狼の集い結成・其ノ壱
ウェザエモンの戦利品確認祭りの翌日、日課を終えてシャンフロにログインした俺は兎御殿からサードレマにある蛇の林檎に来ていた(ミュウラはゲートを出した裏路地で待機である)。
「お、来たな」
「遅いよ全く」
「遅刻だよー」
「悪かったよ…日課を消化してました」
1番最後の到着となった俺にサンラク、カッツォ、ペンシルゴンがそう言ってくる。俺は素直に謝りつつペンシルゴンが引いた椅子に座った。
「日課ってなに?」
椅子に座るやいなやそう聞いてきたペンシルゴンに「ランニングと筋トレ」と答えつつ飲み物を注文する。
店員が持ってくるまで多少の時間が出来た俺達は本題に入ることにした。
「見たかお前ら?あのインベントリアの中のSF的素敵装備の数々を!!」
「見た見た!あんなの装備したらマジでゲーム変わっちゃうよね!!」
そう、俺達が今日蛇の林檎に集まったのは格納鍵インベントリアの中身についての話しをする為である。
では、何故急遽こうなったのか。
それは、俺達が格納鍵インベントリ内に入った時まで遡る。
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「な、なんだよコレ…」
「マジか…」
格納鍵インベントリアに入った俺達は目の前のモノに目を奪われていた。広がる空間は説明文の通りになんでも入りそうな程巨大で嘘偽りのないものだった。
だが
「こんな、SF的な装備が有るとは聞いてねぇぞ!?」
俺達の目の前には説明文には載っていなかった動物型のロボやパワードスーツを初めとする様々は装備が置かれていた。
「ウェザエモンや騏驎を見たあとだからなんか納得出来るけど…こんなSF装備アリか?」
陳列する装備達を見ながら俺はそう言い。サンラクは「うっひょー!」と叫びながら装備達を見て回っている。
「武器も凄いがこの『戦術機』と『特殊強化装甲』は群を抜いてるな…。ゲームバランス崩壊するだろ」
並ぶ装備の全てに『規格外』の枕言葉が付いているがこの2つはセットで使う装備の様だ。明らかに世界観と合わない装備にテンションは上がるが目が覚めてしまった。
「これは早くペンシルゴン達にも知らせてやろうぜ!!」
「はははっ、だな…迂闊には使えねぇわこんなの…」
そして、ハイテンションのサンラクのセリフに頷き俺達はインベントリアから出たのであった。
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そして、サンラクの連絡によって遅れて中を確認したペンシルゴンとカッツォから集まろうとメールをもらい俺達は今こうして蛇の林檎に集まっている。
「それがさぁ、ここに来る前にもう一度インベントリア内に入って戦術機から強化装甲を確認してきたんだけどさ、結論から言うと現状観賞用以上の価値はないね」
「「へ??」」
「マジで?」
そして、装備の事ではしゃいでいたサンラクとカッツォはペンシルゴンのその言葉に間の抜けた声を出した。
かくいう俺もその言葉以外出てこなかった。
「あの戦術機や特殊強化装甲は『規格外エーテルリアクター』っていう動力源が必要みたいなんだけど、そんなアイテム聞いた事もないし何処で手に入るのかもサッパリ。沢山ある武器も強化装甲を装備しないと使えない仕様だったしね」
唖然とする俺達にペンシルゴンはケーキを食べながらそう言い「アレは使い物にならないね」と呟く。
「マジか…じゃあ俺とサンラクは武器も使えねぇって事かよ…あの刀とかは使いたかったんだけどなぁ…」
「浮かれ過ぎてて確認してなかったわ…ショックだぜ」
ペンシルゴンのセリフに俺とサンラクは揃って肩を落としてしまった。正直、戦術機と強化装甲には興味無いが武器の類いは使ってみたかった。
「『規格外エーテルリアクター』なら俺もってるけど」
だが、気落ちするにはまだまだ早かったらしい。
肩を落とした俺達を他所にカッツォはそう言って平然と『規格外エーテルリアクター』を取り出した。
「カッツォ君!?それを何処で!!??」
当たり前のようにリアクターを出したカッツォに流石のペンシルゴンも慌ててそう言う。しかし、カッツォはニヤリと笑い
「俺はウェザエモン戦でほとんど騏驎と戦ってたからなのか報酬で貰ったんだよね」
ドヤ顔でそう言ってきた。
「やるじゃない!緊縛ロデオ君!」
「あの絵面は最高だったな」
「写真はバックアップとってあるから安心しろカッツォ」
「お前ら後で覚悟しとけよ」
しかし、浮かれた俺達がそう言うとドヤ顔を一転させて額に青筋を浮かべてそう言った。
「でも、コレ破損してるみたいなんだよね」
だが、直ぐに表情を戻すとそう言い机にリアクターを置く
「確かにボロボロだな…」
机に置かれたリアクターは破損が激しくとても使える状態には見えなかった。
「治せないの?」
「無理。色々持って行って見てもらったけど『こんな訳の分からないもの治せるか』って言われたよ」
まさにお手上げ状態。鍛冶師のNPCでも治せないならどこに持っていっても結果は変わらないだろう。
「神代のアイテムだからね。
しかし、ペンシルゴンの発言に俺とサンラクは顔を見合わせた。
「「それ修理するアテがあるかも」」
そして、声を揃えてそう言う。
「その話しマジ!?」
「2人ともどういう事??」
