「おいっすー」
「エルクおねーちゃん、お邪魔しますわ!」
「エルクお姉様、お邪魔いたします」
新装備を使った決闘を終えた俺はサンラク達の案内でラビッツに存在している特技剪定所に立ち寄っていた。
「此処か…」
致命兎の首輪にも着いていた紋が描かれた垂れ幕を潜り中に入る。内装は昔の薬屋と言った感じで、木製の棚に瓶詰めされた葉っぱや液体が置かれている。
「あらぁ、エムルとミュウラに鳥の人じゃなぁい」
内装を見回す俺の耳にそんな声が聞こえた。サンラクの方を見ればエムルちゃんと同じく耳のたれた兎がカウンターに座っていた。
「よぉ、エルク。今日は
「まぁ、ありがとぉ」
カウンターに肘を置き俺を指差すサンラクにエルクと呼ばれるヴォーパルバニーは眠くなりそうな声で礼言う。
「貴方が新しいお客様ねぇ」
「ユウヒさんです!」
「よろしく」
ミュウラの紹介で自分から言う必要が無くなったので一言そう言って俺はここに来た目的をエルクに伝えた。
「スキルの合体ねぇ。任せてぇ」
眠くなりそうな声と喋り方だが、イラッとはしない。俺はスキル合体の為に表示されたウィンドウを見ながら操作していく。
ちなみに今の俺のスキルはこうだ。
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「一点打ち 」LvMAX
「一辺薙ぎ」
「ディフェンシブフット」LvMAX
「アクセル」LvMAX
「三連撃」LvMAX
「スケートフット」
「見切り」LvMAX
「インパクトステップ」LvMAX
「乾坤一擲」
「パリングプロテクト」
「七艘飛び」
「三段蹴り」LvMAX
「掴み討ち」LvMAX
「ファイティングスピリッツ」LvMAX
「グラスポッパー」LvMAX
「拳豪砕破」
「嬉々応戦」LvMAX
「武侠舞」
「魔耀來々」
「ドリルピアッサー」
「圧縮詠唱」LvMAX
「短縮詠唱」LvMAX
「浸透打ち」
「表壊打ち」
「ジャンピングストライド」LvMAX
「終戦武舞」
「フロントシップ」
「一心開動」
「地合接器(じごうせつぎ)」 LvMAX
「アタックタイム」Lv8
「ジャイアントキル」Lv8
「良眼」
「夜行戦」
「アクア・アクション」
「キリング・マジック」 Lv7
「インターアクション」
「回魔駆動」Lv6
「上状戦舞」Lv6
「勇猛果敢」
「ウィーク・キャッチ」Lv5
「魔華消雷」Lv5
「猛進」
「共闘戦意」
「初志一徹」Lv3
「境地開拓」
「身操襲撃」Lv1
「走者挟撃」
「飛天」
「武装武士」
「心頭滅却」
「健武功」Lv1
「真武」
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「あ〜めっちゃ増えてる。そりゃそうだよな」
今まで整理せずにレベルを上げ続けてきたのだ。とっ散らかっていても仕方がない。
「へぇ、俺の知らないスキルばっかだな」
ウィンドウを見ながら頭を悩ませる俺にサンラクがそう言ってくる。
「人のスキル盗み見るなよ」
「良いじゃねえか、兄弟だし。それにお前の強さが落ちるわけでもねぇだろ?」
俺の肩に肘を置いてそう言うサンラクにため息を吐き俺は操作を続ける。特技剪定所はスキルを合体出来る施設。そして、合体するスキルはレベルが高いものどうしを合体させるのが良いらしい。
(スキルの整理も兼ねたいけどレベルが低い奴に関してはMAXまで上げたいよな……どうするか)
レベルの最大は10。しかし、後半に手にしたスキルはまだレベルが低く合体しても意味が無さそうだった。
「よし、これで行こう」
悩みながらも合体するスキルを決めてそう呟く。ウェザエモンとの戦いに向けて半端な合体は出来ないので吟味させてもらった。
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「一点打ち」×「ディフェンシブフット」
「アクセル」×「ファイティングスピリッツ」
「三連撃」×「三段蹴り」
「短縮詠唱」×「圧縮詠唱」
「見切り」×「掴み討ち」
「インパクトステップ」×「ジャンピングストライド」
「嬉々応戦」×「アタックタイム」
「キリングマジック」×「ジャイアントキル」
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「ふむふむ、これで良いのねぇ?8つの合体で費用は8000マーニよぉ」
「あいよ」
合体するスキル群を見て頷くエルクに料金を支払う。エルクは俺に「待っててねぇ」と言い残し店の奥へと消えてしまった。
「そうだユウヒよ」
エルクが消え暇な時間が出来たのでもう一度店を見回しているとサンラクに声をかけられた。
「何だよ」
