「ステージが…」
「変わっていく」
景色の変更、まるで飲み込まれたかのような感覚にさえさせられる演出にカッツォとサンラクが声を漏らす。
既に何度もコレを体験しているであろうペンシルゴンは特に反応はない。そして、俺は
「いたな」
「「!!」」
視線の先、墓の前に背をのばし正座をしている武人に視線を向けていた。
「あれが」
「『墓守のウェザエモン』…!!」
圧倒的な存在感、カッツォとサンラクの声にも緊張感が出ている。そして、そんな俺達の前にリュカオーンと時と同じウィンドウが現れた。
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『ユニークモンスター』
『墓守のウェザエモンに遭遇しました』
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殺風景な荒野に1本の桜の樹と墓標。ステージに似つかわしくないアナウンスが聞こえたが目の前のウェザエモンのせいで全く気にする事が出来ない。
桜が散り、花びらがウェザエモンの太刀に落ちる。そして、その花びらを落としてウェザエモンは太刀を手に取った。
「どっちが行くの?」
武器を手にした事で顕になった圧倒的な殺傷能力、その威圧感。それを全員が感じながらペンシルゴンは俺とサンラクにそう問いかけた。
「俺が行く、と言いたいところだが…もう既に火がついてる奴がいるから其奴に譲るよ」
「「!!」」
ペンシルゴンの問いにサンラクがそう答えるのと同時に前に出る。目の前の強敵を誰にも取られないように。
サンラクは知っている。この場に入った瞬間から「待て」が出来ない狂人が生まれている事を
サンラクは知っている。其奴以外が前に出れば其奴ごと、奴は殺ってしまうだろうという事を
ペンシルゴンとカッツォは目にした。インベントリから武器を取り出し。目を見開き、口を歪めて前へ出る狂人を
「『墓守のウェザエモン』……殺ろうかぁっ!!」
そして、その狂人の言葉と共に戦いの幕が切って落とされた。
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「断……風ッ」
前へ出た俺にウェザエモンの神速の居合が抜刀される。速すぎる上に防御を貫通する効果を持った抜刀。
しかし
「凄い…」
「どうなってんの……!?」
「はははっ、相変わらず気持ちわりぃ!」
ユウヒはその居合を半歩右横に動き最小限の動きで躱した。
「断風ッ」
2発目の断風、次は左横に半歩動く。プレイヤーの尽くを斬り殺してきたユニークモンスター『墓守のウェザエモン』の剣が地面に傷を残しただけでユウヒの横を通り抜けていく。
そんな光景にサンラク達は声を上げる。ペンシルゴンとカッツォは信じられないと思い、サンラクは自分の弟の実力に敬意を込めた悪口を、それぞれ発した。
(やっぱり斬撃は剣刃の延長線上にしか飛んでこないか…そして、基本的な居合術のまま切り込んでくる!)
そんな中、ゆっくりとウェザエモンとの距離を詰めるユウヒは確信に変わった予測に心の中で拳を握っていた。
居合術。腰に刀を据え納刀した状態から間合いに入ってきた相手に一撃を加える剣術。鞘から抜刀した状態から技を繰り出す通常の剣術とは異なり「抜刀」と「斬撃」を同時に行いその瞬間に『最速』が完成する。その為、高度な技術が要求される。
遊仁は居合術を師である獅子宮巫堂から教えられており自身も居合術を行うことは出来る。
居合術は刀を武器として扱う日本の武士が独自に生み出した剣術であり様々な流派があるが数少ない例外を除いてある共通点が存在する。
1つ、刃を鞘の中で加速させ腰や胴の動きでもって抜刀する
2つ、人間の身体的構造上、刀は腰に据えられる
3つ、構えの際、利き手と逆の足が前に出される
4つ、素早く、滑らかに抜刀する為、親指で鍔を押し出す
ユウヒはウェザエモンが刀を腰の左側に据え右足を前に出し構えを取った時点で断風が来ると予想していた。そして、先にペンシルゴンから提供された断風の情報を元に斬撃が剣刃の延長線上に来る事も予想していた。
ならば後はその時が来るのを待つだけだった。
抜刀の姿勢を取った瞬間からウェザエモンが鍔を押した瞬間まで、一切を見逃さずに行動を起こす。
結果、斬撃は綺麗にユウヒの横を通り過ぎて行った。
(一撃目で鞘を捨てやがったお陰で予見しずらくなったが構えが変わらねぇお陰で読みやすいぜ!!)
