「面白いこと?」
得意気な顔で笑うペンシルゴンに首を傾げる。そんな俺にペンシルゴンは「見ててね」と言うと天秤に手をかざした。
「『天秤は均衡を保つ過去を価値に捧げし対価の返還を』」
ペンシルゴンの詠唱と共に天秤は輝き皿からポリゴンが零れ落ちた。ポリゴンは徐々に集まり2つのアイテムを出現させた。
「真理書と?」
「アクセサリー?」
現れたアイテムは俺とサンラクが兎御殿で確認した『世界の真理書・墓守編』と銀色の花のアクセサリー。詠唱から察するに、ペンシルゴンが天秤に捧げていた対価らしい。
「これが私のウェザエモン戦の報酬だよ。話しを聞いた限り各々報酬が違うみたいだね」
ペンシルゴンはそう言って真理書と花のアクセサリーを手に取ると真理書をインベントリにしまいアクセサリーを頭に付けた。
「天秤に捧げたモノって返還出来るんだな。でも、コレの何処が面白いんだ?」
俺は先のセリフの意味が益々分からずペンシルゴンにそう尋ねる。すると、ペンシルゴンは自分を指さし話し始めた。
「私ってウェザエモン戦の後でサイガ-0ちゃんにキルされたでしょ?その時、PKのペナルティとして罰金が発生したの」
「それは知ってる」
「あの時、カッツォが言ってもんな」
あの時の事を思い出しながら俺とサンラクがそう言いカッツォも頷いている。
「その罰金のシステムが少し厄介でね。発生すると倉庫とかに預けられてた装備なんかが自動で売り払われて罰金の返済に当てられちゃうのね。この差し押さえのシステムからアイテムを守るのが『ロンダリング』なんだ」
「じゃあキルされても自分のインベントリに入れずに誰かに預ければ売り払われないのか」
「だから、サンラクに預けてキルされたって事ね」
「簡単だが、抜け穴デカくねぇか?」
ペンシルゴンの言った事は理解出来た。だが、それだとサンラクの言う通り対策が簡単すぎる。罰金なんてあってないようシステムになってしまう。
「いや、ただ預けただけだとログを辿って接収されちゃうんだ。でも、今回はワケが違う」
しかし、ペンシルゴンは俺達にそう言うと今度は天秤を指さした。
「天秤の所有権は、私じゃなくて『黄金の天秤商会』にあるから私の手元にあっても私のじゃないんだよ」
「ただ預けるだけじゃダメって事か?」
「そう、預けるだけじゃ『所有権の譲渡にはならない』んだ。だから、私がサンラク君に預けてなくても私がPKされた後は売り払われずその場にオブジェクト化されただろうね」
ペンシルゴンの話に俺は「なるほど」と相槌を打った。そして、ペンシルゴンが言う『ロンダリング』の全容も分かった気がした。
「人から人へはちゃんと所有権を移さないと意味は無いが、天秤に『対価として捧げた』場合は捧げた瞬間に所有権が天秤に移るのか…」
「ユウヒ君正解!ペンシルゴンお姉さんがナデナデしてあげよっか〜」
俺の呟きにペンシルゴンは笑って頭を手を伸ばしてくるが俺は「良いから説明続けろ」と一蹴した。
「む〜……………まぁ、いっか。さっきユウヒ君が言ったみたいにこの天秤に捧げた瞬間に捧げたアイテムの所有権は、私から天秤に移る。つまり、ペナルティ適応外になるんだ。返還にも対価は必要になるけど1週間以内なら返してもらえる」
俺とペンシルゴンのセリフでサンラクとカッツォも全てを理解し頷いている。
「ちなみに対価ってどのくらいなんだ?」
「レベル40ダウン」
「「「エグい」」」
軽い気持ちで聞いた返還の対価が予想以上にデカく俺達は声を揃える。
「でも…このアイテムの為なら惜しくはないよ」
だが、頭に付けたアクセサリーを撫でながらそう言うペンシルゴンに俺達は微笑んだのだった。
「ちなみに!コレを借りるのにメイン武器を担保にしてたんだ。だから、ソレも天秤パワーで無事なわけ!」
「レベルもっと持ってかれりゃ良かったのに」
「それ」
「なーにが『スパッと罪を清算する』だよ」
だか、次のペンシルゴンのセリフのせいで俺達の表情は曇りに曇った。
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ペンシルゴンのロンダリング講座が終わり俺達は束の間の休息として注文したドリンクやらケーキやらを食べながら駄べりつつ時間を潰していた。
「そう言えば、君達ってこの後予定とかあるの?」
すると、ペンシルゴンが唐突にそう言い俺達は揃って顔を見合わせた。
