戦闘狂が行く理想郷   作:烏鷺

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(いにしえ)の大剣豪が残せしモノ

「それじゃあ聞かせてもらおうかい…あの『死に損ない』はどうだったぁ?」

 

ウェザエモン戦の後のゴタゴタも終えて兎御殿に戻ってきた俺達はミュウラ、エムルちゃんを連れてヴァッシュ師匠と対面していた。

 

「強かったです。今まで戦ったどんな相手よりも」

 

「はい、ルーザーズなんたらよりもはるかに…」

 

「ユウヒざん…良かったです!!」

 

「サンラクさん…心配しましたわ!!」

 

帰ってきてからずっと泣きっぱなしのミュウラとエムルちゃんを隣に座らせてヴァッシュ師匠の問いに俺達はあの激闘を思い出しながらそう答える。そんな俺達の言葉にヴァッシュ師匠は大笑いしそして「そうだろうなぁ…」と感慨にふける様に呟き言葉を続けた。

 

「あの馬鹿は満足して逝けたかい?」

 

深く落ち着いた声、旧知の友を思うが如きその言葉に俺とサンラクは息を飲んで応えた。

 

「「『天晴(あっぱれ)』と褒めていただきました(もらいやした)」」

 

「そうかぁ、そうかぁ…」

 

そして、ヴァッシュ師匠は俺達の応えにそう言うと煙をフッと吐くと俯いて呟いた。

 

「育み…拓く…そろそろかもなぁ……」

 

「「??」」

 

師匠の呟きに俺とサンラクは揃って首を傾げる。だが、師匠はすぐに顔を上げると

 

「おめぇさんら世界の真実を知りてぇかい?」

 

何か意志の籠った目で俺達を見てそう言った。

 

「それは…是非に」

 

「そりゃあ…願ってもないことで」

 

そして、俺達はヴァッシュ師匠を真っ直ぐ見つめてそう答えた。だが、俺達は知らなかった。この応えによって先へ進んだシナリオがこの先の『シャングリラ・フロンティア』を大きく変えていくことを。

 

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「ユウヒさん…心配でしたぁ……!」

 

「サンラクさんも無事でよかった出ずわぁ!」

 

「わかった、わかった!取り敢えず鼻かめエムル!」

 

「帰ってきてからずっとこの調子だな…」

 

ヴァッシュ師匠との話が終わり部屋には俺とサンラク、ミュウラにエムルちゃんが残された。ヴァッシュ師匠が出ていったと同時に二羽は俺達に飛び付いてきた。

 

ウェザエモン戦から帰ってきてからずっと泣きっぱなしの二羽に俺達はため息を吐きながらも頭を撫でる。そして、抱き上げて俺達から離すとそれぞれ預かっていた物を返した。

 

「ミュウラ、エムルちゃん。コレありがとな」

 

「お陰でウェザエモンに勝てたぜ!」

 

「「あ…」」

 

俺はブレスレットをサンラクはネックレスをそれぞれ返す。ミュウラとエムルちゃんは目の前に出された自分達の御守りを受け取るとまた瞳に涙を溜めて飛び付いてきた。

 

「「良がったです(わ)〜!!」」

 

俺達に抱きついて泣く二羽の頭を撫でて俺達はまたため息を吐く。

 

(ゲームの中とは言えどここまで心配してくれるやつがいるのは嬉しい事だな)

 

心の中でそう呟き横を見る。すると、サンラクも似た様な目をしていたので思っている事はだいたい同じだろう。

 

俺達は相棒が泣き止むまで頭を撫で続けミュウラとエムルちゃんは30分以上泣き続けた。

 

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「さてと…エムル達も泣き止んだ事だしウェザエモン戦の戦利品の確認とか色々始めるか」

 

「だな、レベルもスキルも凄い事になってるからな」

 

泣き止んだ相棒をそれぞれ肩に乗せて俺達はウィンドウを開いた。言葉の通り戦果の確認のお時間である。

 

