「うははははははははははははははっ!!まさか、二人一体に勝っちまうとはな!中々できる事じゃねぇぜ!!恐れ入った!!」
「流石ユウヒさんですね!!」
ドッペルゲンガーを倒してその場に座り込み一息着いているとヴァッシュ師匠とミュウラがやって来た。
「押忍、ありがとうございます。ヴァッシュ師匠!」
飛びついてきたミュウラを受け止めつつヴァッシュ師匠に応える。
「おめぇさんら兄弟には驚かされる。俺等の生活にも華がでらぁな。……ユウヒ、おめぇさんもサンラク同様『ラビッツ名誉国民』に認定する」
「凄い事です!ユウヒさん、流石ですね!!」
煙管で一息ついたヴァッシュ師匠のセリフにミュウラがはしゃいでいるがアレだけの強敵と戦ってそれだけなのか、と思ってしまう。
「諦めろ、俺もその気持ちは解るがどうしようもない」
そんな俺にサンラクがそう言うがこのなんとも言えない気持ちは言葉だけではどうにも出来なかった。
すると
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ユニークシナリオ『兎の国からの招待をクリアしました』
ユニークシナリオEX
『致命兎叙事詩を開始しますか?』
YES/NO
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新たなウィンドウが表示され別のユニークシナリオの始まりが選択として現れた。しかも「EX」シナリオだ。
「ウェザエモンの時に見てるから初めてじゃないけど2つ目の『EX』だな。受けるだろ?」
「サンラク、後で話したい事がある」
サンラクのセリフにそう答えつつYESを選択した俺は立ち上がり身体を伸ばした。
「なんだよ、話したい事って?」
「それは後で話すよ。まぁ、楽しみに待っとけ」
「凄く気になる……まぁ、今はウェザエモンに集中する時だからな、その方が良いか」
俺のセリフに思うところはある様だがそう言ってサンラクは立ち上がった。
「サンラクこの後な「ユウヒ、ちょっと来い」
この後の予定をどうしようかと迷いサンラクに話を振ろうとするがヴァッシュ師匠から待ったがかかった。
「はい、なんでしょうか?」
ヴァッシュ師匠の元に足を進めて問いかける。すると、ヴァッシュ師匠は先程とは違う鋭い目付きで
「おめぇさん、この後時間あるかい?」
そう問いかけてきた。
「時間ですか?」
「あぁ、おめぇさんもあの死に損ないに挑むってなら。俺等がちぃっとばかし力を貸してやる。どうだ?」
俺のセリフにヴァッシュ師匠はそう応えた。「死に損ない」がウェザエモンの事を言っているのならこの提案は是が非でもない。それに前にサンラクが言っていた、「その時が来れば俺に良い事をしてくれる」と。
つまり、今が「その時」という事だ。
「お願いします。師匠」
俺はそう言ってヴァッシュ師匠に頭を下げる。ヴァッシュ師匠は煙管の煙をふっと吐くと「着いてきな」と一言言って歩き出した。
「兄貴、俺も行っていいですか?」
ヴァッシュ師匠の後を追って俺も歩き出したがサンラクがヴァッシュ師匠にそう尋ねる。
「あぁ、おめぇさんがいても支障はねぇ」
「ありがとうございます」
ヴァッシュ師匠の答えにサンラクも頭を下げ俺と並んで歩き出した。
「お前は展開知ってんのか?」
「まぁな、体験した。きっと驚くぜ?」
「お父ちゃ……カシラの力をまた見られますわ!」
「お父様…まさか」
ここから先の展開を知っているらしいサンラクとエムルちゃん。そして、ヴァッシュ師匠が何をするのか察しがついたらしいミュウラの様子に俺は首を傾げて師匠の後をついて行った。
「鍛冶場か、此処?」
しばらく歩くと俺たちはレンガで作られた部屋に入った。そこに置かれている大きな炉や槌から想像できるのは鍛冶場であった。
「ビィラック、いるか?」
内装に目を引かれている俺を無視してヴァッシュ師匠はそう言う。すると、奥の部屋から黒毛のヴォーパルバニーが出てきた。
「どうしたんじゃオヤジ?間を空けずに何度も来るなんて珍しいのぉ」
「ビィねぇさま!お久しぶりです!」
「おう、久しぶりじゃのぉミュウラ」
肩口から黒毛のヴォーパルバニーと挨拶を交わすミュウラを後目に俺は新しいヴァッシュバニーを見つめる。
(グルグル巻きのサラシにツナギ姿……職人って感じだな)
ゲームなので当たり前なのだろうが場に属した格好をしたヴォーパルバニーの登場に此処が鍛冶場なのは間違いではないと納得した俺はミュウラに話しかけた。
