戦闘狂が行く理想郷   作:烏鷺

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七つの遺志を集めて・其ノ肆

「ミュウラ、俺から離れてろ!」

 

「はいっ」

 

斬撃を躱した俺は運営への文句を程々にミュウラにそう命じた。

 

『足手まといを下がらせたか…良いぞ、貴様』

 

「クハっ、足手まといなんかじゃねぇよ。解ってねぇな、お前」

 

俺から離れたミュウラを見て見当違いな事を言う男に俺は笑ってそう言い戦甲角杖を構える。

 

「俺が一人で殺りたい(戦いたい)だけだ!」

 

『なるほど!!』

 

そして、言葉を放つのと同時に俺は飛び出した。スキル「詠唱破棄」で最大バフの纏雷を纏い一気に距離を詰めて行く。

 

『ユウヒよ!まだ、儂の名を名乗っていなかったな!儂の名は大道リュウホウ!!()()()剣鬼である!!』

 

大道は距離を詰める俺に自身の名を名乗り刀を正眼で構える。そして、俺は杖の間合いに入った瞬間に大道に攻撃を仕掛けた。

 

だが

 

「ぐっ!!」

 

戦甲角杖を振るう間も無く俺は斬られた。

 

『ぬるい』

 

最初に左手を斬られた時と同じ気が付けば斬られていた。そして、ダメージはない。

 

(鋒が下段に…いつ振った?)

 

斬られてよろける身体を立て直し下げられた鋒を見る。振り上げから振り下ろしまで一切見えなかった。

 

だが、知ったことでは無い。

 

(攻める!!)

 

『向かって来るか…大した度胸だ。ウェザエモン・天津気(あまつき)を思い出す!!』

 

(何、ウェザエモンだとっ!?)

 

攻撃を仕掛ける俺に放った大道のセリフに俺は一瞬だけ動揺した。しかし、それは一瞬、俺は意識を切り替えて大道の首へ向けて杖を振るった。

 

『良い狙いだ!』

 

攻撃は大道の刀で弾かれた。しかし、弾かれた時の返し技はある。杖の持ち手を変え身体を動かし間合いを変えて再び仕掛ける。

 

(此奴、また!)

 

しかし、杖はいつの間にか間に入ってきた刀で防がれたてしまった。

 

(何なんだ此奴の技…いくら何でも速やぎるだろ。ウェザエモンよりも速いぞ)

 

タネが解らない大道の技に少し距離を取る。すると、大道は鞘に刀を納めると居合の構えを取った。

 

(居合か…あの速さのタネが解らない内に飛び出すのは得策じゃねぇな)

 

俺は杖を構えて大道の動きを見る。

 

しかし

 

『簡易領域』

 

大道が小さくそう呟いた瞬間、大道を中心に巨大な円が作られた。そして、その円が俺に触れ中に入れられた瞬間だった。

 

「…………は?」

 

俺は目の前に現れた大道に身体を5回斬られ吹っ飛ばされていた。

 

『ぬるい』

 

大道のセリフが聴こえた時には壁にぶつかっていた。ダメージは無いが斬られた感覚はハッキリとあった。

 

(何が起きた…?何時移動した?抜刀術の速度じゃない!!)

 

混乱する頭で大道を見る。

 

『ふっははは!まだまだ未熟だなユウヒよ!武器を使い戦う者でありながら()()()()()()()()()()!!(オレ)の使った技が理解できずに混乱しているのが良い証拠よ…。憐れだな。それほどの武器を持ちながらそのそれを()()()()()()()()()()

 

「どう言う意味だ…?」

 

思考がぐちゃぐちゃになっている頭を整えながら俺は大道にそう聞き返した。しかし、大道はそんな俺を鼻で笑った。

 

『簡単な事よ…。武器にも意思が宿っている。そしてその意思は使い手に応え幾らでも力を貸してくれる。(オレ)がそうであるようにな。(オレ)はウェザエモンの様に特殊な力は何一つ使えん。だが、武器の力を最大限引き出せば(ウェザエモン)よりも強い。……それは貴様も同じなのではないか?』

 

「………………………」

 

大道の言葉に俺は何も言い返すことが出来なかった。

 

「ユウヒさん!!」

 

そんな俺にミュウラが駆け寄ってくる。声は聞こえていても俺は大道から目が離せなかった。

 

「ミュウラ…危なから離れてろ。レベル99のお前でも一瞬で斬られるぞ」

 

俺はミュウラの頭を撫でて立ち上がる。しかし、ミュウラはそんな俺の足にしがみついてきた。

 

「ミュウラ?」

 

「ダメです。逃げましょう!」

 

「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………あぁ?」

 

俺はミュウラのセリフに耳を疑った。

 

「何言ってるんだ、ミュウラ?」

 

「逃げましょう!今のユウヒさんでは勝てません!!」

 

だが、再びミュウラにそう言われた俺は

 

「離れてろ」

 

ただ一言、ミュウラに告げた。

 