「俺は預かった規格外エーテルリアクターを修理してくれそうなアテを当たるよ。時間あるし」
「俺は先の街に進みたいかな〜。ウェザエモン戦でレベル爆上がりしたし」
サンラクとカッツォは各々の予定を話し残すは俺のみとなった。
「ユウヒ君は?」
ペンシルゴンのセリフと共にサンラクやカッツォも俺を見る。急な視線の集中に変な気分になるが気にせずに答えた。
「俺は今日中にユニーク関連を進めたいかな。明日からリアルで忙しいし」
「そうなのか?」
「師匠の予定と一緒にアメリカ行く予定がある。後の2日はテニス部とサッカー部の助っ人がある」
「じゃあ、約1週間ログインしないの?」
「まぁ、練習試合の後に翌日に影響無い範囲でログインならするかもだけど道場泊まる3日間は無理だな」
「大変なんだね…今の学生って」
「「お前と対して歳変わらねぇだろ」」
サンラク、ペンシルゴンのセリフに応えて最後にカッツォのセリフにサンラクと声を揃え応える。対して所か2つしか違わないくせに「1つは世代違います」とでも言いたげなカッツォにはこう答えても問題ないだろう。
「そっか…なら、今日の方が良いか…」
すると、俺の予定を聞いたペンシルゴンは小さくそう呟くと俺達の顔を見回し
「ここにいる4人でクランを組まない?」
唐突にそう言ってきた。
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「「「「最初はグー…」」」」
「「「「じゃんけん」」」」
「「「「ポンっ!!」」」」
蛇の林檎の店内に俺達の声が響く。掛け声と共に出された手はグー2人のチョキとパーが1人で相子になった(ちなみにパーが俺)。
「「「「相子でぇ…」」」」
「「「「しょ!!」」」」
そして、再び手が出される。何故、俺達はこんな事をしているのか、それは
「「「あぁー!!」」」
「俺の一抜けだ。
そう、クランリーダーを決めるためだ。
「嘘だろ!じゃんけんでも強いのかよ!?」
「本当になんなのお前!?」
「後で必勝法明かししてやるからさっさと決めろ敗者共」
チョキ3人に対しグーを出して一抜けした俺にサンラクとカッツォがチョキを出した右手を天に突き上げて叫んでくるが俺は柳に風と受け流す。
「「取り消せよ…その言葉!!」」
「後でオシオキ決定ね〜♪」
まるで恩人を侮辱されたかのような表情を浮かべるサンラクとカッツォに弾ける笑顔を浮かべるペンシルゴン、表情の差が笑えるが「さっさと決めろ」と続きを促す。
そして
「「「最初はグー」」」
「「「じゃんけん」」」
「「「ぽぉん!!」」」
「あぁー!!」
「「はぁい!!クランリーダーはペンシルゴンに決定!!」」
サンラクとカッツォに負けたペンシルゴンは叫び声を上げて拳を天に掲げた。
「だから言ったんだよ」
その様子を見ていた俺はペンシルゴンにそう呟く。実は、クランリーダーを決める方法としてじゃんけんが決まった時「本当にこの方法で良いのか?」とペンシルゴンに尋ねてはいたのだ。
「いーのいーの!この方が早いから!」
だが、本人がこう言った上にサンラクとカッツォも「コレで良い」と言うのでじゃんけんを行ったのだ。
「そもそも反射神経で俺達に勝てるわけないだろ」
拳を握るペンシルゴンにドリンクを飲みながらそう言い。俺のセリフにハッとした様子でペンシルゴンは「そうだった…」と呟いた。
やる前から分かっていた結果に俺はため息を吐く。すると、サンラクとカッツォが俺の前に立った。
「どうした?」
唐突な行動に俺はそう言うがサンラクとカッツォは俺の肩を掴むと
「「さっさと教えろよ…必勝法!!」」
ドスの効いた声でそう言ってきた。
「まぁ、理屈は簡単だ。じゃんけんの最初はグーだから振り下ろされる瞬間をよく見てグーから指が何本開き始めてるかで相手の手を読むんだよ。三本開き始めてたらパーだし二本ならチョキだ。コレが必勝法」
サンラクとカッツォにそう応えて俺は残ったドリンクを飲み干す。すると
「「出来るわけねぇだろ!!」」
叫びと共に2つの拳が飛んできた。本気の打撃ではないので椅子に座ったままそれ掴みペンシルゴンに問う
「クランの名前どうする?」
するとペンシルゴンは悩み始め
「ペンシルゴンちゃんと便利なパシリ達」
「「「採用」」」
俺達のクラン名は比較的アッサリと決定した。