戦闘狂が行く理想郷   作:烏鷺

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七つの遺志を求めて・其ノ壱

「よしっ、出かけるぞミュウラ」

 

サードレマで俺達を探していたというプレイヤーを撒いた後、兎御殿の自室で手持ちのアイテム等を確認した俺はそう言ってベットから立ち上がった。

 

「お出かけ?何処に行くのですか?」

 

「わからん」

 

肩に飛び乗ってきたミュウラのセリフにそう答えつつ部屋を出る。

 

「わからないのに行くんですか?」

 

「あぁ、ゲットしたは良いがどう使うのか俺にも解らないからな」

 

兎御殿を歩きながらインベントリを操作し俺は古故解放の金装鍵を取り出した。

 

「ヴァッシュ師匠なら何か知ってるかもだが…多分、サンラクが会いに行ってるだろうしな」

 

掌に収まる豪華な装飾が施された鍵を弄びながら歩く。

 

「お父様なら今日は兎御殿を留守にしてますよ」

 

「そうなのか?」

 

「はい、サンラクさんやユウヒさんと話された日から見てないですね」

 

ミュウラのセリフに「そうか…」と呟き俺は師匠から頼まれていたお使いがあった事を思い出した。

 

「そう言えば受信装置Δ、送信装置Δ、座標装置Δを回収する様に言われてたな…。結局、二人で集められる時に集めるって話になってから何もしてないが…」

 

師匠曰く、世界の真実を知る為に必要なアイテムらしく「順序がある」そうだ。既にヒントは出されておりサードレマの更に先にある無果落耀の古城骸と言う場所にあるらしい。

 

(俺もサンラクもマップが貧弱過ぎて正確な場所が分からなかったんだよな…ミュウラならワンチャンあるかも知れないが…悩むな)

 

俺の知らない魔法の数々を見せてくれたミュウラなら無果落耀の古城骸まで行ける可能性があるかも知れないが、開拓者として世界を歩いているプレイヤーがこんなんで良いのだろうか、という思いもある。

 

それに、ヴァッシュ師匠との話によって致命兎叙事詩を進行したようだが「世界に刻まれるは七つの遺志」は進行すらしていない。

 

現状、俺が独占しているユニークシナリオEXなだけに誰かを頼る事はなるべくしたくない。

 

「…………………ミュウラ、サードレマへのゲート頼む」

 

「はい」

 

悩んだ末に当初の予定通り「世界に刻まれるは七つの遺志」を進める為に俺はサードレマへと出た。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「やっぱ屋根伝いに進むのが一番バレにくいな」

 

「ユウヒさん、コソコソ移動するのが上手くなってますね」

 

サードレマの外へ出た俺はミュウラとそんな話しをしながら千紫万紅の樹海窟へと向かっていた。

 

「あれだけ追い掛け回されたらそりゃ上手くもなるわ」

 

「何時も何時も大変です」

 

屋根伝いに外に出た為、人化はしていないが俺を追いかける連中を見たことがある為ミュウラは疲れた様な表情を見せた。

 

「頭装備ができないデメリットがここで効いてくるとはな…」

 

顔にリュカオーンの呪いを受けている為ピーツが売っている全身が隠せる頭装備も付けることが出来ない。その事を恨めしく思いながらも俺達は先へと進む。

 

「にしても、コイツはどうやったら使えるんだ?」

 

歩きながら古故解放の金装鍵を弄る。ユニークシナリオの進行と攻略に必ず必要になるアイテムだと言う事は解るが、使い方が解らない。

 

と言うよりも「シャングリラ・フロンティア」でのシナリオフラグの発生、その法則が誰にも解明されていない以上「きっかけ」を自分で起こすしかない。

 

「特殊状態も含めて持ち歩けば何か起こるのかもな…」

 

ユニークシナリオEXの受注に伴って付与された「遺志の焔」と合わせてきっかけを掴む為に持ち歩く。安直だが、フラグを立てる為に出来ることはやって起きたい。

 

「相変わらずキラキラしてて眩しいですね」

 

「あぁ、名前の通り金の鍵だからな。光の反射が凄いよな」

 

鍵が反射する光に目を細めるてそう言うミュウラに色んな方向から光を当てながらそう応えた。

 

