「師匠、もうすぐ着くよ」
シャングリラ・フロンティアのVR世界から離れて2日目。俺は師匠である獅子宮巫堂と共にアメリカに来ていた。
「あぁ、もうそんな時間か…」
「しっかりして。今日はFBIの捜査官達への指導の日です。みんな師匠に会えるのを楽しにしてるんですから」
アプリでチャーターしたタクシーでワシントンにあるFBI本部ビルに向かいながら隣で眠っていた師匠を起こす。
時差ボケを治すために初日は二人で組手をしまくって睡眠も良く取ったが師匠は移動中爆睡していた。
「昨日はLAでSWATの隊員に指導し今日はFBIか…そして、冬はCIAの隊員への指導。大統領は余程、俺を痛めつけたいと見えるな」
「実際に痛めつけられるのは隊員達でしょ。師匠に勝てる人は今のところ居ませんよ」
目ぼけ眼を擦る師匠にそう返して窓の外を見る。既に視界にはFBI本部ビルが見えてきており外にスーツを着た捜査官達が待機していた。
「師匠、しっかりして下さい」
「わかってる」
声が寝ぼけている師匠の膝を叩きそう言い完全に目を覚まさせる。ビルの入口に到着すると俺達は捜査官達に出迎えられた。
「Hello、hudou!Welcome to America!!待っていたよ!!」
「ハハハッ!日本語が上手くなったなマックス!俺も会いたかったぞ!!」
師匠は先頭に出てきた局長のマックスと握手を交わし何やら話している。
(局長さん本当に日本語が上手くなったな〜)
俺は師匠の話すマックス局長を見ながら師匠と自分の荷物を降ろしドライバーにありがとうと伝えた。
「ユウジも待っていたよ!今日はよろしく頼むぞ!」
すると、マックス局長がわざわざ俺にも右手を出して挨拶をしてくれた。
「お久しぶりです、マックス局長。こちらこそよろしくお願いします」
「ハハハッ!相変わらず堅いなユウジ!私の事はマックスおじさんで良いと言っているだろ!!」
マックス局長は俺の肩をバシバシと叩きながらそう言うが流石にFBIの局長にそんな言葉使いは出来ない。
「君には恩がある。フドウ共々アメリカを第二の故郷と思って欲しいのだ…」
マックス局長はそんな俺に暖かい目でそう言ってくれる。俺はマックス局長に「気にしないで下さい」と応えて局長と一緒にビルへと入った。
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「マックスは相変わらずだったな遊仁」
「うん、何年も前の事なんだからもう気にしなくて良いと思うけど…」
ビルへと入った師匠と俺は更衣室で話しながら支度をしていた。
「阿呆め、自分の息子が同い年の子供に助けられたんだぞ。感謝してもし足りんよ、それが親と言う生き物だ」
「最後にはマックス局長やヒースが俺とダニーを助けてくれたんだ。感謝するのは俺じゃねぇかな」
「全くお前という奴は…」
着替えながらため息を吐く師匠に「なんだよ」と言うが師匠は「お前も親に成れば解る」と言って髪を整えに行ってしまった。
「なんだよ…」
残された俺は髪を結んでそう呟き更衣室からビル内にある道場へ向かう。
「置いていくな馬鹿弟子が」
少し歩くと後ろから師匠がそう言って追いついてきた。
「ビッシリ決まってる」
「だろ」
オールバックにワックスで固められた髪にそう言いドヤ顔を決める師匠に笑う。師匠はそんな俺に「生意気な」と言って貫手を放ってくるが俺は躱して「早く行こう」と声をかけた。
更衣室から道場までは距離が離れており階が一つ違う。師匠と俺は階段を登って道場の前に着くと俺が扉を開けて師匠を中へ入れた。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「押忍っ」」」」」」」」」」」」」」」」」」
中へ入ると20人程の捜査官達が道着を着て待っていた。彼等に師匠と俺も「押忍」と応えて並ぶ彼等の前へと足を進める。
彼等の前へ着くと何時ものように師匠と俺は会釈をした。捜査官達も俺達に会釈で返してくる。
「座れ」
師匠の号令と共に全員が座る。
「ゼンイン、センセイ二レイ!!」
すると、前列の中心に座ったヒースがそう言い師匠と俺に礼をした。
「皆、久しぶりだ。今日は1日、よろしく頼む!」
そして、師匠が捜査官達にそう言うと訓練が始まった。
訓練は丸1日行う。準備運動から始まり型の復習。そして、組手だ。師匠と俺は全体を見ながらアドバイスをして回る。
中学2年までは俺も教えられる側として参加していたけど3年に上がってからは教える側になった。最初は子供に教えられるのは不満に思う人が出るのではないかと思ったが、何故かそんな人は出なかった。
