戦闘狂が行く理想郷   作:烏鷺

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意図せず当たりを引く・其ノ弐

「さぁ、この感覚を忘れずに行こうか!!」

 

その叫びに応える様にモンスターが飛び出してきた。凄いスピードだが

 

見えている。

 

ギンッ

 

モンスターが放つ突きを杖で受ける。鋒と杖がぶつかり合い火花が散るが俺は後ろにステップして距離を取り相手を見つめた。

 

「兎…」

 

そう、俺にハイスピードな突きを見舞って来たのは手に赤い包丁を握った兎だった。空間には『ヴォーパルバニー』の表記が出ている。それがこの兎の名前だろう。

 

俺に距離を取られたヴォーパルバニーは俺を見つめ少し身体を下げると再び突きを放ってきた。しかし、俺はそれを上段受けで受けて弾くとすかさず杖を回転させて間合いを調節し上段打ちを頭に叩き込む。

 

クリティカルが発生しダメージを負ったヴォーパルバニーは身体をバウンドさせながらも立ち上がりすかざす包丁で斬りかかって来る。

 

しかし

 

「都合3回の攻撃、急所を狙うのはいいが一辺倒すぎるな」

 

ヴォーパルバニーが間合いに飛び込んでくる刹那の間にそう呟くと

 

『一点打ち』

 

スキルを発動し突きでヴォーパルバニーの頭を撃ち抜いた。

クリティカルが発生しヴォーパルバニーがポリゴンとなって消滅する。SEが鳴り撃破とレベルアップを知らせてくれた。

 

「2から4へアップ!あの兎結構強いやつだったんだな」

 

体感的にスピードはあったが攻撃は一辺倒で倒しやすい感じだったがまさかの大量経験値に喜ぶ。当たりを見てドロップアイテムがないが確認したが今回は残念ながらドロップはなしだった。

 

「まぁ、レベルの上がり方的にレアモンスターか森の中でも上位のモンスターなんだろうからそう簡単にドロップアイテムは出ないよな。でも、あの出刃包丁欲しいなぁ、絶対強いだろ」

 

ドロップアイテムが出なかった事を残念に思っているとSEが鳴り新しいウィンドウが開いた。

 

「なんだ?条件達成?」

 

ウィンドウには、条件達成による新たなスキルの習得が表示されておりスキル名は『フラッシュカウンター』となっている。

 

「条件達成…行動がスキルの習得に繋がるのか、面白いな」

 

フラッシュカウンターの効果を確認しながらそう呟き俺は先の戦闘を振り返った。

 

「強い敵相手でも自前のスキルで戦えるしクリティカルもちゃんと出る。恐らく理想的な入り方をするとクリティカルになるんだろうが………よくできたゲームなのは間違いないな。バグだらけのクソゲーも楽しかったがこれもありだな!」

 

技が綺麗に入ったりモンスターが強くても渡り合えたりはやはりテンションが上がる。クソゲーとはまた違った楽しさを享受しつつ今日の予定を決めた。

 

「うしっ、今日はヴォーパルバニーの出刃包丁をゲットするまでやり続けよう。明日、明後日は道場だからな、それまでに少しでもいい武器をゲットしておきたい」

 

そうしてヴォーパルバニーを探して俺は森を駆けて行った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「どうなってんだ?」

 

最初にヴォーパルバニーを倒してから実に1時間、2体目のヴォーパルバニーを倒した俺は目の前に表示されているウィンドウを見つめ困惑していた。

 

「『特殊クエスト』だと!?」

 

目の前にはユニーククエストの文字、シャンフロを初めて1時間と数分の出来事だ。何故こうなったのか、そう思いながらユウヒは自分の行いを振り返った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ヴォーパルバニーの包丁をゲットする為に跳梁跋扈の森を駆け出した俺は、戦うモンスターをヴォーパルバニーだけに絞り探索していた。ゴブリン、オーク等かなりの数のモンスターとエンカウントしたが全て戦わずに一撃入れて離脱を繰り返しヴォーパルバニーとエンカウントするのを待った。そして、ヴォーパルバニーを探し始めてから1時間が経とうとしていた頃、ついにヴォーパルバニーとエンカウントした。

 

「やっと出逢えたな、ヴォーパルバニー…!」

 

やっとエンカウントしたヴォーパルバニーに歓喜し武器を構えるとヴォーパルバニーも武器を構え突っ込んできた。

 

ギンッ

 

1体目と同様に放ってきた突きを杖で受け止めると右足の蹴りを放ちヴォーパルバニーを吹き飛ばす。吹き飛んだヴォーパルバニーはダメージを負いながらも立ち上がり再び突きを放ってきた。俺は再び突きを杖で受けたがここでふと、ある疑問が頭をよぎった。

 

(1体目と同じ攻撃パターン?)