「お前、今金どの位持ってる?」
唐突なセリフに俺は距離をとった。
「貸さんぞ」
そして、怪訝な眼差しを向けながらそう言う。
「いや、要らねぇよ。そういう話じゃねぇ」
しかし、サンラクはそう言うとジェスチャーで近くに来るように催促してきた。
「何なんだよ?」
明らかにいつもと違う態度にため息を吐きながらも近づく。隣に立つとサンラクは俺の首に腕を回して小さい声で話し始めた。
「いいか?この後あの兎がお前に必ずスキルの秘伝書を勧めてくるはずだ。だが、所持金を明かしてはダメだ」
「何で?」
「あの兎は銭ゲバ何だよ。もし所持金がバレようものなら確実にぼったくられるぞ」
「マジか」
「あぁ、俺は1回毟り取られた……」
「どんまい」
肩を組んで落ち込むサンラクにそう言う。こればっかりは過去の事なのでどうしようも無い。
(しかし、あのゆるーい感じでそう言っタイプだったとは。人…いや、兎は見かけによらないという事だな)
今日何度目かも分からないため息と共にそう思う。エルクが来る間に持っている所持金を確認しウィンドウを閉じる。この後、ピーツに素材を買い取ってもらう予定だったのが幸いしてそこまで持ってはいなかったが念の為ミュウラに預けることにした。
「なんでこんな事を?」
金を預ける際にミュウラに首をかしげられたが「エルク対策だ」と言うと納得したように頷いて預かってくれた。
「お待たせぇ〜」
少しするとエルクが変わらない緩い声で店の奥から出てきた。その手にはデカい瓶に入った枝の入った液体が握られておりあまりの大きさに「デカ」と思わず呟いてしまった。
「さぁ、これを一気飲みしてぇ」
「は?」
そして、笑顔のままそう言うエルクに瓶を受け取った俺はそう言う。枝の入った緑の液体、これを一気飲みしろと言っている。訳が分からない。
「これを飲まないとぉ、スキルが習得できないのぉ」
しかし、そう言われてしまえば飲むしかない。
「ゲームじゃなかったら無理」
液体を見ながらそう呟き液体を一気飲みする。幸いそこまで不味くはなかったので一気に飲み干すことが出来た。
「お、おぉ!」
液体を飲み干せば俺の身体は輝き、スキルの習得に成功した。
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「カウンターアクション」
「クライマックスブースト」
「
「
「
「ブーストアクション」
「無拳有時《むけんゆうじ》」
「キリングエンド」
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「よしっ!」
新たに手にしたスキルを確認しながら俺はそう呟く。レベルをMAXにしたスキルで合体しまくったお陰か強力なスキルが手に入った。特に嬉しいのは「詠唱破棄」魔法を使い速度と攻撃回数で戦う俺にとっては最適なスキル。
上手く行くかは分からなかったが狙っていたスキルでもあるので成功した事に拳を握った。そして、行動速度の強化と打撃系のスキルの誕生。インファイトが主たる俺にはこれも最適なスキルだ。
そして
「そうそうラビッツでしか取り扱ってない『スキルの秘伝書』とかぁ、いかがですかぁ?」
スキルを見ながら喜ぶ俺にエルクのセリフが聞こえてきた。
「「「…………」」」
あまりにも予定通りな流れにサンラクとエムルちゃん、ミュウラは黙り俺は所持金が表示されたウィンドウを見せて
「これくらいしか持ってないけど買えるのか?」
エルクにそう問いかけた。
「あらあらぁ、それだけあれば大丈夫ねぇ」
俺の所持金として表示された金額は6000マーニ。それを見たエルクはそう言いながらウィンドウを表示する。
そこには見たことの無いスキルが並んでおり限定品である事をまじまじと教えてくれた。
だが
「うわ〜ちょうど6000かよ……」
値段はちょうどピッタリ。ギリギリ所ではない全額ぶんどる気満々の兎にジト目を向ける。すると、俺の視線に気がついたのかエルクは俺に顔を近づけて
「まさか、この機会を逃すおマヌケさんじゃあぁ…ないわよねぇえ?」
兎とは思えない迫力で凄んで来た。しかし、ミュウラに金を預け最大所持金をちょろまかしている俺にダメージはない。俺は冷静にスキルを吟味して選択した。
「じゃあこの『
「お買い上げぇ、ありがとうごさいまぁす」
そして、何食わぬ顔で金を払いニコニコ顔のエルクから秘伝書を受け取りスキルを習得した。
そして、やる事をやった俺達は全員で店を出る。俺もサンラクのミュウラにエムルちゃんもホッと一息ついた。
しかし
「次は所持金、ちゃんと教えてくださいねぇ」
俺たちの背中にそのセリフが届き振り返れば真顔のエルクが手を振って俺達を見送っていた。
その笑顔に悪寒が走ったのは言うまでもない。