「まずレベルは〜どれどれ…よっしゃ!!レベル64!めっちゃ上がってるじゃねぇか!!」

 

初のユニークモンスターの討伐、それに伴う経験値の蓄積と反映。期待に胸をを膨らませていたサンラクは一気に上がったレベルに大はしゃぎしだした。

 

「ユウヒは!?どうなった!?」

 

ハイテンションで俺の肩を掴むサンラクに俺は「大体同じくらい上がったな」と言ってレベルを見せる。

 

「レベル69!同じじゃねぇだろ!?」

 

「いや、俺は別のユニークの攻略でウェザエモン戦の前に55まで行ってたから上がり幅は同じだ」

 

俺のレベルに叫ぶサンラクに俺は冷静にそう言う。俺の落ち着きようにサンラクは「余裕だな…」と呟くが俺だってテンションは上がっている。何故なら

 

「レベルも凄いがSTポイントを見ろよ、ヤベェぞ」

 

「な、なんだと…105!?」

 

そう、俺達のSTポイントは105も溜まっているのだ。

 

「そうか!致命兎の緑陽輪か!!」

 

「あぁ!首輪と比べると性能で劣るがコレもヤバイよな!3桁だぞ?3桁!!」

 

シャングリラ・フロンティアは分かりやすく言えばスキルゲーだ。どれだけレベルに差があろうともスキルの強弱と使い方で如何様にも戦える(プレイヤースキルが重要なのは言うまでもないが)。だが、ステータスを疎かにしていいという訳では無い。地力が違えば自ずと出せる結果も変わってくる。

 

それを考えるとレベル60代で他のプレイヤーと地力の差を付けることが出来ることは俺達にとって圧倒的に有利な事だった。

 

「どう割り振ろうか迷うなぁ〜」

 

「まぁ、耐久に振らないのは確定してるがな」

 

大量に獲得したSTポイントを前に悩むサンラクに俺は自分達の格好を見てそう言う。サンラクもそうだがウェザエモンの晴天で武人の弓篭手【改二】を破壊された俺も今は半裸状態になっている。

 

「仲間だな!」

 

「うるせぇ!後でちゃんとビィラックに防具の制作依頼するわ!」

 

腹の立つドヤ顔でそう言ってきたサンラクに俺はそう言いながらもウィンドウを操作する。

 

「うわっ…スキルも軒並みレベル上がってるし進化してやがる。新しく習得したスキルの数も馬鹿にならねぇな…」

 

そして、増えたり強くなったり進化したりしているスキルの欄を見て表情を変えた。

 

「俺もだ…スゲェ増えてる。後でエルクのとこ行こ…」

 

俺につられてスキルを確認したサンラクもそう言っておりウェザエモンの戦果が恐ろしい事を再び確認した。

 

「さて次は…『世界の真理書【墓守編】?」

 

「あ〜…ウェザエモンの設定云々が書いてある感じだな」

 

そして、ウィンドウをスクロールして見つけた真理書なる物を取り出し中を確認した。内容はウェザエモンが使ってきた技や誕生の背景等が記されている。

 

(ライブラリの連中に見せたら発狂するんじゃないか?)

 

街中で絡んでくる猫耳やら犬耳やらを付けた連中達と同じ目をしたライブラリのキョージュの事を考えるて俺は身震いする。

 

「どうかしましたか、ユウヒさん?」

 

「いや…何でもない。気にしないでくれ」

 

心配そうな顔をするミュウラにそう返しつつスクロールを続けるが長に。兎に角、長い。

 

「「後でゆっくり読も」」

 

俺とサンラクは揃ってそう言い真理書を閉じると次の戦利品を確認した。

 

「【晴天流戦法ノ書(せいてんりゅうせんほうのしょ)】?」

 

そして、ウィンドウの中に見つけたモノを表示して首を傾げた。

 

「俺のとは少し違うな」

 

そして、サンラクの言葉につられて視線を移すとサンラクと俺と似た様なモノを表示していた。だが、俺は正方形のアイテムに対しサンラクはダイヤのような形をしたアイテムを表示していた。しかも、名前は【晴天流秘奥義書】。