「レイモンド、その時は左手を逆さに返して相手の手を払うんだ。そうすれば反撃されない」
「Thank you!ユウジ!」
犯人と揉み合いになった際の対処法を教える為に師匠はアメリカに呼ばれている。俺はその補助だ。教えられる事はどんどん教えなくてはならない。
礼を言ってきた捜査官に応えて続きを始めさせる。偶に俺も混ざりながら組手を見ていく。
これを繰り返し色んな人達に行っていき。あっという間に時間はすぎた。
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「「「「ユウジ!」」」」
「ヒース!それにアレクにジェリー、クリス!」
昼の休憩の時間になり道場から出ていこうとする俺に知り合いの捜査官達が声をかけてきた。
彼等は以前に俺が局長の息子達と巻き込まれた事件の際に助けてくれた捜査官達だ(ちなみにその時に小さな銃撃もありその事件の後、帰国してから遊仁は永華や仙次の提案でドックタグを着けるようにしている)。
「久しぶりだな!少し背が大きくなったんじゃないか?」
「2cm伸びた」
「成長期だな〜羨ましいぜ」
「俺も身長が欲しいぜ」
「アンタはもう伸びないもんね」
「なんだとクリス!」
頭を撫でてきたヒースにそう言いながらアレク、ジェリー、クリスと食堂まで歩く。
アレクは年齢36歳の捜査官で子供が一人いる。射撃の名手だ。アレクは元海軍所属の捜査官で、情報分析に長けている。ジェリーは「身長が欲しい」と言っているが既に195cmの巨体の捜査官でプロにもスカウトされたバスケプレイヤー。クリスは女性の捜査官で、性別のハンデをものともしない格闘技のセンスと捜査力を持っている。
全員が俺よりも歳上だが友達の様に接してくれる。みんなとバスケの試合を見に行ったりした事もある。師匠の訓練を受ける捜査官の中で特に中の良い4人だ。
「昨日はLAだったんだろ、SWATはどうだった?」
「みんな強かったよ。流石、常に鍛えてるだけはある。それに事件が起こった瞬間の切り替えはみんなにも劣らないよ」
食堂へ向かいながら俺はアレクのセリフにそう応える。
「なんだと〜俺たちだって凄いんだぜ?」
「解ってるよ、みんなはスーパーヒーローだろ?」
「わかってるじゃねぇか」
「言わせるのは止めなよアレク。ユウジにアンタの強引な性格が移ったら大変」
SWAT隊員達へのセリフにアレクは首に腕を回してくるが遊びの範疇だ。全く絞まっていない。タップしてそう言う俺にアレクは頭を撫でてくるがクリスがそう言うと「どう言う意味だ」と言って離れた。
「何時までこっちにいるんだ?」
「明日の昼の便で帰る予定だよ」
すると、ジェリーが俺にそう言って来たので俺は「14時のフライト」と言って返した。
「そうか、なら事件が起きなきゃバスケしようぜ!1on1だ!」
「良いねぇ!今日は勝つよ〜前回は負けたからね」
「良いぜ、掛かってこい!また負かしてやる!」
ジェリーとはよくコートで1on1をしている。前回は俺が負けて6勝8敗だ。シュートモーションをしてそう言うジェリーに闘志を燃やしす。
「なら、私はユウジが勝つ方に賭ける。ビール1本でどうよ?」
すると、アレクと巫山戯て遊んでいたクリスが俺の肩に手を載せてそう言ってきた。
「おいおい、そこは俺に賭けてくれよ」
ジェリーはクリスにそう言うが
「ユウジは私の弟みたいなもんさ。弟を応援するのは当然でしょ」
当の本人は後ろから俺の身体に腕を回してそう言う。
「クリスが応援してくれるなら勝つしかないねぇ」
「それでこそユウジだよ。賭ける甲斐が有る」
俺のセリフにクリスはそう応えてヒースやアレクに「アンタ達は?」と言う。
すると、ヒースは俺の肩を叩き「俺はユウジに張るぜ」と言ってきた。
「なんだよ、ジェリーに賭けるのは俺だけか?ビール2本頂きだな!」
そして、アレクはジェリーとグータッチをして俺にそう言う。
「なら、今夜勝負だね。何時ものコート集合で!」
「ハッハハー!やる気だなユウジ!叩き潰してやるぜ!」
俺はジェリーとグータッチを交わして話している間に辿り着いた食堂へと入った。
その後、師匠と俺は1日の訓練を終えた。俺は約束通り何時もバスケをするコートに集まりジェリーとの1on1を楽しんだ。
今回の勝負は俺の勝ちで、ジェリーとアレクはヒースとクリスにビールを俺にジュースとハンバーガーを奢ってくれた。
ハンバーガーを食べて日常的な会話を楽しみ俺はみんなにホテルまで送って貰って別れた。そして、夜は明けて師匠と俺は14時のフライトで日本へと帰ったのだった。