
今の俺では明らかに手の届かないレベルのモンスター。その群体を前に俺は口を歪めて前に出た。
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「兄貴…流石にアレはヤバいんじゃないですか?」
ユウヒの戦いを見に来た俺は隣に座るヴァッシュにそう言った。俺の目の前では俺も見たことが無い結晶蠍がユウヒを殺しに行っておりユウヒが紙一重の回避をする度に土煙が舞っている。
(あのモンスターはヤバい……。今の俺じゃ絶対に殺される!!)
明らかにレベル50代のプレイヤーが相手にするモンスターじゃない。そんなのを10体も同時に相手にしている。
(ユウヒじゃなきゃ瞬殺だな)
それが俺の正直な感想だった。蠍に囲まれながらも魔法を使いながら攻撃を回避し続け関節に攻撃を当てている。だが、効いている雰囲気がない。
「あぁ、今の彼奴にはキツイ相手だろうなぁ……。だが、サンラクよぉ、ユウヒは俺等に『自分の力を認めさせる』と啖呵をきったんだぁ。これくらいやって貰わなくちゃなぁ……」
口からふっと煙を吐き出しヴァッシュはそう答えた。その視線は真剣そのもので言葉に裏がないのがハッキリと伝わってくる。
しかし
「俺の時と相手が違いやすね。俺の時はあんなに強いモンスターはルーザーズ・ウッズ以外出てこなかった…」
そう、今のユウヒの相手は俺の時には出てこなったモンスターだ。レベルにしても俺の時は65が最初だった。
「そりゃあそうだ。あの時のサンラクと今のユウヒじゃレベルが違ぇ…。その時その時で見合った相手を与える。それが俺等の役目だぁ」
ヴァッシュのセリフになるほどと俺は納得した。確かに、俺はこのシナリオをレベル30代でクリアした。だが、今のユウヒは40代のはずだ。戦う相手に差があっても仕方がない。
「ユウヒさん、水晶群蠍相手に凄い立ち回りですわ……。水晶群蠍はビィ姉ちゃんでも戦わないモンスターなのに…」
俺の横ではユウヒの戦いを見ているエムルが手を握ってそう呟いている。俺の目から見てもユウヒはレベル差のある相手に善戦している。だが、相手が悪すぎる。
「あっ………」
「あぁ!」
そう思っているとユウヒが水晶群蠍に鋏で腕を切り落とされ数体に踏み潰された。余りにもエグい死に方にエムルが目を逸らしているがヴァッシュは真剣そのものの目でその光景を見ていた。
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「クソが……」
10体の水晶群蠍に囲まれ戦いっていたのも束の間、俺は腕を切り落とされその隙を突かれ引き潰された。
蠍共はリスポーンした俺を再び殺そうと迫ってきている。
「ふぅ……開幕キルが当たり前のゲームをやった経験がなかったらここで止めてたかもな」
あるPKの巣窟の化したゲームを思い浮かべながらそう呟き俺は詠唱を開始する。
「『纏い、轟け』『纏い、轟け』『纏い、轟け』『纏い、轟け』『纏い、轟け』『纏い、轟け』『纏い、轟け』『纏い、轟け』」
スキルを使い最初からフルスロットル。出し惜しみをしていたらあっという間にミンチをされてしまう。それはさっきの戦いで良く解った。
俺は水晶群蠍が間合いに入ってくるまで構える。
そして、水晶群蠍が間合いを入ってきた瞬間、スキル「一心開動」「インパクトステップ」「ジャンピングストライド」を発動させて最速で接近した。水晶群蠍は俺のスピードに反応しカウンターの様に攻撃を仕掛けてくるが俺は「見切り」で目の前の一体の攻撃を回避するとそのまま足を止めずに水晶群蠍の身体の下に潜り込んだ。
(よし!4歩目で下に入った!!)