「"ねぇさま"って事は姉妹なのか?」
「はい、ビィねぇさまは長女でエムルお姉様のねぇさまでもあります」
「へぇ、エーベルト、エムルちゃん、ピーツに続き更に姉妹がいるのか……ちなみに、まだ居たりするのか?」
「はい、兎御殿にはまだまだお姉様やお兄様がいますね」
「マジか……」
(ミュウラも含めて4匹でも多い方なのにまだ兄弟姉妹がいるのかよ)
ミュウラのセリフにそう呟きつつ心の中で悪態をつく。考えたくないが謎の多い「シャングリラ・フロンティア」で更に「好感度管理」の要素が出てきたらかなりめんどくさい。
未だに「ヴォーパル魂」が何か分からないが俺の中ではヴォーパルバニー達の「好感度」なのではないかと考えている。
(考察、ユニークシナリオ、そしてEX…コレだけでも疲れるのに更に好感度の管理もしないといけないのかよ……)
「どうかしたのですか?」
頭が痛くなりそうな現実に項垂れミュウラには心配そうな顔をされてしまった。ミュウラには「大丈夫」も返すが俺の頭の中はビィラックの事でいっぱいだった。
(職人…ゲームじゃ堅物キャラが定番な上にどんな内容が地雷になるかわからないキャラでもある。ヴァッシュ師匠と同じくらい気を払うべきかもな……)
そう思いながら何かヴァッシュ師匠と話をしているビィラックを見る。すると
「さっきからワチを見てる奴は前にオヤジとミュウラが言っとったやつけぇ?」
ビィラックと目が合いそう言われた。
「おう、俺等のもう1人の舎弟だ」
「ユウヒさんです!」
「はじめまして」
ヴァッシュ師匠とミュウラの紹介に預かり会釈をしてそう言う。ビィラックはそんな俺をジッと見つめると「なるほど」と呟いた。
「ワリャもイーヴェルに似た目をしちょるな」
そして、そう言うと何か納得した様子で頷いた。
「イーヴェル?何だそれ?」
「さぁな、俺も言われたがさっぱりだ」
意味がわからずサンラクに聞くが帰ってきたのはこの返事のみ
(また別の兄弟姉妹の名前か?)
そう思い首を傾げるが答えは謎だ。
「ユウヒ」
すると、唐突にヴァッシュ師匠に声をかけられた。
「はい、師匠」
ビィラックと合っていた視線を切りヴァッシュ師匠の方を向く。すると、師匠は壁に掛けられていた槌を1つ手に取った。
(撲殺されるのか?)
ないと思いたいがそう言うゲームを以前プレイした経験があるだけに油断は出来ない。しかし
「ちょいと『
俺の予想は大ハズレであり俺は自分の思考に呆れつつ所持している2つの致命武器を手渡した。
「ほぉ……」
師匠は俺が渡した致命武器を見比べると致命の闘杖をじっと見て声を漏らした。そして、致命の包丁を俺に返してくると
「これなら問題ねぇ。此奴を使おう」
致命の闘杖を台の上に乗せてそう言った。
「何をするんですか?」
意味がわからず師匠にそう尋ねる。すると師匠は羽織を脱き右腕をはだけさせると応えた。
「今からおめぇさんの武器を生まれ変わらせる。あの死に損ないと渡り合って貰うためにな」
「生まれ変わる?」
「そうだ、『
師匠の言葉に驚きながらも俺はウィンドウを開く。表には俺のインベントリに入っている素材が羅列しており俺はその中から2つの素材を取り出した。
『ゴールデン・エンパイア・ビーキングの外殻』
『グリムキング・バードの狂骨』
リュカオーンの次に記憶に残っているモンスターの素材。シャンフロで楽しんだ戦いの記憶だ。
「『ゴールデン・エンパイア・ビーキングの外殻』に『グリムキング・バードの狂骨』か……」
師匠は俺の出した素材に顎に手を添えてそう呟く。師匠の後ろではビィラックが目を輝かせているが今はどうでもいい(サンラクも目を輝かせているがそれもどうでもいい)。
「此奴だなぁ」
そして、しばらく2つの素材を見ると『ゴールデン・エンパイア・ビーキングの外殻』を手に取った。
「師匠、素材をどうするんです?」
師匠が手に取った『ゴールデン・エンパイア・ビーキングの外殻』を見つつそう尋ねる。すると、鞴を持ったビィラックが答えてくれた。
「『真化』は武器を"真の姿に化える"こと。『致命』の名を冠する武器は強者への挑戦を記憶するけん。今、ワリャがオヤジに渡した強者の力はワリャと共に戦ってきた致命の闘杖の記憶と混ざり合って更なる力と姿を得る。青き鳥の人の致命の包丁もオヤジが『真化』させ姿を変えた。オヤジは鍛治を極めし『名匠』と古の神代の武器を鍛える『古匠』の2つを極めた『神匠』じゃ。そんなオヤジに武器を鍛えてもらえるなんてワリャ達は運がええ。刮目せぇ」
