戦闘狂が行く理想郷   作:烏鷺

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兄弟の力を試そう

「よしっ、新武器ゲットで更にやる気出てきたぜ!この調子でウェザエモン撃破だ!!」

 

「ユウヒさん、何時になく燃えてますね」

 

「そりゃー新武器だぞ?猿だってウキウキする単語だ。こうなっても仕方ねぇよ」

 

「そうなんですわ?」

 

「うはははははははははははははっ!その調子だぁユウヒ!その位の勢いじゃねぇとあの馬鹿は倒せねぇよ」

 

兎月(とつき)【満月】をゲットしてはしゃぐ俺に師匠やミュウラ、サンラク、エムルちゃんが何か言っているが耳に入ってこない。それだけこの兎月・満月は魅力的な武器なのだ。

 

「サンラク!俺明日は用があるんだ。さっき見せてもらったお前の新武器使って模擬戦しようぜ!!」

 

「いいねぇ、前に白黒つけようって言ったし、丁度いい機会だ。決着つけようぜ!!」

 

上がりきったテンションそのままに発したセリフにサンラクも乗っかり俺たちは互いに武器を構えた。

 

「た、大変ですわ!」

 

「ユウヒさんとサンラクさんの喧嘩です!」

 

「ほぉ、面白ぇ…俺等の作った武器をどぉ扱うか、見せてもらおうじゃぁねぇかい」

 

火花散らす俺たちにミュウラとエムルちゃんは慌てているがヴァッシュ師匠は乗り気なようでそう言って煙管を吹かした。

 

しかし

 

「神聖な鍛冶場で何しとるんじゃあ!!」

 

テンションが上がりまくっていた俺たちはビィラックの怒りの鉄拳の前に沈みヴァッシュ師匠の兎女中達の手でヴォーパル・コロッセオに搬送されたのだった。

 

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「「うおォォォォォォォォォォォォっ!!」」

 

ヴォーパル・コロッセオで双剣と闘杖がぶつかり合う。火花が散り空に消えていく。

 

「うはははははははははははははっ!良い戦いじゃぁねぇか!!」

 

「ユウヒさん頑張ってくださーい!!」

 

「サンラクさーん、ファイトですわー!!」

 

「あの二人、中々やるけぇの」

 

観客席ではヴァッシュ師匠、ミュウラ、エムルちゃん、ビィラックが俺たちの戦いを観戦している。

 

ビィラックにしばかれたあとヴォーパル・コロッセオに運ばれた俺とサンラクはヴァッシュ師匠の計らいの元、決闘を行っていた(HPが残り1になった時点で勝ち負けが決まる。死なない代わりに経験値が入らない)。

 

お互いにヴァッシュ師匠の手によって真化された武器『兎月・上弦』『兎月・下弦』と『兎月・満月』を装備して戦っている。

 

「オラッ!」

 

「フッ!」

 

俺の横薙ぎをサンラクは上弦で弾き逆手で持った下弦で空いた胴に斬りかかって来るが、俺は胴を支柱に杖を回しサンラクの攻撃の更に外側から攻撃を弾いた。

 

「チッ」

 

「はぁッ!」

 

攻撃を弾いた杖を右手で受け止め切り返すように上段から打ち込む。サンラクはフットワークでそれを躱し距離をとった。

 

「どうしたよ、やけに消極的だな?」

 

「そっちこそ魔法使わずに戦いやがって、舐めプか?」

 

お互いに武器を構えて言葉を交わす。確かに今、俺は魔法を使っていない。だが、それには理由がある。

 

(サンラクがどんなスキルを持っているかわからんからな……。下手に魔法を使うとハメられる可能性が高い)

 

そう、それが理由であった。

 

戦い初めてから2分ほどたっているがレベルは大体同じ位のはずなのに明らかに効果が違うスキルをサンラクは所持している事がわかっている。

 

(恐らく特技剪定所(スキルガーデナー)で合体とかを済ませてるんだろうな…)