そして、俺は最後の1歩で方向を転換すると水晶群蠍の足が密集している場所まで走った。
スキル「一心開動」「インパクトステップ」「ジャンピングストライド」はそれぞれ溜めからの行動にAGI補正、五歩以内の移動時にAGIに補正、相手に接近する際にAGIに補正と全てAGIに補正がかかるスキルだ。
「一心開動」は俺が動き出した瞬間にその効果を発揮し既に効果が切れている。「ジャンピングストライド」も水晶群蠍に接近した時点でその効果を失った。4歩で近づける距離まで相手を引き付け5歩目で方向転換をする。生き物は必ず方向転換をする時に速度が落ちる。しかし、これなら限りなく速度を落とすことなく攻撃に繋ぐことが出来る。
「スキル『一辺薙ぎ』!」
ほぼ減速無して足の密集する場所に辿り着いた俺はそのままスキルを発動する。その効果は「全方位の薙ぎ攻撃の威力に高補正」。自分を囲む蠍の足の関節に攻撃を加える。闘杖で的確に関節を攻撃しクリティカルとスキル効果でダメージを増大させる。
「さっきの武器効果だけの攻撃じゃビクともしなかったが……コレは効くだろ!!」
俺の叫びと共に2体の水晶群蠍が体制を崩す。俺は、崩れた足を梯子代わりにして水晶群蠍の背中に乗る。そして、致命の闘杖を高く掲げると
「割れろ」
スキル「ドリルピアッサー」を発動し致命の闘杖をその背中に突いた。
水晶群蠍の背中にヒビが入る。それと同時に水晶群蠍が叫び声を上げ他の蠍達が俺を殺す為にその鋏と針を振り上げた。
「掛かったな!」
そして、俺はその光景にそう言うと水晶群蠍が各々の武器を振り下ろす瞬間を狙ってスキル「七艘飛び」で上に跳んだ。
俺は最初に蠍達に引き潰された時、奴らの身体がぶつかっているのを見ていた。身体が擦れた瞬間に水晶の身体が欠けるのを。
だから、仮説を立てた。彼奴らの攻撃を誘導出来れば自滅させられるのではないか、と。
「ビンゴ!!」
俺の仮説は正しかった。各々の攻撃で一体の水晶群蠍の身体が破壊され身体をポリゴン塊を変化させている。
「残り9匹」
俺は着地してそう呟くとマナ・ポーションを飲んでMPを全快させると1番近い水晶群蠍の針に闘杖による打撃を加えた。
「チッ、スキル無しじゃ攻撃は通らねぇか…!」
効いた感じのない攻撃に舌打ちしつつも足を狙って走り出す。先程の攻撃のお陰でまた水晶群蠍が俺を補足し追いかけてきている。
だが
「残念、お前が先だ!」
俺は先程死んだ水晶群蠍のドロップアイテムを踏み台に逆方向に跳躍すると追いかけてきた水晶群蠍の関節に闘杖を振るった。
追いかけていた足に突然の攻撃、水晶群蠍は少しだけ体勢を崩す。しかし、体勢を崩したおかげで踏ん張りが効かずその身体を別の水晶群蠍に激突させた。
「物理エンジン様様だぜ!!」
俺を囲んでいたのが仇となったのか玉突き事故よろしくどんどん体をぶつけ合い壊れていく。身体にヒビを入れ、足を無くし中には針が刺さっている個体もいる。
「やっと弱点部位が出来たな」
俺は素早く水晶群蠍の後ろに周り込むと魔法を発動した。
ペンシルゴンとのアイテム収集の際に獲得した魔法。「纏雷」の最大状態を使い続けレベルを上げ手にした纏雷の派生魔法。
纏った雷を一撃に集約し放つ打撃魔法。纏雷を重ねた回数と残りMPの数値で威力が変動し、使用後にMP0を強制する代わりに絶大な威力を保証する魔法。
その名も
「『殴雷撃』!!」
身体に入ったヒビ目掛けて雷鳴と共に致命の闘杖を振るう。破損により弱点部位となった箇所への的確な打撃。
水晶群蠍を押し出し更にダメージを与えながら稲光を撒き散らす。殴られた水晶群蠍の身体は砕け散りその水晶群蠍にぶつかった水晶群蠍達も連なる様に身体を破壊させた。
「残り4体……!!」
土煙が舞う中、俺は残った4体を見つめてそう呟いた。
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「なんだ、今の……」