俺達のセリフにペンシルゴンとカッツォは驚いた顔をするが俺とサンラクは"特殊な鍛冶師''を知っている。可能性はかなりあるだろう。
「確証は無いけどな」
「可能性は高いと思う。だが、こっちのユニーク絡みだから案内が難しい」
「て事は『規格外エーテルリアクター』は2人に預けないとダメってことか…」
俺達のセリフにカッツォはエーテルリアクターを手に取って悩み始めた。この『規格外エーテルリアクター』はカッツォがウェザエモンの報酬として入手したアイテムだ。だが、使う為には俺達に所有権を渡す必要がある。
カッツォからすれば俺達がこのまま持ち逃げしてしまえば二度と戦術機達を使うことができなくなってしまう。そう言う意味での悩みだろう。
「………わかった。預けるよ」
長い悩みの末にカッツォは俺達を見つめてそう言う。
「良いのカッツォ君?」
「背に腹はかえられないからね」
俺が考えた事は勿論ペンシルゴンも考えていただろう。意外そうな表情をしたペンシルゴンのセリフにカッツォを肩を竦めた。
しかし
「でも、条件がある。……お前達が隠してるユニークシナリオの発生条件を教えてくれ」
俺達を見つめると表情を鋭くしてそう言ってきた。
「カッツォ君それは…」
「どうせ俺はユニーク自発できないですしぃー、他人のユニークに乗っかるしかないわけでぇー」
「めんどくさいこじれ方してるね」
シャンフロでのユニークの情報は特別価値が高い。俺とサンラクが持つ『
そして『致命兎叙事詩』や『世界に刻まれし七つの遺志』は独占しているユニークシナリオになる。価値の高さは言うまでもない
「俺とユウヒ、どっちの情報が良い?」
「話せるのは1つだけだな。リアクターが1つしかないし」
だが、話をしなければ先に進まない。それを理解しているからこそ俺とサンラクはそう提案した。
「良いの?」
俺達のセリフにカッツォが1番驚いているが他人の報酬を預かるなら誠意は見せる必要がある。
「あぁ、出来れば話したくわないんだけどな」
「誠意は見せるべきだろ?」
カッツォはしばらく悩む様子を見せるが顔を上げると
「2人が独占してる方を教えてくれ」
意を決してそう言ってきた。
「わかった。だが、リザルトが出たわけじゃないから確定ではないぞ」
「俺達が話せるのは見つけた共通点だけだ。それは理解してくれ」
そして、俺達がそう言うとカッツォとペンシルゴンは頷いた。
「「それじゃあ説明…始めるぞ」」
2人の頷きに俺達は当日を思い出して話していく。
「俺とサンラクの状況はほぼ同じだ。レベル20以下でランダムエンカしたユニークモンスター『夜襲のリュカオーン』相手に5分間ノーダメかつ『致命武器』で一定回数のクリティカルを当てた」
「職業が前衛職である事とレベルはほぼ確定と見ていいと思う。だが、俺とユウヒだと当てたクリティカルの回数に差があり過ぎて何回当てれば良いかまではわかってない。だが、確実に100回は当てないと無理だ」
「後は、武器も関係してるはずだ。それと、俺とサンラクはリュカオーンに一撃貰ったが即死しなかった。だから、カッツォもバフかけて殴りまくって攻撃食らっても即死しなければ行ける」
「以上、俺とユウヒが見つけた共通点だ」
俺達は説明を終えた。二人で頷き「我ながらちゃんと説明出来た」と思った。
しかし
「『以上』じゃねぇんだよ!曲芸馬鹿共が!!」
「んぎゃあ!?」
俺達の説明を聞いたカッツォは声を荒らげて手に持ったエーテルリアクターをぶん投げてきた。咄嗟の判断で俺はサンラクの首を掴み盾にして身を守った。
「なんで急にキレてんだよ!ぶっ飛ばすぞ!?」
「それは俺のセリフだ…」
「『どうやったら空を飛べますか』と聞いたら『大胸筋を鍛えよう』って答えられた気分だよ!」
「どうせマネ出来ねぇから教えても支障ねぇってか!?」
声を荒らげた俺にも負けない程の声を発したカッツォによってサンラクの声は簡単にかき消された。椅子に座ったカッツォは「持ってけ持ってけ」と投げやりな態度でそう言い、続けて「阿呆らしい」と口にした。
ぶっちゃけカッツォもやろうと思えば出来るだろと思わなくもないが、カッツォの理詰めのプレイスタイルからして何度も挑む必要が出てくるので必然的に無理なのだろう。
顔にエーテルリアクターがめり込んだサンラクが俺に「後で覚えとけよ…」と呟いてきたが俺はそれを受け流し椅子に座り直す。
「あ、そうだ。サンラク君、預けてた例のアレ返して貰える?」
すると、エーテルリアクターをひっぺがすサンラクにペンシルゴンが強請るように手を出してそう言ってきた。俺とカッツォは話が見えず首を傾げるが、サンラクは「あ〜アレね」と呟くとインベントリを操作してある物を取り出した。
「それって…」
「ウェザエモン戦で弄ってた天秤か?」
サンラクからペンシルゴンへ手渡されたアイテムに俺達は見覚えがあった。ペンシルゴンが言った『例のアレ』は対価の天秤でありウェザエモン戦でキーアイテムになった物だった。
「対価の天秤だよ。ウェザエモン戦の為に『黄金の天秤商会』ってNPC組織から借りたヤツなんだ」
「なんでサンラクに預けてたんだ?」
借り物なら借り手が返せばいい。サンラクに預けた意味が分からず俺は首を傾げたがペンシルゴンは「ふふふっ」と笑うと
「サンラク君に預けたおかげで面白い事が出来るんだよ」
得意気にそう言った。