『そうだ、離れていろ小娘。儂はユウヒと斬り合いたいのだ。儂に向かってくる気概があったのはウェザエモン・天津気を除いてその男だけだ。……その男なら儂に【答え】をくれるかもしれん。邪魔をするな』

 

そして、大道も俺の足にしがみつくミュウラにそう言う。しかし、ミュウラは首を横に振った。

 

俺は何故、そこまでして頑なになるのか全く解らなかった。

 

「ミュウラ」

 

「ダメです!」

 

俺はミュウラを下がらせる為に声をかけるがミュウラは譲らない。

 

「あの人の技は速すぎます。私が手を叩くよりも速くユウヒさんを斬っていました!ユウヒさんも全く攻撃に反応出来てなかったでは無いですか!!今のユウヒさんでは勝てません!!」

 

そして、俺はミュウラにそう言われてしまった。

 

「クソっ……」

 

俺はミュウラにそう言わせてしまった事に声を漏らした。

 

『くっ………ワッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!大切にされているではないかユウヒよ!……懐かしいものだ。かつて、その小娘と同じ事を言った女がいた。儂は、その小娘の想い人よりも強き剣豪であったが最後には何故かその男に敗れた。儂を倒した男の名は【ウェザエモン・天津気】!儂の願いは負けた理由を知る事!奴は儂に言ったのだ…「この想いがあるから負けぬのだ」と、儂はそれが知りたい!!それが儂の願いだ!!ユウヒよ、強くなりまた此処に来い。儂は待っているぞ!!』

 

ミュウラのセリフに大笑いした大道は俺にそう言うと刀を地面に突き刺した。

 

すると、大道の姿は消えてなくなり俺達は光に包まれた。目を突き刺す光が収まり再び俺が目を開けると俺達は鉄の扉の前に戻ってきていた。

 

「ミュウラ………」

 

「はい……」

 

呆然とする俺の言葉にミュウラは震えた声で応える。

 

「ごめんな」

 

「はい……」

 

俺はミュウラの頭を撫でつつそう言った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

七つの遺志

残された遺志は6つ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そして、俺の目の前にウィンドウが現れ俺はそれを直ぐに消した。

 

(まさか、リュカオーンに続き大道にまで気を使われるとは…)

 

見逃された。それと同時に期待された。そして、それはミュウラにも言えることだった。ミュウラは「今の俺では勝てない」と言った。それはつまり、ミュウラは俺が最後には勝つと思っていくれているんだ。

 

「ミュウラ…」

 

俺は気持ちを抑えてミュウラに声をかけた。

 

「はいっ」

 

涙目になっているミュウラの頭を更に撫でて言う。

 

「彼奴は絶対に倒す。だから、俺が強くなって倒す時に見ていてくれ。お前が信じる俺の強さを彼奴の欲している答えと一緒に叩きつける。その瞬間を」

 

「勿論です!私はユウヒさんの相棒ですから!!」

 

そして、ミュウラは俺のセリフにそう応えて飛びついてきた。

 

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俺達はあの後、千紫万紅の樹海窟を抜けてフォスフォシエへと辿り着いた。辿り着くや否や猫耳やら犬耳やらを着けたプレイヤーと派手な鎧を装備したプレイヤー達に追いかけられたが、相手にせずに裏路地まで逃げて兎御殿に戻ってきた。

 

サンラク達と分かれて大道と戦って、時間を使っていたらしく既に日が落ち始めている。普段なら更にやり込むところだが気分的にも予定的にも続けられなかった。

 

「はぁ〜」

 

「大丈夫ですか、ユウヒさん?」

 

精神的な疲れを吐き出してベットに倒れ込んだ俺に顔を覗き込んでミュウラがそう行ってくる。

 

「ミュウラ…近い」

 

近すぎて視点が合わない。ミュウラはそう言った俺に「わかりました」と応えて離れた。

 

俺と同じくミュウラも疲れているように見える。そんな、ミュウラに俺は声をかけて話す。

 

「ミュウラ、俺は明日から少し鍛えてくる。戻って来るのは少し先になる。だから、お前は戻って来るまで暇しててくれ」

 

「鍛えるのですか?」

 

「あぁ、大道やリュカオーンに勝つには今のままじゃダメだ!だから、鍛えてくる。次に会う時には必ず強くなって戻って来る。……待っててくれるか?」

 

ミュウラはNPCだが、俺の事をよく解っていると思う。エムルちゃんもそうだが相棒関係になっている俺やサンラクととても相性が良い。

 

(本当にどんなAI積んでんだか…)

 

ミュウラの元気がないのは"俺の戦いを止めた"からだろう。

 

それをさせてしまったのは俺の不甲斐なさでありそれをそのままにしておく気はサラサラない。だからこそ俺はミュウラにそう言った。

 

「必ず戻ってきて下さいね!」

 

そして、ミュウラは俺の手を握ってそう言ってくれた。俺はミュウラのセリフに頷いてシャングリラ・フロンティアからログアウトした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウェザエモンを倒し強くなった。だが、それよりも更に強い相手が現れた。俺は悔しさと更なる楽しみを抱えてVRベッドギアを外した。

 

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