飛び散る雷光と私達に迫る衝撃。あまりの風圧に顔を覆い再び目を開けた私はその光景を見た。
「「究極の一太刀、攻略完了だ!!」」
ユウヒ君とサンラク君の言葉と共に折られた刀が舞い落ちる。刀を持っていた腕は勿論、身体の至る所が破壊され一目で戦闘不能だとわかった。
そして
「見事だ晴天転じて、我が究極の【天晴】。言葉は移りて【祝】に転ずる……。『
顔のアーマーを崩壊させながらウェザエモンは落ちてきた桜を右手に納め俯いて私達にそう告げた。
「
「黙ってろ最後までっ」
何やらサンラク君が空気の読めない発言をしているがユウヒ君が小突いて黙らせてくれたので良しとしよう。
「ははっ…」
すると、ウェザエモンは小突かれたサンラク君と呆れた顔をするユウヒ君を見て笑い声を上げた。
「……セツナにも良く言われたものよ」
そして、ユウヒ君とサンラク君に折られた刀を広い上げると顔を上げた。
「「「「!!」」」」
顔を上げると同時に完全に壊れた顔のアーマーが落ちてウェザエモンの素顔が現れた。その顔はとても穏やかで優しい笑顔だった。
「彫りの深い純日本じ「いや、どう見てもラテン系だろ」
「君達、情緒ってものを考えなよ」
また、サンラク君が余計な事を言ったせいで雰囲気が台無しだが、ウェザエモンはそんな私達に微笑むと歩き出した。
「「此奴、まだ「いや、違ぇよ…」
私達への歩いてくるウェザエモンにサンラク君とカッツォ君がそう言い武器と拳を構えるがユウヒ君はその腕を抑えて私達の後ろへと視線を向けた。
「「あ…」」
その視線の先には、セツナのセッちゃんのお墓がある。サンラク君とカッツォ君もそれを見てウェザエモンの意思を理解したのか武器と拳を完全に下ろした。
歩くウェザエモン。私達に近づきその横を通り抜けていく。
しかし
「剣と杖の開拓者よ…其方達の、名は…?」
途中で立ち止まると静かにそう問いかけてきた。
「ユウヒ」
「サンラク」
「そうか……」
自身の問いかけに答えた2人にウェザエモンは息を吐くようにそう言うと再び歩き出した。穏やかで静かな声。とても満足そうな声だった。
そして、セッちゃんのお墓の前に立つと手にした刀を墓標の前に突き刺した。
「重ねて天晴である…。『拓く者』の末裔よ…剣と杖の開拓者よ其方達には一層の感謝を伝えたい…。しかし、この身ではそれも叶わぬ……」
身体がどんどん崩れてきている。もう立つことすら困難な身体でウェザエモンはそう言う。だが、限界を迎えたのかその言葉を言ったそばから彼は膝を着いた。
「我が身…朽ち果て、眠る…。セツナ、今…そこへ逝く……」
その言葉が最後だった。彼は刀を墓前に遺してその身体を散らして行った。
この場に散る桜のように。
「桜が…」
「枯れていってるぞ」
「桜だけじゃない。フィールドも変化してる」
ウェザエモンが散ってそれを見送るように私達がいるフィールドが変化した。すると
「ありがとう…」
「セッちゃん…」
変わらず其処に遺された墓標と刀を前にセッちゃんが刀に手を添えて現れていた
「アーサー…それにオイカッツォ、サンラク、ユウヒ。成し遂げてくれたのね。本当にありがとう」
セッちゃんは私達の顔を順番に見ながらそう言う。
「私の……いいえ、遠き過去に『セツナ』が抱いた願いは、ここに果たされました」
穏やかな表情でそう言うセッちゃんに私は困惑してしまった。だってその言葉はまるで
「引っかかる言い方だな」
「まるで『自分はセツナじゃない』みたいに言うね」
「……」
サンラク君やカッツォ君も私と同じ事を思ったのか疑問の声色でそう言う。2人と違いユウヒ君だけはじっとセッちゃんを見つめているけれど