「新しい武器……サンラクもやってもらったのか」
ビィラックの言葉に目を見開きサンラクを見る。すると、サンラクは頷きインベントリから双剣を取り出した。
「此奴がそうだぜ」
「お父ちゃ…カシラが打った武器ですわ!」
「これが……」
サンラクの手に握られた双剣。太極図を思わせる様な白と黒の剣。見ただけで普通の武器との『違い』が解る。その姿に声を漏らしながらもその刃を指でなぞる。
「ユウヒさんの武器もこうなるのですね」
ミュウラはそんな俺に囁くようにそう言い俺はその言葉に静かに頷いた。そして
「始まるぞ」
ビィラックの声と共に俺は師匠を見る。師匠は炎が猛る炉の前に立ち手袋をはめた左手で俺の致命の闘杖を熱していた。
そして、炎から致命の闘杖を取り出すと右手に握る槌を致命の闘杖に振り下ろした。
鍛冶場に甲高い音が響き渡る。闘杖と槌がぶつかり火花と共に魔法陣が浮かび武器へ消えていく。不思議な光景に目を奪われ俺は立ち尽くした。
『昏い〜夜空に、炉の炎。』
そして、聞こえてくるのは師匠の歌声。武器を打つ音にも負けない歌声。
『火花は生まれ、闇が舐め取る。』
『踊る金槌、歌う鉄。』
『トンカラカンとコンキンカン』
『お前は刃、お前は力』
『土より出でて、木を焚べ、火を育み。』
『金を鍛えて、水にて冷やす。』
『世界は巡り、しかして停滞る。』
『金より鉄を、鉄より鋼を。』
『鋼より刃を、刃より剣を。』
『明ける夜空に、剣の輝き。』
『光を映し、闇を切り裂く。』
『踊る剣に、歌えや世界…………』
歌と共に何度も槌は振るわれ、その度に魔法陣が浮かび上がり武器へと消えていった。
そして、歌と武器を打つ音が終わり熱されていた致命の闘杖が水へと漬けられた。
水が蒸発する音が響き水蒸気が発せられる。そして、師匠は水で冷やした致命の闘杖を再び台の上に戻すと細かな作業を加えた。
「おし……」
しばらくするとそう呟き生まれ変わった致命の闘杖を木製の台に移動させた。
「致命の闘杖は此処に真なる名ぁと姿を得た。その名も『
そして、師匠のそのセリフと共に姿を見せたのは白の杖体に両端に金の装飾がついた杖だった。
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『兎月・満月』
満月の如き輝きを持つ闘杖。
地に降り注ぐ正円の如き杖体は次の姿への道標。
致命兎の魔法が込められたそれは真の姿を未だ叢雲に隠している。
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「白い闘杖…」
「能力は!?」
生まれ変わった致命の闘杖の姿に見惚れながらもサンラクに急かされるようにその能力を確認する。
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自身よりレベルの高い相手との戦闘時、クリティカルに成功するとMPを回復させ次の攻撃に威力補正をかける。
MPが充実した状態で使用した場合、MPは余剰分として蓄積されMPの消失に伴い回復に宛てがわれる。
一定回数、クリティカル攻撃を当てることで変形ゲージが蓄積される。
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「お、おぉ……!!この武器変形するのか!?」
なんとも魅力的な内容に思わず声が出た。ウィンドウを閉じて兎月・満月を手に取る。長さは致命の闘杖よりも少し長い。しかし、何回か取り回せば間合いには慣れ新しい武器という事もあってワクワクが心を支配した。
「気に入ったみたいだなぁ」
そんな俺にヴァッシュ師匠は一息ついてそう言う。
「はい、ありがとうございます。師匠!」
「良いってことよ…。それにサンラクも含め俺等も久しぶりにいい仕事をさせてもらったぁ。礼を言うのは俺等の方だろうよぉ」
頭を下げた俺にヴァッシュ師匠は笑ってそう言い俺とサンラクを見る。その目は真剣そのもので何処か憂いを秘めているような目だった。
「ユウヒ、サンラク…武器達であの死に損ないを張り倒してやれ。もう自分で倒れることも出来ねぇ堅物だ。おめぇさん等で手を下してやってくれ」
そして、よく響く静かな声で俺たち2人にそう言ったのだった。
そんな師匠の言葉に俺たちは顔を見合わせ
「「押忍!!」」
力強く応えた。