「ピカッて眩しかったですわ」
「ほぉ……こりぁ中々だな」
俺達は突然起きた事にそう呟いた。水晶群蠍に引き潰さ復活したユウヒの動きが変わった。恐らく最初の攻防で何かを掴んだのだろう。そう言う動きだった。
そして、その予想は正しくユウヒは的確に相手を罠にはめて水晶群蠍の一体を倒した。
問題はその後だ。先程と同様に水晶群蠍を物理エンジンを使った罠にはめ群れとしての行動を阻害した。身体にヒビを入れられた水晶群蠍の行動は止まり絶好のチャンスが訪れた。
ユウヒは1番破損の激しい水晶群蠍の後ろに回り込むと稲光と共に致命の闘杖を振るった。
全身を震わせる雷鳴が鳴り響き水晶群蠍が吹っ飛んだ。恐らくクリティカルが発生していたのだろう。同じ致命武器を使うから解る。普通の武器でクリティカルを出すのと致命武器でクリティカルを出すのとではダメージが違う。
致命の闘杖は易々と水晶群蠍を破壊しそして、その水晶群蠍を押し出す形で連なっていた三体の水晶群蠍も破壊した。
「身体にヒビが入っていたとはいえなんつー威力だよ!!」
「ユウヒさん、すっごいですわ!!」
あまりの光景にそう叫び身を乗り出す。視線の先ではユウヒがマナ・ポーションを飲んでおり一戦目最後の攻防が始まろうとしていた。
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「はははっ…MP上げといて良かった」
残り4体の水晶群蠍を見ながら空き瓶を投げ捨てた俺はそう呟いた。視線の先では残った水晶群蠍が俺目掛けて走ってきている。
(ぶっちゃけ3、4体目が死んだのはラッキーだな。2体とも半分くらいしか壊れてなかった。現に威力の届かなかった5体目以降はピンピンしてやがる)
水晶群蠍の攻撃をスケートフットからの全力疾走で躱しつつ纏雷を発動する。再び最大バフ状態になり攻撃をしていく。
「ピーツの所でマナ・ポーション買い込んでて良かったぁ。無かったらやばかった!!」
正直言ってこれ以上使うと後に響きそうなのでなるべく節約したい。最後の1、2体に殴雷撃を使うのはアリだろうが残りは殴雷撃なしで倒したい。
「なら、試したい事を試しますか!」
俺はそう叫ぶと水晶群蠍に接近しその足に連撃を叩き込んだ。ヒビへの打撃にクリティカルが発生し足が壊れる。俺は再び足を梯子代わりに上に登ると頭へ向かって走り出した。
「お前、頭の方にもヒビが入ってるな!壊しやすそうで良いなぁ!!」
そして、首元まで走るとヒビに向かってレベルがMAXになったスキル「一点打ち」を叩き込んだ。
「落ちやがれ頭ぁ!!」
クリティカルが発生し致命の闘杖の効果でダメージが増大する。そして、元々壊れやすくなっていた事もあり水晶群蠍の首は音を立てて壊れた。
その瞬間、水晶群蠍の身体はポリゴン塊となって消滅し俺は他の水晶群蠍の攻撃を「ディフェンシブフット」で回避した。
「やっぱり
潰せば
残り三体となった水晶群蠍を見ながらそう呟きポーションでスタミナを回復させると纏雷の効果が切れる前に走り出す。狙うは1番損傷が激しい個体。落とすは頭。今まであまり動かずAGIの高さでギリギリの回避に専念していたが出し惜しみはしない。
俺はリキャストタイムの終わった七艘飛びで水晶群蠍に飛び乗るとダメージを与えながら首を目指す。乗られた水晶群蠍は俺を振り落とそうと動くが与えられるダメージのせいか動きが鈍い
「俺がやっても良いが今回は仲間に殺られてくれ」
そして、俺は首元まで到達すると迫って来ていた別個体の攻撃を「見切り」で躱すとその攻撃で水晶群蠍の首を落とした。
俺は身体をポリゴン塊に変える水晶群蠍を後目に一体の水晶群蠍の後ろに回り込むと再び魔法を発動した。
「『殴雷撃』!」
雷鳴と共に水晶群蠍の身体がぶつかり合い砕け散る。稲光がコロッセオを駆け巡りMPの全消費と共に水晶群蠍は全滅した。