「あぁぁぁぁぁぁっ!待て待て待て!!俺あとHP1なんだよ!!ここに来て殺すとか鬼かお前!?」
「俺も此処で死にたくない!サンラクは殺してもいいから俺は助けてくれ!!」
セツナが消え俺達の前にはユニークシナリオEX「此岸より彼岸へ愛を込めて」のクリアを知らせるウィンドウが表示されている。
そのウィンドウを無視して俺達4人だけが残った花園で俺はサンラクとカッツォを追いかけ回していた。理由は勿論、揄われた腹いせだ。
「しょーがねぇな…お前らを殴る機会なんてこの先腐る程あるし今日は見逃してやるか…俺も流石に疲れたしな」
全力で馬鹿2人を追いかけていたがウェザエモン戦の後だ、流石にこれ以上疲れたくない。
「俺達は朝日を拝めるみたいだなカッツォよ…」
「命拾いしたね、サンラク…」
馬鹿2人はそう言って震えているが俺が本気でキレている訳では無いと知った上での行動だと言うのを俺も理解していたのでそれ以上何か言うことはしない。
「はぁ…サンラク君とカッツォ君のせいで雰囲気が台無しだよ。………でも、改めて私の我儘に付き合ってくれてありがとう」
すると、溜息を吐いたペンシルゴンが目礼をして俺達にそう言ってきた。
「何言ってんだ、俺達はやりたいからやったんだよ。ね?」
「だな。最強種と戦いたかっただけだ。ユウヒもそうだろ?」
「あぁ、単純に強いモンスターと戦いたかっただけだ。………まぁ、
俺達はペンシルゴンの言葉にそう返し俺達の応えを聞いた彼女は「そっか…」と言って微笑むと言葉を続けた。
「皆のお陰でシャンフロ初のユニークモンスター討伐に成功しました!!早速、報酬確認と洒落込もうか!!」
「「「いぇーい!!」」」
ペンシルゴンの言葉に俺達はウェザエモン戦の疲れを彼方へ吹っ飛ばしてそう叫んだ。
「いや〜、俺達結構凄い事やったよな。どんな報酬が待っているのか楽しみですなぁ〜」
「流石にショボイのは来ないだろうが…今までの経験的に心配になるな」
「サンラクよりはマシだと思ってたけどユウヒもそのクソゲーフィルター洗い流した方がいいよ」
両手の指をワキワキ動かしながらウィンドウを展開するサンラクに経験値的に心配してしまう俺、そんな俺に呆れ顔をするカッツォと三者三様に表情を変えて報酬を確認しようとした。
その時だった。
『シャングリラ・フロンティアをプレイされている全てのプレイヤーの皆様にお知らせ致します』
大鐘楼の音と共にこのフィールド、いや全世界にアナウンスが響き渡った。
『現時刻を持ちまして、ユニークモンスター【墓守のウェザエモン】の討伐を確認致しました。討伐者プレイヤー名は【ユウヒ】【サンラク】【オイカッツォ】【アーサー・ペンシルゴン】の4名です』
『更に、ユニークモンスターの討伐に伴いワールドストーリー【シャングリラ・フロンティア】が進行しました』
「おいマジか……」
全世界に発信された情報にサンラク、カッツォ、ペンシルゴンの3人は困惑した表情になるが俺は言葉に出して表情を歪ませた。
「なんかあったのかユウヒ?」
俺の表情で何か察したらしいサンラクがそう聞いて来る。
「やばい…俺別で発生させたユニークシナリオの攻略で今みたいにプレイヤー名をゲームで公開されてるんだ。………追われる理由がまた1つ増えちまった!!」
俺はそう言って頭を抱えるがサンラク達は目を点にして無言を貫いた。そして
「「「どんまい」」」
「うるせぇ…!!慰めんじゃねぇよ!!」
声を揃えてそう言ってくる3人に俺は怒りを滲ませてそう返した。
(運営め許さん!!)
