『10分』。ペンシルゴンが想定していたウェザエモンに勝利する為の条件を満たす時間。ペンシルゴン曰く、ウェザエモンは時間経過で戦闘の状況が変化するらしい。
そして今、俺達の前で動きを止めたウェザエモンに俺とサンラクは今一度武器を構え、ペンシルゴンはあるアイテムを取り出し、カッツォは拳を鳴らした。
「『エクスポート…サモンコール…戦術機馬……』」
「【
そんな俺達にウェザエモンは静かにされど力強く声を発した。次の瞬間、空中には巨大な魔法陣が現れ其処から
「これが…」
「情報にあったヤツか…」
俺とサンラクは出てくるソレを見上げてそう呟く。
「ペンシルゴンの情報通りだね。ウェザエモンとの戦闘開始から10分が経過すると、馬の形をしたロボット『騏驎』を呼び出す」
そして、第2フェーズで騏驎と戦う事をペンシルゴンより事前に頼まれていたカッツォは不敵な笑みを浮かべていた。
「頼んだよ、カッツォ君」
4人の中で騏驎の恐ろしさをただ一人知っているペンシルゴンは不安そうな表情をしながらもそう言い、カッツォは「任せてよ」と言って前に出た。
「見る専も此処までだね。ユウヒ、サンラク!俺は此方に集中するからウェザエモンはキッチリ倒してよね!」
「当然!」
「応!」
カッツォは騏驎と向き合いつつも俺とサンラクに激励の煽りを飛ばしてきたが俺達はそう応えてウェザエモンに視線を戻した。
「「第2フェーズだ、墓守のウェザエモン」」
「第2フェーズだ、戦術機馬【騏驎】」
「「「いざ、尋常に……」」」
「「「勝負!!」」」
三者それぞれが一斉に動き出した。俺とサンラクはウェザエモンをカッツォは騏驎を倒す為に
「断風!」
ウェザエモンは俺の首を落とす為に断風を放つが既に見切った攻撃、俺は難なく躱してウェザエモンに接近していく。
抜刀からの切り返し、連撃、全てを躱し、弾いていく。
「俺を忘れんな!」
俺に集中的に攻撃を繰り出すウェザエモンだが、後ろから切り込んで来たサンラクの声に反応すると身体を反転させて迎撃した。
「不意打ちなら黙ってやれよ!」
「こういう時は叫びたいモン何だよ!」
あっさりと迎撃された事に俺が文句を言うがサンラクは訳の分からない事をほざいている。
「断風!」
「あっぶねッ!」
そんなサンラクの胴をウェザエモンは狙って太刀を振るったがサンラクはリンボーダンスよろしく回避した。
しかし
(あの体勢はまずい!)
視線が制限される体勢になってしまったサンラクに俺は走るがウェザエモンが圧倒的に早かった。
「大時化!」
「グハッ!」
ウェザエモンはサンラクの脇腹を掴むとそのまま地面にサンラクを打ち付けた。サンラクの身体がポリゴンに変化し始める。
俺はインベントリから再誕の涙珠を取り出して投げつけサンラクを蘇生させた。
「ぶはっ!?何だ今の!首が変な方向に曲がったぞ!?」
「身体を掴まれて頭から着地してたからな!……それよりも油断すんな!ウェザエモン程のモンスターだ一瞬でも隙を作れば殺されるぞ!」
「わかってるよ!たった今、しっかり体験しました!!」
蘇生から復帰するまでの間、サンラクにウェザエモンを近づかせないように立ち回りながらサンラクと話す。攻撃は相変わらず苛烈だが、そんな事よりも俺には考えなければならない事があった。
(今の攻撃…第2フェーズが始まってから2分も経ってないのに連続でスキル攻撃してきた。リキャストの消化は前回から引き継ぎなのか?)
そう、さっきの攻撃、断風から大時化の連続攻撃。第2フェーズ開始からさっきで丁度1分位の時間で放ってきた。
最有力はリキャストタイムの消化状態が前回からの引き継ぎ式である事だ。それなら説明がつく。だが、相手は最強種の一角だ。決めつけるのはまだ早い。
「サンラク!」
「あぁ、解ってる!」
サンラクも同じ事を考えていたようで俺にそう言って頷くと再び戦闘に参加してきた。
「入道…雲!」
ウェザエモンへ接近する俺達に巨大な雲の腕が伸びてくる。俺達は真っ直ぐウェザエモンの背後へと走り抜け入道雲を回避した。
そして、サンラクよりも一瞬早く背後に到達していた俺はサンラクが入道雲を回避した瞬間にその腕を掴むと
「オラっ!」
「うおっ!?」
サンラクをウェザエモンに向けてぶん投げた。
サンラクは一瞬、困惑した表情を見せたが俺の意図を理解したのか湖沼の短剣を構えるとウェザエモンの肩に斬撃を決めた。
慣性+斬撃の攻撃にウェザエモンが前によろける。その隙を逃がさずに俺とサンラクは攻撃を加えていく。
全くダメージは入っていないが行動は阻害出来る。ウェザエモンは俺達を払うように太刀を振るうが俺達はあっさりとそれを躱して少しだけ距離をとった。
「おい、あれはビックリするだろうが!!」
「でも、上手くいったろうが!文句言うな!」
「斬られたらどうすんだよ!」
「生き返せるだろ?何言ってんだ」
「お前…マジで後で覚えとけよ……!」
ウェザエモンから視線をそらさずに兄弟でそう言い合う。サンラクは視線を鋭くしてそう言ってくるが俺は柳に風と受け流して再びウェザエモンに向かって走り出した。
「待て!」
コンマ遅れてサンラクも走り出す。
しかし
「雷鐘、入道雲!!」
そんな俺達をウェザエモンは落雷と雲腕で焼き殺し薙ぎ払った。
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「いやいやいやいや!!此奴ヤバすぎ!!」
ユウヒとサンラクがウェザエモンと戦い1度目の連続スキル攻撃を躱した頃、カッツォは騏驎の前足でも踏みつけ攻撃を交わし続けていた。
「ってか、デカすぎ!馬じゃないじゃん!脚の生えたダンプじゃん!!」
その巨体から繰り出される踏みつけは簡単に大地を砕きカッツォを煙幕で包み込んだ。
(踏みつけは躱せるけどヤバいのは石!飛んでくる石にも当たり判定がある!!ダメージ前提のビルドだけど地味にキツイ!)