「見えてんだよ侍ィ!!」
都合、4回の断風を回避しお互いの武器の間合いに入ったユウヒはウェザエモンに攻撃を仕掛ける。抜刀からの切り上げを躱し刀を持つ右腕に新しく作った杖で打撃を加える。
「新しく作った武器『紫毒の闘杖』のお披露目だ!!」
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『紫毒の闘杖』
ユウヒの依頼でビィラックがエンパイア・ゴールデン・ビーキングの毒針より制作した闘杖。先端が鋭く突いた相手にビーキングの毒「壊毒」と「獬毒」を付与する事が出来る。そして、先端以外での攻撃の際、接触部分から微量に毒が放出、相手を汚染することが出来る。
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紫毒の闘杖を回転させつつ自分も回りウェザエモンの頭に闘杖で横殴りの打撃を加える。鈍い音が響き顔のアーマーと闘杖がぶつかるがダメージげ入っている感じが全くしない。
「怯みなしか!」
微動だにしないウェザエモンに悪態をつく。その時だった。
「大時化!」
接近した俺にウェザエモンが刀を持たない左手で技を繰り出してきた。
「ぶねっ!」
俺は咄嗟に身体を下げて攻撃を躱しついでとばかりに左足に闘杖で打撃を加えた。しかし、ウェザエモンは全く意に返さず攻撃を仕掛けてくる。
低い姿勢になった俺を真上から串刺しにしようと太刀を落としてきたが俺は転がりつつ攻撃を躱し距離を取った。
だが
「断風!」
転がる勢いで立ち上がった俺にウェザエモンは容赦なく断風を放ってくる。俺はギリギリで攻撃を躱したが今のはかなりのラッキーだった。
(下手に距離とってると不味いな。それに、動いてないと卸される)
避けの動きから背後に回り込む為に走り出す。
「断風!」
ウェザエモンから目を離さず一挙手一投足を見のがなさい。ステップワークで断風を避けながら走り続ける。
「雷鐘!」
だが、そんな俺の肉迫を拒絶するようにウェザエモンは太刀を天に掲げ雷を落としてきやがった。
「雷か!」
雷鳴と共に降り注ぐ即死級の攻撃を全力で避ける。俺のみを狙った落雷は離れて見ているペンシルゴン達には被害を出していない。
(情報通りだな!)
5秒間の雷鐘を回避した俺は心の中でそう呟き、再びウェザエモンに接近する。
「断風!」
「馬鹿が!!」
ウェザエモンは走る俺に断風を飛ばしてくるが既に見きっている攻撃、回避するのは容易だった。
間合いに入り断風から派生する攻撃が来る。
(右振り下ろし、両手斬り払い、時差突き、斬り上げ…流れるように技を繋げてくるな!)
紫毒の闘杖と身体操作で躱しながら攻撃を入れていく。ウェザエモンが身につけているアーマーの隙間を闘杖で突き刺し毒の付与を狙う。しかし、ウェザエモンは全く意に返さず攻撃を仕掛けてくる。
(正面振り下ろし、返し、左斬り下ろし、片手水平)
「断風!」
「パリングプロテクト!」
水平斬りからの納刀モーション。至近距離からの居合だったが既に行動を始めていたお陰で弾く事が出来た。切り返しで俺も攻撃を入れるが全く怯まない。
そして
「チッ、たったこれだけの戦闘で耐久値が半分以下になった」
始まってから1分ちょっとの戦闘で耐久値減少による警告が発せられた。
(特殊勝利系のモンスターって事を加味してもウェザエモンは耐久の戦い、武器もそれに合わせるべきだな)
「新装備祭りだ、次はこれを使うぜ!」
紫毒の闘杖をインベントリに入れ武器を入れ替える。僅かな間にもウェザエモンは攻撃を仕掛けてくるがスキルで避けつつ距離を取り俺は蒼い杖をインベントリから取り出した。
「戦甲角杖……お披露目だ!」