太刀を下から上へ背面に投げる。そして、一瞬で持ち手を変えての一太刀。
「なんだそりゃ…」
ワンアクションで2人を斬り殺す曲芸に言葉が漏れる。
しかし
奇しくもウェザエモンによって両断された2人はウェザエモンが天晴を放つ瞬間に投げていた最後の再誕の涙珠によって復活した。
「究極奥義セルフ蘇生」
「成功」
そして、立ち上がりウェザエモンを見る。仕留めたはずの相手が再び立ち上がる。たはから見れば最悪の展開だが、ウェザエモンは気にした様子なく再び構えを取った。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「行くよ、カッツォ君!!」
「応よ!!」
ユウヒとサンラクがウェザエモンと火花を散らす中、カッツォとペンシルゴンは騏驎甲冑を屠る為に動き出していた。
出鱈目に飛び交うビームとミサイルを躱し2人は騏驎甲冑に接近する。
狙うはまだ完全に破壊出来ていない左膝。
「「お揃いにしてあげなきゃね!!」」
2人して笑顔でそう言う様は狂人のソレでありリアルのファンには絶対見せることの出来ない表情であった。
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
カッツォよりも先に攻撃の雨を掻い潜り左膝に到達したペンシルゴンが連続攻撃で膝にダメージを入れていく。
しかし、使用している魔槍は直ぐにエラーを発し武器耐久値が限界を迎えつつある事を知らせてきた。
「まだ頑張れるでしょ!?」
エラーが出てしまった原因は解っている。武器に「装甲貫通」のバフを付与しているからだ。それを解っていてもそう言わずにはいられなかった。
「ペンシルゴンッ武器を残して退け!!」
そして、自分の後ろから聞こえた声に反応してペンシルゴンは武器をその場を置くように捨ててその場を離れた。少し遅れて左膝へと到達したカッツォはペンシルゴンにそう叫ぶと跳び彼女が残した壊れかけの武器を右拳で殴りつけた。
バキッ、と音がなり魔槍が完全に壊れる。しかし、カッツォの目は捉えていた。
(よしっ!極わずかだけど亀裂が入った!!)
視界で一瞬だけ捉えた亀裂に笑みを浮かべて落下し着地する。次の瞬間には攻撃が飛んできているので走り出し回避していく。
「ペンシルゴン!左膝に亀裂が入った!!そこを狙え!!」
ビームとミサイルの爆発音に掻き消されないように大声で叫ぶ。カッツォのセリフにペンシルゴンは頷くと騏驎甲冑のパーツを足場に再び左膝の前へと戻ってきた。
カッツォが視界で捉えた亀裂をペンシルも捉えその亀裂めがけて魔槍を放つ。
「乾坤一擲!!」
正確に放たれた魔槍は左膝に刺さり亀裂を押し広げていく。バキッと今度は騏驎甲冑の膝から音がなり両膝を失った騏驎甲冑は仰向けに倒れ始めた。
「嘘まだ粘るの!?」
しかし、騏驎甲冑は地面に刺していたパーツで身体を支え完全な転倒を防いでいる。そんな姿にペンシルゴンが言葉を漏らすが、その悪あがきとも言える行動をカッツォは許さなかった。
「大人しく倒れろ…騏驎甲冑!!」
未だ放たれるミサイルとビームを掻い潜り騏驎甲冑の正面への跳んだ彼は拳を引き、騏驎甲冑の胸の部分に右ストレートを叩き込んだ。
土煙と轟音を立てて騏驎甲冑が倒れ、2人は顔を手で覆いながらも作戦が上手くいった事を確信した。
だが
「ペンシルゴン避けろ!!」
そんな2人を嘲笑うかのように土煙の奥に光が灯る。カッツォの叫びでペンシルゴンのソレに気が付きその場から離れる。
そして、次の瞬間には巻き上がった土煙と地面を掻き消す勢いで四方八方にビームが放たれた。
「マジか!」
「嘘でしょ!」
全方位攻撃にカッツォは右腕を飛ばされペンシルは左足を失った。
「大丈夫!?」
「最後の悪あがきってヤツだね…最悪だよ」
動くことの出来るカッツォがペンシルゴンへ駆け寄りそう言うがペンシルゴンは額に青筋を浮かべてそう応えた。
「再誕の涙珠って死なないと効果ないんだっけ?」
「そうだね…回復アイテムじゃなくて蘇生アイテムだからね。死んでないと効果はないんだよ」
明らかにキレているペンシルゴンにカッツォは苦笑いを浮かべるが無駄な時間は使っていられない。
「ペンシルゴン」
「うん、わかってる」
お互いに騏驎甲冑を屠る為に今何が必要になるのかは理解している。だからこそ
「直ぐに蘇生させてね」
ペンシルゴンは魔槍で自らの胸を穿いた。
そして、直ぐにカッツォが再誕の涙珠で蘇生させる。
「機動力回復!ありがとうカッツォ君」
「どういたしまして」
機動力回復の為の自害。現状に即した行動だったからこそ同様なく対応する事が出来た。カッツォは元気一杯で立ち上がったペンシルゴンと並び立ち言葉を交わす。
「次に狙うのは腹部だ」
「わかってるよ。足、腕以外で分厚い装甲に囲まれている上に少し脆い。寝かせた事だし、殺っちゃおっか!」
お互いに攻防の中で見つけていた攻略の鍵。最初から狙いは腹部。その為に騏驎甲冑の膝を砕いたのだ。会話を終えた2人は走り出し騏驎甲冑との戦いを終わらせに行く。
「最後にお誂え向きのを使ってあげるよ!!」
インベントリを操作しペンシルゴンが先が三又に分かれたような造形の槍を取り出した。
(『巨人殺し・串刺し』…自身よりも巨大な身体を持つモンスターに対してダメージ補正の入る槍)
今、この瞬間の為にあると言っても過言ではない武器。倒れた騏驎甲冑へ跳び上がりその腹部へ巨人殺しを投擲する。
「『刺穿葬槍』!!」
自身のカルマ値を参照して破壊力と貫通力を増大させる投擲スキルを使い騏驎甲冑の装甲を砕き内部に突き刺さる。
そして
「赤、青、黄…三色混合!拳気【過重黒衝】!!」
残った左腕、その拳に全てを込めたカッツォが舞う。
「終われ、伽藍堂……!!」
拳は騏驎甲冑に突き刺さった巨人殺しへと吸い込まれるように伸びていき。轟音を立てて騏驎甲冑の腹部を完全に破壊した。
「あ……やば……」
過重黒衝の反動でスタミナが切れたカッツォが空中で間の抜けた声を漏らして落下する。しかし、ペンシルゴンが落下するカッツォの下へ入り身体を受け止めた。
「危なかったね…カッツォ君」
「サンキュー…ペンシルゴン…」
完全に力の抜けたペンシルゴンとカッツォ。そして、その2人を相手にした騏驎甲冑はその身体をポリゴン塊へと変えて空へと散っていった。
「や、やっと倒した〜……」
「アレでダメだったら本気で終わってた…」
蓄積された疲労が押し寄せ2人は大の字に寝転がる。
しかし、戦いはまだ終わってはいない。
「ユウヒ君とサンラク君は!?」
ペンシルゴンは一瞬の安堵を吹き飛ばして起き上がると未だ戦闘が続くユウヒ達に視線を向けた。
そして
「間に合ったな」
「ようやくだぜ」
生命の神薬を落とし立ち上がるユウヒとサンラクの姿をその目で捉えた。