「『ビィラック育成計画』?」
約1週間リアルでの予定を消化した俺は久しぶりにシャングリラ・フロンティアにログインしていた。
「そうだ!『規格外エーテルリアクター』を修理する為にビィラックを古匠にするんだ!ユウヒも手伝え!!」
兎御殿の自室で目覚めるや否や送られてきたメールに返信した途端に部屋にやってきたサンラクは、ハイテンションで事の詳細を話し始めた。
簡単に説明するとエーテルリアクターを治すためにヴァッシュ師匠を頼ろうとしたが不在だった為ビィラックに修理を依頼、しかし、ビィラックでは「古匠」のジョブを持っていない為、直す事が出来ない。なら、この機会にビィラックを「古匠」にしてしまおう(次いでに言えば古匠にならば作る武器もグレードアップするらしい)。
つまりはこういう事らしい。
「完全に俺達の都合に合わせてるけどビィラックは了承したのか?」
「あぁ!お前がアメリカに行ったり助っ人で他校相手に暴れてる間にビィラックと一緒に『魔力運用ユニット』があるらしい去栄の残骸遺道の近くまで進んだ。後は、お前が協力してくれれば良しだ!」
外国産のエナドリをキメた時くらいのハイテンションで話すサンラクに俺は「それならいいけどよ」と呟き話を続ける。
「それで、俺は何処に行けばいいんだ?ミュウラのゲートは行った事のある場所にしか作れないぞ?」
「俺は今エイドルトにいる。だから、そこまで来てくれ!お前が入れば千人力だ!」
「りょーかい。にしても…テンション高ぇな、何があった?とうとうイカれたか?」
拳を握り「待ってるぞ!」と言うサンラクに俺はその高いテンションの理由を尋ねた。すると
「フッフッフっ…聞きたいかね?ユウヒ君??」
サンラクは怪しげな笑みを浮かべてそう言ってきた。
「やっぱい「実はレベル100超えのモンスターのレア素材を大量にゲットしたのだよ!!」
「マジか!!」
サンラクの顔にムカつき話を聞くのを断ろうとした俺だったがそのセリフに声を上げた。
「あぁ!!お前がヴォーパル・コロッセオで戦った水晶群蠍が大量に湧いてる場所を知ってな!!そこで乱獲させてもらったぜ!!」
サンラクのセリフに俺はかつて戦ったあの蠍のモンスターを思い浮かべた。あの時ヴォーパル・コロッセオで倒した水晶群蠍の数は10体。だが、サンラクのセリフから察するにその場所には比にならない数の水晶群蠍が湧いているのだろう。
それに
「『レア素材』!なんて心躍る響きだ…!!」
ゲーマーなら誰しも惹かれる4文字に俺は拳を握る。
「そうだろうそうだろう!!しかもな、その場所には水晶群蠍の素材以外にも宝石がザクザクなんだぜ!!」
「テンション上がるなぁ!!」
「そうだろうそうだろう!!」
サンラクからの新たな情報に俺はベッドから立ち上がって拳を前に突き出した。
「待ってろサンラク!ソッコー追いついてやる!そんでもって俺もレア素材を乱獲してやる!」
「応!待ってるぜ!さっさと来い!!」
そして、サンラクも拳を前に突き出し俺たちはグータッチを交わして別れたのだった。
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「それでハイテンションなのですね」
「あぁ、早く行くぞ!そのお宝ザクザクスポットへ!」
サンラクと別れた俺は部屋へ向かって来ていたミュウラを捕まえてフォスフォシエから奥古来魂の渓谷へと向かっていた。
「久しぶりにお会いしたら「行くぞ!!」と言われて突然掴まれたのでびっくりしました」
「悪かったよ、久しぶりに戻ってきてあんな情報貰ったら誰だってあぁなるだろ。許せ」
肩の上からジト目を向けてそう言ってくるミュウラに俺は謝りつつ先を急いでいた。
「それにしても戻ってきてそうそうに水晶群蠍に挑むなんてユウヒさんは相変わらずですね」
「ヴォーパル・コロッセオで倒したモンスターだが、話を聞く感じ比にならない数が居るみたいだからな…。レア素材に釣られたのは認めるが、大道に勝つ為には強くならないといけない。それには自分より強い相手と殺り会うのが一番だ。色々とありがたいぜ」