集めたアイテムから作られた鍵だが、見た目は金1色の鍵だ。閃光やら死相やら色々な文言が着いたアイテム達が素材になっているのにその雰囲気が全く感じられない。

 

(少し勿体ないよな…)

 

神泉の泉を初めとするアイテム達の輝きを知っているからこそ、そう思ってしまう。

 

「造り手なら素材になったアイテム達の事もわかるのかな…?」

 

アキハとコノハは「素材の声」なる物を聴いていた。なら、既に消費された素材の声も聞こえるのではないか、そう思いながら独り言ちる。

 

「ユウヒさん?」

 

そんな俺にミュウラが首を傾げるが俺は「何でもねぇ」と言って千紫万紅の樹海窟へと走り出した。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「此方だ此方だ!」

 

「沢山来てますよユウヒさん!」

 

千紫万紅の樹海窟へと入った俺達はあるモンスターに追われていた。

 

「ゴールデン・エンパイア・ビーキング"候補"共…この時点で今の俺よりレベルが上だとはな!」

 

俺とミュウラがいるのは『閃光結晶の花弁』を採った場所。此処に来たのは「素材になったアイテム達があった場所を巡れば何か起きるかも」と言う思いつきからだった。そして、俺を追うモンスターは『エンパイア・ビーキング・フェイカー』。以前俺が倒した『ゴールデン・エンパイア・ビーキング』の幼体達だ。

 

幼体と言えど既にしっかりと蜂の容貌をしたそいつらが20匹。集団で俺達を追い回している。

 

(金色の体色がまだないことから見て何かのきっかけで身体が金色になるんだろうな)

 

名前にまだ『ゴールデン』が入っていない事から解るがその体色に金はなく黒1色だ。それに、針も1本しか生えてない。

 

だが、速い。

 

俺に突っ込んで来た2匹を避けつつ追撃してきた1匹にカウンターを決める。

 

「ギュアァァッ」

 

自分の勢いも利用されたカウンターに悶えるフェイカーを無視して躱した事で接近している2匹を戦甲角杖で殴る。

 

「また来ます!」

 

ミュウラの声に合わせてその場から離れ攻撃を避ける。しかし、数が多い。避けても避けても追撃が来る。

 

しかも

 

「統率が取れてるようで全然取れてねぇ。全員がバラバラに動いてる。殺りにくいぜ」

 

狼の狩りの様にシステムがしっかりしているように見えて全然ダメだ。必要最低限の連携しか取ってこない。それが逆にやりづらさを生み出している。

 

(利用するにはまず1匹釣らないとな…)

 

バラバラに動く奴等をどう倒すか、算段を立てつつ攻撃を躱す。

 

そして

 

「ユウヒさん!?」

 

俺は戦甲角杖をインベントリにしまうと斜め上を飛び回るフェイカー共に両手を広げて直立した。

 

「何をしてるんですか!?早く武器を出してください!!」

 

ミュウラが俺の髪を引っ張ってそう言うが俺は両手を広げたまま動かない。そして、そんな俺に狙いを定めて3匹のフェイカー共が同じ場所に突っ込んで来た。

 

「馬鹿が!」

 

俺はタイミングを合わせてジャンプする。すると、フェイカー達はぶつかり合って体勢を崩し地面に激突した。

 

「させるか」

 

地面に激突した3匹中2匹が急いで飛ぼうとするが俺は2匹の針を掴んでスキルを発動する。

 

「瞬誅打破!」

 

回避からの掴み攻撃の際にダメージが増加するスキルを使い2匹を地面に叩き付ける。そして、弱る2匹から手を離し戦甲角杖を装備すると復帰が遅れた3匹目の顔に突きを放った。

 

戦甲角杖の先端は簡単にフェイカーの頭を貫きポリゴン塊となって消滅させる。続けて2匹も刺突攻撃で倒した。

 

「はっ、3匹殺されて微動だにしないか」

 

そして、宙を飛ぶフェイカー共にそう呟き構える。

 

「ビックリしました…」

 

「悪かったよ」

 

肩に乗っているミュウラは目を見開いてそう言うが俺はフェイカー共から目を離さず言葉だけで返す。待っても攻撃を仕掛けてこない蜂達に「自分勝手な…」と呟くが構えは解けない。

 

すると

 

「ユウヒさん。私の魔法を使ってみませんか?」

 

ミュウラが俺の顔を除き込んでそう言ってきた。

 

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