「セッちゃん?セツナって貴女のことでしょ?」
私はサンラクくんやカッツォ君と同じく思った事を口に出した。彼らよりも動揺し疑問の色を強くした声色だった。
そして
「いいえ、私は『セツナ』であってもあの日死んだ
私は1番言われたくなかった事を言われてしまった。
「どう言う意味だ?」
すると、ユウヒ君がじっとセッちゃんを見つめてそう問いかけた。
「私は『写本』。あの日死んだセツナの願いが生み出した『完全な彼女の分身』であり『残滓』」
「セツナであってセツナじゃない…。だがら『遠き日のセツナ』か」
「えぇ、そう言う事。…私はただの残滓、役割を終えれば消える存在」
ユウヒ君の問に答えたセッちゃんは納得した様子を見せたユウヒ君に頷くとそう言って身体を薄くし始めた。
「待って…!」
「悲しまないでアーサー」
私はそう言って手を伸ばすが、セッちゃんは笑って首を横に振った。
「彼女の願いに『世界が答えた』時点で、何時かはこうなる事は決まっていたの」
セッちゃんは少しずつ身体を薄くしながら微笑んでそう言う。
「貴方達は開拓者、
そして、真剣な眼差しで私達を見つめてそう告げた。
「バハムート?」
「知らないのかカッツォ。大体ドラゴンとして扱われる魚だよ」
「鱗はあっても魚じゃねぇよ。蛇とか蜥蜴の類だろ」
「それくらい知ってるっての、このゲームにおけるバハムートの事だよ!」
「……シャンフロに『バハムート』なんてモンスターはいない筈…」
セッちゃんの言葉にユウヒ君達が何やら馬鹿な事を言っているけど私がそう言うと3人は目を見開いて黙った。
「セッちゃん…それはどういう…」
私も3人と同じ気持ちだがあえてセッちゃんにそう聞いてみた。
「此処から先は自分で見つけ出してちょうだい…だってそれが『未来を切り拓く』ってことでしょう?」
しかし、セッちゃんは微笑んで私にそう返した。
「アーサー…」
そして、さっきよりも静かで穏やかな声で私の名を呼ぶ
「これは『セツナ』としてじゃなく『私』自身が貴女に贈る言葉」
私は目を合わせてセッちゃんの言葉を聞いた。身体がどんどん薄くなっている。その光景から目を逸らしたい思いを押さえ込んで
「いつも『私』に会いに来てくれて"ありがとう"。大好きよアーサー」
「あ……」
彼女の最後の言葉を聞いた。
どうしよう言葉が出てこない。伝えたい事がいっぱいあるのに
「こちらこそ!」
どのくらい時間がかかったのかな。私は悩んで悩んで最後に笑顔でそう言って消えるセッちゃんを見送った。
「良かったな」
セッちゃんが消えて目の前が不鮮明になる。今の顔を見られたくなくて俯く私にユウヒ君が後ろからそう言ってきた。
「何がよ…?」
声をかけてきたユウヒ君に私はぶっきらぼうにそう言い返す。
すると
「ペンシルゴンがこの作戦を実行したお陰でウェザエモンは最後に鎧越しじゃなく自分の目でセツナの墓を見れた。あの人も満足だろ。…それにセツナも写本としてじゃなく自分自身の言葉を遺せた。
セッちゃんみたいな穏やかな声でそう言ってきた。
「くさいこと言うねぇ」
「お前らしくないぞ弟よ!熱でもあるんじゃないのか!?」
「うるせぇな、殴り殺すぞ!大事なことなんだよ!!俺が喧嘩した時とかアメリカから帰ってきた時に母さんも似たような事言ってただろうが!!」
(あぁもう…落ち着かないなぁ)
ユウヒ君の言葉を聞いたサンラク君とカッツォ君がいじったせいでユウヒ君がキレてしまった。雰囲気もへったくれもなくなった状況にため息が出るが、もうはっきりと前が見える。
(ありがとう…ユウヒ君)
言ったら私までいじられるから言わないけど心の中で私はそう呟いた。