アメリカで師匠や友人達と過ごす間に人に教えならが自分も鍛えた。技の確認や身体の動かし方の復習。尚且つ、色々な体格や癖のある人達と組手が出来た。
一度気持ちをリセットして再びシャンフロをプレイ出来ている。最高だ。
「あの剣士の方に勝つ為に、更に更に強くなる。ユウヒさんのヴォーパル魂には感服します」
そんな俺にミュウラはそう言って肩をギュッと掴んで来る。
「ミュウラ、ありがとな」
そして、俺はミュウラの頭を一撫でしてそう応えたのだった。
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フォスフォシエから奥古来魂の渓谷間での道を走り抜けた俺は目の前の薄暗い谷を前に溜まりに溜まったSTポイントを割り振っていた。
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レベル70
体力 30 魔力 150
スタミナ 200
筋力 80 敏捷 170
器用 80 技量 75
耐久力 8 幸運 50
STポイント0
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「よし…これで良いだろ」
纏雷を最大バフで使用する為に必要なMPは120。そして、インベントリアを使用するにもMPが必要になる以上、MPはもっとあっても良いだろうが、今はスタミナを上げて動ける時間を更に伸ばしたかった。そして、筋力、器用、技量の縁下の力持ち枠を魔力を上げない分で上げておく。そして、俺の最大の武器と言える「敏捷」を上げ俺は頷きながらウィンドウを閉じた。
「準備は良いか?ミュウラ」
「はいっ、何時でも大丈夫です!」
そして、俺達は満を持して奥古来魂の渓谷へと踏み込んだ。
「薄暗いですね…怖いです…」
奥古来魂の渓谷を進み逃げていくモンスターを眺めながらそんな呟きを聞き流す。
奥古来魂の渓谷はかつて戦争が起こった場所らしく、大量の死者を出した場所。そして、死者の腐肉等で汚された土地は瘴気が満ち溢れ、生者を憎むアンデットの巣窟となったそうだ。
薄々わかっていた事だがミュウラはこう言う雰囲気の場所がダメらしい。ウェザエモン戦の前にレベルが足らない俺にキレていたペンシルゴンにも「怖い」と言っていたので、筋金入りなのだろう。
「サンラクからの情報通り瘴気とモンスターはリュカオーンの呪いのお陰で大丈夫だけど、ミュウラがここまで怖がるとはな…」
「ごめんなさい…。戦いが始まれば多分大丈夫なのですが…」
半泣き状態のミュウラに「大丈夫だ」と声をかけて俺は歩いていくマップでは既に渓谷の中間地点に来ている。
「……………モンスターが襲って来ないのは良いが、こうも暇だと退屈だな…。強いヤツが現れるかと期待したんだが…よしっ」
歩いても歩いてもアタックチャンスの俺に近寄ってこないモンスターに「構う必要もねぇ」と心の中で呟いた俺は渓谷の壁を登り始めた。
「雑魚は無視して、さっさと水晶群蠍と戦うのが吉!」
壁をどんどん登り下にいたアンデット共が小さくなっていく。それを見た俺はスキル「遮那王憑き」を発動しあっという間に渓谷を登りきった。
「お、おぉ……!!なんだコレ!!」
「すっっっっっっっっごい綺麗です!!」
そして、渓谷を登りきった俺とミュウラは目の前に広がる光景に声を上げた。
『水晶巣崖』
奥古来魂の渓谷の上にある水晶に埋め尽くされた場所。下に広がる薄暗い瘴気の渓谷とは180°違う煌めく土地。
「水晶しかないぞ」
「綺麗ですね。でも、この水晶少し魔力を感じます」
あまりの光景の変化に目を丸くしてそう言う俺達だったが感動は一瞬で書き換えられた。
「なんだっ?振動してる?」
声を上げた直後から俺達が立っていた場所が揺れ始めたのだ。
「此処だけじゃないみたいです…」
そして、ミュウラの言葉の通り俺達が立っている場所から広がって周囲にある水晶も振動していく。
そして
「ハハハっ、来やがったな!!」
揺れる水晶を粉砕して水晶群蠍が大量に現れた。