 

「もしかして各々入手した戦利品が違うのか?」

 

「かもな、俺とサンラクはウェザエモンにかかりっきりになってたけどペンシルゴンとカッツォは騏驎と戦ってた。相手が違うから戦利品も違うかもな」

 

サンラクのセリフにそう返しつつ俺は【晴天流戦法ノ書】の内容を確認する。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

【晴天流戦法ノ書】

神代の剣豪とその恋人が生前に残し終ぞ使う事がなかった自らの領域を創り出す法を記した記憶媒体。

 

創り出されり領域は世界を塗り替える。

 

解読し体得するには神代の設備が必要。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「は?」

 

そして、内容を確認した俺は目を点にして間の抜けた声を上げてしまった。

 

「ユウヒさん?どうしましたか?」

 

様子が変わった俺にミュウラが声をかけてくるが今は全く反応してやることが出来ない。

 

(いやいやいやいやいやいや…なんだこの情報。世界を塗り替える?自らの領域?内容がバグレベルだぞ??どうなってんだ??)

 

「ユウヒさん?」

 

(解読には神代の設備が必要とか書いてあるが、とんでもねぇのが来たな!!)

 

「ユウヒさん!!」

 

ユニークモンスターの戦利品の凄さに度肝を抜かれた俺だがミュウラの大声で現実に帰ってきた。

 

「どうしたミュウラ?」

 

「どうしたもこうしたもありません!急にボーとして心配します!」

 

「あぁ、悪い。いやマジで驚かされてさ…てか、サンラクは何してんだ?」

 

「わかりません。ですがエムルお姉様のほっぺが大変です」

 

頬をぷくーと膨らませるミュウラに謝りつつも【晴天流戦法ノ書】を見てニヤけていた俺だが隣でエムルちゃんの顔をぐしゃぐしゃに揉みまくって発狂しているサンラクを見て冷静になる事が出来た。

 

自分よりテンションが高かったり騒がしい奴を見ると逆に落ち着くの法則である。

 

「おーいサンラク?大丈夫か?」

 

そろそろエムルちゃんが辛そうなのでサンラクにそう声をかけるサンラクは「応っ、大丈夫だぜ!」とハイテンションで言うがエムルちゃんの「私は大丈夫じゃないですわ…」と言う声がちゃんと聞こえてしまった。

 

(そろそろ次行くか…)

 

「おい、次確認するぞ」

 

このままではエムルちゃんが持たないので俺は表示していた【晴天流戦法ノ書】を消してウィンドウをスクロールした。

 

「次がラストだな…『格納鍵インベントリア』」

 

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【格納鍵インベントリア】

格納空間への鍵であり扉でもある。神代の時代においても一部の者のみが持っていた特殊なアクセサリー。

 

装着者がPKされた場合でもこのアクセサリー及び格納空間内のアイテムは略奪されない。

 

容量制限:無し。

格納限界:縦横高さ50mまでの非生物。

 

空間拡張術式携帯アクセス装置、肉体情報と同期する事で一体化し装着者の身体の一部となる。

 

魔力を消費する事で格納空間内へと転移可能。

 

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「ようは50m以内のモノならなんでも入るアイテムボックスか…地味なの来たな」

 

「奥義書のインパクトに完全に負けるな」

 

説明を読んだ俺達の素直な感想がコレだった。サンラクの言う通り前の戦利品のインパクトに完全に負けている。

 

だが

 

「まぁ、一応付けてみるか」

 

「だな」

 

俺達の感想は完全に間違いだった。

 

「魔力を消費して移動だったか?」

 

「あぁ、自分が格納空間に入るみたいだな」

 

二人で頷きMPを消費する。足元に出てきた魔法陣の光に目が暗み俺達は目を閉じた。

 

そして、再び俺達が目を開けた時

 

「な、なんだよコレ…」

 

「マジか…」

 

俺達の目の前には巨大なロボが置かれていた。

 

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