心の中でそう呟くがどうしようも無い。しかし、そんな俺にサンラクが肩を叩いてきた。
「んだよ」
「いや、あの鳥の群れ此処に向かってね?」
そう言って空に指を指すサンラクに釣られて俺も空を見る。ペンシルゴンやカッツォも空を見上げその光景を視界に収めた。
「本当だ、近づいてくるね」
「てゆうか、私達って言うより…」
「ユウヒに向かってきてね?」
「メールバードだよな?誰からだ??」
そして、メールバードの大群が飛来するのを前に3人は俺から距離をとるとあっという間に俺は鳥に囲まれてしまった。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁあっ、離れろ!お前らを止められる程の面積はねぇんだよ!!」
何羽いるのかさえ分からない程の鳥の群れに群がられながら叫び声を上げる。暴れる俺に鳥達はボトボトと紙を落として行き飛び去っていった。
「なんなんだよマジで……」
メールバード達を見送りながらしゃがんで大量にあるメールの1つを手に取る。
「誰からだ?」
「原則としてフレンドに登録してないとメールは出来ないからユウヒ君のフレンドじゃない?」
「いくらフレンドでもこれはヤバイでしょ…」
手紙を広げる俺に顔を寄せてサンラク達がそう言うがペンシルゴンのセリフを聞いた時点で俺はあるプレイヤーを頭に浮かべていた。
「やっぱりか…」
そして、規定路性になっていた展開にそう言いつつ溜息が漏れてしまった。
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ユウヒ君へ
夜分遅くに大変申し訳ない。ライブラリのメンバーや妻から連絡を貰いログインしたのだが驚いたよ。
まさか、あの時サードレマで出会ったプレイヤーがシャングリラ・フロンティアで初のユニークモンスターの討伐者になろうとは…。
時間的に非常識ではあるが聞きたいことが山程ある。送ったメールを確認して頂きユウヒ君の都合のいい日に話し合いの場を設けてもらいたい。
君のゲームライフの時間を少しだけ私に割いて欲しいのだ。返信は何時でも構わない。待っているよ。
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「こうなるよなぁ…やっぱし」
手紙を読んで俺は肩を落とした。聞きたい事とやらについての手紙が軽く100通くらいある。それを確認するだけで気が滅入りそうだ。
(はぁ……しょうがないか。一応、確認だけはしとこう)
心の中で溜息を吐き出し落ちた手紙を拾っていく。
「ユウヒ君、君あのライブラリのおじいちゃんと知り合いなの?」
すると、手紙を覗き読みしていたペンシルゴンが驚いた様子でそう尋ねてきた。
「サードレマで会ってフレ登録した。ウェザエモンの事は勿論、俺が発生させたユニークシナリオの事も話してないから安心しろよ」
ペンシルゴンが何を聞きたいかはわかるので取り敢えずそう言うが彼女は顎を手を添えて黙り込んでしまった。
「熱烈なラブコールだな」
「これ全部確認するの?」
「まぁ、一応な…。話をするかは別だが、読むくらいはしねぇと」
手紙の量に呆れた表情をするサンラクとカッツォにそう答えつつ手紙を拾う。
「おじいちゃんの件はまぁ、後回しにするとして、何か変な空気になっちゃったし今日はこれで解散にしようか?」
すると、何か思案していたペンシルゴンが顔を上げ俺たちにそう言ってきた。
「だな、何か共有したい情報が出たらまた集まればいいしな」
「そうだね。流石に眠いや」
「俺も賛成。明日、明後日と道場だから寝たい」
各々、ペンシルゴンの意見に賛成して俺達は花園を歩き出した。帰りは来た道を辿るだけで良く既に1度来ているので迷う事はない。
「そう言えばユウヒ君」
すると、少し後ろを歩いていたペンシルゴンが俺に声をかけてきた。
「何だ?」
「さっきサンラク君とカッツォ君に揄われた時『喧嘩した時』って言ってたけどどんな喧嘩だったの?」
振り返った俺にペンシルゴンはニヤリと笑ってそう言い俺は「どう言う意味だ?」と返した。
「ウェザエモンとの戦いでさ、ユウヒ君、狂気的な笑みを浮かべて挑んで行ったからリアルでも
俺の問いにそう言うペンシルゴンの表情は「答え次第ではずっと揄っちゃうぞ」と書かれていたが
「前にも言ったが喧嘩は1回しかした事ねぇよ」
俺はありのままにそう答えた。
「へぇ、それ本当だったんだ。なんか意外」
「確かに、便秘での暴れっぷりと今日の感じからして絶対もっと喧嘩してるかと思った」
カッツォとペンシルゴンは答えに目を丸くしてそう言うがサンラクは「嘘じゃねぇよ」と言って言葉を続けた。
「そいつ、小3の時に高校生5人と喧嘩してから1回も喧嘩はしてねぇ」
「ちょっと待って」
「高校生5人!?」
サンラクのセリフに2人は驚愕した声を上げる。
「あぁ、病院送りになった」
俺は至って冷静に当時を思い出してそう言いカッツォは「だよね」と呟く。
「高校生がな」
「話おかしくない!?」
しかし、サンラクがそう言うとカッツォは再び驚愕の声を上げた。
「ねぇ、その話し。詳しく聞かせて」
だが、ペンシルゴンだけは何故か真面目な顔でそう言う。その顔で「誤魔化しが効かない」と感じた俺は掻い摘んで当時の事を話した。
「小3の時、母親と喧嘩してプチ家出した事があったんだよ。今思えばくだらねぇ理由だったんだが…まぁ、それで学区外をブラついてたら学ラン着た男子5人が女子に群がっててな。女子は嫌がってんのにしつこく付き纏ってる感じでさ。その時、イラついたのもあって声掛けたんだよ。ムカつく光景だったからな」
「それで喧嘩になったの?」
「あぁ、全員ぶん殴って終わったあたりで警察が来て彼奴らは病院に運ばれてった。まぁ、俺も左腕にヒビ入ってて病院で手当受けたけどな」
「その女の子は?」
昔話は終わりだがカッツォは興味津々といった様子でそう尋ねてきた。
「知らん、喧嘩終わった時には居なくなってたからな。でも、後から聞いた話だとその人のお陰で特に問題にならずに済んだみたいなんだよ」
「へぇ、でもそれから喧嘩してないってなんか意外だね」
「病院で手当受けた後に師匠にガッツリ怒られた上に母親に泣かれたからな。もう二度と喧嘩はしねぇよ」
カッツォのセリフにそう答えて歩いていく。話しが終わりサンラクは「懐かしいな〜」と言いカッツォは「君そういう所はちゃんとしてるんだね」と言っているが「うるせぇ」としか言葉は出ない。
武術を修める者として恥しかない記憶だ。もう二度と誰かに話す事はないだろう。
「どうしたペンシルゴン?早く来いよ」
そして、何故か立ち止まって動かないペンシルゴンにそう声をかける。ペンシルゴンは「ごめん」と笑って駆け足で寄って来たが花園を出るまで終始無言だった。