 

スキルの合体による強化。それによって生み出された強力なスキルをチラつかされたお陰で上手く攻めきれない。

 

しかし

 

「やめだ」

 

俺はそう呟き詠唱を始めた。

 

「『纏い、轟け』『纏い、轟け』」

 

レベルアップに伴うスキルの強化。短縮詠唱と圧縮詠唱のレベルは最大値となり2回で最大バフ効果を得られるようになった。

 

ステイタスが上昇し速さが増す。

 

「何!?」

 

俺は走ってサンラクの後ろに回り込むとその顔に杖を叩き込んだ。サンラクにダメージが入り身体がよろけ隙が出来る。

 

「オラッ!!」

 

その隙を着くために走り込み杖を振るう。

 

しかし

 

走り込んだ俺の鼻先に兎月・下弦が飛び込んで来た。

 

「っ!!」

 

ギリギリで躱しサンラクを見る。すると、サンラクは俺の顔目掛けて突きを放ってきておりその鋒はあと少しで俺の顔を貫きそうだった。

 

だが、俺は兎月・満月の先端を地面に突き刺すと杖を使って身体を翻し攻撃を回避。そのままサンラクの上に肩車よろしく乗っかり首を支柱に回転するとそのまま三角絞めに持っていった。

 

「曲芸かよ!!」

 

俺に首を絞められながそう言うサンラクに笑顔で返し首を締める。しかし、サンラクは兎月・上弦を振り上げると俺に振り下ろしてきた。

 

俺は絞めを離して飛び退りつつ兎月・満月を回収する。サンラクの下弦は俺の後方にありアドバンテージは未だ俺にあった。

 

だが

 

「『クライマックスブースト』『餓狼の闘志(ハンガー・ウルフ)』!!』

 

サンラクはそう叫ぶとその身体に赤と金のオーラを纏った。

 

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「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁっ」

 

(くそっ、やっぱり強ぇ!始まって2分でもうHP1桁かよ!!)

 

俺は目の前に立つユウヒを見ながら心の中でそう悪態をついた。

 

魔法なしのユウヒの攻撃を喰らいまくり気づけばHPは9。武器の扱い、体術、リアルで学んできた事をゲームで寸分の狂いなく発揮出来る。それがユウヒの遊の強さ。

 

他のゲームと違いアバターが自在に動くシャンフロでの脅威は言わずもがな。今俺が生きているのは特技剪定所で強化したスキルのお陰だった。

 

(つーか、相変わらずインファイトになった時の判断と反応が桁違いに速ぇ!!なんで、武器持ちの俺の方がダメージ食らってんだよ!?)

 

開始直後、ユウヒは俺に兎月・満月を投擲してきた。そして、スキルだろうか?魔法なしで俺に高速で迫ると武器を弾き空いた胴に拳を打ち込んできやがった。そして、体勢が崩れた隙に兎月を拾い杖による打撃を繰り出してきた。

 

俺も負けじと攻撃を仕掛けたが杖を使って腕を取られそのまま投げられてしまった。

 

そして、再び俺に接近すると杖を上手く使いながら拳による打撃や膝による攻撃を繰り出してきた。

 

(ワケわかねぇのは受けの技術だよ!なんで至近距離の突きを手の甲で捌けるわけ!?)

 

考えても始まらない相変わらずの強さにため息を吐いて手元に残った兎月・上弦を見る。

 

(どうする、このまま上弦だけで攻撃を捌き隙を見て下弦を拾うか?いや、だが遊は魔法を使ってる。速さは俺以上だし隙がねぇ。どうする………………………………………………………?)

 

「いや…やめだ」

 

長い思考の末、俺は考えるのをやめた。考えても始まらないからだ。

 

「今、出来ることをやって勝つ」

 

そうだ、それしかない。俺はそう決めて上弦を構えるとまた使っていないスキルを稼働させた。

 

「『クライマックスブースト』『餓狼の闘志』!!」

 

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赤と金のオーラがサンラクを包んでいる明らかに俺の知らないスキル。

 

「はははっ」

 

そして、明らかな決着の意思に俺は口を歪めて声を漏らした。

 

(決めに来たなサンラク!ならば応える!!)

