シャングリラ・フロンティアの世界にゲームマスターアナウンスが鳴り響いた直後、様々な場所で様々なプレヤーが動き出した。
「さっきのアナウンス聞いたか!?」
「聞いた!!ユニークモンスターが討伐されたって!」
「おい!誰かキョージュに連絡しろ!」
「奥さんにも連絡しろ!!
クラン【ライブラリ】の本拠地ではログインしていたメンバーが大慌で動き出し
「『ユウヒ』『サンラク』『オイカッツォ』『アーサー・ペンシルゴン』…やれやれ、まさか我々より先にユニークモンスターを倒すプレイヤーが現れるとは…トップクランも形無しだな」
「阿修羅会のアーサー・ペンシルゴンか…」
「襲撃時に姿が見えないから妙だったけど、ユニークモンスターを討伐とはね」
クラン【
「ヤツめ…ユニークモンスターの討伐の為に情報屋を介して【阿修羅会】を売った…。我々は体よく使われたわけだ」
ゲームマスターアナウンスによって自分達がペンシルゴンの手の上で面白可笑しく転がされていたのだと気が付きサイガ-100は眼光を鋭くする。
「逃げたオルスロット達より厄介でしょうね」
「だな、今日という日に合わせて策を練り俺達を動かした。遠回りでも確実に自分の目的を達成している。計算高いよ」
「それは前々からわかってた事だろ?それよりも俺は他の3人が気になるよ。阿修羅会のメンバーじゃないよな?」
「『オイカッツォ』とか言うのは何者かは不明だが、『ユウヒ』『サンラク』と言うプレヤーは例のリュカオーン絡みの者だ」
メンバーの1人のセリフにそう応えながらサイガ-100はシャンフロ内掲示板を2つ表示する。奇しくも全く同じやり方で数多のプレイヤーに晒されたユウヒとサンラクにサイガ-100は「一体何者なんだ?」と呟く
「どうします?団長」
「方針に変更はない『新大陸』には勿論行くが私を含めて何名かは此方に残す」
掲示板のウィンドウを消し仲間にそう応え彼女はある人物に送る手紙を作成し始めた。
「何してるんですか?」
そんな彼女にメンバーの1人がそう尋ねる。
「クラン【ライブラリ】のリーダー『キョージュ』に手紙を送る。確か以前にユウヒ君とフレンドになったと言っていた」
そして、その答えにメンバーは驚きの表情を見せた。
「えっそうなんですか!?なら、そのプレイヤーからリュカオーンの情報を聞き出してるかも??」
「いや、彼には挨拶程度しか済ませていないと言っていた。リュカオーンについては何も聞いていないらしい」
「いやいや、嘘でしょ?あの情報蒐集欲求の塊みたいな人がそんな…」
「私もそう思ってかなりの額を提示してみたのだが『何も聞いていないから取り引きにならない』と言われた。嘘では無いだろう」
矢継ぎ早に飛んでくるメンバーのセリフにサイガ-100はそう応えると書き終えた手紙を確認しメールバードに持たせた。
「…………それと、彼からリベリオス達の行動についてもそれとなく言われたとも言っていた。まぁ、私が接触した時もそれが原因で一触即発になりかけたんだが…」
飛んで行ったメールバードを見送りサイガ-100はため息混じりにそう言う。メンバーも自分達の副団長が何をしたのかは知っているので同じようにため息をついた。
「全く…やってくれるよ、本当に……」
「「「「全くだ……」」」」
今この場に居ない副団長への不満が漏れ出す。しかし、そうも言っていられない。リュカオーンの討伐を目標としている以上、情報を持っているユウヒとサンラクに接触する事はサイガ-100達にとって重要事項だった。
「ん?サイガ-0はどうした?」
そして、空気を変える為にこれからについて詳しく話をしようとしたサイガ-100は"妹"が居ないことに気がついた。
「あぁ、さっきフレンドがピンチだって言って出ていきましたよ」
サイガ-0の隣に居たメンバーはそう言ってコソコソと出ていった様子を思い出しながらそう答えサイガ-100はその答えに納得して「そうか」お頷いた。
(そう言えば、"気になる"プレイヤーとフレンドになったと言っていたな………応援してやるか)
以前に妹から聞いていた事を思い出し頷いたがその"気になるプレイヤー"の弟がゲームでもリアルでも自分にとって重要な存在になる事を彼女は後々知る事になる。
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「フフフっ、フフフフっ、フフフフフっ!!やってくれたねユウヒ君!!」
「キョージュ、なんか怖いな…」
「今さっきめちゃくちゃハイテンションでログインしてきたのにな…」
クラン【黒狼】で会議が行われている頃、クラン【ライブラリ】ではリーダーのキョージュが一心不乱に手紙を書いていた。いや、書きまくっていた。
その様子と手紙の量にメンバーが引き気味に言葉を交わすが当の本人は全く気がついていない。
「君には……聞きたい事が山のようにあるぞ!!」
そう呟きながら手紙を書き続けるキョージュだったがついに鳴り響いたエラー音で我に返った。
「おや、書きすぎでエラーになってしまったか…」
シャングリラ・フロンティアでは1回の手紙で書き込むことが出来る文字数と1人に送ることが出来る手紙の量に制限がある。そして、短時間でこの制限を超えるとゲームシステム側から迷惑行為として警告を受ける事になる。
キョージュはその制限に近づき過ぎた為、システムからエラーを出したのだ。
「いけないいけない…。このままでは警告を受けてしまう。まぁ、聞きたいことは粗方書くことができた事だし今日はこの辺にしておこう」
本当はもっと聞きたいことがあったがこれ以上は不味いので気持ちをぐっと抑えてウィンドウを閉じた。
その様子を見ていたメンバーは近づいても大丈夫だと判断し自分達のリーダーに話しかけた。
「それにしても驚きましたね。ユニークモンスターが討伐されるなんて……」
「あぁ、しかもそれが完全未確認のユニークモンスターだとは…驚愕だよ」
「それもそうですが、キョージュのフレンドになったと言うプレイヤーが討伐のメンバーに入っている事にも驚きですよね?」
「確かに、そのプレイヤーって確かリュカオーンにも絡んでるプレイヤーですよね?」
「その通りだ。リュカオーンに続き『墓守のウェザエモン』まで……全く、私を驚かせてくれるなユウヒ君は……」
メンバーのセリフに相槌を打ちながらメールバードが飛んで行った方角を見る。
(アレだけの手紙…彼が『迷惑』だと思わなければいいのだが…)
あまりの事態にテンションが上がってしまい今になって後悔している。だが、それでも彼には聞きたいことがあるのだ。
(次に会った時に謝罪しなければな…)
そして、心の中でそう呟きキョージュは立ち上がった。
「よし、ユウヒ君とコンタクトが取れた時の為に交渉材料を用意しよう。彼が『話しても良い』と思えるように此方で集められるモノは片っ端から集めるんだ」
「「「「「はい!!」」」」」
そして、メンバーにそう呼びかける。リーダーの号令にメンバーは一斉に動き出した。
そして、その十数秒後にサイガ-100からのメールが彼に届く。その手紙が後の「同盟」に繋がることを彼はまだ知らない。