視界の悪い煙幕の中カッツォは心の中でそう呟く。今も、自分の身体には騏驎が砕いた地面の破片が当たりジワジワとHPが削られている。
「騏驎の対策はペンシルゴンから聞いてるけどまずは接近しないと!」
騏驎は上に乗りひたすらに「振り落としモーション」を誘発させることでその行動を制限する事が出来る。カッツォのウェザエモン戦での役目は騏驎をウェザエモンに近づけさせない事。
もし、近づいてしまえば騏驎はウェザエモンと合体し手がつけられなくなってしまう。
カッツォはそれを阻止する為に動く。自分自身を使って行き先を潰しヘイトを集める。そして、ある物を探す。
そして、踏みつけを交わし続け約1分。
「あった!上に登るための梯子!!」
カッツォはお目当てのモノを見つけた。
「シャンフロは作り込まれた世界観や設定が攻略の鍵になる事がままある!そして、お前がロボットだってんなら整備する必要があると思ったんだ!上手く使わせて貰うよ!!」
そして、梯子を登り騏驎の上を取ったカッツォはインベントリから縄を取り出した。
「馬には轡が必要だよねぇ!!スキル『縄傀儡【蛇】』!!」
カッツォが振るった縄は騏驎の首に巻き付くとカッツォと騏驎をしっかりと繋げた。上を取られ縛られた騏驎はその場でバタバタと暴れだしカッツォを落とそうと必死になる。
だが
「昔、ユウヒから習ったんだよねぇ!このやり方!!」
カッツォはそう言ってターザンよろしく騏驎の背中から飛び降りると振り子の様な半円を描いた。そして最高到達点で身体を屈伸させる。
カッツォの身体は空で反転し騏驎の頭にその足を届かせる。騏驎は背中から頭に乗ってきたカッツォを落とそうと暴れるがカッツォはその頭の上で器用に飛び跳ね始めた。
「ほいっ、ほいっ、よっと!昔、ユウヒが言ってたんだ!暴れたりするモンスターの上に乗った時はその場で固まるんじゃなく一瞬自分も跳んでやれば良いってね!そうすれば受け身になり続ける必要が無くなるってさ!!言ってる意味が分からなすぎてリアルで練習しまくったんだよ!!落として見やがれ暴れ馬!!」
サーカスでピエロが巨大な玉乗りをする時と同じ事だ。動く物体の上にいる時、大抵の人間は落とされないようにしがみついたり自分の動きが間に合わず落ちてしまう。だが、サーカスのピエロは素早く足を入れ替え極一瞬だけ身体を玉から離す時間をつくり足の裏で玉を転がしコントロールしている。
今回カッツォはそれを騏驎相手にやっているのだ。暴れまくる騏驎の頭を正確に踏み飛ぶ事でモーションを発生させつつ落下を防ぐ。しかも、騏驎の上にいるのでさっきのように石や破片でダメージを受けることもない
「アッハハハハハハハハハハハハハハハハ!散々俺を踏みつけようとしてきた奴が今度は俺に踏みつけられるとはね!!」
リアルでの練習の成果とプロゲーマーとしての実力も相まって見事に騏驎を乗りこなしている。
だが
「雷鐘、入道雲!!」
カッツォは見てしまったウェザエモンにユウヒとサンラクが殺られる瞬間を
そして
「あ」
足を滑らせてしまった。
「カッツォ君!?」
落ちる瞬間をペンシルゴンに見られてしまったが今はどうでもいい
「俺はいいから早く2人を!!」
2人同時に殺られた為、カバーし合う事が出来ないユウヒとサンラク。そんな2人を助ける為にそう言いカッツォは地面で受け身を取った。
「ユウヒに受け身習っといて良かったよ!!」
そして、走り出す。再び騏驎を乗りこなす為に
「マジで頼むよユウヒ、サンラク…。俺は騏驎をキッチリ倒すからさ!!」
そして、再誕の涙珠で復活する2人を見てそう呟いたのだった。
第2フェーズ開始から2分11秒