 

俺は兎月・満月を構えてサンラクの意思に応える事を示した。

 

そして

 

「「うおォォォォォォォォォォォォっ!!」」

 

俺とサンラクは同時に飛び込みお互いの間合いに入った。

 

お互いに武器を振るい相手を取りに行く。

 

(マジか、スキル2つで纏雷の最大バフに反応してきた!!)

 

さっき反応出来ていなかった速度に反応した事に驚きつつも兎月・満月を振るう。

 

そして

 

「グハァ!!」

 

僅かに速く俺の攻撃がサンラクに届いた。

 

サンラクが吹っ飛びSEが響き渡る。どうやら俺の勝ちのようだ。

 

「俺の勝ちだなぁサンラクさんよ」

 

「ちくしょー、また負けた!」

 

倒れるサンラクの手を引いて起こしつつそう言い笑う。サンラクは悔しそうにしているが勝ちは勝ちだ。

 

「うははははははははははははっ!いい勝負だっぜぇおめぇら!」

 

「流石、夜の帝王に認められた奴らじゃ」

 

「惜しかったですわサンラクさん!」

 

「お疲れ様ですユウヒさん」

 

俺たちの勝負を見ていた師匠達も降りてきて俺たちに声をかけてくれる。俺とサンラクは全員に応えつつ飛び込んで来たミュウラとエムルちゃんを撫でた。

 

すると

 

「おめぇさんらには良いものを見せてもらったぜぇ。やっぱり良いヴォーパル魂を持ってやがる。そんなおめぇさんらにはコレをやろう」

 

ふっと煙を吹かしたヴァッシュ師匠がそう言って俺達の手首に何かをはめた。

 

「「うぉ!?」」

 

2人とも同じ反応をしながらも手首にはめられたモノを見る。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

致命兎の緑陽輪(ヴォーパルバニーのりょくようりん)

 

致命兎の秘宝の欠片から作られたアクセサリー。取得経験値を半分にする代わりにレベルアップ時に取得するSTポイントが1.5倍になる。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「「マジか」」

 

効果を見た俺たちは声を揃えて呟いた。腕にはまる緑の宝石の腕輪。つけていた『致命魂の首輪』ほど壊れた効果ではないがSTポイントに干渉してくるアイテムの登場に俺達は驚く。

 

「おめぇさんらのヴォーパル魂。影ることはないと判断した。此処から苦難の道をまた歩もうとも、おめぇらならやれると信じる。その心の強さで進み続けな」

 

そして、師匠は俺達にそう言い残すとビィラックと共にコロッセオから出て行った。

 

俺とサンラクは腕輪を見つめヴァッシュ師匠の背中に頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ビィラック、彼奴らの戦い…どうだったぁ?」

 

コロッセオから兎御殿への帰り道先の戦いを思い出しながらヴァイスアッシュは娘にそう問いかけた。

 

「あの二人……オヤジが惚れ込むのもわかる強さじゃ、それにあのユウヒの闘杖」

 

そして、ビィラックはそんな父の問いにコロッセオの方を見てそう言う。

 

「おめぇも気づいたか?」

 

「あぁ、あんな武器は今まで見たことがなかったけぇ、驚いた」

 

2人の頭で思い出されるのは鍛冶場での事。ユウヒの闘杖を見た時の事。

 

「あのやろう、武器を"屈伏"させてやがった」

 

「武器自身が"使い手に心を開き力を貸す"。初めて見たけぇ」

 

「あぁ、俺等も久しぶりだぁ。あんな状態の武器を見るのは」

 

鍛冶師として高みにいる2人にしか解らない会話。だが、それは確かにこの世界に新しい風を吹かせる者を指し示した話しだった。

 

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