 

そう、このヴォーパルバニーの攻撃パターンが最初にエンカウントしたヴォーパルバニーと全く同じ事に疑問を持ったのである。

 

まだ、二体としか戦闘をしていないので不確定もいい所だが、一回目の攻撃が防がれ距離ができるとまた跳躍の速度にものを言わせた刺突が来る。まさか、と思いつつも俺は1体目と同じ様に弾くとヴォーパルバニーは再び距離を詰め首に『斬りかかってきた』。

 

「!!」

 

3回目。1体目と同じ攻撃。首への刺突が2回防がれ斬りかかって来た。俺は、ヴォーパルバニーの行動に口角を上げると攻撃を杖でパリィしてバックステップで距離を取り構えをとる。

 

「来いよ、お前の攻撃パターン白日のもとに晒してやるぜ」

 

そして、ヴォーパルバニーとの戦闘が本格的に始まった。

 

刺突、袈裟斬り、逆袈裟、唐竹

 

全て人体にとって致命となる部位に迫る攻撃。致命兎の名にふさわしい攻撃の選択に俺は笑いながら全てパリィする。すると、俺に攻撃を弾かれたヴォーパルバニーは近くにある木々を使って俺の周りを跳び回り始めた。

 

「面白い。俺を直接狙う攻撃が通じないと判断し速度で翻弄しに来たか……だが……」

 

ヴォーパルバニーの速度は周囲に無数にある木々を足場にしていることもあり段々と早くなっている。しかし、俺に焦りはない。

 

なぜなら

 

ギンッ!

 

「お前みたいな速いヤツは『点』じゃなく『線』で捉え続ければ脅威じゃない」

 

ヴォーパルバニーの斬撃を受け止めながら俺はそう言った。

 

自身より速い敵の姿を捉えようとすると姿を見ることにばかり集中してしまい視界が狭まる。だからこそ『軌道』を見る。そうすれば広い視界を保つことができ、広い視界だからこそ「次」に対応することが容易になる。

 

俺は、ヴォーパルバニーと距離を取り再び跳躍攻撃ができるようにする。ヴォーパルバニーは俺の意図を感じ取ったように跳び周り再び攻撃を放ってくるが先程と同じ速度の攻撃だということもあり簡単にパリィが出来た。

 

すると、ヴォーパルバニーは縦の空間も使い跳び始めた。更に動きが複雑になり攻撃のタイミングが分かりにくくなったが致命傷を狙ってくるモンスターである以上攻撃部位は限られる。俺は、脳天目掛けて跳んで来たヴォーパルバニーを躱すとカウンターで杖を叩き込む。

 

ここまで、10回近く攻撃を捌いて来たがそのどれもが人体にとっての致命傷であり、攻撃パターンも『直線的な跳躍による刺突』、『斬撃』、『自然環境を利用した攻撃』でそれぞれ2〜5回防がれると次に移行する。と言う規則性があることがわかった。

 

更に4回攻撃を捌きながらヴォーパルバニーの攻撃パターンがわかった俺は首への刺突をパリィしてスキルを発動する。

 

「もうわかった。そろそろ終わりにしよう。『振るい薙ぎ』!」

 

パリィしてがら空きになった胴に杖が振るわれクリティカルが発生する。ヴォーパルバニーはポリゴンとなって消滅しその場には出刃包丁が残された。

 

「レベルアップにドロップアイテムゲット!それにスキルも新しく習得出来たな」

 

レベルアップのSEを聴きながらドロップアイテムである『致命の包丁』を回収した俺は新しく習得したスキルを確認する。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Lv4→6

 

条件達成

『スクーピアス』

 

『ディフェンシブフット』

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「2つ習得か、攻撃スキルに受けのスキル。やっぱり行動がスキル習得に影響してんだな。そんでもってスキルのレベルアップと習得はレベルが上がった時にまとめて行われるのか、どう行動したらどんなスキルが習得できるのか後で調べてみるか、兎に角今は……『致命の包丁』ゲットしたぜー!!これで戦闘の幅が広がるな!!」

 

スキル習得と包丁のゲットを喜ぶ俺、森の中で大声ではしゃぐ姿はリアルなら通報ものだがゲームなので安心できる。

 

そのまましばらくはしゃいだ俺は息を吐いて落ち着くと致命の包丁の性能を確認しようとウィンドウを開こうとした。その時だった

 

ガサガサッ

 

背後で草が音を立てて揺れた。素早く杖を取り出し構える。モンスターが出てくる瞬間を待ち素早く攻撃出来る様に体重を前に乗せる。

 

(何時でも来い、新しいスキルの実験台にしてやる!)

 

そう思いモンスターが出てくるのを今か今かと待っていた俺だが出てきたモンスターを見て攻撃する事が出来なかった。なぜなら

 

「黒毛のヴォーパルバニー?」

 

俺の前に出てきたのは真っ黒な体毛のヴォーパルバニーだったからだ。しかも非武装。

 

「なんだ、コイツ?」

 

明らかに他のヴォーパルバニーと違うソイツに首を傾げていると目の前にウィンドウが出現した。

 

そしてそれを確認した俺は目を見開く。ウィンドウには

 

『特殊クエスト【致命兎の試験】を受注しますか?YES/NO』

 

そう記されていた

 

 

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